哂・恋姫✝凡夫   作:なんなんな

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赤壁超えたらガチで何も考えることがなくなるので、そこで何かやろうかと思います。


第十二章一節その三

 「……あっついわねぇ………」

 

呉の国境を越えて数日経った頃。馬に揺られながら、桂花はぼやいた。

 

「やったらその頭巾ぬいだら?」

 

桂花の頭の上にのっかっている、猫耳っぽいフードに目をやる。……アレだな。マジもんの猫耳が居るのに猫耳フードって微妙なキャラ付けだと思うのだ。

 

「これは私の正装よ。拠点ならともかく、行軍中は外せないわ。それに、そんなこと言うなら、聆、貴女も鎧脱いだら?」

「私は暑いとか言うとらんもん」

「見てるだけで暑苦しいのよ!」

「でも色々と改良して風通し良え素材にしとるし」

 

元々、風通しとかどうしようもない硬いパーツが多く、布地の部分も重なりが多いからへのつっぱりにもならなかったが。まぁ、気分の問題だ。

 

「そう言えば、兜の角が一本になってますねぇ」

 

風が私の頭を指差す。私の二つ名、或いは悪評の由縁ともなっている鬼の髑髏型兜だ。

 

「こっちのんが使い易いからな」

「実用目的だったの!?」

「近接格闘での頭突きはかなり重要やで?……いや、元々は飾りやったけどな。でもせっかくやから使えるようにってことで。前の位置……斜めに突き出とる形やったら首の上下運動に捻りが加えられるから威力自体は出るんやけど、使い勝手が悪いからな。その点、額に一本やったら攻撃面でも防御面でも使い易いんや」

「それで防御もする気なのね……」

「せっかくやしな」

「はぁ……改良しているのは分かりましたけど、無理はしないでくださいね?この暑さで体調不良に陥る兵も出てきていますので」

「分かっとる。無理はせん」

 

と言っても、私自身はそんなに心配していない。私とて乙女武将の一人。なぜか氣がうまく使えなくて派手な戦いは出来ないし、基礎体力も皆に比べて低いが……一般兵よりは格段に強い。それに汗をかいても嫌な臭いがしないし、血豆が潰れて出来てを繰り返しても手がガサガサになったりしないし、歯並び良いし……ホント恋姫はステキ世界だ。

 

「まぁ、聆は色々と人間辞めてっからな。アタシは心配してねェよ」

「靑さんはお腹に気ぃつけぇよ?」

「ぐっ……」

「ああ。暑いと食べ物が腐りやすいものね」

「そーやな。な?靑さん?」

「泣くぞ?」

 

それに、一般兵についても、実は心配していない。原作と同じく――

 

「食中毒という問題もありましたね〜。ますます、お薬を多めに持ってきててよかったのですよ〜」

「ええ。病による戦力減退を抑えられるだけではなく、兵に安心感が与えられますからね」

 

薬を大量に持ってきている。

そして、市場から大量に薬が減ったことに関連して、商人が薬の値段の釣り上げを行おうとしたりして一悶着あった。それを、私の!この私の!暗躍で解決したりもしたが、わざわざ言うと嫌な奴と思われるので何も言わない。

 

「七乃殿さまさまですね」

「って言ってもアイツ、個人的に美羽のための薬買ってただけじゃない。本来ならアイツがもっと早く会議で言っとくべきだったのよ」

「しかしそのおかげで思い出せたんですし……。あの一件が無いと薬が不足するなんて事態になっていたかもしれません」

「そうですねー。でも、稟ちゃんも南方にいた経験あるんですから、稟ちゃんが言ってもよかったのですよ〜」

「それを言うなら風もでしょう」

「………ぐぅ」

「寝るなっ!」

「おおぅ」

「なにやってんだか……。そうじゃなくて、言いたいのは態度よ、態度。『南方侵略では薬は必須……当たり前すぎて言うの忘れちゃってましたー』って……。しかも半笑いで」

「あと一言煽ってきたら逆にネタと思えるんだがなァ。アイツ、その辺の加減分かってやってるよな」

「……それで当の七乃は?」

「美羽様を扇ぐ仕事に全力を尽くしとる」

「はぁ?美羽って前までこっちに住んでたんでしょ?」

「その時からずっとそんな感じだったんじゃねェの?」

「容易に想像できま――」

「伝令ー!」

「……、どうしました?」

「呉に放っていた間諜がつい先ほど戻りました!それを受けて曹操様が軍師の皆様に、集合するように、と」

「分かったわ。……七乃もさすがに来るでしょうね」

「断言できないのが辛いところですが……」

「扇ぐのをやめることを美羽ちゃんが了承するかどうかですよね〜」

「まぁ、そんときは美羽様連れて来るんちゃう?……んだら、みんな軍議頑張って来ぃよ〜」

「は?貴女も来るn……あぁ、軍師じゃなかったわね」

「その間に体調不良の兵の情報纏めとくわ」

「任せたわ。皆、行くわよ」

 

  ―――――――――――――――――――――――――――

 

 「小蓮様!兵の準備、完了しました!」

「よーっし!なら、このシャオ様が曹操なんかやっつけちゃうんだからー!」

 

周泰からの報告を受け、孫尚香は城壁から魏軍を見下ろしつつ、自信満々に宣言する。そして、それをなだめるように口を開く者が二人ほど。甘寧と陸遜だ。

 

「あのー、小蓮様、冥琳様の作戦は……」

「それに、この兵力では曹操の討伐は難しいかと」

「もぅ。ちゃーんと分かってるってば!けど、やっつけるって言わないと、こう、勢いが出ないでしょ!勢いが!分かるわよね、思春も」

 

『勢い』を表しているのか、孫尚香は両手をバッサバッサとオーバーな身振りで話す。

 

「は、はぁ………?」

 

ここで適当に流せずに考え込んでしまうのが甘寧の長所であり短所でもある。

 

「んもぅ……明命は?」

「分かります!一撃必殺ですねっ!」

「そう!一撃必殺!当たって砕けろよ!」

 

どういうことなのか実は当人たちもよく分かっていない。

 

「ある程度戦闘を行った後、様子を見て撤退するという手筈では……?」

「それに、当たるにしても砕けちゃダメですよぅ」

「だから言葉の綾だってば!」

「ですがぁ……曹操は舌戦に定評がありますよ?言葉に気をつけないと揚げ足を取られて言い包められちゃいますぅ」

「と、とにかく、祭が頼りにならないんだから、シャオたちが頑張るのよ!」

「……心得ております」

「ここで曹操たちに江東の兵の恐ろしさ、たっぷり教えてあげちゃいましょ!……明命!」

「はいっ!全軍、出撃っ!」

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

 「展開してきましたねぇー」

「展開してきたなぁ……」

 

呉に入って二,三個目の城。敵方は城から出て軍勢を展開することを選んだようだ。現在は華琳と孫尚香が舌戦を行っている。

 

「相手もあの兵力では籠城しても無駄に被害が出るだけだと分かっているでしょうし、状況に応じて素早く撤退できるように、と考えたのでしょう」

「俺としては、兵力を集中させてどこかで総攻撃を仕掛けてくると思ってたんだけど……相手の中途半端な戦力は逆に気になるなぁ」

「急に現れないでよ!妊娠させる気!?」

「最初から居たし、その思考はおかしい!」

「うるさいわよ!そんなこと言って一体どれだけの女をてごめにしてきたのよ!」

「話の腰を折るなよなァ」

「まぁこういうのも良えんちゃう?」

 

桂花と一刀のお約束ネタは置いておいて。

 一刀の言う通り、その点は気になるところだ。ここまで通ってきた城が尽く空だったため、魏の間では『どこかで総攻撃が来る』というのが定説だったからだ。

 

「勘繰ったら理由付けなんかいっくらでもできてまうからなぁ」

「ワザと城を取らせて罠を仕掛けるとか……俺達が城に入っている間に別働隊を動かすか、時間稼ぎがしたいとか、かなぁ?」

「その辺はあの軍団を囮とする場合ですね」

「こっちの実力を計る意味合いは確実に有るでしょうね〜」

「敵将は孫尚香、周泰、甘寧。軍師に陸遜。将はどの隊も全員機動力に優れていますし、陸遜は高い記憶力を誇りますからー。それに、周泰さん個人としても諜報活動などに精通していますしねぇ。私も、ちょっと手こずらされた思い出がありますよー」

「なるほど、それは確かに厄介ね……」

「他には拠点取らせて、逆にこっちの動きを縛るとかな」

「申し訳程度の戦闘で、その思考に至らなくするわけね」

「……ほんで実は空城の計とかありそうやわ」

「ふむ……」

 

いやー、こんだけ軍師と軍師見習いと智将が居ると発想量が違うな。結局は何かしらの行動を選択することになるから背反する策……例えば、『囮』と、『囮に見せかけて相手に不安を与え、行動を鈍らせる』という策のどちらかに嵌まる可能性が有るとは言え、完全に意表を突かれるなんてことは無いんじゃないか?

 なんて、少し楽観的に見ている私の横で、風は不満気な顔をする。

 

「……んー、これは、先手を取られた形になるのですよー…………」

「相手の策にビクビクしながら戦うことになるからなァ。作戦面では確かに押され気味だな」

「言うてこっちは元から攻め続ける意外方策無いやん。戦術面やったらどないでも捻れるけどな。情報収集と、城に入るときとに気ぃつけたら良えんちゃうのん」

「確かに、そうですよね」

「ふ、ふん!そんなこと元から分かってたわよ!華琳様の舌戦の間に、と思って議論していたまでのことよ」

「桂花さんェ……さすがにその発言は小物臭過ぎるわぁ……」

「なっ、え、うるさいわね!」

「まぁまぁ。舌戦もちょうど良く終わったみたいだしさ。それぞれ戦闘配備に――」

「うるさい!」

「ゴッフ!」

 

おお、綺麗な右ボディ。

 

「いってぇッッ!痛え……けどもう慣れた」

 

そしてそれでもすぐに立ち直る一刀もなかなかのものだ。

 

 

「一刀は居るっ!?」

 

「おっと大将がお呼びだなァ」

「あぁ。じゃあ俺はこれで。――おーう、どうしたんだー?――痛ぁっ!?」

 

あ、何かローキックされてる。

 

 

「………んだら、私も自分の隊のとこに戻っとくわ」

「今回の戦闘では聆さんの出番は無いと思いますが、一応、気をつけてくださいね」

「重々承知しとりますがな。私ほど慎重な将もなかなか居らんやろ」

 

何せ筋力も耐久性も全然違う奴らが相手だ。ジャブで死にかねん。

今回も、相手は少数と言えど周泰なんかも居る。いつの間にか陣に入り込まれていて背後からズバリ!なんてことも有るかもしれない。慢心と決めつけは死を招く。華琳さんが恋姫シリーズを通して教えてくれたことだ。

 

「総員、攻撃準備!江東の連中に実力の差を思い知らせてやりなさい!」

 

そして孫呉攻略戦、その一度目の戦闘が始まった。




テキスト確認しててびっくりしたこと。
『小蓮の方が華琳より背が高くて胸も大きい』

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