ブラック・ブレット〜赤目の神喰人(ゴッドイーター)〜   作:緋悠梨

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すいません今回説明多いのでくどいかもしれないです。また時系列も一部原作と異なりますが、この小説内で齟齬が生じないように調整しております。ご了承ください。



23.森林の戦闘

―――side蓮太郎―――

 

 

「蓮さん……延珠ちゃん、なんかあったんですか?」

 

あの後、「妾が先頭で行く!!」と延珠が頑として譲らなかったため、仕方なく先頭を任せて、俺と悠梨はそれぞれ左右と後方を警戒して進んでいる(間違いなく悠梨が先走らないようにするためだろう)。その間に、延珠に聞こえないであろう程度の声量で悠梨が問いかけてきた。

 

「まぁ、ちょっとな……自分が助けられなかった奴がいたからだろうな……」

 

影胤と遭遇する数日前だったか。俺と延珠で買い物に出た際、『呪われた子供たち』の一人が盗みを働き、逃げている場面に遭遇してしまった。しかもその『子供たち』は延珠と顔見知りだったらしく、延珠に助けを求めかけたのだが、俺がその手を振り払い、警察が問答無用で『子供たち』を連行した後延珠にキレられた……ということをかいつまんで悠梨に話した。

 

「だもんでな、ちょうどさっきのお前とダブるところがあったんだろうよ」

「なるほど、そこは延珠ちゃんに同情しますね」

 

言うと思ったよ、と心の中で悪態をつく。だが悠梨の言葉はここで止まらなかった。

 

「でも延珠ちゃんが今普通に蓮さんと接してる、ってことは……?」

「黙秘権を行使する。……その『分かってますよ』的な顔はやめろ……!!」

 

うぜえ……!!

 

……まぁ結局、俺も人のことはあんま言えないってことだ。何せあの後、警察に連れていかれて瀕死の重傷を負った『子供たち』を助けてしまったのから。俺はあの場で『子供たち』の手を振り払ったのは、延珠も「同じだ」とバレないようにするためにも必要だったし、なにより盗みをしたこと自体は問題であるから、間違いではなかったと今でも思っている。思ってはいるが……

 

(ちっ、甘いな俺も……)

 

延珠の求める「正義の味方」であるつもりは毛頭ないのだが。

 

「蓮太郎、悠梨。あれ」

「あん?」

 

そんなことを考えていると、不意に延珠から声がかけられた。……見ると、少し先に首の長い、俺たちに背を向けるように佇む、巨大なガストレアがいた。明らかにステージⅢ~Ⅳだ。いったい何種類混じっているのか想像がつかない。特徴から推測するとすれば、だ。

 

「首が長い……あれはキリンか?」

「なんかキリンと言われると変な愛嬌が出てくるな……ほかに首が長い動物もいないし、多分キリンだろうけど……ん?」

 

そこで思い出す。キリンの首の可動範囲はどれぐらいであったかと。……狭くもないが、真後ろまでは見えなかったはずだ。ならば、気付かれないように離れるのが得策だろう。

 

「……延珠、悠梨、いいか、静かに……」

 

引くぞ、そう言いかけた瞬間。

 

 

ガストレアの首がグリン!と180度曲がり、こちらを向いた。

 

 

「「嘘ぉ!!!???」」」

 

あの首もどきはキリンじゃなかった。たぶんアレ蛇か何かに違いない。……ってそんなことを考えてる場合じゃねえ!!

 

「おい、逃げるぞ!!!」

 

いち早くフリーズから復活した俺の声に押され、二人も駆け出す、……が。

 

「ちっ、無駄に早い……!!」

 

あんな巨体のくせして、無駄にスピードが出ていて、うっとうしいこと極まりない。だがこのままでは追いつかれる。

 

‘(どうする……!!)

「……さん、蓮さん?」

「ふほぅ!?」

 

思わずバランスを崩してすっ転びかけた。

 

「おい悠梨!! 脇腹つつくんじゃねぇ!!」

「だって蓮さん反応してくれないんですもん。……で、あれって倒しちゃってもいいんですか?」

「へ?……っあ、ああ、でも今それをどうするか考えてるところで……」

「あ、じゃあ僕に策があるんですけど」

「……悠梨、お前、策とか立てられたのか」

「それぐらいやりますよ!? 僕が隊長だってこと忘れてません!?」

 

思わず目を逸らすと本気で心外そうな顔をされた。とりあえず突っ込んどく猪突猛進タイプだと思ってたのに、意外な一面もあるもんだ。

 

「悠梨!!さっさと作戦を話せ!!もうすぐ後ろまで来てるのだぞ!?」

「「げっ!?」」

 

一応しゃべりながらも逃げてはいたのだが、気付いたらかなり近くまで接近されていた。悠梨が焦ったように作戦を伝える。

 

「すいませんが二人とも、5秒でいいので囮になってください!!」

「それだけでいいのか!?」

「あともう一つ! 僕が合図をしたら、僕の後ろに飛びのいてください!! だいたい5秒くらい!」

「「了解!」」

 

そして、俺と延珠がそこでブレーキをかけ、俺は腰のXD拳銃をドロー。延珠も態勢を低く構える。悠梨は、ちょうど目の前にあった木の根を飛び越し、俺たちの10mほど後ろで停止した。

 

 

――――――作戦開始。

 

 

発砲。ガストレアの足に着弾。ガストレアが憎悪の目を俺に向け、長い首を伸ばし、捕食しようと向かってくる。

 

5―――

 

俺と首の間に延珠が右から飛び込み、勢いのままにガストレアの顎を蹴り飛ばす。

 

4―――

 

のけぞるガストレアだが、長い首を戻すスイングのような動作で延珠をブッ飛ばそうとしてくる。

 

3―――

 

延珠がガストレアの攻撃を飛びあがって回避。続けて、俺が振り切った顔を狙って射撃、4発撃って2発命中。

 

2―――

 

そのまま俺がガストレアの左に、延珠が着地後右に向かって飛び込み。

1―――

 

がら空きの横っ腹に銃弾と蹴りによる一撃をそれぞれ叩き込む。

 

―――――0!

 

「OKです!!」

 

声が聞こえた直後、全力後退し、悠梨の後ろに退避。その悠梨は武器である神機は剣状態になっており、それを肩に担ぐようにして力を溜めている、ように見えた。更に

 

(なんだ……?)

 

その刀身には赤黒いオーラがまとわりついており、飛んでもない威力を秘めてるのだと主張しているかのようだ。そして、

 

「――――――せぇぃっ!!」

 

悠梨はオーラをまとった大剣を、突っこんできたガストレアに向けそのまま振り下ろした。ガストレアは、今の今まで悠梨に気付いていなかったのか勢いを殺すことはかなわず、悠梨の振り下ろした大剣に首からしっぽの先までを真っ二つにされ、周囲の木々を巻き込みながら倒れ、絶命した。

 

「……ふぅ……。すいません、わざわざ囮になってもらって……」

「いや、今の威力見れば文句なんてないけどよ。どうせチャージが必要な攻撃だったりするんだろ?」

「その通りです。バスターの刀身につく特殊攻撃で『チャージクラッシュ』って言います。オラクルを刀身にまとわせて、一撃で叩ききるための特殊攻撃ですね」

「必殺技的なのか……。神機ってホント万能だな」

「……。……ある意味生体兵器ですからね、柔軟性は高いですよ」

「妾、もっと神機が欲しくなったぞ」

「使えないだろって……」

「延珠ちゃんは機動性に物を言うタイプだから、逆に神機は邪魔じゃないかな?」

「かっこいいではないか!!」

 

苦笑いを返す悠梨だが、その表情はどこか暗いように俺の目には映った。

 

 

―――side悠梨―――

 

 

(ブラッドアーツが使えない……)

 

 

転生してきた直後から、いろいろな戦闘モーションをしてきているけど、「……そう言えばブラッドアーツ使えないな?」と先日ふと気づいてしまった。

 

 

作者<一応ブラッドアーツについて説明を。

 

第三世代神機使い「ブラッド」の「血の力」の発現により使用可能になる特殊な技で、オラクルの力で攻撃が強化される。 通常攻撃が必殺技に進化するというもので、敵に近接武器で通常攻撃を当て続ける事により 覚醒率 が上昇し、100%になるとその攻撃が「ブラッドアーツ」として覚醒・進化する。 特殊な行動をする必要は無く、対応する攻撃をするだけで発動する。 進化した技はヒット数が増加したりアラガミのオラクル弾を無効化したりするなどなど、様々な効果が付加される。

 

作者<以上GE2RBwikiより引用(一部改変あり)でした。また以下BAと略します。

 

 

はいはい毎度説明どーも。

 

実はさっき(前回の話)、蜘蛛型ガストレアをぶっ飛ばす前にわざわざパリングアッパーで一度攻撃を受け止めたのも、BAが発動するかしないか確認するためだったりする。パリングアッパーで発動しないこと自体は想定内といえば想定内なんだけども。

 

―――流石にチャージクラッシュでも使えないとなるとなかなかまずい。

 

僕が多用していたのが、そのチャージクラッシュのBAであり、もしかしたらこれでなら使えるかも、という思いがあった。中でも一番得意とするBAは勿論ジュリウス……『世界を拓く者』と戦うときもセットしていたんだけど、ちょっと特殊で、街中でやるといい感じに被害が拡大しかねないので、BAが使えないことにに気付いてからも試すことが叶わなかった。なので今回、これ幸いとばかりに使わせてもらった……までは良かったんだけど、ここにおいてもBAを使うことできなかった。

 

BAを発動するときは、体の中を血が駆け巡るというか……力で満たされるというか……なんかとにかく表現しづらいけど、何かが体中を駆け回る感じがするんだけど、こっちの世界に来てからその感覚が一度として訪れていない。

 

(……それどころか、血の力自体が消滅してしまっているかもしれない)

 

僕の血の力は『喚起』。仲間の隠された力を引き出すなんていう、実に客観的な判断の下しにくい能力だから、発動してるんだがしてないんだかホントに分かりにくい。僕以外の『ブラッド』のメンバーの血の力はシエルの『直覚』しかり、ナナの『誘因』しかり、ギルの『鼓吹』しかり、そしてジュリウスの『統率』しかり。発動したのがすぐにわかる物ばかりで、プラスの影響を与えるものばかりだった。だから、皆が羨ましくて、「僕の力なんて役に立つのかなー」とか思ったりもしたし、実際にポロッとそう零したこともあった。

 

……それが偶然近くにいたシエルに聞かれてしまい、小一時間怒られたり、励まされたり、まぁとにかくいろいろ言われたのだ。

 

要約していえば、「君の力がなければ、私達の血の力は発現しなかったかもしれないのだから、その力が役に立たないなんて言わないでください」ということだった。なぜこれを伝えるのに小一時間かかったんだ……。

 

……でも、こう言われてうれしかったのは間違いないし、そのテンションのまま出たミッションで思わずウコンバサラとカバラ・カバラを見るも無残に惨殺してしまった。一緒に来ていたナナとロミオ先輩がドン引きしたけどまぁ気にしない気にしない。

 

……あ、さっきのでロミオ先輩は忘れたんじゃなくて、血の力が発言してないから取り上げようがなかっただけなんだからねっ!?(謎のツンデレ風味)

 

……閑話休題。

 

BAが使えないということは、そのまま僕が取れる先述の幅が狭くなることにも直結する。さてどうしたものか……。

 

 

ガサッ

 

 

「「「!!」」」

 

 

近くの茂みで音がした。瞬間、シロガネに変形させていた神機を茂みに向け、いつ敵が飛び出してきてもいいように構える。

 

 

―――side蓮太郎―――

 

 

「……」

「…………」

 

沈黙が場を支配し。

 

「………………あ」

 

それを破ったのは、茂みから聞こえた、少女の物と思われる何とも間抜けな声だった。

 

「「「……『あ』?」」」

 

思わず3人で反復してしまう。そして

 

「お兄さん、私です」

 

そう言葉が続き、にょき、っと茂みから腕が生えた。どうやら攻撃意志がないことを示しているらしい。だが、その右手にはショットガンが握られている。

 

「……悠梨、お客さんだぞ」

「僕な訳ないじゃないですか」

「だよなぁ……」

 

茂みから腕だけ生えているという、ストーキング中でもなかなかお目にかかれそうにない不気味な光景に思わず悠梨に振ってしまったが、元々そんなに期待はしていなかった。

ドロウしてあったXDを改めて茂みに向けて構え直し、茂みに向かって告げる」

 

「……とりあえず顔を見せてもらわねえとなんともならねえ。まず武器を置け」

「分かりました」

 

意外と素直に話が通る。腕が茂みに一旦引っ込み、先ほどのショットガンを俺達に見えるように茂みの前に置いた。そしてもう一度腕だけ茂みから生えてくる。

 

やっぱり何となく不気味ではある。

 

「よし、立て」

 

そう俺がいうと茂みがガサガサと動き、一人の少女が立ち上がった。そして、俺はその顔に見覚えがあった。

 

「……ああ、思い出したぞ。防衛省にいたっけなお前」

「ええ。覚えてもらえていたようで何よりです。千寿夏世と言います」

 

そういうと、夏世と名乗った少女は頭を下げた。

 




最後のところは、どうしても蓮太郎視点の方が動かしやすかったんです……視点移動多くてすみません(汗

防衛省の場面がなかったから夏世ちゃん初登場でございます。夏世好きな方今まで出さなく
てごめんなさい。
そして相変わらず話が進まない進まない。進行ペース遅すぎですよね……分かってはいるんですけど、書いてるとホント一場面だけで終わってしまってどうしたものか。このままだと、1巻分終了が40話を超えかねない!! もうちょっとペース配分考えてみます。

じゃあ礼号組のレベリング戻ります。朝霜いません。辛。

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