マイナー好きの彼は無双を試みた   作:赤須

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第2話

 

 

 

 ゴンダ・モンタと呼ばれる聖凰学園高等部2年生の少年? は非常に不機嫌であった。

 なにせ、昼休みの時間……生徒会役員の1人として学校の治安が乱れていないかどうかを判断すべく校内を見回りしていたのだが、その歩いている最中にゴンダはあるものを発見した。

 女子たちが校庭でお弁当を食べていた。それまではいい。実に仲がいいことで何よりだ。

 しかし、その女子たちの中に見知らぬ少年が女子生徒に話しかけているのではないか。

 このゴンダ・モンタは、今まで校内の見回りをしていたこともあって、ほとんどの生徒を覚えていると自負している。故にあの少年は誰だ? と厳つい思想を抱きながらゴンダ・モンタは少年に話しかけた。

 

 赤い髪の日本人離れをした少年だった。風貌からしてきっとそうだろう。しかし、彼は学校の生徒ではないし、胸元に入校許可証すら付けていない。

 結果、彼は部外者ということになる。学校の治安を守るのは生徒会の役目であり、義務である。ゴンダ・モンタは直ちにこの学校から立ち去るように勧告した。だが彼は首を縦ではなく横に振った。しかも表情が無邪気というか無知な顔をしている。

 見た目通り外国人だからなのだろうか……いや、それでもゴンダ・モンタは自分の心を鬼にし、再び彼に出ていくよう口にした。いくら外国人であろうと部外者は部外者。ここで屈しては生徒会の名に泥を被ることになる。というわけで喋ったのだが……

 彼は訝しく首を横に振った。それがどういうわけか、ゴンダ・モンタにとって怒るに値する仕草であった。ゴンダ・モンタはこうなったら力付くでしか意味を伝えることができないと悟り、少年に肩を掴んで追い出そうとしたその時――――――!

 

「……!?」

 

 意識が一瞬真っ白になり、薄ら薄らと元の視界に戻る。

 そして気づいた。自分自身が地に這いずっているではないか……と。

 ゴンダ・モンタは何が起きたのか理解できず、混乱で頭がいっぱいだった。

 さらに、ズキィッ―――と足の関節部に痛みが生じる。

 それもかなり痛い。口から先ほど食した昼食のごはんが出そうになったのをどうにか引き戻し、この痛みの原因をおずおずと振り向くと少年がゴンダ・モンタの腰に馬乗りにし、自分の両足を少年の両脇に挟んでメキメキッと通常では曲がらない方向に自分の足が曲がろうとしていた。

 ―――自分がされていたのは逆エビ固めだった。

 

「――――――ッ!?」

 

 あまりにも強烈な痛みにゴンダ・モンタは目に涙を溜め、もがき苦しむが如く片手を地面に叩き付けて悶えていた。

 そこに途方から「レイジ!?」と少年の声が耳に入った。痛みに堪えながらもゆっくりと発せられた声をもとに顔を傾ける。その方向は学校棟の2階……模型部の場所からだった。ちょうど見知った顔であり、生徒会長兼模型部の部長のユウキ・タツヤが窓から覗いていた。しかし、先ほどの声の主は彼のモノではなく、ちょうど彼の近くにいた青髪の少年だった。確かヤツはイオリ・セイとやらか……とゴンダの頭から浮かび上がる。

 前にユウキ・タツヤがイオリ・セイのガンプラ制作技術を高く評価しているような話を聞いたことがあった。それに前世界大会準優勝者であるイオリ・タケシの息子だということも。

 

 彼らが来てからようやく解放されたゴンダ・モンタはこの少年について問いかけてみたところ、会長ことユウキ・タツヤが言うには先ほどの侵入者……レイジと名乗る赤髪の少年は会長が歓迎した客だそうだ。だがそんな話一切聞いてないし、急なことだったので半信半疑ではあったが、会長が言うのだから仕方ない、と彼を追い出すことに断念した。

 しかし、あまりにも火に油を注ぐかのようにレイジがゴンダ・モンタに茶化すせいなのか怒りに震え、ゴンダはレイジにガンプラバトルを仕掛けた。会長が言うにはレイジという少年は、この地区の実力者であるサザキをコテンパンに倒したそうではないか。その彼の実力を知るにも丁度いいと考えたユウキ・タツヤはその勝負を認める。

 だから挑んだ。ゴンダ・モンタ自慢のガンプラ……ゴールドスモーで……

 相手はユウキ・タツヤが認めるガンプラ制作者イオリ・セイの作ったビルドストライクガンダム。そして戦った。戦ったまではいい。ゴールドスモーに搭載するメガ粒子砲でヤツにお見舞いし、その威力をもって捻じ伏せようと考えた。

 しかし、ビルドストライクの性能は予測を遥かに超えていた。メガ粒子砲は躱され、コロニーに大穴が開かれる。その時に生じる気流が彼らのガンプラを宇宙空間へと引き込もうとしていた。

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 その生徒会長と何者かは知らないがガンプラバトルをすると聞いて、様子を見に来ていたムロト・エイキは試合を見ていた。

 ゴンダ・モンタのガンプラは実に素晴らしい。ゴールドスモーをシルバースモーにすれば面白いが、それは兎も角……あの片手から放たれるメガ粒子砲の火力は早々出せるもんじゃない。去年に比べて実力が上がっているな、とエイキは心の中で称賛を送った。

 しかし、今注目すべきなのはレイジが操作するビルドストライクだ。…………見た感じあれは未完成だな、と察する。

 武装もビームサーベルと頭部に搭載されているバルカン砲ぐらいしかない。

 だがあのスピードと操作の技術はあのサザキを倒したのも頷けた。

 まるで武闘家のような動きに加え、MSの性能に振り回されずそれに合わせて使いこなしていたのだから。

 

 しかしだ……ムロト・エイキにとってレイジは、やはり未熟にして戦闘に大雑把さが見える。動きが大振りで、素早いが一々無駄がありすぎだ。でもあの動きはこれから伸びるであろう動きであった。

 それとこれはエイキの私情なのだが、彼の操る機体がマイナーでないことが非常に残念であった。あれがマイナーなMSだったら面白かったのに、とエイキは不服そうに眉を八の字にした。

 

「……そろそろ決着が付くかな」

 

 気流に覆われる中、次弾を放出しようと溜めているゴールドスモーに対して、その溜めている間のタイムラグを利用して近づこうとするビルドストライク。風向きもあるのでゴールドスモーの方が優位そうに見えるが、ビルドストライクの性能はそれすらも打ち砕いた。

 ビルドストライクに搭載されたブーストをさらに火力を上げ、有無を言わさぬ速さでゴールドスモーの懐に飛び込む。それに驚愕したゴンダ・モンタは慌てて対応しようとIフィールドサーベルで迎え撃ったが、もう遅い。

 ビルドストライクのビームサーベルがIフィールドサーベルの出を上回っていた。そしてスモーは高熱の斬撃によって倒されるのであった。

 

 

 

 ゴンダ・モンタがやられたのを見ていたムロト・エイキは彼のもとに行き、ドンマイと声をかけてあげたのだが、外野から「ゴンダが負けた!」「ゴリラが負けた!」の悲鳴を耳にゴリ……じゃなくてゴンダが怒り狂って先ほど禁句を口にした生徒たちを追い回している。あれだけ元気なら問題ないだろう。

 その様子に呆れながら苦笑いしていると……エイキはバトルフィールドに1人の少年が手にした紅いガンプラをセットしているのを気付く。

 

「ん……あれ、タツヤ……?」

 

 エイキはタツヤの不審な行動に目を細めたが、あの紅いガンプラ……ザクアメイジングを見て察した。

(あー……また始まったか。戦闘衝動が)

 例えがグラハム・エーカーのようなキャラだけに、先ほどの温和な態度から勇ましい熱血キャラへと変貌してしまった。

 あの時、戦わないとか言ってたのに……話が違うじゃないか。

 

「……はぁ、仕方ない人だな」

 

 ザクアメイジングをすぐに出撃させたタツヤは、

 気流の風力を物ともせず、イオリとレイジの前に立ちはだかった。

 

「……これではせっかく集まってくれたギャラリーに申し訳が立たない。君も……そうは思わないかね? いーや……私はそう思う! レイジ君!」

「ゆ、ユウキ先輩……?」

「あ、あんにゃろー」

 

 タツヤを前にレイジは片眉をあげながら問いかける。

 それをタツヤは、前髪を後ろに整え目つきを刃のように鋭利に尖らせた。

 あれが現役高校生において最強と謳われたユウキ・タツヤ……

 

 紅の彗星と呼ばれた少年である。

 

「突然乱入してすまない。……だがね、レイジ君。先の戦いは実に素晴らしかった。が、君はこのガンプラに対する思いがなっていないことが分かった。そこでだ、レイジ君。私は君に勝負を挑ませてもらおうじゃないか。それで君には敗北というものを知ってもらう!」

 

 ザクアメイジングの両手にはヒートナタが握られ、それをビルドストライクに向ける。

 焚き付けられた闘志が伝わったのか、レイジは冷や汗を掻きながらも彼の威迫に動じず、彼と対峙した。

 

「いいぜ、乗ってやるよ。こんな挑発をされて……おちおちと引き下がってられるかよ!」

「……! れ、レイジっ」

 

 レイジの好戦的な態度にイオリ・セイは驚きの声を上げる。

 しかし、イオリ・セイはそれに反対する言葉を出さない。

 どちらかといえば、イオリも戦ってみたかったという好奇心があった。

 自分の作った……それも最高傑作とも言えるビルドストライクがどこまで彼に通用するのかを……

 

「……フッ、それでこそガンプラビルダーだ、私はそれに感謝する。戦士とは……目と目があえばその瞬間戦うのが定めなのだからね……!」

「……ッ、しゃらくせぇ!!」

 

 さきに仕掛けたのはビルドストライクに搭乗するレイジだ。

 タツヤはそれに一向に怯むことなく、感情を昂ぶらせていながらも冷静にビルドストライクのビームサーベルの熱線を躱す。

 

「は、早い……!?」

「んなろーッ!」

 

 驚きの音を上げるイオリに対し、レイジはビルドストライクの腰に携えたもう1本のビームサーベルに下段に向けて熱線を噴出させる。

 しかし……

 

「―――燃え上がれ!」

 

 あのビームサーベルの攻撃を躱したザクアメイジングにエイキを除いて全員が驚愕した。

 そして、ザクアメイジングが見た目とは裏腹にあの速い立ち回りでビルドストライクの後ろに回り込んだ。武装が少ないのが不幸中の幸いというべきか、ビルドストライクはその機動に負けず全体を反転させ、手にしたビームサーベルをザクアメイジングに向けて振り払う。

 

「―――燃え上がれ!!」

 

 ビルドストライクの猛攻を紙一重で避け、ヒートナタを薙いで彼のビームサーベルを弾き飛ばす。さらにもう1本……後方に逃げたビルドストライクは頭部のバルカン砲で牽制するが、

 

「―――燃え上がれっ!!」

 

 タツヤが操るザクアメイジングには通用せず、そのまま接近されて足払いし、首元にナタが寸止めされるのである。

 これにてバトルが終わるのだが、このバトルの決着が始まってから約50秒か……流石だね、タツヤ。

 

「さて、と……ボクもこれに参戦したいけど……まだアレが完成していないことだし……ここはガマンガマン」

 

 世界大会選手権……楽しみだな。タツヤも3年前とは比べ物にならないぐらい技術と力が向上しているし、サザキや他のビルダー……それにおそらく彼らも出場するのだろうイオリ・セイとレイジの2人組。今年度は期待しても、良いかな。

 

 そしてボクはこの時、誓った。

 

 マイナー勢を使って無双してみよう……と……

 




今回はオリ主が傍観者のように立ち振る舞わらせました。
一応、レイジがガンプラバトルをするキッカケにもなっていますし、
そんな事情を知らないエイキが彼らを見てどう思うのか、そういう描写にしてみました。

グラハム・エーカー……ガンダムシリーズの中で好感を持てるキャラなので似ていないかと思いますが、物語が進んでいくごとにタツヤをグラハム化させてみたいと思います。

感想・批評・誤字脱字がありましたらよろしくお願いします。

―――追記―――
感想でこういうガンプラを出してほしいという要望がありますが、感想以外のことを投稿すると、
規約違反になるそうなので、控えてほしいと思います。申し訳ありません。

2話書いてて、自信も少し上がってきたので1週間後に作者の正体を出したいと思います。
1週間後に活動報告でマイナーな機体などを募集するのでその中から3機~4機ぐらい選出したいなーと思います。

ついでにこれは作者の私情なのですが、匿名を使うのはいいけど活動報告とか必要な場合って不便だなぁ、って思います。これも匿名とかできないのかな? まあ、ボチボチ頑張りたいと思います。

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