新訳 そして伝説へ・・・   作:久慈川 京

261 / 277
~幕間~【リムルダールの町】

 

 

 

 リムルダールという町は、いつも通りの賑わいを見せていた。

 遥か南方に見えた光の筋に気付く事は無く、西の外れに架かった虹の橋に気付く事も無い。それは、この絶望に彩られた世界の中で、今の自分の小さな世界を護る事だけに必死であるという理由からであろう。外へ視野を広げる事が出来ない人々を誰も責める事など出来はしない。本来の『人』という種族は、弱く脆いのだ。

 宿屋に辿り着いた一行は部屋を取り、その内の個室のベッドへオルテガを寝かせる。薬師などの手配が必要ではない事から、一度サラが回復呪文を掛けた後、湯浴みや食事を済ませて行った。

 呼吸もしっかりとしており、心臓の鼓動も正確に打たれている為、時間と共に意識は戻ると考えたリーシャは、サラやメルエを先に眠らせ、暫くオルテガの部屋で様子を見ることにする。

 カミュに至っては、宿屋に着いてから一度もこの部屋に足を踏み入れる事はなく、自室に入ったまま出てくる様子もない。仕方のない事とはいえ、この哀しい親子の距離感がリーシャにはもどかしかった。

 

「ん?」

 

 意識を戻す様子のないオルテガを、少し離れた場所に置いてある椅子に腰を掛けながら見ていたリーシャは、近くの部屋の扉が開いた音で首を動かす。この部屋の左隣はサラとメルエを含めた女性三人部屋であり、右隣の部屋は未だに意識を戻さないベッドの主の息子が入っていた。

 宿屋の二階部分にある三部屋を借りており、最も階段に近い部屋がカミュの部屋である。そのまま部屋の扉が閉まる音がして、階段を下りて行く音が静かな宿屋に響いて行った。

 一つ息を吐き出したリーシャは腰を上げ、一度ベッドで眠るオルテガへ視線を向けた後で部屋を出る。闇が支配するリムルダールは、何時が昼で夜なのか解らないが、この時間帯に人の気配がほとんどない事を考えると、この町の住民にとって今が夜なのだろう。静寂が支配する宿屋の階段を、リーシャはゆっくりと下りて行った。

 

「アレフガルドの空を見上げても、お前の好きな月は出ていないぞ?」

 

「……またアンタか」

 

 宿屋を出て少し歩いた所に、小さな池のような物がある。湖の真ん中に浮かぶリムルダールという町は、天然の要塞と言っても過言ではないが、この町には更に町の周囲を囲むように水堀が巡らされていた。その水堀は湖から水を引いており、そこから農業の為の水路を引いている。そして、それを貯水する為の池が各所に造られていた。

 その池の畔に彼は立っていた。上の世界で良くしていたように、真っ黒な空を見上げている。その姿を何度見て来た事だろう。彼のこの行動にリーシャが初めて気付いたのは、確かアッサラームでの夜だったかもしれない。メルエの母親の事でリーシャと衝突した後、彼は外で月を見上げていた。

 彼が初めて人を殺めた夜、バハラタの町で月を見上げる姿を見たリーシャは、彼の太陽になろうと決意する。それ程に儚げで虚ろな存在であった青年も、今では生まれ育った世界だけではなく、異世界であるアレフガルドさえも救う希望となった。

 しかし、今、彼女の目の前に居る彼は、あの時を髣髴とさせるような虚ろさを持っている。近くまで寄ってから声を掛けなければ、彼女の存在にさえ気付かなかった事が、今の彼の心を表していた。

 

「相変わらず酷い奴だな」

 

 あの時と変わらぬ彼の物言いに、リーシャは苦笑を浮かべる。あの時と変わったのは自分の気持ちだったのだと改めて気付いた彼女は、真っ黒な空を見上げる彼の傍に立ち、その横顔を眺めた。

 今にも消え入りそうなその横顔は、ここまで続けて来た六年以上の旅路の中でも初めて見た物かもしれない。どれだけの苦難にぶつかろうとも、どれだけの絶望を味わおうとも、彼がこのような表情をした事はなかった。

 

「少し話をしないか?」

 

「……俺にはない」

 

 自分の申し出を一蹴するカミュに苦笑を浮かべたリーシャであったが、その答えを無視するような形で、池の畔にある岩へと腰掛ける。無表情でそれを見ていたカミュではあったが、諦めたように溜息を吐き出し、彼女の隣にある岩へと腰を降ろした。

 闇の中にも町の明かりは灯り、お互いの顔が全く見えないという事はない。だが、リーシャもカミュも互いの顔を見る事なく、目の前の池へ視線を向けていた。暫しの静寂が流れ、沈黙を続けるリーシャの方へカミュが顔を向けた時、ようやく彼女は口を開く。

 

「何から話せば良いか解らないが、今日のカミュは偉かったぞ」

 

「……メルエと一緒にするな」

 

 何を語り出すかと思えば、メルエのような幼子を相手にするような物言いに、不愉快そうにカミュは眉を顰めた。

 人によっては上からの物言いに聞こえるかもしれないが、彼女にとってそのようなつもりは全くないのだろう。母のように、姉のように、そして彼を想う一人の女性のように、彼女はその言葉を口にしている。

 彼が歩んで来た道が誰も経験した事のない過酷な道である事も知っているし、彼の苦悩がリーシャやサラには想像も出来ないものである事も知っていた。世に轟く英雄オルテガでさえも、勇者カミュが歩んで来た茨の道を歩んだ事はないだろう。

 その上で、彼女は彼を心から褒め称え、敬意を口にしたのだ。

 

「ふふふ。今日に限って言えば、メルエよりも偉かった。心から、お前こそがアリアハンの勇者であり、世界の勇者であると思う」

 

「ちっ」

 

 カミュは大きな舌打ちを鳴らす。そして、思うのだ。この単細胞だった女性戦士が、カミュの皮肉や悪態に怒りを見せなくなったのは、一体いつからだろうと。

 アリアハン大陸では、彼が発する一言一句に反応し、激昂していた。その度に衝突し、それを適当に流すのはカミュの役割であった筈。それが何時の間にか、彼女の発する言葉に苛立ち、反応する彼の言葉に、彼女は笑みを溢すようになっていた。

 この女性戦士が一行の要であると気付いたのは、ピラミッドを越えた辺りからだろうか。バハラタの町を抜け、カンダタ一味との二回目の対峙の頃には強く思うようになり、サラが賢者となった時には確信へと変わった。

 常に一行全員へ目を配り、その心を慮り、そして時には慰め、時には叱咤し、一行をここまで歩ませたのは彼女であろうとカミュは考えている。それを彼女に言えば否定するだろうが、カミュのその想いを覆す事は誰にも出来ないに違いない。

 

「私は、お前をオルテガ様の息子と認めたくはなかった。だが、いつしか私はそれを認め、今では英雄オルテガの息子ではなく、勇者カミュとして信じている。お前は、お前であり、誰の代わりでもなかった」

 

 池を眺めたまま呟かれた一言は、彼女がずっと胸に納めて来た物。彼女の憧れであった英雄の息子と旅するという事に胸を躍らせていたあの時、目の前に現れたカミュを見て絶望し、失望に変わる。失望は怒りとなり、その対象を憧れの血縁とは認める事が出来なかった。

 いつかその本性を暴いてやると意気込んで旅に出る。その六年以上の旅の中で、太陽のような英雄とは異なりながらも、誰の目も届かない場所を照らす月のような優しさを持つ青年を認め、信じるようになっていった。

 彼は、アリアハンの英雄であるオルテガの代わりに魔王討伐に旅立った訳ではない。彼こそが、世界の勇者として魔王バラモスと対峙し、打ち果たす人間なのだと理解した。英雄オルテガの息子として彼を見るのではなく、いつしか勇者カミュの父親が、あのオルテガだっただけというような見方へと変わって行く。

 それは、彼女の見方が変わったという物ではなく、六年以上もの間で彼が起こして来た行動がそう見させたのだ。今では、リーシャはその彼の行動全てを誇りに思っている。浮かんで来る笑みが近くの灯篭の炎に揺らめいた。

 

 

 

 

 何かに導かれるように目を覚ました男は、自分の瞳が光を映している事に驚いた。最初は何が何やら理解出来なかったが、徐々に眩い光が薄れ、瞳に映る物が建物の天井らしき物である事に気付く。

 定まらない思考の中で、何故自分がここに居るのか、ここは何処なのかという疑問が湧いて来るよりも先に、一気に押し寄せて来る過去の記憶に彼は眉を顰めた。

 アリアハンという生国を出て、何度も魔物達と戦い、魔王を目指す。その後、様々な出来事を経て辿り着いたアレフガルドという別世界を恐怖に陥れる大魔王ゾーマを討つ為に向かった城の中で、絶望を見た。

 巨大な五つの首を持つ竜種と戦った記憶が甦った時、男は弾かれたように身体を起こす。自分に架かっている毛布を剥ぎ、左足を見ると、記憶の中で食い千切られた筈のそれが、そこにはしっかりと存在していた。そして、勢い良く毛布を剥ぎ取った右腕もまた、踏み潰された物である事に気付き、呆然とする。

 

「私は、生きているのか?」

 

 一瞬、ここが死後の世界なのかと思いはしたが、周囲を見渡すと、そこが宿屋の一室のような平凡な部屋である事が解る。部屋に漂う特有の匂いも、長い旅の中で嗅ぎ慣れた物であり、自分に掛かった安物の毛布も、長い旅路の中で何度も目にして来た物であった。

 自分の物ではないように動かし難い身体を起こした男は、呆然と部屋を見つめる。だが、時間は残酷にも男に猶予を与える事なく、彼の脳内へ一気に記憶を送り込んだ。

 年若い妻と生まれたばかりの息子を置いて、アリアハンという生国を出た彼は、長い長い旅路を歩む。何度も死を身近に感じ、何度も絶望を味わった。バラモス城へ到達し、ようやく魔王を倒せるところまで来て、彼は記憶を失う程の衝撃を受ける。そして、アレフガルドへ降り立ち、自分の名しか思い出せない中で、諸悪の根源である大魔王ゾーマの討伐へ向かった。

 様々な困難を越えながらも、一人旅という難しさを実感する。全ての魔物を退ける事など出来はしない。時には身を隠し、時には魔物に背を向けて歩んで来た。彼には何の加護もなく、情報を得る術もない。アレフガルドの王都の南西にある『魔の島』と呼ばれる孤島に大魔王ゾーマの居城があるという情報だけを頼りに、そこへ真っ直ぐに進むしかなかったのだ。

 しかし、その場所で待っていたのは、明るい未来への希望ではなく、大きな絶望だけであった。死ぬ思いをして渡った渦巻く海峡を経て辿り着いたゾーマ城の内部は、彼が想像していたよりも遥かに強力な魔物達が蔓延る地獄。進む度に傷つく身体を癒しながらも奥へと進み、大きく長い橋を渡った先で、本当の絶望に遭遇する。

 

「私は、あの竜に全てを奪われた筈」

 

 彼を待ち構えていたのは五つの首を持つ巨竜。これまでの長い旅の中で遭遇した事もない絶望の象徴であった。

 上の世界でもあれ程の魔物に遭遇した事はない。強力な竜種の鱗は、彼の持っていた大剣の刃さえも通さず、傷一つ付ける事は出来なかった。吐き出す炎は全てを燃やし尽くす程に強力で、鋭い牙はどれ程に鍛えた筋肉だろうが貫くだろう。狂ったような海峡を渡る為に重量のある鎧などの装備品を捨て、剣と盾だけを持って挑んだ自分を呪いたくなる程の絶望だったのだ。

 自分の力量には自信があった。一対一という状況であれば、大抵の魔物に遅れなど取らないと思ってさえいた。だが、彼の数十年の人生で培って来た自信は、脆くも崩れ去る。圧倒的な暴力の前に成す術もなく、そこまでの道で消費して来た魔法力は底を突き、左足と右腕を失った彼は、命さえも奪われる筈だったのだ。

 

「……ここは何処なんだ?」

 

 失われた筈の左足も右腕もあり、今も彼の脳が発する指令に忠実な動きを見せている。自分の記憶が可笑しいのか、それともこれが現実なのかが判断出来ず、どこか自分の身体ではないような感覚を覚えながらも彼は立ち上がった。

 彼の名はオルテガ。アレフガルドではない、『上の世界』と呼ばれる場所では知らぬ者がいない程の英雄である。生国アリアハンが誇る世界の英雄であり、全世界の平和を一身に背負う事になった男であった。

 二十台前半でアリアハンを出てから二十年以上旅を続け、記憶を失いながらも当初の目的を見失う事なく歩み続けて来た男でもある。

 

「もう起きても大丈夫なのですか?」

 

 覚束ない足取りで階段を下りて行くと、見た事のあるカウンターが見えて来た。そのカウンターには一人の男性が入っており、それがこの宿屋の主人である事は見て解る。そこで改めてオルテガは、ここが自分が通った町の宿屋である事を理解した。

 大魔王ゾーマの居城へ向かう為に最後に立ち寄った町。数日を過ごした事のあるその宿屋の一室に自分が居たのだという事を理解したオルテガは、宿屋の主人が向ける視線の意味さえも理解した。

 彼にとってはオルテガは知己の存在なのだろう。故にこそ、意識不明だったオルテガを心配していたに違いない。

 

「ここはリムルダールか……」

 

「え? あ、はい。お連れ様なら、少し外へ出られていますよ」

 

 呟きに対して律儀に答えを返した宿屋の主人の言葉に、オルテガは驚きを表す。リムルダールの町から大魔王の居城へ向かう時、彼に同道者など居なかった。アレフガルドという世界に降り立ってからの旅は常に一人であり、彼に金銭的な協力を申し出る者はいても、共に戦ってくれる者は誰一人いなかったのだ。

 故に、宿屋の主人が口にした『連れの者』という存在に見当が付かない。思い当たる者も存在せず、自分がどのようにしてリムルダールに戻って来たのかさえも解らない。混乱に近い状態に陥ったオルテガは、誘われるように宿屋の外へと足を踏み出して行った。

 

「今は夜なのか?……それとも、未だに闇が晴れていないのか?」

 

 宿屋を踏み出した先は、漆黒の闇。篝火のような炎があちこちにあり、ぼんやりとした明かりはあるが、それでも見通しが利かない闇の中である事は明白だった。

 それが夜の闇なのか、それとも大魔王ゾーマが生み出した闇のままなのかの判別が出来ない。自分の記憶が正しければ、この闇が夜の物ではないのだろうが、死んだ筈の自分が生きているという状況と、再びリムルダールへ戻って来ているという状況から、これが夢なのか現実なのかが解らなくなっていた。

 当てもなく町を歩いていたオルテガは、誰一人いない町の中で小さな声を耳にする。そちらの方角へ目を凝らすと、池の畔にある篝火の炎に照らされた二つの人影が見えた。宿屋の主人が言う『連れの者』となれば、オルテガの見える範囲には彼らしか存在しない。そして、話を聞いてみようと近付いて行った彼の耳に、衝撃的な言葉が入って来た。

 

「私は、お前をオルテガ様の息子と認めたくはなかった。だが、いつしか私はそれを認め、今では英雄オルテガの息子ではなく、勇者カミュとして信じている。お前は、お前であり、誰の代わりでもなかった」

 

 

 

 

 カミュとリーシャは近くに座りながらも、お互いの表情を確認する事は無かった。それぞれが池を見つめ、相手の表情を確認する事なく時間を過ごしている。それは長い時間を掛けて彼等が築いて来た絆の成せる時間なのかもしれない。

 今は身を護る鎧も身に着けてはおらず、攻撃を防ぐ盾もない。相手を攻撃する武器もなく、そこにあるのは、素のままの人間であった。

 

「お前が歩んで来た十六年という時間が、どれ程に苦痛な物であったのかという事を私は解らない。想像は出来るが、それでも理解したとは言えないだろう。英雄オルテガという名の重責を背負わされ、道を決められ、それ以外の行動が認められない。昔の私ならば、それを光栄に思えとでも言ったかもしれないな。いや、実際に言った事もあったか……」

 

 独白を続けるリーシャを遮る者はいない。隣に座るカミュも、最早何かに諦めたように、その言葉を聞き続けていた。彼女が何を意図しているのかを彼は理解していないだろう。それでも、こうなってしまった彼女の言葉を遮る事は出来ないという事を、彼は誰よりも知っていた。

 カミュという一人の少年が、どれ程の苦痛に苛まれて来たかを本当の意味で理解出来る者はいないだろう。生まれた時から道を決められ、それ以外の行動は許されない。誰もが幼い頃から彼の存在を知っており、力が弱い時分の彼を何らかの形で痛め付けていた。

 自らよりも弱い者、不幸な者を生み出す事によって、自身の心の安定を図る。それは『人』という種族が持つ弱さの一つであり、寄り集まらなければ成り立たない『人』という社会では避けて通れない問題であった。

 

「魔物の力が強まれば強まる程にお前への期待は膨れ上がり、お前の成長を待つ事が出来ない者達はその鬱憤をお前に向けた事もあっただろう。出会った頃のお前が、『人』という存在に絶望していた事も当然だと思う。それでも、カミュで在り続けてくれた事を私は誇りに思っている」

 

 リーシャとカミュが語り合った事はここまでの旅で何度もある。カミュだけでなく、サラも何度もあった。その会話の中で、彼女にとって最上位の賛美の言葉が『誇りに思う』という物である事はカミュも理解している。騎士として生きて来た彼女にとって、己の『誇り』という物は最も重要な物であったのだろう。

 アリアハンという国への誇りから、己の行動への誇りへ。そしていつしか、彼女の誇りは共に歩む三人の仲間達の存在となっていた。メルエという少女も、サラという苦難の女性も、そして彼女達をこの場所まで連れて来たカミュという青年も、彼女にとっては揺るがない誇りなのだ。

 

「今でもオルテガ様は憎いか?」

 

 何を考えるでもなくリーシャの言葉を聞いていたカミュは、突然振られた質問に顔をリーシャへと向けてしまう。だが、その先には視線を池へと向けたままの横顔があるだけであった。

 篝火の炎で照らされた彼女の横顔は本当に穏やかな物。そこに責めるような雰囲気はなく、ましてや悲しみの色なども見えない。まるで答えなど理解しているかのような空気を醸し出すその姿に、カミュは何故か無性に苛立ちを覚えた。

 

「当たり前だ」

 

 当然答えは一つ。『人』に対して興味さえも失った彼であるが、それでも彼に残された感情の一つが憎悪であった。

 最も身近にいる筈の者への憎悪。それは、自分の力では境遇を変える事が出来なかった彼が唯一縋る事の出来た感情なのかもしれない。『自分がこのような状況なのは……』という標的が、魔王討伐という無謀にも近い旅に出て、死んで行った者になってしまった事も、今では当然の結果であるとリーシャも思っていた。

 故に、カミュの答えに驚く事なく、むしろ納得するように頷きを返す。そんな彼女の姿を不審に思ったカミュは、訝しげにその横顔を見つめるのだった。

 

「……そうだろうな。だが、お前はあの時、剣を握り締めても、振るいはしなかった。それは何故だ?」

 

 カミュの方へ視線を移す事なく、問いかけは続く。そしてその問いかけはカミュにとって本当に予想外の物であった。

 死へと向かうだけとなったオルテガがリーシャへ何かを語り始めた時、カミュは確かに王者の剣を握り締めている。巨竜と戦っていた者がオルテガという存在である事が確定した瞬間、彼の胸に湧き上がって来た衝動を抑える事が出来なかった。

 それでも、それを振るう事をしていない。だが、それを見ていたのはメルエだけだった筈。メルエがそれを語る可能性は限りなく無に等しい以上、リーシャがそれを知る方法はないと思っていたのだ。

 しかし、この女性戦士はカミュの行動を認識していた。認識していて尚、あの時それを止めようとは動いていない。それは、カミュが剣を振るわないという事を確信していたのか、それとも振るったとしても止められる自信があったのかは解らないが、カミュが起こした行動を詳細に認識していた事だけは事実であろう。

 

「お前は、旅を続けて行く中で本当に変わって行った。サラのように職業が変化した訳ではない。メルエのように劇的な呪文を次々に覚えて行った訳でもない。だが、四人の中で一番変わったのはお前だぞ?」

 

「……それはアンタだ」

 

 先程の質問に答える事が出来ないカミュを置き去りにして、リーシャは言葉を繋げる。だが、続けられた発言は、流石のカミュも反論せずにはいられなかった。

 リーシャからすれば、最も変化したのはカミュなのだろうが、彼自身にはその認識はない。むしろ、彼から見れば変化が著しいのはリーシャなのだ。

 アリアハンを出た時は、頑なな騎士であった。宮廷で働いていた事に過剰な誇りを持ち、貴族である事を鼻に掛ける事はないが、カミュにとっては厄介な相手として認識されている。だが、旅を続けて行く中で、誰よりも頑なであると考えていた頭は、誰よりも柔軟性を持っており、印象などに縛られる事なく、その者の本質を知ろうと努力し、認める部分があれば、例え好意を持っていない相手であっても認めるという性格を知った。

 その本質こそが本来の彼女だったのかもしれないが、周囲から見れば、彼女の変化は劇的に映る事だろう。

 

「ふふふ。私は昔から何も変わらないぞ。昔からお前はそう言うが、私は今も昔も武器を振るう事しか出来ないからな」

 

「……そういう意味ではない」

 

 何を言っても穏やかな表情のままで口を開くリーシャに、カミュは溜息を吐き出す。

 この女性戦士に心を掻き乱され始めたのは何時からだっただろう。遠慮もなく他人の心に土足で入り込み、そこを掻き乱して行く。初めは心の底からそれが不快であったが、何時の間にか、それを当然の物として受け入れるようになっていた。

 アリアハン大陸を出た頃までは、衝突しようとも、口論になろうとも、いつでも優位に立っていたのはカミュである。それが何時の頃からか、立場が逆転する事が何度かあり、カミュが言葉に詰まってしまう場面さえも出て来るようになっていた。

 

「色々とお前が変わって行く過程はあったが、私が本当にそう実感し始めたのは、ジパングでヤマタノオロチを倒した後だったな」

 

 最早、リーシャにはカミュの反論を取り合うつもりはないらしい。自分勝手に話を進めて行く彼女に苛立ちながらも、カミュは軽い舌打ちを鳴らすだけで、再び黙り込んだ。

 思い出を語るように、少し空へと視線を移したリーシャの横顔を見ながら、カミュも少し昔の記憶を引き出して行く。

 アリアハンを出てから二年近くが経過する頃、サラの試練を越えて船を手に入れた彼等は、テドンという滅びの村を越えて、異教の国へと降り立った。そこは小さな島国でありながら、独特の文化を育んだ土地。精霊神ルビスを信仰する世界とは異なり、様々な物に神が宿るという八百万の神を信仰する国であった。

 産土神として崇められる竜種によって滅び掛けていたその国の新たな国主を救い、元凶となっていた竜種を討ち果たしたのが、カミュ達四人である。

 

「お前はあの時、先代国主であるヒミコ殿の心を語ったな。お前は気付いていないだろうが、あの頃からその胸に何かが生まれたのだろう」

 

「……何が言いたい」

 

 最早、慣れたとはいえ、それでも自分では解らない心の内を他人に見透かされるのは心地良いとは言えない。憮然とした表情を浮かべたカミュは、訳知り顔のリーシャを睨み付けた。

 肝心のリーシャは、未だにカミュへ顔を向ける事もなく、池を見つめ続ける。一つ息を吐き出した彼女は、意を決したようにカミュの方へと顔を向けた。

 その表情を見た瞬間、カミュは何故だか身動きが取れなくなる。蛇に睨まれた蛙のように、この後に続く言葉を聞きたくはない、聞いてはいけないという想いがあるにも拘らず、逃げる事さえ出来なくなっていた。

 

「もう、気付いているのだろう? お前やニーナ様を残してアリアハンを旅立った時のオルテガ様の想いに。その想いを知っているからこそ、お前はあの時、剣を振り上げる事も振るう事も出来なかったのだろう?」

 

「なにを……」

 

 息が詰まる。言葉さえも吐き出す事が出来ない。

 ここまで追い詰められた事は、カミュとしては初めてだったかもしれない。どれ程に強力な魔物と対峙しても、死に瀕するような戦いの最中であっても、幼い頃の逃げ出したくなるような辛い経験の中でさえも、これ程に圧迫を感じた事はなかった。

 顔を動かしたリーシャは、先程までと同様の穏やかな表情の中にも、逃げる事を許さない厳しさを持っている。これに対して、嘘も虚勢も通用しないだろう。それだけの力を彼女は持っていた。

 

「最後まで言った方が良いか?」

 

 喉を詰まらせたように言葉が出て来ないカミュを見て、リーシャはもう一度目を瞑った後、呟くように宣言する。それは最後勧告にも似た物であり、カミュの逃げ場を完全に奪う言葉。

 それを制止ようにも、カミュの口から言葉が出て来ない。聞きたくはない言葉が吐き出される事を予感しながらも、それに気付かない振りを続けて来た彼には、反論する事が不可能であった。

 そして、無常にも、リーシャの口は開かれる。二つの世界を救う可能性を持つ『勇者』に生涯唯一の敗北を刻み込むその言葉を吐き出す為に。

 

「上の世界にメルエを残し、一人きりで大魔王ゾーマを討ち果たす為にアレフガルドへ向かおうとしたお前なら……。いや、メルエというお前が初めて得た理解者の平穏の為に、自分を犠牲にしてでも平和を取り戻そうとしたお前ならば解っている筈だ。カミュという愛息子の明るい未来を得る為に、たった一人で旅立ったオルテガ様の愛をな」

 

 全てが吐き出されたリーシャの口が閉じられる。それと同時に、カミュは唇を噛み締めた。

 本当は、この長い旅で見て来た数少ない『人』の強さが、彼を少しずつ変えて行っている。

 カザーブの村で出会った一人の道具屋は、愛する妻や娘を護れなかった事を悔やみ続け、自分を責め続けていた。自分の心が壊れるかもしれない可能性を知って尚、彼は真実を求め、それを飲み込んだ。それはカミュの想像など及ばない程の苦痛だっただろう。彼が娘に向ける想いの強さは、カミュが知るどんな感情よりも強い物だった。

 ノアニールの村を包み込んだ呪いを施したエルフの女王もまた、自分の行いが愛する娘を死に至らしめた事を悔いていた。『人』と『エルフ』との愛情という禁忌を犯した娘を切り捨てながらも、それを悔い、その罪に心を殺していたのだ。それでも尚、娘の誇りを尊重し、自分の感情を更に殺してでも、村を開放する強い想いを彼は見ている。

 メルエの義母の行った虐待は、許される事ではない。どんな善行を積んだとしても、その罪が消える事もなく、その傷が消える事はないだろう。だが、彼女の残した様々な想いが、今のメルエを少なからず護っている事も事実であった。

 

「メルエは多くの愛に護られていた。だが、お前もまた、この世にある何よりも強い『親の愛』によって護られていたんだ。認めたくはないだろう、それに気付いたからといって、これまでに味わって来た苦痛が消える事もない。だが、お前が深く強い愛を与え続けられて来た事は否定出来ない事実だ」

 

 イシスの国で見た祖母と若き女王の確執は、カミュが知る『人』の醜い物であった。だが、それを乗り越えた若き女王を見ると、彼女を見守る様々な想いがある事を知る。

 リーシャが指摘したジパングでは、幼い跡取りに全てを託し、その先に繋がる明るい未来を夢見て自身を犠牲にした先代女王の気高さを見た。その想いが若きジパングの国を結果的に護る事になり、今も尚、より良い国への発展の礎になっている。

 メルエの実父の魂に遭遇した時、その深い愛情に気圧されそうになった。深く強い愛情は、一種の呪いに近い現象を生み出し、結果再び二人を出会わせている。その時に交わした約束は、今でも彼の中に根付いていた。

 

「バラモスがメルエに向けた執念を見たお前は、ゾーマという存在がある限り、メルエに平穏は訪れないと考えたのだろう? だからこそ、お前はカザーブに置いていこうとした。あの後、お前が死んでしまったとしても、メルエが迫害される事はないかもしれないが、お前との思い出がある分、メルエの哀しみや苦しみは強かった筈だ」

 

 メルエという少女が一行に加入した時、余計な荷物を背負い込んだと考えた。死へ向かうだけの旅に彼女を連れて行くという事に心から反対したし、最寄の集落へ置いて行くという考えを変えるつもりもなかった。

 だが、予期せず彼女に呪文を契約させてしまった彼には、罪の意識と共に義務感が生じる。そして旅を続けて行く内に、彼女が自分へと向ける感情が、今まで誰にも向けられた事のない物である事に戸惑いを覚えた。

 カミュを『英雄の息子』とも、『勇者』とも見ず、ただただカミュという個人として見る彼女は、叱れば怯え、小さく笑えば微笑み、仲間を傷つければ怒った。何時からか、そんな幼い少女が大切な者に変わり、護らなければならない者に変わって行く。

 それは父性に近しい想いであったのだろう。故にこそ、彼女には穏やかな時間を過ごして欲しいと願った。誰にも傷つけられる可能性はなく、涙を流す事もない世で、幸せに暮らして欲しいと思った。

 だからこそ、見守る事の出来るリーシャやサラもいるあの世界にメルエを置いて旅立とうとしたのだ。

 

「お前は意図していた訳ではないだろうが、お前と同等の、いや、それ以上の哀しみをメルエに背負わせるところだったのだぞ?」

 

 あの時、カザーブの道具屋にこの女性戦士が現れなければ、彼は一人でアレフガルドへ降り立っていただろう。そして、精霊神ルビスを解放する事も出来ず、オルテガという憎しみの対象に再会する事もなく、彼は生涯を閉じたに違いない。彼が望んだ未来を勝ち取る事も出来ず、娘のように、妹のように想う少女の身を案じながら、彼は永遠の眠りについていた筈だ。

 カミュの時のように、メルエが何かを背負わされる事はないだろう。だが、カミュとは異なり、彼女自身がカミュの想いを受け継ごうとする可能性はある。報復という形で彼女が大魔王ゾーマへ挑む時、目の前に居る女性戦士は必ず共に立ち上がり、そして共に散って行くだろう。

 それは、彼が最も望まぬ未来の一つでもあった。

 

「もう良いだろう? オルテガ様を許せとか、憎むなと言うつもりはない。だが、そろそろ、お前が気付いた事を認めても良いのではないか? メルエもサラも、色々な事を認めて飲み込んで歩み始めた。お前も全てを飲み込み、認めた上で、前へと進む事は出来ないか?」

 

 目の前で真っ直ぐに自分を見つめる瞳は、優しさに満ちている。形式的には問いかけているのではあるが、彼女の中でカミュの答えは決まっているのだろう。ただ、今はそれを待っているだけ。

 腹立たしい程の穏やかな表情に、カミュは唇を噛み締めた。それ以外に彼には出来る事はない。彼女の言葉が正しい事を認めてしまえば、彼がずっと抱え続けて来た想いを捨ててしまう事になる。それが否定を意味する物ではないとしても、彼が死んだように生きて来た十六年間を捨て去る事になるのだ。

 

「私は本当に嬉しかった。アリアハンの城下町でサラからルビス様の言葉を聞いた時、お前への怒りと、それ以上の喜びを感じたよ。『人に救う価値があるのか解らない』と言っていたお前が、たった一人の少女の為に戦おうとしていたのだからな」

 

 優しさを湛えながらも真剣な物であったリーシャの表情がふわりと微笑む。それは優しさと美しさを合わせ持つ、本当に綺麗な笑みであった。

 その笑みを見たカミュは、自身の敗北を悟る。どうあってもこの女性には敵う気がしない。言い負かす事は出来るだろう。罵倒する事も出来るだろう。それでも、この女性戦士は、穏やかな笑みを浮かべるに違いない。

 悔しさに唇が切れる。唇から零れた血液が地面へと落ちるのと同時に、彼の瞳から少ない雫が零れ落ちた。

 

「お前がメルエを想うのと同じぐらい、私やサラを想ってくれていたらと思うがな」

 

 はにかんだような笑みを浮かべたリーシャは、照れ臭そうに髪を触る。篝火に照らされた透き通るような金髪が吹き抜けた風に乗って靡いた。

 一年近く前にルビスの塔で遭遇したドラゴンによって焼かれた金髪も、今では元通りの長さまで伸びている。所々でサラによって切り整えられて来た髪は、緩やかな癖を持ちながらも美しく輝いていた。

 十六年間という長く暗い時間を一人で歩いて来たカミュにとって、十七年目に出会ったその輝きは、正しく太陽そのものであった。自分が歩む道さえも見失いそうになる闇の中で、小さな輝きを持つメルエを見つけ、そこへ繋がる道を常に照らし続ける輝きこそ、目の前で微笑む女性であったのだ。

 

「……今更だ」

 

 そんな眩い輝きの前で彼が発する事が出来たのは、たった一言の呟きだけであった。だが、ずっと彼を見続けて来たリーシャにとっては、その小さな一言で十分である。嬉しそうに微笑んだ彼女は、一つ頷いた後で立ち上がった。

 彼女の言いたい事は全て言い終えたのだろう。これ以上はカミュ自身の問題であり、彼だけで乗り越えていかなければならない問題である。故に、彼を一人残して宿屋に戻ろうと考えたのだ。

 立ち上がって振り向いた彼女は、その先にある木の後ろに一つの人影を見掛ける。しかし、その影が足早に宿屋の方向へと消えて行くのを見て、小さな苦笑を浮かべた。

 

「蛙の子は蛙か……」

 

 その小さな呟きは、彼女の傍に未だに座っている青年には届かない。

 強く拳を握り締めたまま池を見つめるカミュだけを残して、今しがた消えて行った人影と鉢合わせにならぬよう、リーシャはゆっくりと宿屋への道を歩いて行った。

 

 

 

 

 懸命に宿屋への道を駆け戻りながら、オルテガは溢れる涙を抑える事が出来なかった。

 未だに思うように動かない身体がもつれ、地面へと倒れ込んでも、その視界が晴れる事はない。涙で滲んだ視界は、彼が歩んで来た半生を後悔する涙であり、懺悔の涙でもあった。

 魔王バラモスが台頭し、世の中に魔物が蔓延る中、その力は日増しに強くなって行く。そんな時代に自分の血を受け継ぐ息子を授かった時、喜びよりも大きな不安が押し寄せた。

 『この子が大きくなった時、この世に人間が住める場所はあるのだろうか?』

 『この子もまた、魔物達に襲われてしまうのではないか?』

 そんな疑問は一度浮かんでしまえば、消える事はなく、次々と増えて行く。喜ぶ妻の顔も、父の顔も見えず、そんな不安だけが大きくなって行った。

 

「すまん……すまん、カミュ」

 

 妻のニーナが名付けた名を聞き、彼は決意を固める。

 その名前が生涯を全う出来る世にしようと。

 魔物に怯え、それを打ち倒す力を持たなければならない世の中ではなく、苦しみや悲しみがありながらも、笑顔を浮かべて過ごせる時間を持てる人生を歩める世の中をと。

 そう考え始めると、最早一刻の猶予も残されてはいなかった。日増しに強くなる魔王バラモスの力が、世界の多くの国の力を奪っていたのだ。アリアハンも例外ではなく、海産物を取る為の船も出せず、頼っていた貿易船も訪れる頻度は皆無に等しくなっている。故に、彼は妻の反対を押し切って、一人でアリアハンを旅立った。

 

「ぐっ……」

 

 足がもつれて再び倒れ込む。顔に付く泥も、転んだ事で出来た擦り傷も気になりはしない。ただただ、悔しく、哀しく、自分自身に対する怒りだけが湧き上がった。

 幸せに暮らしていると思っていた。自分がいなくとも、母を護り、アリアハンで静かに暮らしていると考えていたのだ。

 魔王バラモスの上に、更に強力な大魔王がいると知り、それを追って行った時には記憶が曖昧になっている。だが、英雄として讃えられたオルテガという一人の父親が旅立った理由だけは、心の奥深くに張り付いていた。故にこそ、彼はアレフガルドへ向かい、そしてゾーマを目指す。自分自身に最愛の息子がいる事を忘れているにも拘わらずに。

 

「どうすれば……どうすれば良いのだ?」

 

 宿屋の扉にしがみ付きながら起き上がったオルテガは、自分の犯した罪と、大事な息子に残った傷の深さを悔やみ続ける。

 何をすれば良いのか解らない。どうしたら、それを償えるのかも解らない。良かれと考え、邁進して来た道は、彼が本当に想う相手にとって最悪な道であった事を今更ながら理解した。

 涙は止まらず、嗚咽も止まらない。咳き込む程に溢れ出る感情を抑えられず、オルテガは宿屋の入り口に崩れ落ちた。

 

「ふぅ……オルテガ様、一度湯浴みを済ませて、今夜はゆっくり眠ってください。話は明日にでも致しましょう」

 

 そんな彼の歪む視界の中に、金色の髪を持った女性が映り込む。それが先程まで自分の息子と話をしていた人間であると気付いた時、オルテガは堰を切ったように泣き崩れた。

 そんなオルテガの様子に一つ息を吐き出した彼女は、彼に肩を貸して宿屋の二階へと連れて行く。宿屋の主人に湯を張った桶と手拭いを頼み、嗚咽を抑えられない屈強なオルテガを抱えるように階段を上って行った。

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございました。
長くなりましたので、二話に分ける事にします。

ご意見、ご感想を心よりお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。