一回全文書き直したのでこんなに日が開いてしまいました。
アイマスのせいじゃないです。
「では華琳様、お背中流させていただきますね」
「レイ姉ー!たのんだー」
「おいっ、走ると危ないぞ」
華琳による、洗いっこの簡単な説明の後。楽しげな声が壁の向こうのそこかしこから聞こえてきた。
「(始まりましたね……)」
「(ああ……)」
「良かったんですか?華琳様の所に行かなくて」
「ええ……。この私の血で華琳様を汚すことなどあってはいけませんから……」
お、この声は人和×稟か。ちょっと珍しいけど、共通点も多い二人だな。……眼鏡とか。
「あ、聆さんそれやめた方が良いですよ」
「ん?何が?」
「石鹸って髪の毛を凄く傷めるらしいですから、あまり髪につけない方が……」
「えー!?レイ姉!ちょっと待ってくれ!止めてー!!」
あ、聆が石鹸で猪々子の髪洗っちゃってるのか。
「あー、大丈夫大丈夫。薄めた檸檬汁ぶっかけるから」
「え、どう言うことですか?」
「酸っぱいもんかけたらキシつかんねん」
そう言やそうだったな……。あれ?でもどうしてそれを……?
「そうなんですか!?……でも、どうしてそれを……?」
お、流琉ナイス!
「……この前、風呂に持ち込んどった蜜柑酒ひっくり返したときに気付いたんや」
「日常的に風呂で酒を?」
「はぁ……聆は相変わらずね」
ホント相変わらずだな……。
「ん……良いわよ、桂花………」
「……!!」
「…………!」
「(た、隊長、今のは……!?)」
うっとりとした華琳の声に、部下たちが顔を見合わせる。……狙いが的中した。
「(ふふふ……さあ、何だろうな?)」
「(も、もし、も、もしや……!!!)」
「ひゃわっ!?……ちょと姐さん、ウチそこ弱いねんから堪忍してぇや〜」
「えっへへ〜ゴメンゴメン。じゃあこっちにしとくわ」
「んあッ……アカン!そっちもアカンー!」
「(どこに、どこに触ったのでしょうか!!?)」
偶々俺と同席した幸運な部下たちは、揃って前屈みになる。
これこそが今回の作戦……『妄想の翼』作戦だ。
つまり、聞こえてくる声からエロい妄想をして楽しもう、というものである。『いや、覗けよ』と言う者も居るだろうけど、ちょっとよく考えれば分かること。今回は二十一人という大人数な上、季衣や流琉もメンバーに含まれる。本気でエロいことは起こらないのだ。……多分、みんな自重するだろう。だから、さっきの華琳にしても真桜にしても、多分、本当は、普通に体を洗うのが上手かったとか、脇腹を触られたとか、そんな程度のことだろう。
漫画や小説で偶に有る、『いやらしい声がするから駆けつけてみたら健全なことだった』というシチュエーションの逆利用。『健全な行為の声をいやらしい妄想の糧とする』……それが『妄想の翼』。
或いは、量子力学的発想で、『実際にいやらしいことが起こったかどうか観測しない』かぎり『実際にいやらしいことが起きる』可能性と、『実際にはいやらしいことが起きなかった』可能性を重なった状態で保存する(つまりパラレルワールドの発生)ことができ、あとは俺の思いこみ次第で自由に……あ、何言ってんのか分かんなくなってきた。
まぁ、つまり『この壁の向こうではエロいことが……!?』ってドキドキできるってことだ。
「ンぅっ……ァッ………あ、姉者……すこし、強すぎるぞ」
「お、おうっ。……このくらいか?」
「ああ……そうだ。それと、そこばかりじゃなくて、こっちも……」
「(夏侯淵様と!夏侯惇様が……!!)」
「(あ、間に挟まれたい………!!)」
「(ちょ、ちょっと厠に行って来ますってばよ!)」
「いーなー、天和ちゃんの、綺麗な桃色で〜」
「えー?沙和ちゃんのもステキじゃない?」
「(な、何が桃色なのでありますか!?)」
「(ほわぉぁぁぉぁあぁぁぁあ!!!ほ!ほ!!ほわぉぁぁぉぁあぁぁあぁあぁぁあ!!!!!!)」
「(うわっ!気絶しやがった)」
「文謙、と言ったか……貴様なかなか締まりの良い身体をしているな」
「私などまだまだです。そちらこそ……」
「(や、やっぱり楽進様は締りが良いんですか!!!)」
「(華雄とか言う人にも俄然興味が湧いてきましたよッッ!!!)」
「(オウフwwwいわゆる率直な百合百合キタコレですねwwwおっとっとwww拙者『キタコレ』などとつい北郷隊用語がwwwまあ拙者の場合百合好きとは言っても、いわゆる性的嗜好としての百合でなく発達した文明の象徴として見ているちょっと変わり者ですのでwww出生率と死亡率の影響がですねwwww ドプフォwwwつい高度な考察が出てしまいましたwwwいや失敬失敬wwwまあ武人と女の間で悩む少女としての楽進殿は純粋に可愛らしいなと賞賛できますがwww私みたいに一歩引いた見方をするとですねwww昨今の奇をてらう風潮に反し徹底的な武人脳を引き継いだ人物としてのですねwww華雄殿の特異性はですねwwwwフォカヌポウwww拙者これではまるで趙雲みたいwww拙者は昇り龍ではござらんのでwwwコポォwwwwでは、このネタを書物に著さねばなりませぬのでこれにてwww)」
「はンぅぅっ」
「ちょ、変な声出すなや」
「でも、レイ姉、上手すぎてぇっ……!」
「ちょっと!はやくちぃに代わりなさいよっ!」
「聆よ、妾も!妾も頼むのじゃ!」
「そんな!?お嬢様、私じゃダメなんですか?……もう、こうなったら聆さん!私にもしてください!」
「何でそうなるんや」
「(普段元気っ子で男の子っぽい文醜様の艶声キタ━━!)」
「(聆………やはり天才か……)」
「(『私じゃダメなんですか?』……( ゚∀゚)・∵. グハッ!!)」
洗いっこが終わるころには、男湯に居るのは俺一人になっていた。
犬のおやつって美味しいですよね。