哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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また言い訳がましい文章になって大苦戦しました。しかもネタが無い。辛い。

そして唐突にストパン2次を書きたくなるものの兵器とかに詳しくないので断念しました。


第十三章三節戦闘パートRound3〜四節 〈α〉

 「ハァッッ!!!」

「くぅっ!」

 

激しくぶつかり合う長剣と大鎌。魏、呉両軍の大将の討ち合いは曹操優位で進んでいた。

 

「――なるほど……最初に馬を狙ったのはこういうワケだったのね」

 

 大鎌という武器は本来非常に扱い難い。確かに、ちゃんと当たれば効果は高いが、取り回しがかなり悪い。しかも、相手を内側に引っ掛けなければ切れないくせに、その間合いに入れば使い手はノーガードという。専ら相手が無抵抗な場合専門の、処刑用武器だ。曹操の『絶』は両刃で、刃の逆側に錐を装備するなど改良点も見られるが、刃と柄の長さがほぼ同じ 完全な『く』の字型をしており、むしろ扱いは更に難しくなっている。

 ならば曹操はそれを素速く振り回せる技能を持ち合わせているのかと言えば、そうではない。無論、常人にはとても真似できない高みには在るが、同程度に他の武器を極めた者にとっては十分に遅いと言える。

 それを補うのは、手数が多く近い間合いに対応できる戦闘技術、徒手だ。しかし徒手の技術を活かすには当然ながら正しい足運びが必要不可欠で、馬上では十全の力を発揮できない。

 曹操は、挨拶代わりの初檄をスカし、孫策の騎馬の腹を掻っ捌いたのだった。

 

「覇王が随分忙しい戦いをするのね」

 

ステップを多様し、武器と一体となって乱舞する。小柄ながら大型の武器を使う者の、一つの究極型とも言えるファイトスタイルだ。

 

「そういう貴女は小覇王の名に相応しい戦いね。……何を焦っているの?それとも、集中できていないのかしら?」

「……チッ」

 

両方とも図星なものだから思わず舌打ちが出る。

 まず、この戦いは"一騎討ちを宣言"したものではない。曹操が『相手をしてもらうわ』と言ったのみ。だから たとえあとから来た魏の援軍に袋叩きにされようともなんら文句は言えない。

 さらに問題なのが孫権のこと。戦況は鑑惺に押されている……と言うよりもはや玩ばれていると表現する方が正しい。近い間合いでは騎馬(牛)の地力の差がモロに出て、かと言って間合いを取れば鑑惺の独壇場。そも、黄蓋に手加減して勝てる腕が有りながら孫権を倒せないハズがない。

 『私が死んだら、蓮華と小蓮が孫呉を継ぐ』それは孫策が常々言っていることであり、言動の裏付けだった。『自分の代わりは居て、自分が死んでも大丈夫だ』と言い聞かせる"呪文"だ。

 だから意識的にも無意識的にも安心して"狂う"ことができた。

 だが、その孫権の存在が脅かされている。これで十全の力を出せという方が無理な話だ。

 

「……分かってやってるの………?」

 

最悪の結果だが、いっそ、殺してくれれば荒れ狂うこともできるのに。

 

「さあ?何のことかしら」

 

曹操は白々しく答えた。

 

 事実 曹操は、孫権が言ったようなことは微塵も考えていなかった。『一騎討ち』と言わなかったのは会話の流れでたまたまそうなっただけ。鑑惺が孫権にトドメを刺さないのは、鑑惺がカウンター中心の戦いを好むため、同じく慎重な孫権には、イマイチ決め手となる隙がないと感じているからだ。

 だが、だからと言って孫策の不利が覆るワケでもない。

 

「クソッ……」

「ちゃんと全力を出しなさい。でないとワザワザ私自ら突出した意味が無いじゃない」

「そんなのそっちの勝手でしょっ!」

「雪蓮様〜〜〜!!!」

「お待たせしてしまい申し訳有りません!」

「っ! 穏、亞莎!ここはいいわ!貴女たちは蓮華の援護に!」

「「御意に!」」

 

普段は軍師としてその才を揮う二人だが、それぞれ九節棍と暗器の心得がある。三人で連携すれば、もしかしたらなんとかなるかもしれない。

 

「軍師まで前に出てくるなんて、呉はなかなか面白いわねぇ」

「そうやって余裕で居られるのもここまで、よ!」

「なっ!?」

 

それまでズルズルと後退っていた孫策が、曹操の掌底を受け止め、逆にそのまま踏み込んだ。急激な変化に攻撃のリズムを崩した曹操は跳び下がって距離を取る。

 

「……無茶するわね。あの受け方じゃぁ結構痛いと思うのだけれど?」

「そうね。あとちょっとズレてたら骨が折れてたかも。……でも、関係ないわ」

「そう……」

 

 怪我を気にしない相手は厄介極まりない。それは鑑惺を見てよく知っていることだ。腹を貫かれても組み付く。腕が折れても殴りかかる。あえて鎧の無いところで打撃を受ける。……普通なら怪我と痛みを恐れてしない行動を平然とやってのけるのだ。しかも孫策には自分が死んででも道連れにしようという気配もある。

 本来なら、相手の刃より先に自分の刃を届ければ攻撃は止まる。だが、この相手はこちらの攻撃に当たってでも首を狙うだろう。

 

(なるほど。孫家のためなら自分はどうなっても良いと……。コレが孫策の強みか……)

 

相手が常に攻撃してくるのだから、自分は常に防御しなければならない。自分を捨てて勝ちを取りにくる孫策に対し、曹操はまだ命を捨てられず、自らの身を守るしかない。

 

「――でも、やっぱり小覇王ね」

「何がよ」

「そうやって必死に藻掻いても、結局は勝てない……そういう星に産まれたところ、よ」

「何を――」

「雪蓮!」

「冥琳か!……それに兵も!」

「時間切れね。孫策」

「何を言っているの。時間切れなのは貴女――」

「退くぞ」

「え……?」

「明命と思春の隊は既に破られ敗走している。今、二人には退路を確保するのに専念してもらっている状況だ。他の隊も削り尽くされ、もうすぐそこまで将が迫っている。夏侯淵、張遼の隊は迂回して建業に到達しようとしている。もはや万が一にも勝ちは無い。私の後ろに居るのは、殿のための兵だ」

「な、…………なら、……貴女は蓮華を連れて逃げてちょうだい。建業を失って……もはや母様に合わせる顔も無い。私は、ここで戦って、せめて誇りを持って死ぬわ」

「私を道連れにしようとしてるのなら無駄よ。こうなったからにはさっさと退がって他の娘たちに任せるつもりだもの。それに、殺してもあげない。こっちには生け捕りの達人もいることだしね」

「曹操……っ!!」

「誇りとは、生き様を魅せるから尊いのよ。名誉の死とは、曲げられぬ信念を貫いた結果の死よ。貴女は上手く行かなかったからヤケになってるだけじゃない。そんな無様な死を見せられても溜息しか出ないのよ」

「私に……また耐えろと言うの?袁術のときのように屈辱にまみれて……っ!」

「貴女がどんな屈辱を受けたのかは知らないけれど……そうね、耐えられないと言うのなら、何も考えられないようにしてあげても良いわよ?」

「貴様ッ……」

「で、どうするの?できれば降伏してくれるとありがたいのだけれど」

「…………………冥琳、退くわよ」

「………ああ」

「そう。早くどこへなりとも消えなさい。……それと、途中で引き返して来ないでちょうだいね。動転して建業に失火してしまうかもしれないから」

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 「良かったのですか?孫策を逃がして」

 

呉の兵は逃げ、魏はそれに対し追撃隊を出すことは無かった。ちゃんと逃げたのか確認するために小集団に後をつけさせはしたが、それだけだ。

 

「それに将も全然減らせてないじゃんかー。アイツらそのまま蜀に入るみたいだし……あたいには分かんねぇなー」

「そうだぞ曹操。少数の猛将によって気勢が覆るのは今回の作戦で示されたことだ。蜀は無駄に厄介な軍になるぞ」

「そぅですねぇ、まぁ〜、猪々子ちゃんとかゆうまさんの言うことももっともなのですが〜」

「この場合 逃げてもらうしかなかったんですよねー」

「? ……何故ですか?既にこちらの勝利は決まっていたようなものでしたが……」

「そう思うのも最もだよ 凪。でも、孫呉は今まで戦った軍とはちょっと違うんだ」

「氣に詳しい貴女なら、序盤の相手の状態を見て分かるでしょうけれど、孫呉は仲間同士との共感に優れているわ。特に孫策を中心として、ね。その孫策が、『たとえ既に負けていても死ぬまで戦う』という姿勢を見せたらどうなるかしら?」

「……雑兵も、それに倣い……ますね」

「兵どころか本陣の更に後に控える非戦闘用員まで相手にしなくちゃならなかったかもしれないわ。そうなったら、こちらの被害も無駄に大きくなるし、軍を皆殺しにされた呉の民……いえ、噂を聞いた蜀の民も我が魏の本国の民にも最悪の影響を出すわ。そうなれば大陸平定はもはや絶望的よ」

「そんで、実際に孫策が死んだら"死ぬまで闘う"ことの最たる証明になるしな。やから孫策を殺すんはマズかった。他の将にしてもや。孫策に親しい将を殺ってもたら孫策が退いてくれんようになるかもしれんからな」

「……なら、一旦逃がして、あとから奇襲すれば良かったんじゃァねェの?今みたいに野放しにするんじゃなくてさァ。そうすりゃ敵も奮起しねェし孫策も消せるし万々歳だろ。呉の民にしてみりゃァ逃げ出した腰抜けが無様に死んだようにしか見えん」

「…………」

「…………」

「靑さん、なんなんその悪魔的発想。ガチビビるわぁ……」

「テメェに言われたかねェよ……」

「それと、残念だけどそれはできないのよ。地の利は向こうにある。あとから追ったんじゃ追い付かないわ。逃がす素振りを見せたらその時点で逃げ切られるのが確定するってこと」

「馬とばせば追い付けるかもしれねェが……さすがに騎馬隊だけじゃトドメ刺せねェか」

「そういうこと。さて、おおかた疑問も晴れたかしら。……桂花、秋蘭と霞の方はどう?」

「既に建業に到着しているとのこと。戦力は全てこちらに出ていましたし、孫策の去った今 呉の戦意は消失。制圧は容易でしょう」

「ならそれが終わり次第、地方に軍を放って呉全土の制圧作業に入りなさい」

「分かりました。同時に都から呼んだ文官に地勢の調査をさせますね」

「それでいいわ。その情報が集まり次第、統治計画を練りましょう。それが終わった兵は、そうね……都には戻さずに、一旦どこか蜀との国境付近に待機させましょう。牽制しておきたいわ」

「そこから正規兵以外は順次本国の待機兵と交代させていく、ということですね」

「本当ならそのまま攻めたいのだけれど……士気の低下が怖いからね」

「では、そのように。詳細は後の軍師会で」

「対蜀の侵攻計画もおねがいね」

「もちろんです」

「良い返事ね。……それじゃあ、簡易軍議は解散よ。各自作業に戻りなさい」

 

 

 かくして、長かった侵攻作戦は孫呉の敗走により決着した。魏による天下の障害となるのは、蜀一国のみ。

 ……だが、一筋縄にも行かないだろう。呂布居るし。




素直に殺すのが惜しいと言えない華琳さんのツンデレまじ常人には理解不能!

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