マイナー好きの彼は無双を試みた   作:赤須

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久しぶりにSDガンダムGジェネレーションオーバーワールドをやってみました。
メンバーを全員ヒロインや女性キャラにして趣味パーティーを組んでみたのですが、これがまた楽しいです。
艦長はローラ・ローラです。いつもミネルヴァで撃ちまくってます。



第7話

 彼には、師がいた。

 

 ガンプラを製作するため……多くのプラモに触れたビルダー達が、長きに渡る時の流れで様々な技と奥義を生み出し、それらを基に体現化したのが『ガンプラ造形術』である。

 

 また、ガンプラ造形術には流派と言うものが存在していた。

 

 1人の剣豪の下で修業を勤しんでいた弟子が免許皆伝を得て、それぞれの技と法を編み出して新たに己だけの流派を展開するように、『ガンプラ造形術』にも流派と言うものがあり、1つの造形技術が達人の域に達するのと同時に独自の流派を開くようになる。

 その中でも特に名声が高いことで有名なのが『ガンプラ心形流』―――

 

 珍庵と呼ばれるガンプラ心形流の継承者で、世界レベルに達するファイターたちにとって畏れ多い貫禄のある老人だ。

 その彼には、弟子が2人いた。1人は京都出身の12歳の少年で、次期ガンプラ心形流の後継者として注目されている。そしてもう1人は若15歳でガンプラバトル世界選手権に出場と言う実績を上げた少年―――ムロト・エイキ。

 

 彼もまた心形流の後継者だと、思われていた(・・・・・・)

 

 思われていたというのは、彼があまりにも強すぎて……製作技術はどの流派よりも高すぎるが故に、造形術の同派である門徒たちから珍庵のように畏れられた訳ではなく、彼の場合、怖れられていた(・・・・・・・)

 

 戦闘能力は、二代目メイジン・カワグチやガンプラ造形術の筆頭に匹敵するほどの実力者で、当時―――心形流に属した時から、彼は強かった。それが門徒たちに怖れられている原因だとされている。

 

 そんな彼が世界レベルの実力者を相手に引けを取らないのも頷けた。

 

 だが、それは彼にとっての最強である由縁の一端でしかないと知ったのは、

 

 〝彼〟の名を聞いたからだった……

 

「まさか都市伝説とされている伝説のファイター……否、ガンプラマイスターにバトルを教わっていたとは……聞いてないぞ、エイキ君っ!」

 

 ガンプラバトルに興味示したのも、〝彼〟の影響だとエイキは言った。そして彼がいなかったら自分はガンプラバトルどころかガンダムにすら興味を持たなかったのかもしれないと。

 湧き上がる闘志と共に笑みを浮かべながら拳を握る。これは決して怒りによる言葉ではない。ムロト・エイキがどんな師を持っていようとも、導いてくれたのが〝彼〟だったとしても、私……ユウキ・タツヤにとってはどうでも良い事で、寧ろ〝彼〟には感謝したいぐらいだ。

 これでまた、エイキと言う少年と分かり合えたというもの。

 

「しかし、この戦いを終えれば次はエイキ君との決着が待っているのか……」

 

 いや、まだだ。彼には難関な相手と戦っていない。

 エイキにはサザキ・ススムという強敵が待っているのだ。

 ギャンを使わせて右に出る者なし……私の目から見てもそう思えるぐらいの実力を彼は持っている。

 果たして……彼は勝ち残れるのだろうか……

 

「その前に私もガンプラの調整に手を施さなくては……彼の、あのガンプラを見てしまってはどうも居心地が悪い」

 

 そう呟くタツヤの頬に、冷や汗が伝う。そして一笑に付した。

 ……さっきから私はエイキ君の事ばかり考えてばかりだと。このトーナメントで勝ち上がれば彼が待ってる。彼ほどの実力者が、目前で待ってる。あと少し……あと少しでだ。

 前世界大会の時は曖昧に終わってしまったものの、今回は違う。

 何故なら、大乱闘(ロワイヤル)とは異なり、誰からも邪魔はされず……1対1による正当な決闘だ。

 

 勝てば世界。負ければ即終了。

 この運命を決する戦いに、緊張が起こらない方がおかしい。

 しかも相手はあの宿敵(エイキ)なのだ。

 油断なんてものはしない……余裕で()くなど言語道断。 

 互いの本気でぶつかり合える至高の遊戯に嘘、偽りなど不要。

 全身全霊、持てる自分の全てを相手にぶつける。

 ただ、それだけだ。

 

「ようやく、長年に渡ってエイキ君と決着が付けられる……この時をどれだけ待った事よやら……」

 

 

 

 そして気付く。

 

 

 

 どうやら……私は目覚めてしまったようだ。

 

 

 

 彼に対する……

 

 

 

 想いというものを、

 

 

 

「括目させてもらおう、エイキ君」

 

 

 

 正真正銘の〝愛〟というものを……!

 

 

 

 メイジン進行形(アメイジング)エピオンに手を添えたタツヤは更なる改良を施すため、完成したはずの機体を一度分解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうですかー先輩。僕の作り上げた、ギャン改の力はっ!』

「……初めて見たな、リアルタイプのギャン改。ギャン好きとはいえ、本当に作り上げるとは」

 

 第三回戦。ムロト・エイキとサザキ・ススムによる1対1の準々決勝。

 サザキが使用するガンプラ、ギャン改による猛攻をエイキは受けていた。

 

 長大なるビームソード。その長さと共に実体剣もまた長く、一振りだけで薙ぎ払われそうなのを、エイキは高機動スラスターに起動させて飛び上がり、地底遺跡という珍妙な舞台の中で攻撃を躱していく。

 

「SDガンダムだけかと思ったけど、リアルタイプのギャン改……存外、魅力的なガンプラだね。しかもその出来栄え、サザキのギャン愛は確かなモノだと図らせてもらったよ」

『先輩からそう言ってもらえるとは、光栄ですよッ!!』

 

 そう叫ぶサザキにギャン改のビームソードが、エイキの機体に掠め取った。

 流石にこの機体で回避していては限界がある。どうにか対処しないと……

 苦悶な表情を捉えるエイキに、気にも留めないサザキの斬撃は止まらず、ビームソードが振り下ろされるのと同時に、降ろされた先にあった建造物が崩落していく。

 なんて馬鹿力だ。

 

「凄い……まさかギャンのビームソードがここまで威力が発揮するなんて……」

 

 勿論、それだけじゃない。そのビームソードの威力には驚かされるが、それを振り回せるギャン改の性能にはより驚かされるよ。

 そして離れれば遠距離兵器・ニードルミサイルが束が待っていた。基のベースとなった機体がギャンなだけあって、接近戦に強いが、遠距離戦には劣っている。しかし、ニードルミサイルが弱いなんていう設定はどこにも無い。

 

「くっ、ボクが押されるとは……ッ!」

 

 加えて軽やかな動きにあの破壊力は、あまりにも単純(シンプル)すぎた。

 エイキは読みや観察、そして速い動きで相手を翻弄し、隙あらば一気に捻じ伏せるという戦い方が癖になっており、多くのマイナー機でこの戦法を使用し続けているが、それがこの舞台では通用しないという。

 

 読みも、観察も、速い動きによる翻弄も、このフィールド内では範囲が縛られすぎて動きようもない。単純が故に柔軟(フレキシブル)で、単純が故に強靭(タフネス)……それがエイキの全てを抑え込んでいた。

 

 しかも、あれほどサザキを未熟と称し、弱いとばかり思ってたボクが……今では押されているというのだ。彼と、彼の操るギャン改によって。

 

『先輩だからといって、僕は遠慮しないっ。戦いとは駆け引きですからねぇ!』

「……ッ、そ、それでいい。ボクに遠慮なんて不必要だ。胸を借りるつもりで掛かってくるといいよ」

 

 ムロト・エイキのガンプラは、ギャンと同様……ジオン脅威のメカニズムによって開発されたMSで、ザクに次ぐ量産機を巡って争ったギャンと対を成す機体。

 ビーム兵器をMAや一部の水陸両用MSを除くジオンの量産機の中で、初めて搭載できたMSである。

 

 地球連邦軍を意識して、ジェネレーター出力の向上にビームライフルの開発を励み、ビームサーベルはヒートサーベルを採用した形で構成に赴いたものの、実用化における機体を完成させるまで3ヵ月ほど遅れる事となる。

 その理由は、この機体のスラスターや推進部を開発する担当になったツィマッド社と次期主力開発に働いていたジオニック社との『EMS-04ヅダ』を巡る執拗さにヨーツンヘイム艦長は言った。

『これでは次期主力MSの開発が遅れるのも当然だ』

 と、嘆息しながら呟いたという。

 

 そして開発できたヅダがヅダったり、一年戦争末期で多くのエースパイロットが殉職するなど、多くの難問を乗り越えて完成できたのが、このMS……

 

 ガンダムと同等の性能を持ち合わせたジオンの傑作量産機。

 

 もしもこの機体の量産が1ヵ月早ければ、1年戦争の行く末は変わっていたのかもしれないと称されたという―――

 

 

 

『機体名:YMS-14先行量産型ゲルググ』

 

 先行して25機ものゲルググを製造し、様々な戦場で名を馳せたというエースパイロットたちを集め、キマイラ隊を編成された部隊がア・バオア・クーでの攻略戦に投入された。

 しかし、その後の量産には問題があり、738機もの数を量産させたにも関わらず、出撃できたのはたったの67機。

 そのほとんどが学徒兵なため、機体の性能を発揮させるまで至らなかった。

 だがそれは、作中の中だけの話。

 

 ここは自分の作り上げたガンプラと相手の作り上げたガンプラとの真剣勝負。

 趣味であり、遊びであり、本気であり、それらの信念を貫いた者こそが勝利を得る。

 いわば、スポーツみたいなモノだ。

 どちらが強いか、どっちのガンプラが上手く作り、そのガンプラをどう活かせるか……そんな世界だ。ガンプラとは、自由。戦争じゃない。

 

 そして『ソロモンの悪夢』がこの場にて再誕させるのもまた、自由であると……

 

 

 

『僕は先輩に勝ってみせる。そしてユウキ先輩にも、イオリ・セイやレイジとかいうヤツにも……僕とギャンで上を目指すんだ!』

 

 歓喜に震えたサザキが野心に燃えた猛獣のようにビームソードの出力を最大にして薙ぐ。その熱線の刃はエピオンのビームサーベルのように伸びるのではなく、刀身ごと幅を広げた巨大な剣。しかも巨大化して重量も微々向上したためか、遠心力による速さが一気に増大され、傍に立っていた獅子の石造も一瞬にして蒸発していった。

 ダブルオーライザーのライザーソードほどではないが、これほどの出力を発揮させ、ここまで扱い熟すサザキは流石だと言えよう。

 それにこれを受ければ先ほど蒸発していった石造のようにエイキのゲルググは消し炭になるに違いない。

 だが、それを甘んじて受けるほど、ムロト・エイキは甘くなかった。

 

「ふっ、意気込みは良し。だが相手がひよっこではな」

『えっ……?』

 

 これほどのビームソードをどうやって躱すか……それは空か、後方に下がるか、否……この場合、前に進んで通り過ぎるのが正解だ。

 何故なら、空に逃げても次の斬撃で滞空性のないゲルググは落下して終わり。後方に逃げても2撃、3撃と続かせることで、この狭いフィールド内ではすぐに場外負けとなるか、追い詰められて逃げ場を失い、そこで試合終了。

 だが、ギャン改の薙ぎ払いの逆側を行き違いするように行けば、薙いで来るビームソードはゲルググを追う形で迫るものの、腕ごと振るわれる胴体の関節には限界があり、そこで動きが止まる。

 よって、擦れ違いで互いの背を向けた状態になりうるわけだが、今のギャン改は攻撃を寸断に留めたばかりだ。その一瞬をエイキは……

 

『なっ!? この僕の攻撃が……!』

 

 ゲルググは基の武装が少ないが故に、軽装である。しかも擦れ違いの流れに沿って反転し、いつでも試作型ビームライフルが撃てるわけだ。

 その威力は敵戦艦を一撃で撃沈させるほどの弾数に限りありの威力。

 ジョニー・ライデン専用のゲルググが搭載するロケットランチャーほど破壊力は持たないが、それでも十分に事足りる。

 それにギャン改のビームソードを振り回してくれたおかげで建造物が崩れ去り、地形が広くなった。ムロト・エイキの真骨頂はここからが本番である。

 

「未熟ながら君は確かに地区屈しの強さを持っていることは知ってる。ギャンに対する想いはボク以上だと認めるよ。……けどね、ボクはギャンだけでなく、ガンダムの全てを想うこの気持ちだけは、誰にも負けないっ。だから……勝たせてもらう!」

 

 ライフルから放たれたビームがギャン改の振り返りに右腕が撃ち落され、ビームソードを突き立てたギャン改は、機体の重心を支えたまま体勢が崩れるのを防ぐ。

 それを好機と見たエイキはビームライフルを撃ち続けた。

 

『くぅ……!』

 

 ギャン改はビームソードの太い刀身を盾にゲルググの試作型ビームライフルから凌いでいる。が、それも時間の問題だ。

 艦隊を一撃で葬れる試作型ビームライフルはたかだかビームソードで防げるほど軟弱な代物ではない。だが、そのビームを何度も防ぐギャン改は本当にサザキ自身の魂が籠っているみたいだ。

 

『うああぁぁ!!』

「なに?」

 

 刹那、ギャン改の姿が忽然と消えた。

 一瞬、ギャン改のモノアイから紅く光ったように見えたが……

 ……まさかっ。

 

 

 

 ザクッ

 

 

 

『いい音色ですねぇ?』

「EXAMシステム!? 確かギャンにも搭載されることがあるって知ってはいたけど……ここでかっ」

 

 ギャン改のビームソードが片手間で振り下ろされる中、ゲルググはそれを横に避けて間合いを計るため遠退いたものの、地形が歪んでいるせいか機体バランスに異常が発生し、体勢が崩れ落ちるのと同時にゴトンッと音を立てながら左腕が地に落ちる。

 先ほどの斬撃でやられたのか……

 

「……形勢逆転かと思いきや、さらに形勢逆転されるとはね」

 

 サザキは右腕、ボクは左腕を持っていかれた。

 どちらもジオニズムによって同時期に生まれた兵器であり、競い合った二機。

 ビームソードのギャン改、試作型ビームライフルのゲルググ……

 まさに理想を越した燃え上がる決闘。今まで渇きしかなかったボクに潤いが満たされていくような気がする。どうやら、バトルというものはガンプラの奥深さが包まれているようだね。そのことを今までずっと忘れていたよ、そして思い出した。

 

『これで僕の勝ちですよ、先輩』

「……どうかな」

『流石は世界大会に出場しただけあって負けを認めないですね。そのプライドは僕も憧れてましたよ』

「負けを認めたらそこで試合終了だろ」

 

 それにボクが決意した『マイナー勢で無双』する理想図が書けなくなってしまう。

 

 それだけは何としても遂げなければ……!

 

「サザキ、ボクやタツヤを敵に回すには……まだ早いんじゃないかな?」

 

 バッ、と試作型ビームライフルを捨て、ビームナギナタを取り出す。

 これを見たサザキは怪訝そうにゲルググの手元を見た。彼が言いたいことは分かってる。

 だけど、これはあくまで先輩としての意地であり、君を未熟だと称した実力者としての意地だ。ここで負けるわけにはいかない。

 次の対戦であのユウキ・タツヤが待っているしね。

 ボクと渡り合える宿敵。苦手なヤツだけど、それでもだ。

 彼と戦いたい。そして勝ちたい。

 なら、ボクは……君を討つ!

 

『先輩、僕のビームソードにビームナギナタで挑むんですか? やめておいた方がいいですよ。そんな軟弱なビームナギナタじゃあ、僕に適うはずがないじゃないですか』

「そんなことはわからないよ。素人の射抜く矢が、達人の投げる石ころに負けるように……君みたいな未熟な者のEXAMシステムで、ボクのゲルググが負けるなど、ありえない」

『……そうですか』

 

 サザキは残念そうに仕草を取るものの、その後に見せた表情は笑みでいっぱいだった。

 勝利を確信したのだろう。接近戦でボクが不利だからなのだろう。MSの性能が僅かばかりギャン改の方が高いからだろう。世界大会に出場したボクを倒せる、などと思い浮かべたのであろう。

 だが、それらを打ち破るのもまた、ファイターとしての義務である。

 

『なら、ここで先輩を断ち切るっ!』

「やってみなよ。ただしその頃には、君は八つ裂きになってるだろうけどね!」

 

 悍ましき波動は放つギャン改はビームソードをゲルググに突き向け、突進してくる。

 EXAMシステムの恩恵か、その速さは並の機体では出せない力だ。

 対するは何ら力を持たず、ただビームナギナタを構えただけのゲルググ。ギャン改と同様ナギナタを相手に向けて、ただ滑走し、加速していくだけ。

 その光景は、正にガンダムエクシアとOガンダムと対峙した際、2つの勢いがぶつかり合う瞬間と似ていた。

 

 

 

 

 

「……ハマーン」

「どうかいたしましたか、コトリ」

 

 観客席から見ていたハマーンとコトリ。2人が応援しているというムロト・エイキの苦戦に強いられた光景にコトリは不安がっていた。

 

「ムロト・エイキは……負けるのか?」

「……それは」

 

 ハマーンとて、あそこまでエイキが追い詰められる姿は見たことが無い。

 無敗を誇り、マイナーの使い手として最強の座にいた彼はどんな相手だろうと戦って勝利を捥ぎ取ってきた……そんな彼の負い目姿にハマーンも驚いてる。

(まさかあのムロトがここまで…………ムロトっ)

 ぎりっ、と歯噛みするハマーンは今のエイキの姿にどこか寂しさ、というものを感じた。

 たぶんそれは彼が負けるところを見たくないだとか、決してそういうのじゃないんだろう。きっと何か違う気持ちなのだとハマーンは思ったが、それは勘違いだと無理やり思った。

 

「…………ハマーン?」

 

 そこにコトリが不思議と首を傾げながら問いかけてくる。

 

「大丈夫だ、コトリ。彼が……ムロトが負けるところなんて見たことが無いでしょう?」

「う、うむ」

「なら……最後までヤツを信じればいい。ヤツは必ず勝ち上がる。私とコトリが応援しているんだ、勝って当然だろう」

「おお、そうであったな!」

 

 無邪気に微笑むコトリの表情にハマーンはホッと安堵を付く。

 とはいえ、彼とサザキの勝敗が決したわけではない。ハマーンやコトリが応援したところで、エイキが勝てるという保証はどこにもないのだ。

(……だから勝てよ、ムロト。ミネバ様の期待を裏切るような事があれば、その時は承知しないからな)

 そして、ハマーンの視線はゲルググとギャン改とのぶつかり合いに集中した。

 

 

 

 

 

「はああぁぁぁッッ!!」

『りゃあぁぁぁッッ!!』

 

 ギャン改の進撃に迎え撃つゲルググ。ビームソードとナギナタとの間合いはどちらも大差無し。互いの持てる全ての技術を以てして作り上げたガンプラが激突する。

 EXAMシステムは元々、対ニュータイプ用に開発されたシステムだ。その馬力と推進性はストライカー・カスタムを使用していたエイキが一番理解していた。

 だから、その力を……逆手に取らせてもらうっ。

 

 高機動型スラスターを開放し、スピードを上げたゲルググは咄嗟に片足で地に叩きつけ、空中へと身を放り投げる。

 

『逃がさないよ!!』

 

 ビームソードごと片腕で振り上げ、ゲルググを捉えようと斬撃を繰り出してきたのを、ゲルググの背中に装備されていたシールドでわざと受けた。

 このMSの背に防御兵装として先端に尖った楕円状……ゲンゴロウ型とも呼ぶシールドの形には意味がある。

 それは、『MA-08ビグザム』などの技術応用による耐ビームコーディングが、ある程度施されていて、ジムやガンダムなどのビームライフルは何発か耐えていた。付け加えてあの形は〝受け流す〟に適したシールド。

 劇中では脆くビームサーベルの斬撃だけで半壊するなどの印象を見受けられるが、それは使い方が誤っているからだ。

 

 そして追撃してくるビームソードを背に装備してあったシールドで受け流し、その時に生じる逆ベクトルの回転がゲルググを舞わせる。

 EXAMシステムは対ニュータイプのために搭載された機体は、それぞれ異常な性能を発揮させた。速度や反応速度など……全てはニュータイプに対抗するために……

 だからその斬撃を、回転扉の如く受け流した時に機体を働かせ、攻守に切り替えつつゲルググのビームナギナタが、その突発力を以てしてギャン改に突き立てれば、その速さはEXAMシステムによる斬撃と同じ。

 故に、躱すことができない。

 

『なっ!?』

 

 サザキもボクの狙いが目に見えたのだろう。だがもう遅い。

 そしてギャン改の動きは先ほどと同じく攻撃をした直後に行われた一瞬の隙。

 ここを利用しなくて何時する……今でしょ。

 

「南無三ッ!!」

 

 一閃の刃が、ギャン改の真上から仕掛けられる。

 サザキもビームソードを咄嗟の判断で戻そうとしていたが、EXAMシステムとてこの刃には届かない……終わりだ。

 そして、ゲルググのビームナギナタがギャン改を刺し貫き、怒涛の衝撃がゲルググを巻き込んだ状態でフィールドを轟かせ、後に残っていたのは破損したゲルググのみ。

 つまり―――

 

 

 

「ギャンかあぁぁぃいッッ!?」

 

 

 

『―――BATTLE END―――』

 

 

 

 バトルの決着が付いたのと同時に、フィールドから流れるアナウンスが会場の全体に向けて響き渡り、観客席から歓声の嵐が舞い上がってきた。

 

 

 

「……そ、そんな……僕の、僕のギャンが……敗れた?」

 

 プラフスキー粒子が薄れ、古代遺跡のフィールドが消えたボクの視界には、1人の少年。サザキ・ススムの姿が目に受けていた。その姿は先ほどの自信溢れたあのサザキとは思えない。落ち込んでいるというよりも、不可解といった表情のようだ。

 

「サザキ」

「……せ、先輩」

 

 話しかけてみたものの、サザキの声には力が籠ってなかった。

 あれほど勝利に尽くして戦ったんだ。気力が失うのも当然なのかもしれない。

 そう思いながら、エイキは口を動かし続ける。

 

「君に謝りたいことがあるんだ」

「僕に……謝りたい、ことですか?」

 

 唐突な言葉に、サザキは大きく目が開かせた。無理もない……ボクだって驚いている。普通―――負けた相手に向かって謝りに行くなど、前代未聞のありえない出来事。現象に近い。

 ……だからこそ、ケジメというものはキッチリと付けなくちゃいけないんだとボクは思うんだ。だってこれは普通じゃないし、これを言わないでいるといずれ後悔するだろう。

 

「そう。ボクはね、最初は君の事……弱い、未熟とばかり思ってたんだよ」

「えっ……?」

 

 サザキは驚きに声を漏らす。

 本人の前でこの事を言うのもどうかと思うのだが、ここで言わなければボクはずっと彼を未熟なままで見てしまうだろう。そんな気がして止まない。

 ボクはそれが許せなくて、ただ真っ直ぐとサザキに向けたまま喋り続けた。

 

「君は野心こそ凄まじいが、欲張りすぎるが故に未熟だと感じてしまったんだ」

「先輩……」

「だけどね、君は今日……この試合でボクを驚かせた。君の持てる全てとやらをボクにぶつけ、ボクを追い詰めた。未熟だと思っていたボクだが……してやられたよ」

「そ、そんな僕なんてまだまだですよっ」

 

 わたわたと急かすように謙遜するサザキ。その動作に何だかもどかしく思ったのかエイキは微笑を浮かべた。

 

「だから、ごめんね。こんなボクだけど……許してもらえたら嬉しい」

「……! い、いえ! 僕も、先輩と戦えてとても経験になりました。また僕で良ければ対戦してください!」

「……ありがとう、サザキ」

 

 語り終えたエイキはスッ、と手を差し伸べる。それに気づいたサザキは、飛びつくようにエイキの掌を手に取り、握手する。

 

「……いや、ここはススムと言った方がいいかな? ボクも君とギャンの再戦を楽しみにしてるよ」

「はいっ!」

 

 その声には、とても力があり……これから成長するであろうファイターとして、期待に添えられるほどの真っ直ぐな音だった。

 




お久しぶりです、ガンプラファンの皆さん。

今回のエイキ君のバトルは色々と他作品の戦闘シーンを参考に書かせていただきました。
回転扉のように受け流し、そこからのカウンターは某ラノベの主人公の技で、楕円状の盾を使っての技術は某ジャンプの幕末漫画に出てたあの人の応用ですね。

あとサザキ君に関してですが、先輩に対する態度や喋り方など素材が少なすぎて似てないかもしれません。そこは温かい目で見ていただけると嬉しいです。

そしてハマーン様はやはりハマーン様だ、ふつくしい……!
ミネバ様もロリで可愛い。これは鉄則。ですが何年後かすると……(遠い目



感想・批評・誤字脱字などがありましたら、よろしくお願いします。

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