哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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私はモンスターハンターワールドの受付嬢のこと嫌いじゃないので初咆哮です。
また書きたいシーンを思いつくままに書きました。考えたって碌な文書けないからね(落涙)。
誤(以下略)



注意!乙女に安寧無し!? 上

「たかが悪ふざけ集団と甘く考えるなよ。野放しにしとれば私ら警邏隊の信用、ひいては国が傾く。それに面子は余罪だらけの真っ黒や」

 

 成都から少し南に横たわる廃村。劉璋の内ゲバの時分に無人になり、今では「華蝶仮面に仕返しする友の会」の根城になっている。劉璋に代わって主になった桃香たちには、どうせ無人なら村を囲う堀や塀もつぶしておいて欲しかったものだが……最近まで元村民が戻るかどうかのゴタゴタがあったようである。この周囲と、成都に向けての街路にかけて大小の犯罪の報告も増えていて、案の定肥大化した友の会の構成員によるものである。創始の数人とてろくでなしのゴロツキであるという調べは付いているし、やはり上から下まで害悪集団である。どこか仮面の見せ場を作る悪"役"として受け入れられつつある空気が有るが、調子付かせるわけにはいかない。

 五大老結成から数日目、討伐隊を編成。出撃を予定より"突如"二日早め、"偶然"予定が空いていた私と小蓮をそれぞれ隊長と副官とし、ここに至る。

 

「行くぞ」

 

 騎兵で一足に距離を詰め、立てこもる隙も与えない。元より、"襲撃は明後日だと思っていた"相手の反応は遅れ気味だ。そればかりか引っ越し準備のためだろう、ほとんどメンバーが揃っているようである。正に一網打尽の様相だ。

 そんな中、浮足立ったヤツがもう一人。

 

「この白虎猫娘様の手下に、よくもやってくれたわね!」

 

 ビャッコニャンニャンだかココロピョンピョンだか、ともかくこれまた仮面が現れる。……小蓮だ。

 麗羽が引退した後、伝言だか直接だか、ともかくむねむね団団長に指名されたのはちゃん美羽である。しかしもともと持っていた麗羽への苦手意識もあって、七乃さん共々活動には消極的であった。真桜と沙和は趣味の発表の場として便乗しているちゃらんぽらんだし、南蛮組は南蛮組である。そこで、仮面としては新参ながら実質のリーダーとなったのが白虎猫娘こと小蓮らしい。勝気な性格に孫家の末っ子ということもあって、手下を持ってイタズラする遊びが楽しくてしかたないようだ。全く、どうせ親分になるなら暴走させないようにキッチリ手綱をとってほしいものだ。

 今回の討伐について友の会に情報を流していたのも小蓮だと分かっている。自分の情報のせいで(おもちゃ感覚とはいえ)手下が窮地に立った上に、実際討伐する副官も自分である。どうするか迷った挙句、直接私と戦って時間稼ぎすることにしたようだ。一番は、このまま知らん顔で討伐を終えて、「手駒も無くなったし、締め付けもきつくなったから」と引退してくれれば良かったのだが……。今のように出て来てもらっても、きっちり正面から倒して分からせようという方針には沿っているので良しとする。

 そうと決まれば心の準備。小さくて可愛らしく、今となっては私の方が持ち上げられる立場だが、小蓮も破格の力を持つ英傑。平和になって緩んできた気を一度引き締め直さなければならない。それに、手にする武器……大型の戦輪、或いは乾坤圏? どう使ってくるのかよく分からない。

 

「くらいなさい!」

 

 四本の環の内、三つが鋭い弧を描いて飛来する。二つを避け、一つを弾く。そしてその全てが当然の権利のように小蓮の手元に帰っていった。物理法則無視で動き回る飛び道具と言えば、祭の矢で体験したことがある。今回はアレより少しマシというところか。掻い潜って接近するも、そうするほど環の往復が速まり攻撃が激しくなってくる。様子見に短剣を投げたが、振り払う動作の延長で輪を投げて来る。隙を作るのも簡単ではないらしい。一方で、威力の方は他の英傑の一発よりかなり劣る。一発で形勢逆転を狙うのではなく、地道に距離を詰めていく必要が有りそうだ。……この場面ではあまりやりたくないことだよなぁ。

 

「助太刀いたしましょう!」

 

 内心ため息ついたところに二人目の乱入者。燦華蝶が死角から現れたそのまま小蓮に跳びついた。さすがに攻撃も止む。私はこれ幸いと一気に駆け抜け、勢いそのままに二人まとめて蹴り貫いた。

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

「自業自得ながら気の毒よなぁ」

 

 中庭の四阿で桔梗と今後の話し合いをしていると、数時間にわたる説教でフラフラになった小蓮が祭の部屋から出てくるのが見えた。

 

「な。何日か前は祭さんが説教受ける側やったのに」

「はっはっは! そう言えばそうだのう」

 

 自分も同じだったのを忘れているのか、覚えていてワザとなのか、桔梗は呑気に大笑いした。指摘したところでそれも「はっはっは! そう言えばそうだのう」と笑い飛ばされるだけだろうから何も言うまい。それに、痛いところはこっちにも有る。

 

「そう言えば、もう一人はお主の部下だったのだろう? そっちはどうした?」

「調子乗んなとだけ言っといた」

「手厳しいな」

「一言で済ましたっただけ有情やろ」

「しかし、聞けば元来忠実なはずだったというではないか。それが、仮面を被って騒ぎを起こしたのだから、何か思うところがあってのことだろう。今のうちに話を聞いておいた方が良いのではないのか? 原因を断っておかねば次はどんな暴発のしかたをするか分からんぞ」

 

 元来忠実なんて、どっから聞いたんだか。本当に忠実で奥ゆかしいやつなら話を聞く気にもなるんだがな。なんせアイツは普段からストーカー気味で欲望ダダ漏れだ。これでまだ「ストレス溜まってたんです」なんて言ったらそれは救いようのない病気だから田舎に帰って療養することを勧めるしかない。

 

「話聞いてやるというか、根本的な解決せなならんことと言えば南蛮組やと思うわ。結局、街の中で、喰う寝る遊ぶを我慢するっちゅーことがあいつらの生き方とは合わへんのやろ」

 

 街じゃ狩りをする機会なんてないし(できて小鳥を追いかけるくらいか?)、文化の違いからくる町人とのトラブルも絶えない。なんとかストレスを解消させてやる方法を作らなければならないだろう。それこそ田舎に帰ってもらうしかないのかもしれないが。

 

「そこは前々からから璃々と紫苑が世話を焼いてくれているようだぞ。紫苑の取り合いになったときはすこし喧嘩もあるようだが、良き姉と母代わりになっておる。最近は変な仮面と団名のおかげで悪目立ちしておったが、問題の数自体は以前より減ってきているのだ。姉貴分というところでは、小蓮もそうだったのじゃが……と、噂をすれば」

 

 水場の方からトタトタと軽い足音と一緒にキャイキャイと子供の声が近づいてくる。

 

「こらー! ちゃんと百かぞえないとダメでしょー!」

「暑いからもういいのにゃー!」

「みゃー!」

 

 濡れた髪と体を弾ませて逃げる美以たちの後ろを璃々が一生懸命になって追いかけていた。どうにも美以が烏の行水もとい猫の行水でちゃんと風呂に入らなかったようだ。南蛮組はさすがに余裕でおいかっけっこ遊びの様相である。

 

「はぁ……こんな日常のために戦ったのに、なんでまた内の敵と腹芸しとるんだか」

「それもそろそろ終わりじゃろうて。それにしても……これこれ、裸で走り回るでない。璃々、美以!」

 

 桔梗が美以を抱きとめ、それでもまだ逃げ出そうともがくのを上手く制す。私もお供のミケとトラをつまみ上げた。もう一匹のシャムは手がかからなくて助かる。そして「せっかくだから」と、美以たちを風呂に入れ直すついでに私たちも一風呂浴びることになった。

 うーん、確かに、思えば美以たちは言わば他民族からの協力者なんだし、特別に世話係と言うか接待係をつけてもおかしくはないかもしれない……というのは、よその子扱いが過ぎるだろうか。

 

「やれやれ。前は冷めた湯が心地良いと言ったが、熱い風呂はやはり良いな」

「まぁ酔っとる時の話やしなぁ」

 

 やはりぬるま湯とは筋肉の解れ方や毛穴の開き具合が全然違う。毎日の行水とは比べるまでもない。そう言えば斗詩が、ちょっと行った辺りに温泉が有るとか言っていたか。馬で半日くらいの距離なら、これからの国力なら工事で引っ張って来れるだろうか。

 そんな絵空事を考えながら身体を温める私とは反対に、美以はご不満な様子。水遊びでもして喜びそうなイメージが有ったが……そうか、猫的な風呂嫌いの方が強く出ているのか?

 

「だいおーしゃまー」

「にゃ? んみゃ!?」

 

 南蛮組の主従関係は結構緩いようで、ミケが美以にパシャッと湯をかけた。これに美以の耳がピンと立つ。どうやらスイッチが入ったらしい。

 

「なにするにゃ! しかえしにゃー!」

「ふみゅう……」

 

 にわかに水の掛け合いが始まる。うん、こっちの方がイメージ通りだな。シャムだけは私の隣で脱力中だが。しかしそこで璃々が「おふろであばれちゃダメなのー!」と叱りつけた。

 

「うるさいのにゃー。えい!」

「きゃっ」

 

 こうして騒ぎながらなら美以たちも風呂に馴染めるんだろう。笑って見過ごしたいところだが、しつけに悪いかもな。美以もそうだし、璃々についても、紫苑から言われた(だろう)ことと違うことを私たちが言ってはかわいそうだ。

 

「ほら、こっち来ぃ」

 

 やんわりと間に割り込みながら身体を引く。風呂の浅い水ではあるが、美以たちの身体だといい感じに浮かぶことができる。手の力も貸してやって、船のように進ませながらゆらゆらと揺すってやるともう水かけのことは忘れてしまったようだ。紫苑も、一緒に入った時はこうしているのだろうか。

 

「うーむ、慣れぬなぁ」

「何がや。……いや、言わんでもええ」

 

 どうせ蛇だか鬼だか言うつもりだろう。自分でそのように演じて来た結果とはいえ尾を引き過ぎというか、新たな弱点になったと言うか。死ぬまで弄られそうな気がする。

 

「お主今日何やったか覚えとるか?」

「賊討伐に不審者退治。人間の鑑やな」

「はっはっは、助太刀ごと蹴倒すやつが鑑とは世も末じゃな」

「平定から一月ほどでもう末か。諸行無常にも程が有るな」

 

 桔梗と軽口を言い合っている内にわらわらとミケたちも寄って来た。いつの間にか両手に足も使ってどうにかこうにかこの人の形をした猫たちをあやしていた。注意した手前大人しく座っていた璃々だが、どうにも羨ましそうだ。桔梗もそれに気付いていたらしく、既に定員オーバーの私に代わって「どれ、儂がやってやろうか?」とワシャワシャ頭を撫でた。ちょっと迷った様子だったが、「さわがしくはしていないしいいよね」と自分に言い訳をつけたらしく桔梗に身を預けた。そうそう。子供は素直が一番。特に璃々は怪力でもないんだから他のちびっ子の代わりに暴れてくれてもいいくらいだ。

 

  ――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あー、さすがにのぼせたなぁ」

 

 結局、風呂は私のギブアップで上がることになった。しかたないだろう。ゆっくりとした動きとはいえ四人を相手にしていたんだから。そんな私を見て「こんなときに呑む酒は美味いものだが……どうだ?」と、桔梗がニヤリと笑って盃を傾けるマネをした。コイツときたらまた酒の話か。風呂上がりに一杯やるなんて話し合うまでもないだろう。

 

「おかーさん!」

「紫苑にゃー!」

 

 高官の私室が集まっている区画に戻って来た辺りで、廊下の先に紫苑の姿が見えた。籠手と弓を持っているのを見るに仕事帰りだろう。パッと駆け出して跳びついた四人を慣れた様子で相手する。私ではまだ子供と接するにはどうすれば良いかと少し逡巡するところがあるが、紫苑はさすがの母親具合だ。……それ以前に、私の仕事着であんな風に抱きしめ返したら穴だらけになってしまうだろが。

 

「あらあら。お風呂入ってたの?」

「警邏終わりか。今から一杯どうだ?」

「うふふ、一杯じゃ済まないくせに」

「はっはっは、腹一杯じゃ」

「アレを使えば盃一杯で……」

「それは勘弁」

 

 皆、酒で羽目を外すというより酒のことになると呑む前から既にはしゃぎがちになるところが有る。璃々に「もー、飲みすぎはだめだよ!」と釘を刺されてしまった。

 さて、それにしてもツマミはなににしようか、また何か用意してもらうかそれとも自分で軽く作るかと考えを巡らす。

 

「今からなにか食べるのにゃ?」

 

 ズイッとすそが引っ張られて浴衣がはだけそうになる。見れば、美以のキラキラそわそわとした上目遣いと目が合った。

 

「……せっかくやしみんなで食べるか」

「この様子では三人で呑もうにも放っておいてくれぬだろう」

 

 璃々たちが一緒では酒に沈むのはお預けになりそうだが、まぁ、武器がいらないイベントは大歓迎だ。




美羽様にマッサージを施すサービスを受けたい(正しい日本語)。

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