哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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ダムって超クールですよね。物理的な意味でも。
あと変な時間の投稿ですがニートではないです。断じて。


第十五章最終決戦Round2

「助太刀に来たぜ!一兄!」

「助かる猪々子!これで一気に……!」

「くっ……」

「あいにくそうは行かん」

 

 馬上から跳んで切りかかろうとした猪々子の前に、重ねて二本の杭が突き刺さった。凄まじい轟音と威力。噂に聞く豪天砲だ。

 

「またお前かよぉ、厳顔」

 

 猪々子はこの前の会戦でちょっとだけ当たったんだっけ。

 

「おう、またじゃ。だが、今度はしかと手合わせ願おうか!」

「どうせなら手合わせなんてけち臭いこと言わず、狩り合いと行こうぜ」

「なるほど、けち臭いか。ならば、丁度よいかもしれんな。焔耶」

「はぁアッ!」

「また新手か!……っく」

 

 厳顔の背後から躍り出て猪々子に突撃した、金棒を持った若い武人……魏延に意識が向きかけた瞬間に、甘寧の一撃が飛んできた。なんとか刀で逸らし、部下たちも少しの慌ては見えたけど反撃に出る。

 

「ほう、さすがに忘れられてはいなかったか」

「俺はいちおう頭脳職なんでね……!」

「さぁ、一つ畳んでやろうかのう」

「させるか!『斬山陣』!!」

 

 猪々子の斬山刀の動きに合わせて、光の刃が天に向かってのび、地面を走り出す。氣の刃を作り出すことを得意とする猪々子の奥義、多数の刃で陣を作る斬山陣だ。

 

「面白い技じゃが、……薄いッ!」

「うおおおおっ!!」

 

 しかし、多く作るだけ密度が低くなるのか、はたまた相手がパワー型なせいなのか、正面からでは打ち合いで破られる。

 

「けっ、やってくれるじゃん」

「当たり前だ!将たるもの、貴様も正々堂々と武器と武器を合わせて……うお!?」

 

 投槍が魏延の顔を掠めた。

 

「なーんだ、今度はこっちが忘れられてるかと思ったのに~」

 

 目が眩むような光を放つ刃のスキマを縫って、俺の部下たちは変わらず敵を狙い続ける。

 

「ここまで喰らいついてくるか……!」

「連携だよ連携。やっぱ人が居てこその『陣』だからな『斬山隊斬山陣』だ」

「勝手に改名しないでくれって」

「やはり易々とは取れぬか。曹操の嫁の首は」

「嫁って言われてるのか」

「まあ間違っちゃいないの」

「ノーコメントだ」

「この小僧がのぅ。面白いこともあるものだ」

「面白がってる余裕が有るかな、っと!」

 

 刃、それに北郷隊と連携して猪々子直々にも厳顔に迫る。

 

「ああ、面白いとも。予想の上をいく相手と刃を交えることは戦人にとって最高の楽しみだ」

「桔梗様、作戦を忘れないでくださいね」

「そこは弁えておる。……まさか焔耶に言われるとは」

「いつになく昂っているようだったので……」

「昂ってもらえて光栄だよ」

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――

「ハアアアアアッ!!!」

「ぐッ……くっ」

 

 戦場の反対側、馬岱と周泰に対するは華雄と張遼。ここは経験の差、或いは年季の差で魏の二人が押していた。

 

「格っちゅうモンが有るッてんねや。はよ帰って関羽連れて来ぃ!」

「なによ、負けて魏に従ったヤツ二人のクセに……!」

「お前に負けたワケではないからお前に言われる筋合いはないぞ」

 

 挑発にも顔色を変えない華雄。それもそのはず、戦意は元から最高潮で、その心のまま目の前の敵に襲い掛かっているのだ。

 

「ちょっと、そんな年増に負けてんじゃないわよ!」

「小蓮様!」

「援軍ありがと!」

「まーた口の悪いちびっこやで。どっからどう見てもお姉さんやろ!」

「年増でも何でもいいのだが、仮に私が年増だとするとお前の後ろに控えているそいつはどうなってしまうのだ」

「そうじゃぞ小蓮殿。歳をどうこう言うのは良くない」

「黄蓋……格は十分やな」

「さあ。戦は格を競う場ではなかろう」

 

 黄蓋は静かに矢を三本番えた。ヤる気も十分といったところ。

 

「実力で言うとどうなのだ。手負いだろ、お前は」

「確かに全盛とは言わぬが、こちらは四人じゃぞ?」

「お前ら如き怪我持ちの老いぼれと小娘を人数に入れていては初めから五虎将まで手が回らんというものだ」

「華雄あんたいつの間にそんな煽り文句覚えたんや……」

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――

「開戦の奇襲といい、今の波状攻撃といい、なかなか苛烈に来るわね、劉備」

 

 魏軍本陣に飛び交う伝令と書簡。その量は今までの戦の比ではない。被害状況、対しての防戦、反転攻勢策……大小合わせればその指令の数は既に千にも上る。

 

「こちらの将を将同士の討ち合いで貼り付けにし、指揮を鈍らせたところで周囲の兵を入れ替えつつ何度も突撃させる……おそらく、陸遜と呂蒙、ある程度戦える軍師たちを前線指揮官としてどこかに配置しているものと」

「諸葛亮、周瑜の指揮が殆ど時間差無く末端に届いているものと」

「それで?こっちには武闘派軍師が居ないから打つ手無し、とは言わないでしょう」

「もちろんです。真に遺憾ながら北郷は上手くやっていますし、華雄のところには事前に七乃が向かいました。そして、春蘭秋蘭の中央には、あの策が」

「なし崩し的な同盟、そしてこの大軍相手に見事な指揮ではありますが、私たちが積み上げたものにはまだ及ばない」

「慢心はよくないのですよ~?」

「冷静な分析から生まれる信頼です」

「軍師にとって本来戦場の指揮は最後のトドメ。正面からの突撃だけで勝てるようにするのが最大の目標。神懸った指揮を見せると言うことは、戦の準備にしくじった証と言えます。が……」

「そろそろ来ますね~。軍師の絵図に濁流をぶちまけてくれる迷惑なお方が」

 

 程昱が目を細めて前線を睨んだ。

 

「ええ。左右両翼に援軍を送り、こちらの意識を逸らした上での、渾身の一撃ね。舌戦から帰って来てせっかく一息ついたところなのに、忙しないわ」

 

 憂うセリフとは反対に、曹操の口角はつり上がっていた。

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 そして戦の中心、前線中央。五虎将の二人、馬超と趙雲の猛攻に対するは夏候姉妹による豪雨の如く苛烈な連撃。

 

「腕を上げたな、錦馬超」

「お前に評価される筋合いは無えよ!」

「黄巾の乱よりその名が轟く夏候姉妹……確かに、一足す一が四にも十にもなっているな」

「そちらも、この窮地についに本気を出して来たか。見違えるようだぞ、趙雲」

「それはどうも。しかし私がそちらの立場なら、そう悠長なことを言ってはいられないものだが」

 

 趙雲がニヤリと笑った。その意味を考えるより早く新たに名乗りが上がる。

 

「孫伯符参上!ってね。蜀呉同盟なんだから当然私も出るわよ」

「同じく呉の孫仲謀、今更名乗るのも如何なものだが、雪辱を晴らすこの戦には不可欠だろう」

「四対二だけど、卑怯なんて言わないでね」

「無論!魏の覇を目の前に……如何なる障害も跳ね退けて見せる!!」

「ふむ、威勢の良いことだ。ならば、もう一手打たせてもらおう」

 

 飽和していた氣がザワザワと波立ち、莫大な力の渦に敵も味方も無く塗り潰されていく。

 

「来るか……っ!」

 

呂布だ。

 

「与えられた仕事は、する」

 

 しかし、それだけではない。

 

「関雲長、押し通る!!」

「張益徳、止められるものなら止めてみろなのだー!!」




次回、意外なあの人が活躍!?
意外でもないかもしれない。

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