そんで作者ったら嬉しくなっちゃいましてね。
全力疾走。
車道の真ん中を猛ダッシュしたんです。
ちょっと酔っ払ってたってのもありますし、深夜のテンションだったんでしょうねぇ…。体力の限界を突破しちゃったらしくて、盛大にずっこけた後しばらく立ち上がれなくなったんですよ。
いや、あの時は流石にやばいと思いましたね。
もう二度とあんなことはしないよ。
長々と書きましたが、何が言いたいかというと、
時間かけすぎて何を書こうとしてたのか忘れた。
第十二章拠点フェイズ : 聆(3X)の虐め〈α〉 ※新話ではない
「本日はお忙しい中『瑪会晩餐編〜南方の珍味に舌鼓を打ちつつかゆうまの真名適当に決めてまえすぺしゃる〜』にお集まりいただき、ありがとうございます」
「おい『適当に』ってなんだ」
「司会は私、張勲が。そして解説はこの方」
「どうも鑑惺です。よろしくどーぞ」
「……何だよこのノリ」
「一刀さん!紹介するまで喋らないでくださいよ!」
「全く、分かっておらんな」
「いや、普通分からないって」
「早速グダったなぁ」
「もう!いきますよ。……さらに今回は特別編ということで豪華なお客様にも来て頂いています!まずはこの方。『曹操が唯一認めた男』北郷一刀さんです〜!」
「え、あ、うん。どうも……?」
「夜の兵法では間違いなく三国最強やからな。しかたないな」
「解説役誰か代わった方が良くないか?」
「『日輪を支えて立つ変人』程昱さん、そして宝譿さん!」
「どもども〜」
「お手柔らかに頼むぜ」
「日輪がどうとか言う割に日輪陣は好きじゃないらしい」
「お手柔らかに頼むぜ。マジで」
「そして華なんとかさんとの付き合いも長いでしょう……『神速(笑)の驍将』張遼さん」
「タダで酒が飲めるって聞いて」
「でもそう甘ぉないんよなぁ」
「うん。紹介の時点で何となく分かってもうた」
「ほんで皆気づいとるやろけど、嬉しいことに今回は新しい仲間も加わわっとるで」
「はい。『孫呉の宿将』黄蓋さん!『黄蓋の秘蔵っ子』鳳雛さんです」
『孫呉』という言葉に、袁術はビクリと震えた。参加したことを少し後悔する。では何故居るのか。……元々は来たくなかったのだが、何やら鑑惺が黄蓋を言い負かしたらしい。どんな苦々しい顔をしているかと見に来たのだった。
「う、うむ。よろしく頼むぞ」
「はひっ!よろしくお願いしみゃっ、しますっ」
「二人共そんな緊張せんで良ぇんやで(菩薩微笑)」
「そ、そうか」
「善処します……」
ぎこちなく答える老将の顔を見ながら呑む『蜂蜜かくてる』は格別な気がした。
その黄蓋はというと……後悔するというか、困り果てるというか。
改めて周りを見る。
上座に袁術が。そして鑑惺、張勲、北郷、夏侯惇、程昱、張遼、華雄、文醜が並ぶ。
黄蓋と鳳雛の思うことはただ一つ。
どういうことなんだこれは……。
遡ることほんの四半時。そろそろ日も暮れようかという城の廊下を、二人は……少なくとも黄蓋は意気揚々と歩いていた。侍女を探すことを口実に、色々と歩き回ってやろうと思ったのだ。もちろん、普通に歩いていたのではすぐ誰かに出くわす。そこは黄蓋の気配察知によって回避していた。……のだが。
明鏡止水の鍛錬をしていた華雄を察知できず、今に至る。
「さて、ではこの会の概要ですが……殆ど名前のままです。永らく保留となっていた華なんとかさんの真名を決めます。夕食を食べつつ何か思いついたら出してください。そして、飽きてきたらそれまで出ていた候補の中から多数決で決めます」
「私に決定権は無いのか……?」
「それで決められんかったからこないなことになっとるんやん?」
「ぐ……そうだが、くれぐれもふざけて決めることのないように頼むぞ」
「それは妾の機嫌次第ぞよ?」
「なぜ私の名をお前の機嫌で決められなければならn」
「はい、思いついた」
「はい、聆さん」
華雄の言葉を遮り、鑑惺が名を発表する。
「聆って解説じゃなかった?」
「この会がより盛り上がるように運営自ら参加していく感じで。……じゃん」
いつのまに用意したのか、文字の書いてある札を取り出す。
「『優佳』とかどない?『優』はどちらかというと『優秀』とかそっちの意味で、『佳』はそのまんま」
「おや〜、聆ちゃんはもっとふざけてくると思ったのですが〜〜」
「悪くないのではないか?」
「待て元譲……華雄、優佳………ハッキリと悪いわけではないが、何かと含み笑いをされそうだろう?」
「アレもダメこれもダメじゃ決まんないぜ?」
「まだ一度しか言ってないんだがな?」
「そーゆーノリでええんやったら……」
「はい、霞さん!」
「良いと言った覚えはないが?」
華雄の文句を他所に、今度は張遼が発表する。
「霞か。愉快ながらも芯の意味は真っ直ぐな名前が期待されるな」
「『猪々』」
「は?……………は?」
「『猪々子』を参考にして、『子』って感じがせぇへんから取った」
「真っ直ぐ(思考停止)やな」
「そうですね」
「これは評価としてはどのくらいなんだ?聆」
「そうやな……。まず、響きが『イイ』で名前としては収まりが悪い。んで、由来が他人のパクリやしな……。評価は限り無く低いな。猪々子とかゆうまの間に何か特別な縁が有るとか、せめて『猪(イノ)』やったらもうちょいマシやったんちゃう?」
「おお……評価はマトモだ」
「完全にふざけていたらブチ切れてやれるのだがな……」
華雄は半ば諦めたように溜息をついた。直接的な罵倒や暴力なら考えるより先に手が出る。しかし、どうも巫山戯られることは苦手だった。何というか、燻った火が燃え上がるための風が無いような。
……そんな心境の反面、最終的には上手くまとめてくれそうだという期待が華雄をこの場に留まらせている。
「はーい」
「はい、風さん」
「風さんか……」
「『一刀五号』」
「却下で」
「却下やな」
「却下だ」
「おぉう、手厳しいですね〜」
「むしろ何故行けると思ったのか」
「ご利益有りそうじゃないですか〜」
「無ぇよ……」
ちなみに一刀一号から三号まではそれぞれ猫につけられた。四号は……一刀本人という噂も有る。
「じゃあ、はい」
「あ、ここでの一刀さんですか」
「とっさに良えこと言えるって評判やからな。捻りなく良え名前も期待できるけど、……欲を言えば知識を活かして小洒落た案を出してほしい」
「その辺は期待してもらって良いかもな。……『洎夫藍』」
「……これはどう判断していいのか」
「ああ、それは俺から説明するよ。……まず、俺が住んでたところでは『花言葉』といって、花の一つ一つに意味が有ったんだ」
「……となると、『さふらん』は花の名か」
「そ。香辛料とか薬とかにもなるからもしかしたら別の名前でこっちにもあるかもしれないけど……。紫色の綺麗な花だよ。それで、花言葉が『陽気』『喜び』『歓喜』って縁起が良いんだ」
「ほう……中々良いではないか」
他には『過度を慎め』『調子に乗らないで』など。
「聆さん、これはどう見ますか?」
「そーやな。正直、期待しとった水準を超えとる。………解説の革を被ったいちゃもん係としてはぶっちゃけクッソおもんない」
「ぶっちゃけ過ぎだ!」
「まぁ宴の席でくらいぶっちゃけよぉや。……黄蓋さんらもそんな大人しーにしとらんで」
鑑惺は手に持った杯をヒョイと掲げた。『もっと呑め』という合図だろう。
……だが、黄蓋にとっては、呑めと言われてはいそうですかと呑めるような状況ではない。意味が分からない。突然宴に招かれて、しかもその中心が先程自分をボロクソに扱き下ろした張本人で、その上『真名を決める』などという前代未聞な企画ときた。極めつけには、当の鑑惺に面会の時の敵意が欠片も感じられない。全くの意味不明。いっそのこと開き直ってワケを訊いてやろうかとも思ったが、それも墓穴。裏切る裏切らないの話題をこちらから出すことになる。
『鑑嵬媼は人の心を操り、如何なる傷を負っても蘇る悪鬼』……魏と西涼の同盟を阻むため、他ならぬ呉が流した噂である。が、今の黄蓋にはそれが真実のように感じられた。
「なんやったら私が注いだろか?」
マジ震えてきやがった・・・
「さっきまでとはえらい違いだな。華琳様にまで噛み付いたというのに」
と、ここで助け舟となったのは意外にも夏侯惇だった。どうやらこの事態に納得できていないのは新参者だけではないらしい。
それに対し、鑑惺は軽く笑いながら答える。
「もー言うてもしゃーないしなぁ。そもそも、裏切るとかなんとかに対してはあんまり何も思とらん。私が気にしとったんは今回の作戦が成功するか失敗するか、ほんでその被害についてや」
そこで一息つき、空になった杯を静かに置いた。
「それぞれがそれぞれに事情やら想いやらを持ってこの戦に臨んどる。その悲劇を悔みこそすれ、相手を怨むことなんか無いわ。やから、武術やら弁舌やらでやりあうことになってもそれを酒の席には持ち込まん」
「は、はは……。鑑嵬媼は人智を超えるとは聞いておったが……どうやら噂は本当らしい。予想していた方向とは逆のようだが」
鑑惺の表情を伺うも、その深褐色の瞳には黄蓋自身の姿が映るのみだ。
「そらどーも。でもまぁ私も全くの聖人ってワケとちゃうからな。他人の苦しむ様を喜ぶ奴はアレするけど。……やから美羽様、桂花さんに虫やら蛇やらけしかけるんは程々にしぃよ?」
「ひゅいっ!?」
「なんだそういうオチかよ〜!丁度肉ほおばったときに急にマジ話始めるからビビっちまったじゃんか」
「ずっと口の中に入ったままだったもんな。噛むのは止めなくてもよかったのに」
「えー、でもなんかさー。格好いいこと言ってるときに一人だけモグモグしてたら格好悪いじゃん」
「それはそれでかわいいと思いますよ」
「その『かわいい』には少なからず見下しが含まれてるよな?」
「そうですね」
「よし、表へ出ろ!」
「聆さんの話聞いてなかったんですか?」
「アタイは争いを持ち込んだりしてないぜ?たった今ここで発生したんだ」
「あー、これは一本取られましたね」
「ついでに骨も一本折ってけ」
「お断りします(´ε` )」
「絶許」
息つく暇もなく再び冗談の応酬を始めた魏の面々に、新参の二人はこの日何度目ともつかない溜息をついた。自分たちの心を波立たせることも、こいつらにはほんの些細なことらしい。
実のところ、曹操のおかげでそれっぽいセリフに慣れているというだけなのだが。
「まぁ、そーゆーことやから。切りかかりでもしてこん限りはお前らのことは大切な客将として扱わせてもらう。……部下と上司って形にはなるけど、明日からよろしく」
奇妙な宴は夜半まで続いた。袁術は途中で眠ってしまったが、他の者達は酒罌をいくつも空にした。鑑惺が口から火を吹く芸を披露し、張勲はひたすら袁術の魅力を語り、程昱が謎掛けを始め、それに対抗して北郷が異国の漫談を延々と垂れ流し、戦バカは乱闘を繰り広げ、黄蓋と鳳雛は何度も帰りたいと思った。
鑑惺の思惑通り、意味不明な展開により黄蓋の精神を摩耗させ、しかも話題を誘導することによってバカたちに『黄蓋は裏切る』と刷り込むという策……『常人には疾すぎる宴作戦』は成った。
一つ失敗したことと言えば、それに気を良くして華雄の真名を決めるのを忘れたのだが……本人も忘れていたので放っておいた。
数日後、そこには元気に走り回る作者の姿が!