哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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何か色々言われてますが、作者はマクドのハンバーガーが一番好きです。
ハンバーガー二つと水を注文してぼっち席に座ると作業がめっちゃ捗ります。

そしてまた説教パート。何か偉そうで主人公が尊大な奴になってしまいそうなので説教パートは二回続かないように気をつけていたのですが、前切ったところが悪かった……。


第十二章X節その七 〈β〉

 ギギと重苦しい音とともに玉座の間の扉が閉じられる。

 黄忠厳顔とかいうガチベテランメンバーに怯むことなく何とか蜀呉同盟に捩じ込むことができたが……我ながらよくもまあ思ってもないことをスラスラと言えたものだ。話に矛盾は無いように気をつけたが、そのせいで変に壮大な話になってしまった。周瑜と孔明なんかめっちゃ不気味がってる顔してたし。でも……元から不気味キャラで通ってたら逆に自然なんだろうか。

 

「まぁ、とにかく今は言われたとおりに兵を城に入れるか」

 

向こうがこっちをどう思ってるかに関わらず、粛々と状況に対処するだけだ。まずは向こうに指定された通りに入城するのが今の仕事だ。

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 前言撤回。やっぱり好感度とか超重要。

 

「………」

「………ッ!!」

 

 通路の曲がり角で馬超に思いっきり襲撃受けた。

馬超の突きを左の腕で受け止めたが……これ完全に貫通[はいっ]てるよね?

 まずいなー……予想外の状態で五虎将の一角とやり合うとか敗北以外あり得ない。しかも初撃で片手が死んだときたもんだ。骨の間を通り、且つ角度がラッキーだったから正しいテーピングを施せば武器を握るくらいできるだろうが、いかんせん今は包帯も軟膏も接着剤も余裕も無い。

 お付き……というか監視に付けられた蜀兵は馬超の殺気に震え上がってるし。

 

「……いきなりぶっ刺してくるとはなかなか笑かしてくれるなぁ。私は一応招き入れられたはずやが。殺せとかっていう命令は受けたんか?」

 

 痛みを圧し殺し、腕にググと力を込める。これでとりあえず筋肉の膨張によって刃を固定できる。……気休め程度だがな。

 

「……殺すなとも言われてないからな」

「そう。でも今しがた同盟を取り付けたとこや」

「それは呉蜀との間だろ?あたしたちは『漢』の西涼だ」

 

……なるほど。私は同盟国の同盟相手であって自分の同盟相手ではない、と。

 

「確かに儀礼的には許容範囲やけど、これがどれだけの混乱を起こす行為か……バカにも分かるように言えば、どれだけ自滅の危険が大きいか理解できるやろ?」

「……あたし達はどうせ遅かれ早かれ滅びるさ。違うのは仇を討てるかどうかだけだ」

 

え、何この黒い娘……私の知ってるまっすぐでてれやさんな翠ちゃんはどこですか?

 

「私が、西涼とも同盟を結んでいるなら?」

「結んだ覚えはない。結ぶ気もな」

「馬騰と結んだと言って、信じるか?」

「……またお前を殺す理由が増えた」

 

おぅふ。

 

「なんでそこまで殺すことに固執する」

「お前らのせいで仲間が死んだからだ!」

 

「戦の結果の責任は全部敵にある、ってェのか?」

 

槍を握る手に力が籠められ、私の腕がバッサリ縦に割れるのを覚悟した時、それを止めるように声が響いてきた。

 

「……!!」

「靑さんか……」

「お前ンとこの……確か三番だっけか?が血相変えて飛んできたもんでな。……内密に済ましてェだろうから、とりあえずアタシだけで来た」

「流石の判断やな」

「………何だよ……何でソイツと協力してんだよ!?あたし達の戦いは何だったんだよッ!!」

 

心の乱れ。その一瞬を突き、槍に全身で巻き付き、圧し折る。

 

「くっ!?」

 

 情けなく胴体から着地したのを無かったことにするように、できるだけゆったりと落ち着き払って立ち上がる。

 

「……悲しい事故としか言いようが無いな」

「何が……っ」

「元より、双方とも目指しとったんは同じこと。平穏や。それを華琳は大陸の平定っつー形で叶えようとして、お前らは以前通り周辺民族を撃退することによって機を待つことにした」

「で、魏の影響は当然西涼にも伸びてくる。そこにまた別の国の思惑が入ってきた。腹が立つが、ソイツも自分の国を守るためにやったことだった。それにダマされたアタシもバカだったしな」

「状況的に仕方ないことやったと弁護しとくけど……バカやったとしても、その時の西涼で最も有能やったんが馬騰という人間やったし、西涼全体としてもその意向に賛同したはずや」

「なら……なら、あたし達の自業自得って言いたいのかよ」

「お前も含めた私らの自業自得、や」

「………」

「全員に責任が有るし、全員に責任が無い。恨まれる筋合いは無いが恨まれない筋合いも無い。お前が私を殺そうとするのは正常な精神の働きや。でも、それに詫びて甘んじて受ければ私は私の部下と仲間と民を裏切ることになる。……そうやな、まぁ、ただ恨みを晴らすためやのぉて、これから格別の友好を結んでくれるっちゅーんやったら喜んでこの首差し出すわ」

 

 鞘から細剣を抜き、馬超に握らせる。……相手の武器を破壊してすぐ、ちぐはぐな行動にはなるが。

 

「……何でそんなに落ち着いてるんだよ………私がちょっと気を起こせば死ぬかもしれないんだぞ?それにお前、誰も恨んでないのか?それじゃあ倒せないだろ!敵が作れない……相手を斬る度に自分が擦り減るだろ!?」

「こんくらい皆やっとる。桃香も、華琳も」

 

 そして厳密には二人よりもっと難易度が低い。自分の命もそんなに大切に思ってないからな。死にそうになって『ここで死んだら損だ』とは思っても『死にたくない』とは思わない。

 

「……この沈黙は、敵対の意思無しと見て良えか?」

「………」

「んだら久々に靑さんと話でもしぃ。馬岱は?」

「……蜀の連中が来ないように動いてもらってる」

「そ。なら遣いでも出せば良えか。靑さん、んだら」

「つっても、アタシとも気まずいことにはなりそうだがなァ……はは」

 

さっさと背を向けてその場を離れる。

 もうそろそろ失血でヘタって格好つかなくなりそうだ。

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 「おっすー無事同盟組んできた」

 

失血独特の何とも言えない浮遊感を堪えて歩き、ちょっと景色が回り始めた頃に城外の広場に着いた。

 

「あぁ、お疲れ様でしt……ってとんでもない顔色してますよ!?」

「ちょっと蚊に刺された」

 

 手拭いに限界まで濃度を上げた酒を染み込ませ、傷口と刃を丁寧に拭いてから引き抜く。

 ……うわ、一瞬意識トんだ。

 

「いや、腕に思いっきり刃物刺さってるんですけどぉ……」

「何も言うな張勲。果たし合いから始まる縁も有る」

「できれば御免蒙りたい縁ですねぇ」

「そら果たし合い無しに仲良ぉなれたらそれに超したことァ無いわなぁ」

 

 包帯を巻こうとするも意外と難儀する。少しイラっとしたところで三課長が代わりにやってくれた。

 

「この要項に沿って入城してな。私はちょい休むわ」

「休むと言っても、鑑惺、――」

「適当に担ぎ入れてくれれば良えから」

 

 そこまで言ったところで眠気が抑えられなくなった。今日はもう色々頑張ったし、早めに休んでも良いよな。




でも何か出血するのってちょっと気持ちいいですよね。

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