ハイスクールD×D ~神操機〈ドライブ〉を宿す者~   作:仮面肆

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第13話:聖女の転生

「……アーシア」

 

レイナーレを倒した後、一誠は静かに涙を流していた。

 

目の前で眠るアーシアの名を呼ぶが、アーシアが返事を返す事はなかった。

 

「兵藤……」

 

八雲がそんな一誠を悲痛に見つめる中、完全に力を使い果たした一誠はその場に倒れようとした。

 

「おっと」

 

しかし、一誠の肩を優しく抱く者が現れ、倒れる事はなかった。

 

「無事だったか、祐斗」

 

「心配掛けたね、八雲くん。――お疲れ様。まさか1人で堕天使を倒しちゃうなんてね」

 

「よー、遅ぇよ、色男」

 

振り向いた一誠は何時もの笑顔を浮かべる祐斗に軽く毒づく。よく見れば、祐斗もボロボロだった。

 

「ふふふ、邪魔をするなって部長に言われていたんだ」

 

「部長に?」

 

「その通りよ。あなたなら、堕天使レイナーレを倒せると信じていたもの」

 

声のした方へ振り向く3人。すると、地下に続く入り口から、紅の髪を揺らしながらリアスが笑顔で歩み寄ってくる。

 

「用事が済んだから、魔方陣で祐斗の所へジャンプしてきたの。そしたら祐斗と小猫が大勢の神父達と大立ち回りしてるじゃない?」

 

「部長のおかげで助かりました」

 

「お疲れ様です。リアス部長、朱乃先輩」

 

すると、八雲はある事に気付く。

 

「リアス部長。小猫が見当たりませんが、何処に……?」

 

「あ、小猫なら黒幕を持って来てもらう様に言ったわ」

 

「黒幕……………あぁ」

 

リアスの説明に八雲は納得した。どうやら小猫は、一誠に殴り飛ばされたレイナーレをこの場に連れてくるらしい。

 

だが、八雲は頬を掻きながら言う。

 

「あー、リアス部長。レイナーレ(黒幕)の連行は新しく目覚めたシキガミが行ってますが……」

 

「そうなの? そのシキガミって――」

 

「連れてきたぞ、八雲」

 

リアスの言葉を遮る様に、気絶したレイナーレを肩に乗せて歩くランゲツと、その側を歩く小猫が入り口から現れ、ランゲツはリアスの前に近付いてはレイナーレを投げ捨てた。

 

「これが、新しいシキガミですか?」

 

「はい、朱乃先輩。コゲンタと同じ白虎一族のランゲツです」

 

「ランゲツだ。一応、挨拶はしておく」

 

「そう。ありがとう、ランゲツ。――さて、起きてもらいましょうか。朱乃」

 

「はい」

 

朱乃が手を上へかざす。すると、魔力で宙に水の塊が発生され、それをそのまま気絶したレイナーレの顔に落とした。

 

「ゴホッ、ゴホッ!」

 

水音がした後、咳き込みながら目覚めたレイナーレをリアス達は見下ろしていた。

 

「ごきげんよう、堕天使レイナーレ。私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ」

 

「……グレモリー一族の娘か……」

 

「どうぞお見知りおきを。どうせ短い間でしょうが」

 

澄ました顔で物騒な言葉を口にするリアスは、続いて懐からある物を取り出す。

 

取り出したのは3枚の黒い羽。それを見た途端、レイナーレの表情が曇った。

 

「それから、あなたに同調していた堕天使3人は、私達が消し飛ばしておいたわ」

 

「消し飛ばした?」

 

一誠の疑問に祐斗が答える。

 

「その一撃をくらえばどんな者でも消し飛ばされる。滅亡の力を有した公爵家のご令嬢の部長は、若い悪魔の中でも天才と呼ばれる程の実力の持ち主なんだ」

 

祐斗の言葉に続く様に、朱乃もうふふと微笑みながら言う。

 

「別名『紅髪の滅 殺 姫(ルイン・プリンセス)』と呼ばれる程の方なのですよ?」

 

「……俺、そんな人の眷属になったんだ」

 

「確かに、あの時のリアス部長の表情は迫力だったな」

 

八雲も腕を組んでは頷きながら、リアスの異名に納得する。

 

「グレモリーの娘が……よくもっ!」

 

そんな中、レイナーレがリアスを恨めしく睨みながら声を荒げるが、そんな視線を気にする事なくリアスは嘲笑を浮かべる。

 

「イッセーが堕天使ドーナシークに襲われた以前から、複数の堕天使がこの町で何かを企んでた事は察してたわ。私達に危害を及ぼさなければ無視しておいたの」

 

言い終わり、リアスは何気なく一誠に視線を向けると、左腕の神器に目が行っては突然驚いた。

 

「……赤い龍。この間までこんな紋章はなかったはずだけど……………そう、そういう事なのね」

 

だが、すぐの納得した表情を浮かべると、その内容をリアスは静かに述べ始めた。

 

「堕天使レイナーレ。この子、兵藤一誠の神器は単なる『龍の手』ではないわ」

 

「なに……?」

 

リアスの言葉に、レイナーレは怪訝そうに片方の眉を吊り上げた。

 

「それは持ち主の力を10秒毎に倍加させ、一時的に魔王や神すらも超える事が出来る力を有すると言われている『神滅具(ロンギヌス)』が1つ。『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』よ。籠手に浮かんでいる赤い龍の紋章がその証拠。あなたでも名前ぐらいは知っているでしょ?」

 

その言葉を聞いたレイナーレが驚愕の表情を浮かべる。

 

「……あの忌まわしき神器が、こんな子供の手に宿っていたというの!?」

 

「まあ、どんなに強力でも時間を要する神器はリスクも大きいわね。早々増大するのを待ってくれる相手なんていないわ。今回は相手が油断してくれてたから勝てたようなものね」

 

一誠に若干釘を刺すリアスだが、レイナーレは嘲笑う。

 

「……確かに『赤龍帝の籠手』の存在は完全に計算外だったわ。でも、今の私にはこの『聖母の微笑』が――」

 

しかし、レイナーレの表情は途端に驚愕の色に染まる。

 

「……な、ない! 私の……私の『聖母の微笑』が!?」

 

そう……レイナーレが奪った『聖母の微笑』を嵌めていた指には、何もなかったのだ。全ての指をレイナーレ自身が確認しても、見つからなかった。

 

「探している物はこれか?」

 

「なっ!?」

 

そんな中、ランゲツは右の拳を開いては摘まんでレイナーレに見せる。『聖母の微笑』である指輪だ。

 

「一体、何時取り戻したんだ?」

 

八雲の疑問にランゲツは答える。

 

「ワシの技を受けている間に偶然拳が神器を掴んだのだ。それに、元々奪った神器だったのが助かった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「う、嘘よっ! 儀式で完全に私の物になった神器が、あの子に戻る事なんて不可能よ!」

 

レイナーレの言う通り、『聖母の微笑』はレイナーレの物になったのは事実。だが、レイナーレの言葉をランゲツは切り捨てる。

 

「物にも者との信頼関係がある。ワシは神器を掴んだ際、レイナーレ(小娘)()()()()()()()()()()()()()()()()()だ」

 

ランゲツの言葉にその場にいた全員が驚愕の反応を見せる中、冷静に状況を分析したリアスが呟いた。

 

「白虎一族が司る力は信頼。どうやら、シキガミ達は司る力を与える事が出来ると同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいね」

 

「つまり……………わ、私はもう――」

 

「ああ。至高の存在ではない。ただの薄汚れた堕天使に過ぎない哀れな小娘だ」

 

ランゲツの言葉にレイナーレの表情が一気に青ざめる中、リアスが前へ踏み出す。

 

「さて、ご自慢の切り札も無駄と分かったところで、そろそろあなたには消えてもらうわ、堕天使さん。私の、最後の勤めよ」

 

殺意を込めた冷たい口調。そんなリアスにガクガクと震えて怯えるレイナーレが、媚びた視線を一誠に向けてきた。

 

「イッセーくん! 私を助けて!」

 

しかも、声色を天野夕麻のものにしながら……。

 

「あんな事を言ったけど、堕天使としての役目を果たすため仕方がなかったの!」

 

「夕麻ちゃん……」

 

途端に一誠は悲痛の表情を浮かべてしまう。

 

「まずい! 小猫ちゃん」

 

「ストップ」

 

祐斗の言葉に頷き小猫も共に駆け出そうとするが、八雲は2人を一言で制した。

 

「信じよう、兵藤を……。2人もそれを望んでる」

 

八雲の言葉に、祐斗は無言で一誠を見るリアスと朱乃を見ると、それに何かを察した2人も成り行きを見守ることにした。

 

「私、本当にあなたの事が大好きよ! 愛してる! だから私を助けて……イッセーくん!!」

 

夕麻を再び演じるレイナーレが、涙を浮かべながら一誠に懇願する。

 

だが、一誠の答えは既に決まっていた。

 

「部長、もう限界っス……。頼みます……」

 

それだけ言い、一誠はレイナーレに背を向けた。その途端、レイナーレの表情が凍りついた。

 

「……私のかわいい下僕に言い寄るな」

 

そして、絶望感に浸るレイナーレを見下ろすリアスが掌に黒い魔力の塊を生み出す。

 

「消し飛べ」

 

ドンッ!

 

リアスの手から放たれた一撃はレイナーレを跡形もなく吹き飛ばした。後に残ったのは、宙に舞う黒い羽だけだった……。

 

「……グッバイ。俺の恋……」

 

一誠が誰にも聞こえない声で呟く中、ランゲツは一誠に手を伸ばす。

 

「これを返してやれ。お前自身の手でな……」

 

ランゲツが手渡したのは『聖母の微笑』である指輪。一誠はランゲツから手渡された指輪をアーシアの指に嵌めると、リアスに向けて頭を下げた。

 

「部長、すみません。あんな事まで言った俺を、部長や皆が助けてくれたのに……お、俺、アーシアを……守ってやれませんでした……」

 

一誠は心から謝罪した。失礼千万な事を言いまくってしまい、でもリアス達は裏で動いてくれて、一誠は申し訳なかった。

 

しかし、リアスはそんな一誠の頭を優しく撫でては涙を指で掬い、優しく語り掛ける。

 

「泣く事はないわ。今のあなたの姿を見て、誰があなたを咎められるというの?」

 

「でも……でも、俺……」

 

「いいのよ。あなたはまだ悪魔としての経験が足りなかっただけ。それだけよ。だから強くなりなさい。これからもこき使うから、覚悟しなさい。私の『兵士』、イッセー」

 

その言葉に一誠は心の中で強くなると誓うと、リアスは懐からある物を取り出しては一誠に見せる。

 

「これ、なんだと思う?」

 

取り出したのは、リアスの髪と同じ紅いチェスの駒だった。

 

「これはね、イッセー。『僧侶』の駒よ。『僧侶』の力は眷属の悪魔をフォローすること。この子の回復能力は僧侶として使えるわ」

 

そう説明し、リアスはアーシアに近付いては“僧侶”の駒をアーシアの胸に置いた。

 

「部長、まさか……」

 

一誠の言葉にリアスは頷く。

 

「前代未聞だけれど、このシスターを悪魔へ転生させてみる」

 

リアスの体が紅い魔力が覆われると、アーシアの体の下に紅い魔方陣が現れる。悪魔転生の儀式が始まるのだ。

 

「我、リアス・グレモリーの名において命ず。汝、アーシア・アルジェントよ。いま再び我の下僕となる為、この地へ魂を帰還させ、悪魔と成れ。汝、我が“僧侶”として、新たな生に歓喜せよ!」

 

『僧侶』の駒が紅い光を発しながら、アーシアの胸に沈んでいくと同時に、『聖母の微笑』も淡い緑色の光となって彼女の体へ入り込んだ。

 

「あれ?」

 

そして少しして、もう開く事がなかったアーシアの瞼が開かれた。

 

「アーシア!」

 

もう聞けないと思っていたアーシアの声に、一誠は込み上げてくるものを止められなかった。

 

「悪魔をも回復させるその力が欲しかったからこそ、私は転生させたわ。イッセー、後はあなたが守ってあげなさい。先輩悪魔なのだから」

 

リアスが優しい笑みを一誠に向ける中、アーシアが上半身を起こしては一誠を捉えた。

 

「……イッセーさん?」

 

何が起こったのか分からないのか、怪訝そうに首をかしげるアーシアに一誠は抱きしめていた。

 

「帰ろう。アーシア」

 

本日何度目かの涙を流す一誠。だが、今回の涙に込められているものは全くの別物であり、この場にいた者達は安堵の笑みを溢した。

 

「……はい」

 

アーシアは考える事を止め、今は一誠の抱擁を受け入れる事にした。

 

こうして、グレモリー眷属と堕天使達との戦いは終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

「あら、ちゃんと来たわね」

 

次の日の早朝、一誠は部室を訪れていた。

 

室内にはリアスだけがソファーに座り、優雅にお茶を飲んでいた。

 

「おはようございます、部長」

 

「ええ、おはよう。――どうやら堕天使にやられた傷は大丈夫みたいね」

 

「はい。アーシアの治療パワーで完治です」

 

一誠は笑顔で答えながら、自身の太股を軽く叩く。

 

「さっそく『僧侶』として役立ってくれたみたいね。いち堕天使が上に黙ってまで欲するのも頷けるわ」

 

リアスの言葉に一誠も頷くと、対面の席へ腰掛けてはリアスに質問する。

 

「あの部長。気になってたんですけど、チェスの駒の数だけ『悪魔の駒』もあるのだったら、俺の他にも『兵士』があと7人存在出来るんですよね?」

 

「いえ、私の『兵士』はイッセーだけよ」

 

しかし、一誠の質問にリアスは首を横に振った。

 

「人間を悪魔に転生させる時、『悪魔の駒』を用いるのだけれど、その時の転生者の能力次第で駒を通常よりも多く消費しなくてはいけなくなるの」

 

「駒の消費?」

 

「チェスの世界にはこんな格言があるわ。『女王の価値は兵士9つ分。戦車の価値は兵士の5つ分。騎士と僧侶の価値は兵士の3つ分』。この価値基準は『悪魔の駒』においてもそれは同様。転生者においてもこれに似た現象が適応されるの。駒との相性もあるわ。2つ以上の異なる駒の役割は与えられないから、駒の使い方は慎重になるのよ」

 

「それと俺がどういう関係にあるんですか?」

 

「イッセー、あなたを転生させる時、『兵士』の駒を全て消費したのよ。それが分かった時、私はあなたを絶対に下僕にしようと思ったの。初めは『兵士』全部の消費に疑問したけど、今なら納得出来る。至高の神器と呼ばれる『神滅具』の1つ『赤龍帝の籠手』を持つイッセーだからこそ、その価値があったのね」

 

一誠は視線を自身の左腕へと向ける中、リアスは説明し続ける。

 

「あなたを転生させる時、私の持つ駒は『騎士』、『戦車』、『僧侶』が1つずつ。『兵士』が8つしかなかったわ。でも『兵士』を8つ消費しなければ、あなたを転生させる事は出来なかったの。『兵士』の力は『昇格』も含めて未知数。私はその可能性に賭けたわ。結果、あなたは最高だったわ」

 

リアスは一誠の頬を撫でながら嬉しそうに微笑む。

 

「『紅髪の滅殺姫』と『赤龍帝の籠手』。紅と赤で相性はバッチリね。イッセー、取り敢えず最強の『兵士』を目指しなさい。あなたなら、それが出来るはず。だって、私のかわいい下僕なんだもの」

 

そう言ってリアスの顔が少しずつ一誠の顔に近付き、やがて唇が一誠の額に触れた。

 

「これはお(まじな)い。強くおなりなさい」

 

あまりの展開に、一誠は一気に顔を紅潮した。

 

(うわ、うわ、ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!)

 

生涯初めてのキス。その嬉しさに脳内がお祭り騒ぎとなり、一誠は感動の涙を堪えながら最強の“兵士”になる事を誓うのだった。

 

「と、あなたをかわいがるのはここまでにしないとね。新人の子に嫉妬されてしまうかもしれないわ」

 

リアスの言葉に一誠は疑問を浮かべる。

 

「イ、イッセーさん……?」

 

一誠の背後から聞き覚えのある声。振り返ると、笑顔を引きつらせたアーシアが立っていた。

 

「ア、アーシア?」

 

「そ、そうですよね……。リ、リアス部長は綺麗ですから、そ、それはイッセーさんも好きになってしまいますよね……」

 

アーシアの纏う雰囲気に、一誠は何となく理解した。彼女は今、怒っていると……。

 

「いえ、ダメダメ。こんな事を思ってはいけません! ああ、主よ。私の罪深い心をお許しください。――あうっ!」

 

すぐに手を合わせて神に懺悔するアーシアだが、その途端に痛みを訴え、頭を押さえる。

 

「大丈夫か、アーシア?」

 

「頭痛がします」

 

「当たり前よ。悪魔が神に祈ればダメージくらい受けるわ」

 

さらりとリアスが言う。

 

「うぅ、そうでした。私、悪魔になっちゃったんでした。神様に顔向け出来ません」

 

「後悔してる?」

 

少し複雑そうな顔をするアーシアにリアスが訊く。だが、アーシアはリアスの問いに首を横に振った。

 

「いいえ、ありがとうございます。どんな形でもこうしてイッセーさんと一緒にいられるのが幸せです」

 

思わぬ讃辞に一誠は再び頬を紅潮させ、その隣でリアスも嬉しそうに微笑んだ。

 

「そう、それならいいわ。今日からあなたも私の下僕悪魔としてイッセーと一緒に走り回ってもらうから」

 

「はい! がんばります!」

 

元気よく返事をするアーシア。すると、ここで一誠はアーシアの変化にようやく気付いた。

 

「アーシア、その恰好……」

 

そう、アーシアは駒王学園の制服を着ていたのだ。

 

「に、似合いますか……?」

 

一誠の指摘にアーシアは恥ずかしそうに訊ねると、一誠はサムズアップをしながら言った。

 

「最高だ! 後で俺と写メを撮ろう!」

 

「え、は、はい」

 

あまりの可愛さに興奮する一誠に、アーシアは困惑してしまう。

 

「アーシアにもこの学園へ通ってもらう事になったのよ。あなたと同い年みたいだから、2年生ね。クラスもあなたのところにしたわ。転校初日という事になっているから、彼女のフォローをよろしくね」

 

「マジですか! 分かりました!」

 

「よろしくお願いします、イッセーさん」

 

「ああ、後で俺の悪友2人も紹介するからな」

 

「はい、楽しみです」

 

ぺこりと頭を下げるアーシアを見ながら、一誠の脳内では悪友の悔しがる姿が想像される。

 

(ふふふ、松田、元浜、俺はモテない男子高校生を止めるぞーっ!)

 

一誠が脳内妄想をしていると、部室に祐斗、小猫、八雲とコゲンタ、朱乃が入ってくる。

 

「おはようございます、部長、イッセーくん、アーシアさん」

 

「……おはようございます、部長、イッセー先輩、アーシア先輩」

 

「おはようございます、リアス部長、イッセー、アーシア」

 

『おーっす!』

 

「ごきげんよう、部長、イッセーくん、アーシアちゃん」

 

それぞれが挨拶をリアス達3人にした。皆が一誠を“イッセー”と呼び、アーシアを一員と認めてくれていた。

 

「ぬわっ!? 吉川! 隣に幽霊がいるぞ!」

 

『幽霊じゃねえ……………って、お前、オレが見えるのか!』

 

「って、その声は……まさかこの前のシキガミ?」

 

一誠とコゲンタのやり取りにアーシア以外の者が驚く中、最初に理解したのは八雲だった。

 

「どうやら、イッセーが持つ神器が覚醒したから、霊体のコゲンタが見えるのか」

 

「そうみたいね。でも、その事は後で考えましょう。まずは……」

 

立ち上がったリアスは指を鳴らすと、テーブルの上に大きなケーキが出現した。

 

「全員が揃ったところで、ささやかなパーティを初めましょうか。新しい部員も出来た事だし、ケーキを作ってみたから、皆で食べましょう」

 

「部長の手作り! ありがたくいただきます!」

 

「おいちょっと待てイッセー! そのケーキの配分はおかしいだろ!」

 

「大丈夫。吉川の分は俺の次に大きい方だから。それとこっちはアーシアの分」

 

「ありがとうございます、イッセーさん」

 

「えぇ!? じゃあ、この小さいのは僕のかい? それはちょっと……」

 

「イケメンは小さいので十分だ」

 

「うふふ。一段と賑やかになりましたね、部長」

 

「ええ。楽しくなりそうだわ」

 

「……うるさすぎだと思います」

 

『あっはっはっは!』

 

こうして、グレモリー眷属に新たな仲間が加わった。

 

そして、一誠は最強の『兵士』を目指すべく、皆と共に頑張る事を誓うのだった。

 

「……………」

 

リアスが一瞬だけ、誰にも知らずに顔を暗くした事に気付かずに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧校舎のディアボロス

~シキガミ、降神します!~

 

【完】




年内最後の投稿です。

次回から2章突入。使い魔編から始まります。

ゆっくりと頑張っていきますので、来年からも宜しくお願いします。

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