別のことに打ち込んだりもしたけれど、私は元気です。
それにしてもホントにラストもラスト直前で止まってて自分でびっくりしました。
私流執筆一条:二次創作はあくまで趣味「書かなきゃ」と思ったときは絶対書かない
何言ってだ。ラスト前なんだからそりゃ「書かなきゃ」って思うわ。アホなんかな。
それにしても文章力が足りない。基本的な注意力も足りない。申し訳ない。
「何!?追撃するな、だと?」
俺が前線に着くと、丁度撤退する孫策、黄蓋、そして魏延を追おうとする春蘭を沙和が止めているところだった。
「そうなの!」
「なんでや?相手が退き腰になったらそれに乗じてきっちり〆とくもんやろ?」
「今掩護で前に出てるのは蜀の二軍だ。押せ押せで相手の退くのに合わせて追い縋れば、足の早い奴から関羽や張飛たちの一軍に処理される。足の遅い方に合わせて、大軍の強みを保ったまま進まないと」
「結局隊長も来たのー」
「稟が上がって来てくれてな」
稟は春蘭の引き留めに沙和を出した入れ違いくらいで指揮の引き継ぎに来てくれた。「あの突進癖を引き留めるには、沙和では力不足でしょう。……貴方でも怪しいところですけどね」と。
「隊長の話からすると、基本的な誘引計ってことやね」
「そうだ。まぁ、ここに至る過程は複雑だったけどな。まず、薄く広く展開して、呉の軍だけで誘引を仕掛けてきたのが序盤。それから、こっちが中央突進を避けたのを見て巻き取るような動きに転じ、蜀と挟み撃ちの狙いを見せたのが中盤。それも読まれて、魏の全軍が動き出し、最後の締めの気運となった油断に漬け込んで再び誘引を計ったのが今だ。いくつかの策や焦らしの後だから、つい気付かずに攻めたくなるのものだけど、今回は前と後ろで完全に分けてたのが良かった。軍の半分以上は冷静な状態を保ってたからな」
「なるほど……さすがです。隊長」
「そうだろ?なんたって稟の受け売りだからな」
「胸張って言うことちゃうで」
「いや、まぁ俺も誘引自体には気付いてたから。順序立てて説明できるほど分析してなかっただけで。ともかく、中央部も過ぎてこの平原は取ったようなもんだ。後は、反転攻勢に出られない程度の勢いでゆっくりにじり寄るべし……っていうのが華琳の意見だぞ、春蘭」
「わ、分かっている!」
なら今にも馬の横っ腹に蹴りを入れて「進め」の合図を出そうとしてたのはどう説明するつもりなんですかね。
「ともかく、これで真ん中は抑えられたな」
あとは左翼と右翼か。戦場を縦横無尽に駆けて敵を討つ遊撃のはずが尻ぬぐいや伝令まがいのことをさせられてばかりだけど、秋蘭と霞に頑張ってもらわないと。
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「ようやく撤退していきましたね」
その後順調に全軍が歩みを揃え、戦況は大軍同士の圧力を使った睨み合いへ。結局、日が沈んで少し経った頃になってやっと、敵はこの平地から退がっていくようだと報せが入った。その情報が信頼できるものか確かめる作業の後、本陣の軍師たちはフッと緊張を解いた。このまま今日はここで野営になる。相手に誘導された感も否めないが、ここより大軍が留まるに相応しい場所が近くに無いのも事実。もともと取っておきたかった場所だ。警戒に当たっていた将たちもそのうち引き上げてくるだろう。
「思ったより長い睨み合いになったわ」
周りが少し疲れた様子なのに対して、華琳は満足気だ。
「夜戦の準備が無駄になっちゃいましたよぅ」
「それを狙っての、この時間での撤退でしょうね~」
「成都を前にして、双方被害少なく、しかし意義のある、歯ごたえのある戦でした」
「でも厳しいですねぇ。孫権さんが覚醒するのは、私が一番警戒してたことですよ」
稟の総評で締めになるかと思いきや、七乃さんは複雑な表情で言った。以前呉を分断して抑え込んでいたその当人であるだけに、色々と思うところが有るらしい。確かに、今回の戦の呉はかなり慎重で我慢強く攻めにくい戦いをしてきた。戦列の表面ではなく内側を複雑に動かし、気付きにくい突撃や誘引を放ってくるそれは、魏のこれまでの奇策をコピーしていたようにも思える。
「そう。孫権が立ったことで、呉はあらゆる面で一段上へ……"三国"たる存在へと至る。楽しみが一層増えたわね」
「相手は弱いに超したことないんですけどー。……やっぱりこっちも初めから全力電光石火の速攻戦で一人二人でも将を削っておいた方が良かったですってぇ」
七乃さんの言う通り、確かに華琳は後に成都の決戦が有るとはいえこの終局にあって未だに勝ち負けの利の大小より両軍の成長を促すことに重きを置いている。しかし面白がってそうしているワケではない。
「傲慢な上に純朴だったと反省したのよ」
華琳は小さく呟いた。
「でも、ま、どうしても不満が有ると言うなら、貴女は次の戦を投げることもできるし、ひっくり返すこともできるわ。……その上で、それでもついて来てほしい。良いかしら、七乃」
「ムキになって反論して来てくれた方がやりやすいんですけどねぇ」と、七乃さんには珍しく困ったような顔を見せた。
「本当にひっくり返せたら苦労しませんよ……、まぁ、仕方ないです。まったく、あの人がとんでもない面倒に引き込んでくれたんだと最近になって気付きましたよ……」
「ふふ、……確かに、あの娘の責任ね」
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「ついぞ読み切られてしまった、か……」
戦の平原からしばらく成都へ退いた丘の上、遠くに見える魏の天幕群の灯りを眺め、孫権はため息を吐いた。
「蓮華様が提案なさったとき、大軍を切り崩すにはこの手だと思ったんですけどねぇ~……」
「今回の戦、相手は敢えて本陣が手綱を取らず、前方を自由に動かせていたようです。それに後半の増援は攻めのためではなく、突出した味方を保護するための守りの物だったと」
「二重の陣にしておったのはこちらだけではなかった、とな。うーむ、この期に及んで、試行を欠かさん奴らよ」
「そして最後だけ、深入りしないよう制止をかけた……。三重の誘引の効果が薄かったのはこのせいだろう」
「………」
孫権は俯いた。やはり孫家の主の荷は重いと、喉元まで出かかった。
「そんな顔しないの。この戦で、やっぱり蓮華に孫家を譲って良かったと思ってるんだから」
「しかし、将の一人も討ち取れませんでした」
「平地で、あの大軍相手に、これだけ長時間戦って、こちらの被害も少なく済んだのだから上出来よ」
「特筆すべきは圧力の扱いでしょう。蜀軍も協力するとあって、こちらももっと大々的に兵を動かす覚悟をしていましたが……実際は、将の何人かに走ってもらうだけで済みました」
諸葛亮にしてみれば予想のはるか上を行く結果である。同盟とはいえ呉は都を失った根無し草。まさかちゃんと一国の軍として戦いになるとは思いもしなかった。
「"背後に蜀軍が居る"という状況を上手く相手に意識させられたということじゃ。策殿では考えられんのう」
「まーね」
「褒めとらんぞ」
「ともかく、成都の決戦を前にした蜀呉同盟に、蓮華……あなたという指揮官の才覚が証明されたワケよ。これで私ももっと思いっきり戦えるわ」
「孫家を託して死地に向かえる」などとはもう考えていない。共に戦う家族の成長を純粋に喜んだ。
「それで……聆殿は結局出てこなかったか」
しかし戦は美談で終わりはせず。趙雲が"例の"件の確認を。
「影も形も」
「相変わらず奴の配下だった者は北郷やら楽進やらに使われておったわ」
「………」
裏をかいたり裏をかくと見せかけて表で来たり、表も裏も用意してると言ってみたりとやりたい放題してきた奇人がここにきての雲隠れ。それに三国無双の呂布の異常。到底無視できることではないが、正視したとて何も見えず。
「西涼攻めでは本拠を墜としたのよね?」
「しかしそのときは部下を連れていて、馬騰さんが病に伏せている上に守りが薄いという情報が有っての行動のはず。ここで同じことをするとはとても……」
「成都の守りは」
「薄くないです。兵も多く居ますし、紫苑さんに鈴々ちゃんも」
「流石に、か」
「ならば……」
「『死んだかどうか曖昧にすることによって混乱を狙った』というのも如何なものでしょう?そんなことをするより、鑑惺さんほどの将、本人がその部下を動かして工作や戦闘にまわった方がずっと効率的だと相手も分かっているはずです」
沈黙。
「やはり、そう捉えるしか……」
諸葛亮が確認するように呟いた。
しばらくして、劉備が、どの感情からか、薄く笑みを浮かべた。
「不死身の鑑嵬媼……死と心を弄び、窮地を転ずることを最も得意とする蛇鬼。私たちが描いた聆さんの姿。……そんなヒトが"死んでしまった"のなら、それが転じたとき、どうなるんでしょうね」
ぬ