俺、比企谷八幡には記憶がない。そのことを知ってるのは必要悪の教会の連中だけだ。その他の奴には、他の魔術師に狙われると面倒とかで伏せている。
そんな俺をしばらく護衛することになった神裂に、俺は色々教わり、風紀委員とやらに行くことになった。早い話が学生警察である。
その支部の前にいる。確か…IDパスワードとか入れて…。
「ち、ちわっす…」
なんかリボーンみたいな挨拶になってしまった…。そんな俺を見て、五人の女子が俺に目を向ける。あれ?俺の職場って女の子しかいないの?
「もう!今までどこ行ってたんですか!?心配したんですから!」
急に頭が御花畑の女の子に怒られる。てかなんで花生えてんの?栄養取りすぎでしょ。
「や、悪い…」
「悪いじゃないわよ!あの後、ワクチンソフト流してからすぐにあんたの所に駆け付けたら、AIMバーストもあんたもいなくなってるし…てっきり死んじゃったと思ったんだからね!?」
今度は茶髪の子に怒鳴られる。てかなんでタメ語なわけ?言っとくけど同い年じゃないからね?
「で、人を散々心配掛けさせた挙句、無断欠勤を重ねて遅刻ですか…いいご身分ですわね」
今度はツインテールの女の子だ。つーか君らの名前知らないからなんとも言えないんだけど…。
「いいか、遅刻は悪いことじゃない。ヒーローは遅れてやってくるし警察は事件が起きて始めて動き出す。これはもう遅刻はむしろ正義と言っても…」
『過言よ(ですわ)(ですよ)!』
ちょっ、そんな声を揃えて言わなくても…。
「そんなことより佐天さん、なにか言うことあるんじゃないの?」
眼鏡の人に言われて気まずげな表情で立ち上がるセミロングの女の子。ほう、この子が佐天か。覚えた。
「その、あたしのせいで入院させちゃって…すいません」
あたしのせい…?なんかやられたのこの子に。
「本当に、あの時は能力が出たことが嬉しくって…でも比企谷さんに言われた通りやっぱ、自分で強くならなきゃなって思いました。ですから…」
「あーあんま気にしてないから」
ぶっちゃけ、覚えてないのでなんとも言えない。てか覚えてないことに謝られるのはあまりいい気がしない。むしろこっちが申し訳ないです。
「それより、なんか仕事ないのか?」
俺がそう言うと、全員があり得ないとでも言わんばかりの表情をする。なんだよ…。
「比企谷さん、あなた…頭でも打ちました?」
急にツインテールの子が聞いてくる。え、記憶飛んでるのばれた?どうしよう、神裂に怒られる…。
「あなたが自分から仕事を求めるなんて…」
「いや無いなら帰ろうと思っただけなんだけど…」
すると、全員の顔が緩む。なんだよ…記憶あるうちの俺ってどんな奴だったんだよ…。
「てか、帰っていいわけないでしょう。見廻りに行きますのよ」
「見廻り?どこを?」
「市内に決まってるでしょう?」
で、ツインテールの子は俺を引っ張る。
「じゃ、白井さんよろしくね」
「はいですの」
「あ、私も行く!ちょっとそいつとお話したいし!」
「いってらっしゃい御坂さん」
なるほど、ツインテールが白井で茶髪が御坂な。覚えた。
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「暑ぃ…ダリィ…帰りたい…」
「ほらシャキッとなさい。風紀委員がそんなことじゃ示しがつきませんのよ」
「人間の本質はダラダラすることだろ?ならそれを風紀委員が率先してやるべきなんじゃないのか?」
「まずその前提が間違ってますわ…ほらいいから…」
「ねぇ黒子〜クレープ食べない?」
「お姉様…今は巡回中ですの…」
「いいからいいから!奢るからそこの屋台で三つ買って来て!」
「はぁ…まったく…」
白井は渋々買いに行き、残される俺と御坂。
「ねぇ、あんたあの時どうやってAIMバーストを倒したの?」
急に聞かれて少し遅れて反応する。
「や、まずそのAIMバーストってなに?」
「あの木山春生から出てきたタコみたいな奴よ。私と初春さんを逃がしてあなたが時間稼いでくれてたんでしょ?」
……まったく記憶にない。これはどうやって答えたもんか…。
「く、クレープまだかなー」
「話逸らさないで。あの時、あの化け物倒したのが私ってことになって大変だったんだから…。私が到着した頃にはなにもなかったってのに…」
困ったぞ…なにも覚えてないとは言えない…。なんて誤魔化そうか…。と、思ったらいいタイミングで白井がテレポートして来た。グッジョブ。
「買って参りましたが…なにをそんな怖い顔してなさるので?」
「い、いやなんでもないのよ…あはは」
御坂は立ち上がり、クレープを受けとる。そういえば俺の分もあるんだっけか…。財布を取り出す。
「それいくらだった?」
「別にいいわよ」
「そういうわけにもいかんだろ」
「いいってば!」
頑なに受け取らない気か。
「俺は養われる気はあるが施しを受ける気はない!」
「なにそのよく分からないプライド…分かったわよ…今度なんか別のもの奢ってもらうわ。それでいいでしょ?」
「…まぁ、それなら別にいいけど」
そのまま三人でクレープを食べる。あー…平和だ…。
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結局、その後は支部に戻ってすることなくなって帰宅。その途中で、微かな揺れを感じた。地震か…?だが、直ぐに納まる。
「最近多いな…」
それだけ呟くと、また俺は家へと向かった。
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家に着くと、いい香りが漂う。
「おかえりなさい比企谷」
「なんか悪いな…飯まで作ってもらって…」
「大丈夫です…元々、土御門がこんな所で護衛しろなんて言わなければ…」
うーわ、まだ怒ってるよ…。
「別に嫌だったらいいぞ護衛なんて。俺が死んだ所で困るやつなんていないだろうし」
「い、いえ!そういうつもりで言ったわけでは…ていうかそのマイナスな考え方やめなさいと言ってるでしょう」
しっかしあれだな。なんで電子レンジも扱えない奴が料理出来るんだろうか…。初日なんて面倒だったから冷食で済ませようとしたらレンジ爆発したのにな…。
「それより、風紀委員では上手くやれてるのですか?」
「お前は俺の母ちゃんかよ。別に普通だ。相変わらずボッチを貫いてるよ」
「でも、その風紀委員の方達はそうは思ってないのでは?」
「はぁ?」
「ふふ、なんでもありません」
「……そうかよ」
うーわ…面倒臭ぇ…。すると、飯が出来上がりそれをかっ込む。
「うめぇ」
「ありがとうございます」
そう言って微笑む神裂。なんか、母親みたいだな。この人マジ歳いくつなんだろ…。
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次の日、支部に行くといつものようにメンバーが集まる。ていうかなんで御坂と佐天はいるんだよ…風紀委員じゃねぇだろ。
「あ、比企谷さんおはようございます!」
毎朝、俺に一番に挨拶してくれる花飾り。しかもあのくったない笑顔は反則だと思いました。
「おーっす」
「おはようございます」
「おはよ、比企谷くん」
「おはよーございまーす!」
それに続いて挨拶してくる人達。ていうか今だにあの花飾りと眼鏡さんの名前分からないんだよな…。
「ちょうど良かったわ。あなたも手伝って来たら?」
眼鏡さんに言われて俺は戸惑う。そりゃそうだ、なにを手伝うんだよ。粉の運び屋とかだったらどうしよう。
「実は今日、初春の部屋に新しいルームメイトが来るんですよー、その引越しの手伝いです」
初春?駆逐艦かと思ったが違った。花飾りだった。
「それならパス。力仕事疲れるだろ」
「男の子がそんなことでいいんですか?」
「バッカお前男の子だからこそだろ。いいか?人生ってのは働いたら…」
「さて、行きますわよ。あんな男の話なんて聞いてたら碌な人間になれませんの」
そのまま四人は出て行く。俺は椅子に座ってパソコンで艦これでもやろうと思ったのだが、
「あなたも行ってきたら?」
メガネさん怖いっす。
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で、結局引っ越しの手伝いは白井一人で終わらせた。そりゃそうだ、テレポーターだもん!なにしにきたんだかわかんねぇやぁっ!ひゃーほうっ!
心の中で発狂して見たものの、虚しいだけだった。ちなみに引っ越しを手伝わせやがったのは春上さん。ものの見事に俺だけその子と話してない。
「せっかく早く終わったんだし、どこか遊びに行かない?」
御坂がそう言った。その中に俺は含まれてないだろうが、一応返事だけしておこう。
「俺は帰…」
「せっかくですがお姉さま。今日は風紀委員と警備員で合同の会議がありますの」
ナニソレ俺聞イテナイ。そんな面倒なの出てられるか。速攻帰ってやる。必殺、ステルスヒッキー!その場を去る。だが、意外な目利きがいた。
「どこ行くの?比企谷さん」
はぁぁるうぇいさぁぁぁん?なんで気付くんだよ…どこまで敏感なんだ。フィンファンネルが敏感過ぎたのかよ…。
「なにをフェードアウトしようとしてますの比企谷さん?」
「いや、ちょっと俺このあとアレだから」
「アレってなんですの?」
「ほら、アレだよ。つまり…」
だが、そこで金属矢を取り出す白井。
「すいませんでした」
「はいですの!」
この野郎…いつか殺してやる。