After La+ ジュピトリス・コンフリクト   作:放置アフロ

28 / 33
FAZZ・F

 グレー単色に塗られた《ダブルゼータ》は全身に配された姿勢制御バーニアを巧みに使い、床上2メートルの空間をゆっくりと微速遊泳した。

 噴射がもたらす熱が《ダブルゼータ》のシルエットに陽炎を被せ、輪郭を揺らめかせた。

 《ダブルゼータ》が倒れ伏す私とオリヴァーに迫る。頭部に俯角を取り、ふたりを見下ろす形となった。

 脳裏をパイロットの黒い殺意がよぎる。

 それをオリヴァーも感じ取ったのか、彼は私の肩を抱き引き上げると、ブーツ底のマグネットを効かして、《ダブルゼータ》から死角の壁際に向け、私の体を投げ飛ばした。

 

「っ!?なにを、オリヴァー、・・・・・・」

 

 最後の姿。

 それは恐れと驚き、そして、それを懸命に押さえ込もうとする必死なオリヴァーの顔だった。

 次の瞬間、デッキ内に腹まで響き渡るバルカンの砲撃音が轟く。

 咄嗟に顔をかばった私が腕を戻すと、視界に変わり果てた姿となったオリヴァーの肉塊が飛び込んできた。

 60mm砲弾がなした酷い人体破壊。

 私はまた激しくなる吐き気を怒りで何とか耐え、歯を食いしばりながら《キュベレイ》のコクピットへ向けて飛ぶ。

 

(私なんか庇ったばっかりに、あんなになって。・・・無駄死にはさせない!)

 

 

 デッキの奥。《キュベレイ》にマリアが滑り込み、ハッチが閉まるのを、《ダブルゼータ》のモニターに認めたカールは、口元にぞっとする冷笑的な薄笑いを見せ、機体を回頭させた。

 

「いいのか、あいつをやらなくて?」

 

 複座となったリニア・シート、その前席に収まるエイダ=プルツーがからかうような口調で、後部座席を振り返る。

 

「ああ、今殺しては楽しみが減るからな。

 お前も自分の力を試したいところだろ、この《FAZZ・F》でな」

 

 

 

 《FAZZ・F》

 『太っちょ』の愛称で知られる《FAZZ》は元来、《ZZガンダム》の武装増加試作機に火力支援システムを固定装備した試作機である。

 AE社のとある部門が月面のグラナダにてこれを複座へ改造。前席のパイロットは新たに搭載された特殊武装の制御をするガンナーを、後席は機体の操縦と従来の武装制御を務める。

 《FAZZ》最大の()()は、機体よりも長大でかつ、コロニー・レーザー出力30%にも及ぶ肩持ち支持火器のハイパー・メガ・カノンであるが、長距離・火力支援をコンセプトにしていないこのF型は装備していない。

 またオリジナルコクピットは複雑な火器管制システム簡便化のため、アームレイカー型操縦桿が搭載されていたが、F型は激しい空間機動、および格闘戦も考慮し従来のスティックタイプに換装されている。

 合計16機が生産された《FAZZ》だが、この内3機はUC88年3月、月面都市エアーズで発生した連邦内部の反乱、通称【ペズン事件】における【イーグル・フォール作戦】に実戦投入され全機撃墜さいる。この《FAZZ・F》は、前述の3機以外で分解・部品納入された内の1機がベースである。

 

 

 

 再び60mmバルカン砲が咆哮する。

 それは『ヴォ――』という砲撃音と『ヒューゥン』という6連砲身の高速回転音を混ぜた一種異様なものであった。

 発進準備中でハッチが空いた状態でドリーに収まる《ジム・スナイパーⅢ改》。そのコクピットへ行きがけの駄賃とばかりに《FAZZ・F》がバルカンの猛射を加え、ジャンクへと変える。

 

「追ってこい、強化人間」

 

 カールは楽しげに言うと、右前腕のダブル・ビームライフルを発射し、ソラへと通じるシャッターを撃ち破る。

 《FAZZ》は背面メインスラスターの噴射光を残し、虚空へ消えていった。

 

 

 

 ソラに上がっていた5機の《ジムⅢ》。その隊長機は、《ジュピトリスⅡ》MSデッキのシャッターがピンクの光軸に貫かれながら、噴き飛ぶ光景を20kmほど離れた宙空から見た。

 位置としては《ジュピトリス》進行方向に対して、12時真正面の艦橋側(上方といおうか)からである。

 続く発進するMSの発するスラスター光。シルエットと熱放射パターンからコンピューターが解析した機体データの表示が別枠モニターに現れると、各機の無線に動揺が混じる。

 

『嘘だろ!?《ダブルゼータ》かよ!』

『ほんとにアスベル司令補が乗ってるのか?』

『どうするんだよ!?』

 

『落ち着け!2番、4番機は後ろに回り込め!3番、5番は左上から仕掛けろ。

 俺は正面から行く。攻撃は指示を待て。油断するなよ!』

 

 隊長は、動揺がこれ以上広がる前に、矢継ぎ早に指示を飛ばす。

 だが、普段より早口になっている点が、彼自身動揺している証であった。

 

『カール・アスベル司令補、主機を停止し、すぐにMS隊の指示に従って下さい! 繰り返します。・・・・・・』

 

 《ジュピトリスⅡ》のCICからはBSS社が通常哨戒で使用する無線周波数に加え、オープン回線でも呼びかけているが、カールはまったく応答する気配がない。

 

(包囲してなお応答がない場合は、どうする?)

 

 隊長は自問するが、答えは出ない。

 しかし、《FAZZ》はまるで自ら罠にかかる獣のように隊長機に向かってきた。そのあまりにも真っ直ぐな機動に彼は驚き、うかつにも機体を宙空に制動し、右マニピュレータに装備したビームライフルを向ける。

 

「止まれっ!

 司令補、終わりにしましょう」

 

 意外にもその呼びかけに《FAZZ》も同じように宙空に制動した。他4機の《ジムⅢ》の位置取りはできつつあった。

 

『そうだな、終わりだ』

 

 ヘルメットのイヤホンを通してカールの声が耳朶を打つ。オープン回線の無線のそれは落ち着き払っていた。

 だから彼は、ほっ、とした。いや、油断した。

 《FAZZ》の右腕が前触れなく上がり射線上に隊長機を捉えた時、間髪をおかず、ピンクの光軸が貫いた。爆散する。

 《FAZZ》の動作にはなんのためらいも無かった。

 

『や、やめてください!!司令補っ!』

『なんで隊長を墜としたんです!?』

 

 恐怖に近い狼狽を示す各機パイロットが無線に叫ぶが、もはやそんなのん気なことをしゃべっている状況ではない。即座に反撃すべきだった。彼らは日常の警備業務に慣れすぎていた。

 

『人は死ぬために生きている。お前らも死ね』

 

 落ち着き払ったカールの声は聞く者を、ぞっとさせた。

 《FAZZ》は機体を3時方向へ転回、右腕を上方へ向けると、再度ダブル・ビームライフルから光軸がほとばしった。

 同時に3番機の《ジムⅢ》もビームライフルを射撃していた。

 だが、《ジムⅢ》のビームは発射以前にスリップ機動に入った《FAZZ》の肩部装甲に当たり、フッ素樹脂による耐ビームコーティングによって弾かれた。

 一方、《FAZZ》の発した2条の光軸は3番機の胸部上と上・下半身の連結に命中。1番機と同じ運命となった。

 その時になって、ようやく発射された2、4、5番機のビームは何も無い真空を切り裂いただけだった。

 《FAZZ》は巨体に似合わぬ俊敏な機動で各機を翻弄する。

 

 不敵な笑みを浮かべ、カールは残りの3機に対して牽制射撃を加える。

 《ジムⅢ》は連携も取らずに、ただ逃げ回ってばかりで散発的に狙いも適当な射撃をするのみで、十分な殺意のこもった攻撃とは程遠かった。

 

「ふっ、つまらんな」

 

 3機ならば、『追尾』、『挟撃』、『遊撃』と役割を決め、連携を取って攻撃すれば彼らにもまだ勝機はあったのだが。

 

「本当につまらない。私にも戦わせろ」

 

 前席で腕組み、口を尖らせ、足をコンソールに投げ出していたエイダが不満を漏らす。

 

「確かに、そうだな。よし、やってみせろ」

「そうこなくちゃ!」

 

 新しいおもちゃを与えられた子供のように顔を輝かせた彼女は、足をフットレストに、手を操縦桿に置くと、意識を高めた。

 

「行けっ!」

 

 エイダが強く命じると、『それ』は本来ミサイルが格納されている背部ランチャーから次々と飛び出した。

 

 

 

 《FAZZ》の6時上方向から迫る2番機の《ジムⅢ》は中距離まで接近したところで、10ほどの数の小さい光源が発射されるのを見て、慌てて回避機動に入った。

 

(まずい、ミサイル!!)

 

 スラスター噴射熱パターンをプリセットされて発射されていれば、それは熱誘導されるはずだ。

 有効かどうかはともかく、パイロットは一撃をビームライフルで牽制した上、ダミーバルーンを機体から放出した。

 だが、《FAZZ》からの発射物体はミサイルのように一直線に《ジムⅢ》を追尾するのではなく、バルーンを避けジグザクに飛びながら、放射状に展開していった。

 

(なんだ、あれは・・・・・・まさかっ!?)

 

 気付いたときには、3基の発射物体、ファンネルが放ったビームによって右肘部が破壊され、前腕ごとビームライフルが失われた。

 質量バランスを欠き、きりもみ状態になりかかった機体を、バーニアで何とか立て直し、《ジムⅢ》は肩部ミサイルポッドを全方位に向け闇雲に発射する。

 合計15発のマイクロミサイルがファンネルに殺到するが、敏捷な羽虫の機動で易々とかわされ、墜とせたのは10のファンネルの内わずか2基のみ。

 残りの8基が周囲を飛び回りながら、断続的にオールラウンド攻撃を仕掛け、ひとつずつ四肢を焼き切っていく。

 左腕、右脚、左脚・・・・・・。

 

「うわああぁぁあ! バラバラにされちまう!」

 

 《ジムⅢ》は唯一残った射撃武装の頭部バルカン砲を四方八方に向け撃つが、曳光弾は虚空を断続的に照らすのみですぐに弾切れとなった。

 カチカチカチ。

 2番機のパイロットはすでになんの反応も示さないトリガーを押し続けていた。モニター正面には、銃殺隊のようにファンネルが整列し、暗い砲口を胸部コクピットに向ける。

 

「や、めてくれぇぇ・・・・・・」

 

 パイロットは手足を縮こませ、顔面で腕を交差して恐怖した。

 しかし、無情に次の瞬間、放たれた8条の光軸によって、彼の肉体は蒸発した。

 

 

 

 《FAZZ》の殺戮を40kmほど離れた宙域から、《ダイニ・ガランシェール》隊、アイバン、クワニの《ギラ・ズール》、そしてベイリー少尉の《ゲルググキャノン》が偵察していた。

 

『どうするよ、おい?』

 

 近距離レーザー回線で、まずアイバンが呼びかけた。3機は互いに1kmほどの距離を取って、放出したダミー岩石の影に機体を潜ませていた。

 デブリ帯の近くのためか、本物の浮遊岩石もあちらこちらに見られる。

 

『どうするって言われてもなぁ。マリアが出てこなきゃ、こっちは動きようがないだろう』

 

 低い唸り声を交えながらクワニが答える。

 

『しかし、無線の内容からすると、あの《ガンダム》に乗っているのが、例のカールという奴なのだろう? 奴に仕掛けるべきじゃないのか? このままでは《ジム》はいずれ全滅するぞ』

 

 ベイリーが反論する。

 タイガーバウムを出港する直前。マリアの上司、カール・アスベルに関する情報を若い顔役、ルナンから受け取っていた。

 それはカールがネオ・ジオンとマリアたちに対して恨み、憎しみを抱くに十分な過去であった。

 

『しかし、ベイリー少尉。今出て行ってもどっちにしろ、両方にとって俺たちはジオン残党でしかありませんよ』

『ああ、確かに。だが、・・・・・・っ!!』

 

 クワニとベイリーが会話を重ねる内に、また別の《ジムⅢ》が爆散の花を咲かせる。残機は1。

 

 その時、

 

『カール、もうやめろっ! エイダっ、あなたがやっていることは間違ってるよ!』

 

 オープン回線に飛び込む聞き知った彼女の声。

 そして、《ジュピトリス》から飛び出したスラスター光と、全天周モニターに表示される『AMX-004-04』の形式番号。《キュベレイ》は明らかに《FAZZ》に対して攻撃態勢だった。

 アイバンは決断する。

 

『俺とクワニは戦闘速度で接近。《キュベレイ》を支援しつつ敵のファンネルを墜とす。

 少尉はここから隠密接近して、必中距離に入ったらビームキャノンをあのデカ物にぶち込む。

 あとは臨機応変ってとこで、どうです?』

『了解した』

『いいぜ。ファンネルを墜とせるか自信ないけどな』

『クワニよ、やる前から弱気になってどうする』

 

 アイバンは相棒を叱咤しつつ、フットペダルを床まで踏み込んだ。スラスター・ノズルを限界まで開いたそこから蒼い炎を発して、アイバン機が飛び去る。

 膝下を失ったクワニ機が続く。

 

「さて」

 

 ひとり残されたベイリーは、隠れ身のため新たなダミー岩石を放出すると、スラスターを静かに噴かした後、慣性飛行に入った。

 

 

 

「くっ、一体何基のファンネルを積んでるんだ!?《マンサ》並みじゃないか」

 

 《FAZZ》は新たにランチャーから10以上のファンネルを発射した。

 

 吐き気とかすむ視界に耐えながら、マリアは《キュベレイ》は浮遊岩石に回り込ませ急制動をかけるや、岩陰からビームガンで反撃する。

 しかし、元来出力の低いそれは耐ビームコーティングされた装甲には、あまり効果がなかった。

 直後に、離脱したその岩石をダブル・ビームライフルが撃ち砕き、遮蔽物の用をなさなくなる。

 

(なんとかビームサーベルをコクピットに、・・・)

 

 だが、周囲を飛び回るファンネルが数多く、ビームがうるさ過ぎてそれ以上の接近を阻まれていた。

 対抗して、《キュベレイ》も残り少ない3基のファンネルを出す。

 

「動きが雑だ。これなら」

 

 文字通り蝶のように舞うマリア操作のファンネルに比べて、《FAZZ・F》のものは動きが直線的だった。20基という膨大なファンネルを操作するには、操縦者にも相当の精神的負担を強いるはずだ。その上、パイロットの戦闘キャリアがマリアとエイダでは天と地ほど違う。

 しかし、彼我ファンネル戦力1対6以上はいかんともしがたい。

 むしろ、《キュベレイ》は追い回され、ダブル・ビームライフルの照準を合わさせないための牽制射撃程度しかできない。

 今は推進剤があるからいいが、このまま戦闘機動を続ければ、

 

(いずれジリ貧だ)

 

 《ジュピトリス》に来るまでに推進剤をある程度使ってしまった《キュベレイ》の方が明らかに不利であった。

 

(どうする・・・・・・)

 

 焦りばかりがつのる。

 

 その時、《キュベレイ》を追尾していた《FAZZ》が急旋回し、回避機動に入る。

 が、一瞬遅く、左マニピュレータにグリーンの断続的光弾が命中する。

 

(ビームマシンガン・・・!)

 

 マリアは全天周モニターに首を巡らし、アイバン機を認めた。

 

『ちっ、効かねぇか? 重装甲高機動って、どんだけチートなんだよっ』

 

 無線から流れる彼らしい物言いに、マリアは苦しげな表情の中に笑みを浮かべた。

 アイバン機とは逆方向から《FAZZ》を挟撃する曳光弾の赤い火線。数発が右脚部に当たるが、

 

『ダメだ。実体でも90ミリぼっちじゃ、豆鉄砲にもならん』

 

 膝下を失ったクワニ機がMMP-80マシンガンを手にしていた。

 アイバン機が追尾し、クワニ機が挟撃する。その連携の最中、

 

『マリア、ダブル・ライフルが怖い。ファンネルは何とかする。お前は格闘戦を仕掛けろ』

「分かった!」

 

 アイバンの短い問いかけに、マリアも即座に答える。

 2機が旋回、《FAZZ》と距離を取るや、《キュベレイ》は猛然とその背後へ肉迫した。岩石の間を縫うように描かれるジグザグのスラスターの軌跡。

 両手にビームサーベル。二刀流となってイエローの光刃を形成する。

 だが、《FAZZ》の対応も早かった。

 AMBACとスラスターおよびバーニアを使ってピボットターンで振り返ると、そのまま流れるような動作で背からサーベルを抜く。

 イエローとピンクの光刃が空間で激しく干渉し、激突した。

 

「カールっ、これは家族の復讐のためか!?」

 

 マリアの問いかけに《キュベレイ》を弾き返すことで彼は答えた。明らかに《FAZZ》が手にするハイパー・ビームサーベルの方が刃が太く、長く、そして力強い。

 マリアは《ダイニ・ガランシェール》を発進する直前、フラストが調査依頼していた内容、カールの過去について聞かされていた。

 

 彼の妻と一人娘は、マリアがプルツーとして目覚めた日。

 UC88年10月31日。

 ダブリンへのコロニー落としで行方不明となった。

 

「だから、影武者だったキアと、強化人間の私を、・・・・・・罠に陥れようとした。そうだろ?」

 

 彼女の心が揺れるのを映すように、その声も震えていた。

 

『アッハッハッハっ!』

 

 いきなり沸き起こった哄笑に、マリアは内臓がつかまれたような思いだった。

 だが驚き、油断はしていられない。《FAZZ》が切り込んでくる。再びふたつの光刃が火花を散らす。

 推力こそ拮抗しているが、機体の質量、サーベルの出力共に《FAZZ》が圧倒していた。

 

『全然違うなぁ。勘違いもいいところだ』

 

 ふたりはMSのサーベルという武器を通して、お互いの心をぶつけ合っていた。

 

『キアーラは自分の意思で火星に行った。俺が手引きしたとはいえ、お前だって自らあいつを追った。そうだろう?』

「小賢しい! それが私たちの過去や感情を利用した陰謀だと言ってる!」

『賢しいのは、お前の方だ、小娘!』

 

 《FAZZ》がまた《キュベレイ》を弾き返す。

 離れ際に《キュベレイ》のファンネルが背後に迫る。ほとばしるビーム。

 迎撃する《FAZZ》のファンネル。交錯した光軸は相打ちし、互いのファンネルがデブリとなった。

 

『俺はなぁ、ネオ・ジオンが妻と娘を殺したことを恨んでいない。むしろ、感謝してるぐらいだ』

 

 その言葉に、マリアは脳がサーベルに焼かれ溶け落ちるような衝撃を受けた。

 

「な、なぜ? 感謝・・・・・・?」

 

 モニターに映る《FAZZ》の顔が、一瞬嗤ったような錯覚を覚えた。

 

『あの時、政府機関にいた俺がコロニー落としを知らないわけがないだろう。むしろ優先して、家族を避難させることだってできた。だが、しなかった。するわけがないだろう?

 なぜなら、』

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。