ハイスクールD×D ~神操機〈ドライブ〉を宿す者~ 作:仮面肆
「まずは、小手調べ……!」
呟きながら疾走する八雲を迎え撃つ様にミラが駆け出す。棍の間合いに八雲を入れると、透かさず顔を狙い突き出す。
しかし八雲は首を傾けて避け、すぐに次の攻撃が来るが、今度は掌で棍を上に弾いて往なした。
「ふっ!」
そして、即座に拳を繰り出してはミラの体を突き飛ばす。
「ぐぁっ!?」
刹那、ミラは拳を当てられた部分から激痛が走り、膝をついてしまった。
(な、何なの!? 人間が繰り出す拳じゃない! あの神器の力とでもいうの!)
「……よし。効果は抜群!」
驚愕するミラに対し、八雲は
八雲が巻いているバンテージはホリンが符力を練り込ませた物であり、さらに聖書の文字を書き込んで出来た特注品である。この装備により、悪魔相手に大打撃を与える事が可能となったのだ。
「……なかなか、やるじゃない!」
「それは……どうも!」
両者が激突する一方、シキガミ達も激闘を繰り広げていた。
「おいどんの力を見せるでごわす!」
そう言い、イソロクは陰陽鉄球“
だが、その攻撃にイルは跳躍や体をひねるといったアクロバティックな動きで次々と避けていき、イソロクの攻撃はかすりもしなかった。
「バラバラ解体ー!」
そして、朝洞塊の一瞬の隙にイルはイソロクに跳び掛かり、チェーンソーを振り下ろした。
「なんの!」
ガギギギギギッ!!
「えええええっ!?」
瞬間、イルは驚愕した。
振り下ろしたチェーンソーは確かにイソロクに直撃した。しかし、直撃場所はイソロクの立派な角であり、チェーンソーとの唾競り合いが出来てしまったのだ。
「おいどんの属性は金。並み大抵の攻撃なんぞ、効かんでごわす!」
「離震坎坎!」
刹那、ミラと距離を取った八雲は印を切ると、イソロクは角を振ってはイルを吹っ飛ばした。
「いくでごわす! 必殺、
そして、イソロクの角が眩い光を放ち、雷撃がイルを襲う。
「うわっ!?」
間一髪だった。吹っ飛ばされたイルは見事に着地し、イソロクが放つ雷撃を回避した……………その時だった。
「き、きゃあああああ!!」
イルが着地した瞬間、地面から八卦の陣が浮かんでは蔓が生え、イルを拘束したのだ。【木】の闘神符の力だ。
そんな中、イルを気に掛けていながらコゲンタと戦っているネルが驚く。
「罠!? まさか、相手も被害に合う可能性があるのに仕掛けているの?」
罠は、相手が通る可能性がある場所に設置するのが基本的だろう。もしも味方、それか仕掛けた本人が罠に掛かってしまうとなれば、その罠は邪魔であろう。
ましてや、相手と戦う大きな空間に設置すると、それこそ邪魔で仕方ない。罠を仕掛けた本人はあまり動けないのだから。
しかし、八雲はそんな場所でも大きく動いている。今もミラの攻撃を最小限に避け、致命傷を逃れているのだ。
無論、罠に使っている闘神符にはライザー眷属のみ反応する様に仕掛けているので、八雲は気にせず動いてるのだが……。
「あんまり周りを気にしすぎだぜ!」
言われてネルは意識をコゲンタに向けたが、それが遅かった。コゲンタの振るう西海道虎鉄が、ネルのチェーンソーを真っ二つに斬ったのだ。
「しまっ――」
「震坎兌離!」
「必殺、弧月拳舞!!」
その光景を八雲は見逃さなかった。
八雲が一瞬だけミラの攻撃を回避しながら印を素早く切り、コゲンタは弧月拳舞を繰り出す事が出来たのだ。
その結果、ネルはコゲンタの攻撃を受けてしまい、光に包まれながらその場で消えてしまった。
「離離兌震!」
すかさず新たな印を切る八雲。ネルがやられてすぐにでも拘束を解こうとするイルに、目を怪しく光らせたイソロクは至近距離でそれをした。
「必殺、
顔の前でのただの合掌。その瞬間――
ドガァァァァァアンッ!!!
周囲に爆風を起こし、周りの木々と共にイルを吹き飛ばし、光に包まれてはその場で退場させてしまったのだ。
『ライザー・フェニックス様の『兵士』2名、リタイア』
「よくも2人を……!!」
ネルとイルがやられた事に、ミラは八雲の実力を改めた。
悪魔相手で互角以上の戦闘力に、別行動を取りながら周りの状況を把握してタイミングよく指示を出す判断力。そんな前線に出ながら指示を出す指揮官タイプの様な相手は、自分達が知る中でもゲームの上位ランカーだけであった。
「残り1人だ!」
「頑張るでごわすよ、八雲!」
すると、八雲とミラの一騎討ちを観戦する様にコゲンタとイソロクは離れ、イソロクに至っては徳利と盃を取り出して酒を飲んでいた。
その時、遠くの方で閃光と共に雷の轟音が聞こえては八雲達は視線を向けていた。その方向は一誠と小猫が向かった体育館からだ。
『ライザー・フェニックス様の『兵士』2名、『戦車』1名、戦闘不能』
何ごとかと思った矢先、審判を務めるグレイフィアのアナウンスがフィールド中に響いた。
「よっしゃ! イッセーと小猫、上手くやったな」
いい結果に八雲は微笑みながら喜びをあらわにし、対するミラは続けてやられる眷属達のアナウンスに大きく目を見開いていた。
だが、ミラは気を取り直して八雲に集中する。
「こうなったら、あなただけでも倒してみせる!」
その言葉と共に、ミラは先に動いた。高く跳躍し、先端に炎を灯した棍を勢いよく振り下ろす。
「そう言えば、棍の礼がどうとか言ってたな。まさか、俺の神器の力だと思ったのか?」
しかし、八雲はある闘神符を取り出しては右手に効力を宿し、ミラの棍を掴んだ。その瞬間、棍に灯っていた炎は水を掛けられた様な煙が発生して消えてしまい、その光景にミラは驚愕して動きを止めてしまった。
「炎がっ!?」
「【水】の闘神符の力を右手に宿した。ある程度の炎なら掴んで消せるさ。――さて、ここから棍の破壊の種明かしだ」
言い終わる瞬間、八雲は掴んだ手の指を一瞬だけ力を込めた。
するとどうだろう。掴まれた棍の部分に亀裂が走り、前回とは違い瞬時に棍をへし折ったではないか。
「そんな、新調して硬度を増した私の棍が……!」
「これが正体……武器破壊に特化した技だ。ダイヤでも亀裂を出せば簡単に割れると同じ様に、武器を掴んでは無理矢理亀裂を作って壊す……と、親父に教わった」
そして、八雲は掴んでいた棍を投げ捨てては言った。
「技名を言いながら放つのは少し照れるが、これが真終牙黄流拳法が技の一つ……『
「っ!」
しかし、棍を破壊されてもミラは挑んだ。棒術以外にも拳法を扱えるのだが、相手のレベルが上だった。
「え……?」
その証拠に、何時の間にかミラは空中に放り出されていた。
(掌低を繰り出したのに、何時の間に……!?)
内心ミラが焦り冷静さを失っている中、手を合わせていた八雲は腰を落として例の構えを取りながら、落下するミラに言った。
「これが合気道の要領で行う真終牙黄流拳法が一つ、『
刹那、八雲は拳を突き出しては拳圧を飛ばし、それに乗せた闘神符をミラに向けた瞬間、闘神符が爆発したのだった。
そして、光に包まれながら落下するミラに言い放った。
「『
因みに、先程の闘神符は【火】の闘神符2枚を合わせて出来た統合符であり、威力が上がった結果の爆発である。
『ライザー・フェニックス様の『兵士』1名、リタイア』
すぐに八雲の勝利を告げるアナウンスが流れ、コゲンタとイソロクが近付いてくる。
「お疲れ、八雲」
「さすが八雲でごわす」
「お前らもお疲れ様。――そっちも、いざと言う時の為に待機してありがとよ」
言葉を交し合った後、八雲は結界を解いては近付く気配を感じながら森側に声を掛けると、あるシキガミが姿を現した。
現れたのは、柴犬に似た獣人的な外見を持ったシキガミ。捻り鉢巻きにサングラス、そして白い特攻服の姿は、宛ら暴走族の様であった。
「いえいえ。まあ、あっしが待機しても意味なんてありませんぜ。何たって、親分が全員倒すと自信を持っていたんでね」
しかし、服装とは裏腹に気さくな雰囲気で話し掛け、ニヒルな笑みを向けては八雲もやれやれと微笑みを返した。
このシキガミの名は『
「そう言えば、あいつは?」
八雲の質問にオニシバは答えた。
「あいつなら最後の『兵士』が投げられた時に移動しやしたぜ。体育館の方向に進んでったみたいですが――」
刹那、オニシバの言葉を遮る様に本日5度目のアナウンスが流れた。
『リアス・グレモリー様の『戦車』、リタイヤ』
それは、グレモリー眷属と八雲達に驚きを与える結果となり、八雲は悔しげに拳と掌をぶつけた。
「小猫……………くそっ!」
あらかじめリアスから説明は受けている。
ゲーム参加者が戦闘で再起不能と判断された場合、リタイヤとなってフィールドから強制的に転送され、その者は転送先の医療施設が整ったエリアで治療を受けるのだ。それは小猫だけでなく、先ほど倒したライザー眷属達も同様の処置を受ける事になっている。
別に死んだ訳でもないのだが、仲間がやられたという事実は受け入れがたいものだ。
(全員守るって、朱乃先輩に言ったのによ……)
「八雲」
悲しみに思考が染まる八雲に、その思考を感じたイソロクが八雲の肩に手を置いて言う。
「悔しいのは分かるが、まだ勝負は終わってないぞ。勝利報告を小猫に届ける為に、今は敵陣へ向かうのが得策でごわすよ」
「……………そうだな。ここで落ち込んでちゃ……!」
パンッ!!
「いけないな!」
そして、イソロクの言葉に八雲は気合いを入れる為、自身の両頬をおもいっきり叩いたのだった。
――聞こえるか、八雲。
そんな中、八雲の心に声が聞こえた。フサノシンだ。
実はゲーム開始時、八雲は作戦会議後にフサノシンを降神し、【隠】の闘神符で姿を消した状態にさせた後、上空から敵の動きを偵察させていたのだ。そして赤銅一族であるイソロクの『心』を司る力を『二十四気の神操機』の力により貸してもらい、
これが、八雲が10日間の修行で身に付けた力の一部。今の八雲は、
「フサノシンか。どうした?」
――今、体育館で戦闘が行われてるぞ。朱乃姉ちゃんと、相手は小猫を倒した『女王』だ。
「『女王』対決か。心配だな……」
心配するのは、先程の朱乃の攻撃である。
雷は威力が強力な分、連発が不可能であり魔力を大きく消費する。相手のポテンシャルによるが、相手が万全の状態なら今の朱乃に不利だ。
そしてもう1つが、相手がライザー眷属である事だ。ルールブックを読んでいたのが幸いしたと同時に、八雲は嫌な予感を感じたのだ。
(相手はフェニックス家。『王』か、実力のある眷属が、『アレ』を所持している可能性が大きい。だったら……!)
短い思考を終え、八雲はシキガミ達に命令する。
「コゲンタとイソロクは戻ってくれ。フサノシンは戦闘状況を随時報告。オニシバは俺と共に体育館に向かい、朱乃先輩に加勢するぞ」
【Lend!!】
言い終わると同時に八雲は右手の輝きを飛ばした。その輝きはフサノシンに貸した力と同じ輝きであり、それは体育館の方へと向かって行ったのだった。
「これであいつからも情報を聞ける。――オニシバ、先に向かってくれ!」
「あいさ、了解」
そして【動】の闘神符の八卦の陣に八雲は乗ると、急いで体育館へと向かうのだった。
「……………」
その移動中、オニシバは八雲が向かう進路と共に、今後の八雲が突き進む『進路』が見えた。
(この道は険しいが、親分の今後の成長に一役買ってくれる様だな……)
霜花一族は『進路』を司る一族。契約者が進む道を導く、又は予想しては忠告する事を生業としているが、今回見た進路に関して、オニシバは八雲に伝えなかった。
「まあ、馬に蹴られて死にたくないんでね……」
オニシバが呟く中、遠くからの爆音と共にフサノシンから八雲へと連絡が入った。
――八雲。朱乃姉ちゃんがテニスコートに移動してるぞ。
そして、八雲達は爆音が響くテニスコートへと進むのだった。
◆
『ライザー・フェニックス様の『兵士』2名、リタイア』
新たなアナウンスが響く中、朱乃はテニスコート上空でライザーの『女王』であるユーベルーナと戦っていた。
朱乃の雷とユーベルーナの爆発。異なる魔力がぶつかり合うが、競り勝ったのは朱乃であり、ユーベルーナは衝撃で地面に墜落した。
「『雷の巫女』、ここまでとは……」
ダメージの溜まった体を起こしながら、ユーベルーナは忌々しげに朱乃を見上げる。
因みに、『雷の巫女』とは朱乃の通り名である。
曰く、リアスがまだ正規のゲームが出来る年齢ではないので知る人ぞ知る存在だが、一部の者の間では有名になっているらしい。
「でも、あなたの魔力も既に残っては――」
「ご心配なく」
ユーベルーナの言葉を遮る朱乃。巫女衣装はぼろぼろで少々きわどい事になっているが、その瞳はSの輝きが爛々と煌めいていた。
「少し休めば回復いたしますもの、『
「……ふんっ」
朱乃が付けた通り名にユーベルーナは視線を鋭くなる。だが、それは一瞬の事であり次は余裕の笑みを浮かべた。
「そんな余裕……あるのかしら?」
「……それは!?」
そして、ユーベルーナは懐から小さな小瓶を取り出した途端、朱乃の顔色が変わった。
「かかったわね」
そんな中、ユーベルーナは小瓶の蓋を開けて中身の液体を浴びた。
その中身こそ、『フェニックスの涙』だ。
フェニックスの涙。どんな傷も完治させ魔力も回復させる規格外のアイテムだが、ルール上2つまで使用する事が認められている。その1つを、ユーベルーナは所持していたのだ。
「ふふふ。これであなたに勝ち目はないわね!」
ドォンッッ!!
ユーベルーナは朱乃に爆発を向けた。完全回復した一撃は強力であり、ユーベルーナは勝利を確信した……………かに見えた。
「あら、見掛けない障壁ね?」
煙が晴れて最初に見たのは、複数の八卦の陣が朱乃を守る様に盾となっていた。ユーベルーナの腕が向けられた瞬間、朱乃は【壁】の闘神符を投げたのだ。
「くぅっ!」
しかし、爆発の直撃を防ぐ事は出来たが衝撃に耐えきれず、朱乃は地面へと墜落してしまった。
悪魔の翼を広げてユーベルーナが飛翔した。立場が逆転している。
「なかなか楽しかったわ、雷の巫女さん。それじゃあ、
そして、ゆっくりと腕を向けるユーベルーナを、朱乃の視界に入る中、朱乃は心の中で謝罪していた。
(ごめんなさい、リアス。私はここまでの様です。でも、あなたならきっと――)
ヒュンッ!
「……………え?」
刹那、視界に入った何かに朱乃は謝罪を止めていた。
ドゴォンッ!!
それは一直線に向かい、爆発の元である魔力を居抜き、ユーベルーナの目の前で爆発してしまった。
「な、何だったの!」
驚愕するユーベルーナ。
「今の矢は……まさか」
先程の攻撃に覚えがある朱乃。
「間一髪であったな、姫島朱乃」
そんな2人の横から、ある者が現れた。
バッタに似た青い機械人的の外見。右手に持つ陰陽ボーガン“
「ジュウゾウちゃん!」
その瞬間、朱乃に呼ばれたシキガミ……
「ちゃん付けで呼ぶなと言ったでござろう、姫島朱乃!」
立ち上がっては突っ込むジュウゾウ。因みに、朱乃はシキガミ達全員をちゃん付けで呼んでいるが、ジュウゾウの様に一部のシキガミには不満気味なのだ。
「怪人? いや、召喚獣か? まさか、今のはあなたがしたのか?」
「ご名答。
ジュウゾウの言葉にユーベルーナは驚くが、それは一瞬だけでまた余裕の笑みを浮かべた。
「いい狙撃だったわ。だけど、あなたが加勢しても無駄な事よ。既に私は完全回復した。虫が増えただけで――」
「必殺、
刹那、ユーベルーナの言葉を遮る様にジュウゾウは黄昏から符力の矢を連発したが、ユーベルーナは間一髪で回避した。
「……いきなりね」
鋭い視線を向けるユーベルーナに対し、ジュウゾウは背中の羽で飛びながら閃光空矢射を射ち続ける。
「貴殿が喋り続けているだけでござろう。戦闘の最中、随分と余裕でござるな。某にとって、それは隙だらけだ!」
ボーガンの一閃と爆発がテニスコート上空で飛び交う。まさに戦場だった。
「しつこいわ――」
刹那、ユーベルーナの背後から気配を感じ取り、ユーベルーナは咄嗟に障壁でガードした。
背後にあるのは、テニスコート近くの森林。そこから符力による銃弾の射撃全弾がユーベルーナに向かい、障壁の一点を集中射撃しては障壁を破壊した。
「かはっ!」
その結果、ユーベルーナは2度目の墜落を経験したのだった。
「今のは、オニシバちゃんの
頭に思い浮かべた瞬間、朱乃の耳にその者の声が聞こえた。
「朱乃先輩!」
現れたのは、【動】の闘神符の八卦の陣に乗ってはそこから飛び降り、朱乃の側へと駆け寄る八雲だった。
「八雲くん。そちらは終わったのですね」
「何とか終わり……って、ストップ、ストップです!」
すると、八雲は朱乃の現在の格好に気付き、朱乃に静止を求めた。先程墜落したのが原因か、上半身は既に裸だった。
目のやり場に困る八雲は上着を脱ぎ、朱乃に羽織らせる。
「取り敢えず、魔力が回復するまで着てください」
「私は大丈夫ですよ?」
「……一応、お偉いさんも見てる訳ですし。それに仲間の裸を観戦者に見られるなんて、俺が嫌ですよ」
頬を掻きながら言う八雲の気遣いに朱乃はほんのりと頬を染めていたが、八雲は上半身裸の朱乃に背を向けていたのでその顔を見れないでいた。
「……私の目の前でイチャイチャしないでもらいたいわね」
しかし、そんな様子をユーベルーナは見ていた。そのせいか、不機嫌そうに2人を見つめては腕を向けては爆発させた。
「おっと」
しかし、八雲は2枚の【壁】の闘神符を使用した統合符による八卦の陣の模様があるドーム状の障壁を張り、爆発と衝撃を完全に防いだ。
「何時まで保てるかしら!」
だがユーベルーナは諦めない。障壁を破壊するまで爆発を数回向けて放つ中、八雲も右腕を突き出しては印を切る。
「兌兌坎離! 兌震離兌!」
「うおおおおっ!」
刹那、八雲達の背後から飛び出したオニシバが現れ、高速で回転しながらユーベルーナに突進を仕掛けた。
「必殺、
弾丸の如く一直線に向かうオニシバ。しかしユーベルーナは障壁を張り、オニシバとの競り合いが発生したかに見えた。
「必殺、
しかし、ジュウゾウの黄昏から発射された矢がユーベルーナの障壁に刺さった瞬間、その箇所から障壁が崩れていき、オニシバが障壁を貫通してしまったのだ。
これぞジュウゾウの必殺の技、十方暮鋼崩。
空気中の水分を矢に凝縮させては相手の金属装備を錆びさせる能力を持つのだが、それは金属以外にも有効である。その証拠に、ユーベルーナの張る障壁を弱らせている。
「舐めないで!」
ドガァンッ!!
「うおぉっ!?」
しかし、ユーベルーナは障壁が破られた瞬間にオニシバに爆発を向けた。近かったせいで衝撃を浴びたが、オニシバを地面に叩き付ける事に成功した。
「くっ、オニシバ戻れ!」
八雲は地面に倒れたオニシバを回収した。そして、内心冷静に状況を分析を始めた。
(そろそろ俺の符力が少なくなってきたな。ジュウゾウの連絡では相手の『女王』は液体を浴びたと聞いたから、恐らくフェニックスの涙を使ったんだろう。向こうが完全有利な状況に対し、俺と朱乃先輩は符力が少ない。つまり、この状況を打破するには……)
「八雲くん?」
神妙な顔つきの八雲に気付いて朱乃は声を掛けるが、八雲はこの場にいる者に、静かに聞こえる様に言う。
「ジュウゾウ、フサノシン、戻ってくれ」
「ぬ?」
――おいおい、偵察は終いでいいのか?
「
「!?」
――!?
『それって!?』
刹那、シキガミ達が反応を見せた。その中でもコゲンタが異様な反応を示しては霊体となって現れた。
『……するんだな』
「ああ。今が……」
視線をユーベルーナに向ける八雲。その瞳は決意に満ち溢れ、しっかりと捕らえていた。
その瞳に何かを感じたのか、ユーベルーナの額に汗が滲む。
(雰囲気が変わった? それに……)
そして――
「切り時だ……コゲンタ!」
『二十四気の神操機』が輝いた。
それから暫くして、再びアナウンスが流れた。
『ライザー・フェニックス様の『女王』、リタイヤ』
ゲーム状況
グレモリー眷属:残り7人
“王”
“女王”
“騎士”
“僧侶”
“兵士”
ゲスト×2
ライザー眷属:残り6人
“王”
“騎士”×2
“僧侶”×2
“戦車”×1
後3、4話で終われたらいいな……。