浮かれすぎていて忘れていた……。ゆうひさんと薫さんが来るってことはあの事件が起こるのか……
とらハ3の美由希ルートのチャリティーコンサートテロ未遂事件。そして那美ルートの久遠の祟りの封印が解ける事件。
まぁ、転生してから起こりうる事件として想定していたので、どちらもどう立ち回るかは考えてある。
チャリティーコンサートはゆうひさんが出るので当然行くつもりだ。その際に警備に当たる義姉さんの手伝いをしようかと思う。
メインとなる美由希の母に当たる美沙斗さんについては関わるつもりはない。
高町家に任せよう。よその家の問題に口出しすべきではないのだ。
久遠についてだが、これは何としても救い出す。絶対だ!
その為なら薫さんと敵対することになっても、俺は久遠に付く。
いや、薫さんにも久遠を切るという辛い判断はさせない。
那美さんにも悲しい思いをさせない。
本当ならもっと早く久遠を祟りから解放したかったのだが、義姉さんに相談した所、神咲の当代である薫さんにきちんと俺の能力を含め、
説明を行った後に、立ち会って貰った方がいいと言われたのだ。
前に薫さんが此処に来たときは準備が出来ておらず、俺自身も幼すぎた……。
だが、もういいだろう。まだ、小学校低学年という身分だが、もう待てない。近々久遠の封印が解けてしまうから。
ゆうひさんと薫さんが帰ってくる日が近づきつつある今日この頃。
俺はいつも通りの学園生活を送っていた筈だった……
「ねぇ、耕二。あなた魔法は信じる?」
お昼を食べ終え、二人揃ってのんびり…お茶を啜っているところで、予期しない内容の問いかけをアリサがしてきたのだ。
場所を調理室から昼休みも終わり、人気のない屋上へと移した…。
また、授業をサボってしまったが今はそれどころじゃない。
「…なんでいきなりあんな事を聞いてきた?」
「……質問に質問を返さないで。まずは私の問いに答えて。そしたら私も答えるわ」
「………知ってるよ。お前も薄々気が付いてただろ?」
「…そうね。私を助けてくれたあの時……あんなの普通の人が出来るような事じゃないわ。薄々あなたに何か秘密がある事は分かっていた……」
そうだ。あの日にとっくにアリサなら気が付いていた筈だ。だが、今になって何故…
「あなたの問いに答えていなかったわね。私がこんな事を聞いたのはね。あなたの事が知りたいからよ。」
「本当はね。ずっと、ずっと聞きたかったの……。でも聞けなかった。聞いたらあなたとの関係が壊れてしまう気がして……。今まで友達どころか話し相手もろくに存在しなかった私にとって…あなたは特別だった。」
ポツリポツリとありさの独白は続く…
「あなたに会うまでの私は他人に興味はなかった。いつも本を読んで…勉強して…ずっと、ずっと一人で過ごしていた。
でも、あの日…あなたに興味を持った。だから勇気を出して話しかけた……」
「お昼を一緒に食べるようになって、お弁当も分けてくれて、一緒に居るのが心地よくて……だからこのままでもいいって、知りたいって気持ちを心の奥底へと仕舞い込んだ……。でもね、昨日ちょっとしたできごとがあって」
その後はアリサの生い立ちに関わる話だった。
物心ついた時から両親が居なかったアリサは孤児院で育ち、今もその孤児院から学校へ通っているそうだ。
授業料なんかは特待生で全て免除されており、特待生を維持、そして本が好きだった事もあり友達とも遊ばず勉強や読書などをして過ごしていたそうだ。
「先日…孤児院に私を引き取りたいっていう人が現れたの……その人は…まぁ結構年取ったお爺ちゃんなんだけどね。自分の事をミッドチルダの魔導師だと名乗った」
「……っ!?」
「その反応はやっぱり知っているのね?私も普通なら正気を疑ったところなんでしょうけど…耕二の事を知っていたから…だからね、思い切って聞いてみようと思ったの」
なんだ?おい、どうして唐突にそんな話になる?どこの爺だ自重しろ!!突然ぼく魔法使い~♪じゃねぇよ!!変質者か!?童貞か!?
「その人はね、魔導師が魔法を使うのに必要なデバイスっていう……杖に当たるのかしら?を作成している技師で、後継者を探しているそうよ。それで、お眼鏡に叶ったのが私…」
手に北を刺さない不思議なコンパスがあったわね…って、どこの海賊だよ爺!!つか、それロストロギアじゃね?そうだろ!!
「私には才能があるって、高い魔力も持ってるし…訓練すれば魔法も使えるって…」
マジかよ爺!!いや、信用ならん。確かめよう。ダモーレ!
アリサ・ローウェル
魔力ランク:AA
デバイス所持:無
レアスキル:インスピレーション 状況や疑問や謎に対し、突然のひらめきで答えを導き出す能力。
何時ひらめきによる答えが得られるかは本人でも不明。
……マジだよ爺。あんたの目は節穴じゃ無かったよ。
「ふぅ…で、アリサはどうするんだよ?」
「私は受けようと思っている。いい人そうだったし、魔法にも興味あるし…それに……耕二に近づけるから」
な、なんだ。そんな潤んだ目で見るなよ…。
「私ね、あの日以来、男の人が苦手なの。平気なのは幼稚園児以下の小っちゃい子か、年取ったお爺さんくらい。それ以外だとつい、身構えちゃうのよ……耕二以外は」
だから、やめろ。俺には知佳さんという心に……
「今はまだあなたの好みじゃないかもしれないけど、将来絶対にあなた好みの女になって見せる。
ゆうひさんにも薫さんにも知佳さんにも負けないくらいの…だから、忘れないで…」
うわぁああああ!!くぁwせdrftgyふじこlp;!!
「私はあなたの事が好き」
何時も表情をあまり変えない彼女の…
赤く染まった頬と…
初めて見る微笑みに心奪われ……
彼女が居なくなった後もずっと、俺は屋上に立ち尽くしていた。