ハイスクールD×D ~神操機〈ドライブ〉を宿す者~   作:仮面肆

23 / 33
第22話:片鱗、くぅろの力

ライザー眷属の『女王』ユーベルーナが倒されるアナウンスが流れる数分前の頃、グラウンドでは『僧侶』美南風(みはえ)、『騎士』シーリス、『僧侶』レイヴェルを合わせ、この場に残りのライザー眷属達が集結していた。

 

因みに、『僧侶』のレイヴェルはライザーの実の妹である。

 

ライザー曰くーー

 

「妹をハーレムに入れる事は世間的にも意義がある。ほら、近親相姦っての? 憧れたり、羨ましがる者は多いじゃん? まあ、俺は妹萌えじゃないからカタチとして眷属悪魔って事で……」

 

ーーといった理由である。

 

……………涙目で口をトランプのダイヤの形にしながら、あえて言おう。

 

変態だぁー!!

 

……話を戻そう。

 

とにかく、観客を決め込んでいるレイヴェル達の前で、祐斗は『騎士』カーラマイン、一誠は『戦車』イザベラと対峙していた。

 

「はああああっ!」

 

音速の世界。『騎士』の祐斗とカーラマインの両者は得物を交えるが、風を切る音と共に競り負けたのは祐斗の闇の魔剣……『光喰剣』だった。

 

「『光喰剣』が……!」

 

「残念だが、私に貴様の神器は通用しない!」

 

炎に包まれた剣を構えるカーラマイン。だが、祐斗は臆した様子も見せず、逆に不敵な笑みを見せた。

 

「では、僕もこう返そうかな。――残念だけど、僕の神器はこれで全てではないんだ」

 

「何?」

 

怪訝に言うカーラマインに、祐斗は低く唸る様に言った。

 

「凍えよ、『炎 凍 剣(フレイム・デリート)』!」

 

刀身を無くした剣が凍っていく。氷が積み重なり刀身を形作っていき、氷が割れると共に新たな魔剣が現れた。

 

祐斗は冷気を漂わせる氷の魔剣……『炎凍剣』を手にしていた。

 

「バカな! 神器を2つも有すると言うのか!?」

 

炎の剣を横薙ぎに放つカーラマイン。しかし、刃が触れた途端、カーラマインの炎が冷え固まり、そしてパリンと儚い音を立てて、崩れて消えた。

 

「『炎凍剣』。この剣の前では、如何なる炎も消え失せる」

 

「ちぃっ!」

 

炎凍剣を構える祐斗。しかし、カーラマインは攻撃の手を休めなかった。

 

早々に剣を捨て、腰に携えていた短剣を抜き放ち、天にかざして叫ぶ。

 

「我ら誇り高きフェニックス眷属は炎と風と命を司る! 受けよ、炎の旋風を!」

 

すると、カーラマインと祐斗を中心にグラウンドに旋風が作られ、炎の渦が巻き起こる。その結果、『炎凍剣』がポタポタと次第に融けていき、とうとう氷の刀身が無くなった。

 

「熱波で僕らを蒸し焼きにするつもりか……。だけど」

 

そんな中でも、祐斗は余裕の笑みを崩さない。

 

刀身を無くした柄を前へ突き出し、祐斗は力強い言葉を吐き出す。

 

「止まれ、『風 凪 剣(リプレッション・カーム)』!」

 

瞬間、豪快な音を立てていた旋風が祐斗の剣へと吸い込まれていく。

 

祐斗の持つ柄には新たに円状の特殊な刃があり、円の中心に不可解な謎の渦が出来ている。そこに旋風が吸い込まれ、ついには数秒もしないうちに熱風が止み、グラウンドがしんと静まり返った。

 

「き、貴様は一体、幾つの神器を持っているんだ!?」

 

予想だにしない展開に、カーラマインが焦りを含めた疑問を投げ掛けると、祐斗は首を横に振っては否定した。

 

「僕は複数の神器を有してるんじゃない。――創ったのさ」

 

「創る……だと?」

 

「そう……それが『魔剣創造(ソード・バース)』。――すなわち!」

 

祐斗が地面に掌をつける。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

すると、地面から様々な刀身の魔剣が勢いよく飛び出してきた。

 

「くっ……うぉおおおおお!!」

 

カーラマインは短剣を握る力を強め、前へと出た。

 

そんな『騎士』対決の一方、一誠はイザベラの猛攻を必死で回避していた。『赤龍帝の籠手』の強化中は攻撃が出来ず、逃げの一手しかないのだ。

 

【Boost!!】

 

一誠の戦闘が始まり150秒。15回目のパワーアップを知らせる音声が流れ、一誠の準備が整った。

 

「よしっ、ブーステッド・ギア! 爆発しろ!」

 

【Explosion!!】

 

体中に強大な力が集まると同時に、一誠はイメージする。

 

自分の中で、とてもパワーを放出しやすいイメージ……大好きなマンガの主人公の必殺技を……。

 

「ドラゴン波ならぬ……ドラゴンショット!」

 

両手に集めた魔力を感じ、両手を広げて上下に合わせる。その際、合宿で山を消し飛ばした程の威力にならない様にセーブさせながら、魔力の塊を撃ち出す。

 

「ぐわっ!」

 

飛び出た魔力の勢いに負けて一誠が後方に吹っ飛ぶ中、イザベラはそんな魔力を正面で受け止めようとしていた。

 

「イザベラ! 避けろ!」

 

しかし、カーラマインの言葉にイザベラは途端に回避行動を取ると、目標を失ったドラゴンショットは轟音と共に地面を抉りながら、遥か前方へと飛んで行き、次の瞬間には轟音がフィールド全体を響かせた。

 

赤い閃光と轟音が止む頃には、学園の風景が一気に様変わりしていた。

 

「ち、力をだいぶセーブしたつもりなのにな……」

 

目の前の光景に唖然とする一誠。改めて、『赤龍帝の籠手』の異常に身が沁みた。

 

「イザベラッ! その神器はやはり危険だ! その『兵士』を倒せ!」

 

「しょ、承知!」

 

怒号を発するカーラマイン。それに応える様に、肝を冷やして警戒心を露わにしたイザベラは全力で一誠を倒しにかかった。

 

しかし、焦りに任せた一撃を避ける事は今の一誠にとっては容易であり、拳と蹴りのラッシュを防御してやり過ごし、一誠は空いた懐に左拳を叩き込んだ。

 

(触れた! 発動条件クリア!)

 

それを確認した一誠は不敵な笑みを浮かべ、修行の成果を発揮した。

 

「弾けろ、『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』!」

 

叫び、パチンと指を鳴らした瞬間、一誠の目の前でイザベラの衣服が弾け飛ぶ。露わになったイザベラの裸体を一誠は鼻血を出しながらも脳内に記録し、保存を完了させる。

 

これぞ、一誠がアーシアの協力で新たに編み出した新必殺技……『洋服崩壊』。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ライザーといい変態(しょうぶ)である。

 

「なっ! 何だ、これはっ!」

 

「いっけぇぇぇぇ!」

 

反射的に自分の大事な部分を隠すイザベラ。そこに一誠は間髪入れずに、右手の中で作り出した魔力の塊を彼女に放った。

 

「こ、こんな事で――」

 

魔力の波動がイザベラを包み込み、そして赤い閃光と共にこの場から消えた。

 

【Reset】

 

『ライザー・フェニックス様の『戦車』1名、リタイヤ』

 

『赤龍帝の籠手』の効果が切れる音声と共に、グレイフィアの音声が一誠の耳に届いた。

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 

初撃破を成した一誠が歓喜の声を上げる中、カーラマインが及び腰で苦笑を浮かべた。

 

「しかし、酷い技だ。いや、恐ろしい技と言うべきか。お、女の服を消し飛ばすとは……」

 

「……面目ないね。うちのイッセーくんがスケベでゴメンなさい」

 

「ちょ、身もふたもない謝り方すなよ!」

 

礼儀正しく頭を下げる祐斗に一誠はいたたまれなくなる中、新たなアナウンスが流れる。

 

『ライザー・フェニックス様の『女王』、リタイア』

 

ライザーの『女王』ユーベルーナの脱落を知らせるアナウンスだ。

 

その知らせが、ライザー眷属達に大きな衝撃を与えた。

 

「こちらの『女王』が落とされるとは……、そちらの『女王』もなかなかやるようだな」

 

「さすが朱乃さんだ!」

 

素直に賞賛を述べるカーラマインに、自慢げに鼻をこする一誠。しかし、その成果が朱乃でない事を、一誠達は知らない。

 

「そこの『兵士』さん。アレ、何だか分かります?」

 

そんな中、突然レイヴェルが話し掛けながらある方向を指差す。ユーベルーナがやられたにもかかわらず、その表情は余裕の笑みを浮かべていた。

 

その先を追う様に視線を向けると、新校舎の屋上に炎の翼を羽ばたかせる人影と、黒い翼を羽ばたかせる人影を見つけ、黒い翼の人物を見た瞬間、一誠は思わず叫んだ。

 

「部長!?」

 

すると、一誠の通信機器からアーシアの声が飛び込んできた。

 

『イッセーさん!』

 

「アーシア! どうかしたか? もしかして部長の事か?」

 

『はい。今、私と部長さんは学校の屋上にいるんです。相手のライザーさんに一騎打ちの申し出をいただきまして、部長さんが応じたんで、おかげで何事も無く校舎まで入ってこられたんですけど……』

 

アーシアの説明に言葉が出ない一誠へ、レイヴェルは嫌みな笑みを浮かべる。

 

「『紅髪の滅殺姫』、『雷の巫女』、『魔剣創造』、そして『赤龍帝の籠手』。聞いているだけだと尻込みしてしまう様なお名前が並んでおりますけど、あなた方の相手は不死鳥(フェニックス)……不死なのですわ!」

 

「だが、フェニックスにだって弱点がある!」

 

諦めを見せない一誠の叫びを、レイヴェルは鼻で笑う。

 

「精神がやられるまで何度も倒すのかしら? それとも神クラスの力で一撃必殺? あなた達、このゲームに勝とうとか思っているの? お笑いね? まあ、ユーベルーナが倒された事は予想外でしたが、先に『王』を落とした方が勝利です。――お分かりになります? 不死があなた達にとって、どれだけ絶望的か……」

 

レイヴェルが手を振って合図を送ると、残りの下僕悪魔であるシーリスと美南風が一誠を囲んだ。

 

「カーラマイン。その『騎士』の子はあなたに任せますけれど、あなたが負けたら私達は一騎打ちなんてむさ苦しい事はしませんわよ? これ以上、フェニックス家の看板に泥を塗る訳にはいかないの。いいわね?」

 

レイヴェルの迫力のある言葉にカーラマインが渋々頷いた……………その時だった。

 

「っ!」

 

カーラマインの横から野球ボール程の大きさの魔力の塊が迫ってきたが、カーラマインは短剣で簡単に弾いてしまった。

 

「なっ!?」

 

しかし次の瞬間、カーラマインは驚愕する。

 

弾いた魔力の塊の軌道上に小さな八卦の魔方陣が現れては跳ね返り、更に跳ね返った魔力の塊の軌道上に同じ八卦の魔方陣が現れては跳ね返る。

 

反射反射の繰り返し。

 

次第に反射の感覚が短くなり、多くの魔方陣が現れては消え、現れては消え……魔力の塊が一誠やライザー眷属達の空間をめまぐるしく乱舞する。遂には魔力の塊はグラウンドにいる者達の視界に捉える事はなく、跳ね回る音だけが不気味に響き、現れては消えていく魔方陣しかなかった。

 

そして――

 

「……………っ!?」

 

美南風は背中に衝撃を感じると共に、顔面から地面へと盛大に激突してしまった。

 

「な、なんですの!?」

 

いきなりの事に混乱するレイヴェルやライザー眷属達だが、一誠と祐斗はこの現象を知っている。

 

「加勢しますよ、2人共」

 

グラウンドに現れたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であり、先程の攻撃は合宿中にくぅろが編み出した特殊な射撃技能……『跳び跳ねる兎(リフレクト・ラビット)』である。

 

「「くぅろちゃん!」」

 

くぅろの登場に一誠と祐斗が驚く中、辺りを見渡してからくぅろは2人に訊ねる。

 

「……御主人様はまだ来てないんですか? 通信機器にも連絡したんですが、出てくれなくて……」

 

「吉川? いや、俺はまだ会ってないけど……」

 

「僕もまだだよ。でも、陣地に近付いた『兵士』を倒したから、向かっていると思うけど……」

 

一誠達の言葉にくぅろが肩を落としてしまう中、フィールド全体を揺るがす程の爆音が響き、もしやと思い一誠達は屋上を見上げる。

 

そこで繰り広げられていたのは、紅い魔力と炎の魔力がぶつかりあっており、次第に煙が晴れてはリアスとライザーが対峙していた。

 

だが、制服の所々が破けているリアスに対し、ライザーに至っては服すら無傷だった。

 

すると、くぅろが一誠に促す様に言う。

 

「イッセーさん。ここは私に任せてリアスさんのところへ行ってください」

 

「えっ、でも――」

 

「早く!」

 

くぅろが更に強く促すと、一誠は決意を固めて強く頷いた。

 

「……分かった! 頼んだぞ!」

 

この場をくぅろに託し、一誠は走り出す。

 

「まさか、このまま行かせるとお思いですか? シーリス!」

 

「御意!」

 

レイヴェルに促され、シーリスが背中に背負った大剣を抜いては背を向ける一誠に飛び掛かろうとする。

 

「させない!」

 

しかし、それはハンドガンに備わった挿入口に闘神符を入れ、シーリスに向けてくぅろが撃った()()()()()()()()によって阻まれてしまった。

 

「ごほっ、がはっ! 一体――」

 

その時、シーリスに変化が起こった。

 

「アハハハハハハ!! い、一体何だったのだ!!」

 

煙幕を少し吸い込み咳き込んだシーリスが、大声で爆笑し始めたのだ。

 

「シーリス! いきなりどうしたんですの!?」

 

説明しよう。先程、くぅろが撃ったのは【木】の闘神符の効果で喜怒哀楽を無差別で発動させてしまう特殊な弾丸なのだ。

 

そしてそのハンドガンは、合宿中にくぅろが自身の魔力で創り上げたハンドガンであり、くぅろは『闘神銃(とうじんじゅう)』と名付けている。

 

基本的な弾丸はゴムの様に跳び跳ね回る魔力の弾丸なのだが、各闘神符を闘神符専用挿入口に入れる事で、様々な弾丸を撃ち出す事が出来る。

 

【金】の闘神符なら速度の速い砲丸。【木】なら状態異常を引き起こす花粉や胞子の煙幕弾。【壁】なら念じた角度で展開する小さな障壁で、【壁】だけは1枚につき数十発も撃てるのだ。

 

尚、闘神銃の構造を参考する際、合宿前に偶然見た特撮番組に出てきた()()()()()()()()()()()()()()()()使()()を参考にしたと、後にくぅろは語る。

 

話は戻り、新校舎に一誠の進行を許した事でレイヴェルは歯痒い思いでくぅろを睨み付け、起き上がった美南風も鋭い視線を向けていた。

 

「ひっく……悲しくないのに涙が……」

 

煙幕の効果が切れないシーリスが涙を流して泣いている中、くぅろは自信を持って祐斗に言う。

 

「祐斗さん。私は3人の相手をしますので、あなたは『騎士』の人を倒してくださいね」

 

すると、悟ったのか祐斗が訊ねる。

 

「くぅろちゃん。もしかして、()()をするのかな?」

 

祐斗の言葉にくぅろは頷くと、合宿で編み出した力を解放させた。

 

「……ワオォォォォォォンッ!!」

 

遠吠えと共に体が輝くくぅろ。

 

するとどうだろう。頭にはピンとした犬耳、腰とお尻の境界線の部分にふさふさとした尻尾、口元には牙が生えたのだ。

 

これがくぅろの目覚めた力。犬耳と尻尾、牙を生えさせる事により獣特有の身体能力が発揮され、戦闘力を大幅に上げさせる『半獣人化』なのだ。

 

「獣人ですって!?」

 

「獣人じゃない……と思う」

 

レイヴェルの言葉にくぅろは微妙な否定をして首を傾げるが、すぐに表情を戦闘時に移行した。

 

「『無音暗殺者』、狗牟田・O・くぅろ。――参ります」

 

刹那、低く唸る様な声を出したくぅろの姿が、レイヴェル達の視界から消えた。半獣人化により『騎士』に匹敵する速度を手に入れた事で、少し力を入れただけでくぅろは美南風の目前に迫った。

 

「ずっと寝てて」

 

結果、くぅろは呟いた瞬間に『闘神銃』の銃口を躊躇なく美南風の腹部に押さえ付けては引き金を引き、【水】の闘神符による弾丸が美南風の全体を包み、地面に貼り付かせた。

 

「み、身動き取れません!」

 

美南風は仰向けでジタバタするが、【水】の闘神符による粘着弾が美南風の動きを殺していた。

 

「美南風は脱出に専念しなさい。――シーリス! 何時まで泣いているのですか! 向かいなさい!」

 

「承知ぃ!!」

 

レイヴェルの怒号の下、煙幕の効果で憤怒の表情のままくぅろに飛び掛かるシーリス。背中の大剣を構えるその姿は、獲物を襲う獅子の様だった。

 

しかし、くぅろは大剣を軽々と回避し続け、隙あらば『闘神銃』を発射してはダメージを与えていった。

 

「面倒なタフさ。……祐斗さん」

 

すると、くぅろは祐斗に声を掛けると同時に、片手で何かをジェスチャーした。

 

「……分かったよ!」

 

作戦会議で行ったジェスチャーの意図を悟った祐斗。カーラマインの短剣を弾くと、すぐさま後退した。

 

「逃がさん!」

 

しかしカーラマインは祐斗を追い跳び掛かると、祐斗との幾度かの唾競り合いを行っていた。

 

「祐斗さん」

 

シーリスに弾丸を撃つ中、声を掛けると同時にくぅろはカーラマインに向けて撃つ。だが、カーラマインには簡単に避けられてしまい、離れた地面に着弾してしまった。

 

次に狙ったのはレイヴェル。しかし狙いは外れ、後ろの地面に着弾。

 

そしてシーリス、美南風にも撃つが全て外れる。シーリスには避けられ、美南風は動けないにも関わらず、すぐ横の地面に着弾していた。

 

その光景に、レイヴェルは疑問を抱く。

 

(あの跳ね回る魔力を正確無比の射撃で跳弾させていたのに、今は全く命中しませんわね? そう言えば、その魔力も先程の様に跳ねる事も……………)

 

もしやと思い、レイヴェルは今までのくぅろの行動を思い出す。

 

ジェスチャー後の数回の射撃の内、シーリスに向けて撃ったのは跳ねる弾丸だったが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「まさか!」

 

その弾丸が着弾した場所をレイヴェルが確認した瞬間、その答えが浮かんでしまった。

 

その場所を見ると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ジャンプ!」

 

その瞬間、くぅろは一言大声で叫ぶと同時に『闘神銃』を自分の真下に向け、高く跳躍しながら弾丸を放った。

 

そして着弾した瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ガハッ!?」

 

「ごふっ!?」

 

「へぶぅっ!?」

 

その結果、空間にいたカーラマイン、シーリス、美南風は石柱の餌食にあい、光に包まれて消えてしまった。

 

『ライザー・フェニックス様の『騎士』2名、『僧侶』1名、リタイヤ』

 

「……さすがの威力だね、くぅろちゃん」

 

アナウンスを聞きながら、あの空間から回避した祐斗は合宿を思い出していた。

 

闘神符の使い方で数枚を用いた使い方は、現時点で2種類ある。

 

1つは、八雲の専用技術である統合符。そしてもう1つは、一定位置に設置して行う闘神符の結界であり、闘神符を使える者なら誰でも使える技術だ。しかも、その結界は使用者の任意で、防御にも攻撃にも応用出来る。

 

その技術を、くぅろは合宿中に身に付けると同時に、『闘神銃』に応用したのだ。その際、『闘神銃』の構造で闘神符を数枚ストックする事を可能とし、先程見せた【土】の闘神符の攻撃結界を行ったのだ。

 

「この魔力の威力……。リアス様の下に、あの様な方がいたとは……」

 

そんな中、レイヴェルが炎の翼を羽ばたかせて空中で留まっていた。どうやら先程の攻撃を予見し、いち早く空中で回避した様だ。

 

「ウォォォォォッ!!」

 

ガシッ!!

 

「きゃあああああっ!?!?」

 

しかし留まっていた結界、【動】の八卦の魔方陣の上に乗ったくぅろがレイヴェルに突撃しては腕を掴み、地面に激突して土煙が大きく広がった。

 

「くぅろちゃん!」

 

心配して駆け寄る祐斗。だが、土煙で2人の姿は見えず、中から声だけが聞こえる。

 

「痛たたたたたっ! ちょっと、髪が乱れるではでありませんか!?」

 

「これは勝負。そんなことでギャーギャー騒がないのですよ鳥娘」

 

「だ、誰が鳥娘ですって!!」

 

「それに、このゲームでいっぱい相手を倒して活躍すれば、御主人様に1つ可能なお願いを叶えてくれる。それで私は、今後から――」

 

「……いい加減に――」

 

カッ!!!

 

「しなさぁぁぁぁぁいっ!!!!」

 

刹那、土煙の中から赤い輝きが発した瞬間、レイヴェルの今までにない怒声が聞こえた。

 

「キャイィィィィィ――」

 

その結果、レイヴェルの怒りの炎でくぅろは遥か彼方へと吹っ飛ばされてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

カーラマイン、シーリス、美南風が倒された頃、テニスコートに2つの影がいた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

1つは、木に背中を預けて座り込んでいる八雲。息切れが激しく、顔色も披露の色が濃い様子で、『二十四気の神操機』も今は装着されていない。

 

「大丈夫ですか、八雲くん?」

 

もう1人は、そんな八雲を心配掛けながら隣に座っている朱乃だった。ある程度、魔力も回復したのか何時もの制服を身に纏い、借りていた上着を八雲の足に広げていた。

 

「……何とか……ですが……体力も……符力も……限界で……休息を……多く……取らない……と……」

 

途切れ途切れの中、朱乃は八雲に訊いてみた。

 

「それにしても、アレがコゲンタちゃんの言っていた切り札ですか……」

 

「……まぁ……そうですね……」

 

その言葉を肯定すると、2人は目の前の光景を見つめた。

 

既にテニスコートは無く、辺りの木々も倒れている物や斬り倒された物と、朱乃とユーベルーナが戦っていた時よりも無惨な光景だった。

 

途中、レイヴェルの退場が知らされるアナウンスが流れた後、ある程度落ち着いた八雲は朱乃に言う。

 

「……朱乃先輩。アレは……リアス部長や皆には、まだ内緒にしてください」

 

「え……?」

 

唖然とする朱乃に、八雲は続けて言う。

 

「今のままじゃあ、余程の事が無い限り使えませんからね。鍛え上げて、完全に物にする迄は、ね?」

 

そう言い、八雲は口元に人差し指を立てると、暫く目を閉じて考えていた朱乃が口を開く。

 

「……分かりましたわ。――うふふ。2人だけの秘密、ですわね」

 

八雲と同じ様に指を立てる朱乃。仲睦まじい雰囲気を暫く堪能した後、朱乃は八雲の側を離れた。

 

「では、私は部長の所に向かいます。八雲くんは、ここで十分に休んでくださいね」

 

「はい。回復次第、俺も向かいます」

 

そして八雲は微笑むと、朱乃は翼を広げて行ってしまった。

 

「……コオォォォ……」

 

そしてすぐ、八雲は回復を早める為に真終牙黄流拳法が呼吸法……『波津鬼(はづき)』を使用した瞬間、それは起こった。

 

ドンッ!!!!

 

「っ!?」

 

胸に響く様な衝撃の瞬間、フィールド全体を赤い光が覆った。

 

「今のって……?」

 

立ち上がっては視線を巡らせる八雲。すると、新校舎の屋上でライザーと対峙する、赤い龍を模した鎧を纏った人物を視界に捉えた。

 

「――ィィィィィン!!!」

 

「ちょっ!?」

 

同時に、吹っ飛ばされたくぅろが、目前に迫っていた。




因みに『波津鬼』のモチーフは『波紋』です。

ですが、回復や補助といった機能しか無い感じです、はい。

次回、イッセー対ライザーです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。