哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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NHK受信料払わないのが流行ってますが、作者は払ってるタイプの人間です。深夜アニメで好きなのやってない時はもうホントに鉄腕DASHとNHKの科学系番組しか見てないので。

異民族絶対殺すマン。


第十二章拠点フェイズ :【ハムソンさん伝】赤髪の侍女〈α〉

 ――ご苦労さま。貴女も災難でしたね。今日は皆様 一段と騒いでいらっしゃいましたから。

 しかもそんな時に限って、普段から宴会の給仕をしている者が体調不良と……。代わりに入れられた貴女には気の毒な話ですが……、ゆっくり休んでもらわないと。

 

 仮病?ふふ、それは無いでしょう。彼女は袁術様にご執心ですからね。よほど酷くない限り瑪会の世話を辞退するワケがないでしょう。

 ……まぁ、今の貴女も相当疲れているように見えますけど。

 ああ、貴女はずっと張遼様にお酌していましたから。あの人の絡み酒には本当にまいりますね。……ですが、話を振られる度に声が裏返るのはどうかと思いますよ?

 

 失礼な。私だって緊張することくらいあります。

 ですけど、張遼様だって、少し粗相があったところで『打ち首だ』なんて仰ったりしません。むしろあれほどまでビクビクしていては、その方が気分を害されるでしょう。

 ……粗相をしでかしてもいいと言っているわけではありませんよ?

 

 落ち着き過ぎなどではありません。先程も言いましたが、将軍の皆様は力の使いどころの分別ができる方々です。恐れる必要など微塵も……。

 

 ……あれは、その、相手の技量から、自分の力を受け止められるという判断をしているからで……。

 

 いえいえ、戦闘中でも喉が乾くことだってあるでしょうから、そして、それに対処するのが私達の仕事ですし。宴に在って乾き飢えるなど有ってはなりませんから。ですから、私が華雄様達の戦いに怯まなかったのは、そういう使命に集中していたからであって……。

 

 …………まさか私が『普通じゃない』なんて言われる日が来るとは………。

 

 いえ、別に何も言ってません。とにかく、慣れです。慣れ。

 

 ……過去になんて何もありませんよ。私は今と同じように使用人として働いてきました。貴女の言うような大それた冒険とは対極の生活です。乱れた時代ですから、人並みに苦労はしましたけどね。

 さ、貴女ももう寝なさい。明日も早いのですから。粘ったって面白い話はできませんよ。

 

 ………どこでそんな情報を?……貴女は変なところだけ鋭いですね…………。確かに、嘘を言いました。正しくは農家の出身で――

 

 ……どこまで知っているのですか?

 貴女のことは可愛い後輩だと思っていたのですが……違うようですね。

 貴女の言う通り、私はかつて将として戦場に立っていました。劉備方に付いていましたが……もはや天下を望むことなどありません。反逆の意志など微塵も……。

 今の私は魏に仕える使用人です。それ以上でも以下でもありませんし、そうあることに満足しています。

 

 っ!!……鎌を掛けたのですか………。

 

 ええ。全く。黄蓋が来ているこの時期に、蜀からの工作員が動くと思われるのは自然ですからね。半ば予想していた事態だけに、諜報員が消しに来たのかと。

 

 はぁ……貴女、本当に諜報の方が向いているのではないですか?

 とにかく、今 私が言ったことは内密にしてくださいね。私もこの仕事を気に入っているのです。騒ぎは起きてほしくないですから。

 

 そんな条件を呑むぐらいなら貴女を斬って私も死にます。……まったく、どこでそんな台詞を覚えて来たのか……。魏に暮らしていて、出版風紀にだけは不満が有りますね。

 何か他の条件なら出来る限り叶えますが……。まぁ、欲を言えば貴女がこのまま許してくれればうれしいのですけれど。

 

 まぁ、それならいいでしょう。重要な部分はもう喋ってしまったようなものですし。……ただ、さっきも言いましたけど、面白い活躍などは無いですからね。物足りないからといって文句を言わないでくださいよ?

 

 ……本当に分かっているのですか?

 

 もう、いいです。

 さて、どこから話しましょうか。あまり昔のことを話しても仕方ないですからねぇ。とりあえず、もとは何をしていて、何故今はこの暮らしをしているかを話せばいいですか。

 漢がまだ健在な時、私は太守として幽州を治めていました。……血統の問題で優遇はされなかったと言っても、一応名家の出でしたし、自分で言うのもなんですがよく努力する、秀才だったので、順当と言えるでしょう。……今思えば、順当すぎたのかもしれませんね。少しずつ少しずつ役割とか責任が大きくなって、大きくなったことを顧みることができませんでしたから。

 それはそうと、です。私は北方から侵攻してくる異民族とも戦いましたし、民の生活のために考え及ぶ範囲のことは実行しました。圧倒的な大勝も画期的な妙案もありませんでしたから、客将からは地味だと言われていましたが。……まぁ、悪い領主ではなかったと思います。

 幽州と言えば察しがつくと思いますが、私は早々に袁紹に敗れ――。

 

 ……貴女も悪趣味ですね。理由は簡単です。反董卓連合の後処理をしているときに圧倒的財力で叩き潰されたんです。

 幸い、馬術が得意でしたから、何とか逃げ切れましたが……。そして、私は残った部下を連れて劉備の下へ向かいました。

 劉備とは同じ私塾で学友であり、彼女の旗揚げの際にはいくらか兵を貸しましたから、その点を考慮すればある意味当然の判断ですね。いくら落ちぶれているとはいえ、見捨てることはないだろう、と。むしろ、好待遇すら、頭のどこかで期待していました。

 実際、劉備は私を受け入れましたし、すぐに将軍格に就けてくれました。

 ですが、"劉備"は受け入れても"劉備陣営"は私を必要としないのです。……他の将から反感を買ったとか、そういうことじゃありません。『不必要』だったんです。武は関羽、張飛、趙雲の前に霞み、智は諸葛亮に及ばない。幽州の秀才は幽州の秀才であって、大陸中の雄が入り乱れるこの時代では特筆するような存在ではなかったのです。

 通常、特に戦略面での頭脳というものは一概に甲乙をつけることはできません。様々な視点からの意見が新たな道を生み出しますからね。……ですが、私は『秀才』でした。『普通の秀才』でした。私塾では先生に気に入られ、君主としても無難に立ち回ってきました。……発想の全てが定石。全てが諸葛亮にとっては"考慮済み"でした。

 結果、戦では数合わせ、政では事務処理に、自然に落ち着きました。

 今では、まぁ、しかたないと思えるのですが……当時の私には受け入れ難いことでした。幽州では太守でしたし、それなりに人気がありましたから。武将談義の引き合いにも出されないというのは、ね。仲間内での軽口も、自覚していることだけに、かなり刺さりました。

 焦ったのは言うまでもありませんね。劉備が益州に入ってからは特に酷かったですよ。彼女が仲間を増やせば増やすほど、自分の居場所がなくなるのですから。

 武勲を求めるあまり無駄な失敗を重ね、奇を衒って的はずれな発言を……。今思うと恥ずかしい限りです。

 そして、貴女も知っての通り、蜀と魏は衝突しました。一度は蜀が魏を抑え込み、決着も時間の問題かと思われましたが……援軍によってその状況は正反対に覆されました。

 そして、私は、再出撃した鑑惺様と当たりました。

 『ああ、これは、ダメだ』……そう思いました。何に対してかは自分でも分かりません。剣を構えることもなく馬上から叩き落とされて、そこで私の将としての人生は終わりました。

 その時の心境は……これも、説明しにくいですね。幸福感……納得とか、開放感とか……、清々しい気分でした。あの時の鑑惺様の様子は度々語りぐさになっていますが……それが、私の自尊心……はっきり言えば将という立場への執着を打ち砕いたのです。住む世界が違うな。仕方ないな。と。

 その後捕虜となった私は、……地味だからかなんなのか、普通の捕虜と同様に扱われて、特に尋問などもなく、簡単な仕事を与えられました。私の場合は、女なので小間使いの更に下……厠の掃除とかにつけられましたね。そこで働きが認められて一般の使用人に組み込まれ、少し経って曹操様の目に止まったらしく、侍女として召し抱えられることとなりました。この仕事は私に合っているのでしょう。……よくお褒めの言葉も頂きます。力不足も、物足りなさも感じず、自然に、私という存在の一部となっている……と言っても間違いはないでしょう。

 分不相応な生活をしていては自分を苦しめるだけだ、と、まぁ、それだけの話です。

 ね、面白くなかったでしょう?

 

 悲しくはないですね……。君主となるために学んだ知識は少なからず生活にも仕事にも役立ちますし。例えば数月先の物価の予想がついたり。それに、将の皆様に対しても過度に緊張することがありませんから。

 

 ええ。では、おやすみなさい。すみませんね。何か盛り下げてしまって。今度は何か面白い話でも用意しておきますね。




ぱ い れ ん た ん の ぽ に て も ふ も ふ (コピペ略

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