目の腐った能力者   作:ウルトラマンイザーク

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「…てことで、お願いできる?」

 

「……えー」

 

吹寄のお願いというのは、本来、吹寄と玉入れの審判をやる予定だった実行委員が熱中症でぶっ倒れたため、俺が代理でやるということだ。

 

「別にいいんだけどよ。臨時ボーナスとか出んの?」

 

「通常業務でも給料無いんだから出るわけないでしょ」

 

ですよねー。まぁあそこで待機してるくらいなら暇潰しになるか。で、競技開始。仕事と言えばほとんど吹寄がやってくれるそうなので、ただ怪我がないように見張ってればいいだけらしい。

両チームが開始線に立つ。…あれ?御坂?あ、常盤台なんだからそりゃそうか…で、なんで反対側に土御門と上条がいるんですかね。

で、競技開始。両校が必死に頑張る中、土御門と上条はなにやら棒を確認しては別の棒を見るといった行動をしていた。なんだ…?運び屋関係なのか?少し気になったので、競技に割って入った。

 

「こら!どこへ行く比企谷!」

 

「悪い、ちょっと」

 

走って向かう。だが、そこになんか飛んできた。それをかわして、飛んできた方を見ると、なんか扇子持った奴。

 

「そうはさせませんわ!」

 

「いや俺、実行委員なんですけど…」

 

「問答無用!」

 

なんでですか!またかわすと、その攻撃は玉入れの棒にクリティカルヒット、バランスを崩して倒れ、その先には吹寄が立っていた。

 

「比企谷!それに上条と土御門!貴様らなにを…」

 

「バッカ!危ねぇ!」

 

俺は走りながら吹寄を庇う。倒れてきた棒が背中に直撃。さらに、なにかが背中で反応し、俺は意識を失った。

 

 

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目を覚ますと、医務室的な所。

 

「まったく、救護班が救護班のお世話になるなんて…」

 

声がした。横を見ると吹寄が座っていた。なんて言えばいいか分からず、思わず黙り込んでしまう。すると、吹寄が顔を赤くして俯きながら小声で言った。

 

「その……ありがと、助けて…くれて……」

 

こういう時、なんて返せばいいか分からないのが困る。なんか「お、おう…」とか答えてしまった。

 

「そ、それと貴様は今日一日仕事無しだから。どうせそんななりじゃ出来ないだろうしね」

 

「………」

 

「あ、これスポーツドリンク。お礼だと思って。じゃあ私は仕事あるから」

 

そのまま俺はなにも言えぬまま吹寄に出て行かれてしまった。はぁ、なんかドッと疲れが出たな…。とりあえず、仕事からは解放された。これで運び屋を自由に追えると思って立ち上がると、土御門が医務室の入り口に立っているのに気が付いた。で、人差し指でちょいちょいと「こっちに来い」的なサインをしてくる。

言われるがままそっちに行った。

 

「まずは、サンキューなハチやん。一応、お前以外に被害は出ずに抑えられたにゃー」

 

「てことは、あの倒れた籠になにか細工されてたのか?」

 

「あぁ、ショートハンドって言ってな…いや、そんなことよりもっと大事なことがある」

 

「大事なこと?」

 

「あぁ、力を貸してくれるなら俺達と行動してくれ。じゃないとこちらも奴を追う手口が変わる」

 

「………」

 

なるほどな、まぁそりゃそうか。こっちも一人で追うのは限界があるとは思ってたし。

 

「あぁ、協力させてもらう」

 

「にひひ、決まりだにゃー」

 

俺達はそのまま俺と土御門と上条は行動を開始した。

 

 

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「で、俺達はどこに向かってるんだ?」

 

「運び屋、オリアナの所ぜよ。ステイルの理派四陣で奴の場所を割り出すことに成功したんだにゃー」

 

なるほどな、そいつをボコボコにすればいいわけか。

 

「なぁ、そいつ挟み撃ちに出来ないのか?」

 

「プロの運び屋相手に逃亡ルートを予測しろってのか?」

 

それもそうか…。

 

「いたぞ!」

 

上条の声で俺達はオリアナを捕捉する。が、あと一歩の所で無人バスに乗られてしまった。だが、俺は逃がさない。ジャンプしてバスの上に乗り、窓を叩き割って中に入った。

 

「あら、あなたは初めて見る顔ね」

 

「………」

 

そして、正面から殴り込みに行った瞬間、俺はバスの異変に気付き、窓から飛び降りた。その瞬間、バスが爆発する。あ、あっぶねぇー…。後ろからゆっくり歩いてくる土御門と上条。

 

「大丈夫か?ハチやん」

 

「大丈夫なわけねぇだろ。俺が普通の人だったらどうするつもりだったんだよ」

 

「ま、話は後だにゃー。奴が出て来るぞ」

 

土御門の言った通り、中から水浸しのオリアナが出てきた。

 

「おいてめぇ!なんも関係ない一般人を巻き込んで恥ずかしくねぇのか!?」

 

「この世に関係のない人間なんていないわ」

 

「そうだよなぁ、人類皆兄弟っていうし」

 

「ハチやん、黙ってろ」

 

「でも、傷付けるつもりはなかったのよ。こういうのとは違って」

 

そう言って、中学生が作りそうな英単語張を噛み切るオリアナ。その瞬間、土御門が倒れた。

 

「土御門!?」

 

「てめぇ土御門になにをした!」

 

「一定以上の怪我をした人間を封じる術式よ」

 

上条が土御門に触る。一瞬、なんか青いオーラみたいなのが消える物の、すぐに再発する。

 

「くそっ!」

 

俺の背中の強打は一定以上の怪我に入らないんですね、今だに少し痛いのに。

 

「『刺突杭剣』なんて物の価値なんて知らない…。それがどれだけ歴史を大きく変えられるのか、世界を大きく動かしていけるかなんて分からない。けど…そんなくだらない物のために誰かが傷つくなんて間違ってる!こんなつまらない結果しか生まないような道具なら、俺はそれをこの手で砕いてぶっ壊してやる!」

 

上条がそう言って俺と突っ込む。オリアナはなんか氷っぽい壁を出した。それを当然のように掻き消す上条。お前マジそれどうなってんの?だが、壁の向こう側にオリアナはいなかった。その瞬間、上から風の攻撃、また上条が防ぐ。お次は影の槍。

 

「なるほどな、同じ術式は使わないのか…」

 

俺が分析してると、攻撃を掻き消した上条の目の前にオリアナが立っていた。そのまま変な看板みたいな奴で上条を殴り、さらに殴って殴った。

 

「だらしないわね。今のは前戯だってのにもうダメになってしまったの?」

 

「いや、上条も前戯だったぞ」

 

「は?」

 

いつの間にか後ろに回ってた俺がオリアナを後ろから髪の毛を掴んで後頭部に膝蹴りを喰らわせた。

 

「っ!」

 

そのまま背中を殴る。そして、前にのめり込んだ時、上条がオリアナの顔面をぶん殴った。オリアナは看板を落とす。

 

「…あなた、やるわね」

 

立ちながら言うオリアナ。

 

「バーカ。上条ばかりに気を取られすぎてただけだろお前が。元々俺存在感ないし」

 

「そういうことじゃないのよ…まぁいいわ」

 

また英単語張を噛み切るオリアナ。なんだ?なにをする気だ?と、思ったらそのまま竜巻みたいに逃げて行った。

 

「それはしばらくあなたたちに預けておくわ」

 

「待て!土御門は!」

 

「あと数分もすれば治るわよ」

 

そのまま、俺達はオリアナを逃がした。

 

 

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結局、袋の中身はただの看板で、取引されるのもセブンソードではなくなんとかビエトロというもので、刺した所はローマ正教の領地となってしまうそうだ。で、これからどうするか決めるべく、俺と土御門は行動を共にしていた。

 

「じゃ、昼飯でも食いに行くぜよ」

 

「あぁ、そうする…」

 

あれ?なんか忘れてるような…。ま、いっか。とりあえず、土御門と屋台に列ぶ。別になにが食いたいとかはなかったから空いてる所に列んだ。

 

「次の方どうぞ〜」

 

「すいません、シャケ弁一つ…ってなにしてんの麦野…」

 

「は?…あっ」

 

ホントになにしてんだよ…バカなの?

 

「どうしたの麦野?って、あ…」

 

「フレンダ、お前もか…っていうか…」

 

アイテム勢ぞろいしてますねぇ〜なにこのコンプリートフォーム。クウガからキバまで全世界通ったのかよ。

 

「ハチやんどうしたんだにゃー?って、あ…」

 

そのまま沈黙。おいこれどうすんだよ。買うの?買わなきゃダメなの?とか思ってたら絹旗がズカズカと出てきて俺の胸ぐらを掴んだ。

 

「まったく!なにお昼の約束超すっぽかしてんですか!」

 

「あー…」

 

忘れてた。こいつと食うんだった…。

 

「や、違うんだよ。背中に籠がぶっ倒れて来てそのまま気を失ったっていうか…」

 

「はぁ?またなにか無茶してたんですか?」

 

「いや無茶はしてない。自分の出来る範囲のことを…」

 

「出来る範囲のことやってて超怪我なんてするわけないですよね?」

 

「きぬはた、落ち着いて。お客さんが戸惑ってるから」

 

滝壺の言うとおり、土御門の後ろの人から早くしろ的なオーラが出ている。ぐぬぬと唸る物の、渋々絹旗は手を離す。だが、俺に「その辺でまってろ」と、耳打ちされたので恐怖は消えなかった。とりあえず、シャケ弁だけ買って土御門とテキトーにその辺のベンチに座る。

 

「ハチやんの周りの女の子は怖いぜよ…」

 

「あぁ、しかも全員高位能力者と来たもんだ。まぁ絹旗はまだ妹みたいなもんだけどよ」

 

「あぁ、そういえばハチやん妹も学園都市に来てるぜよ」

 

「ふーん…俺の妹ねぇ…」

 

懐かしいなぁ…なんやんかやで大分会ってないしなぁ。再開とかしたら思いっきり愛でてやろう。

…………ていうか妹いんの俺?

 

「おい待て俺に妹いるなんて聞いてないぞ」

 

「あれ?言ってなかったかにゃー?」

 

「おい待て絶対わざとだろお前。うーわマジでどんな顔して会えばいいんだよ」

 

「ちなみに妹も魔術師ですたい」

 

「おいマジかよ。てか勘弁してくんない?や、でも会わなければなんとか…」

 

「さっき呼んだぜよ」

 

「ぜよじゃねぇよお前いつかぶっ殺すからな。てか責めて名前だけでも教えてくんない?」

 

「無事を祈るぜよ〜」

 

「おい待てグラサン野郎!」

 

そのまま土御門は逃げやがった。とにかくここから離れないと、ここに呼んだってことはもう時期…。

 

「お兄ちゃん!」

 

これは俺を呼んだ声なのか?とりあえずギギギッと振り返ると、黒髪のめちゃんこ可愛い女の子がこっちをニコニコして見ていた。

 

「お、おう…」

 

えーっと…名前わかんねぇよ…どうやって誤魔化せばいいんだ…。なんて考えてると、その子は俺を正面から抱き着く。

 

「久々の再会からのハグ、小町的にポイント高い!」

 

うーわ…俺の妹アホの子かよ…。これ俺の教育が悪かったからなのかなぁ…。でもおかげで名前は分かった。

 

「久し振り小町。えーっと…元気だったか?」

 

マズイな…全然言葉が出ない…。元々、人と話すのが苦手なのにこんな状況だと尚更だ。

 

「んー正確に言えば今元気出たんだよ!お兄ちゃんに会えたから!」

 

あーこの子あれだ。あざとい。俺の言葉の裏を読むスキルがなかったら告白して速攻振られるレベル。振られちゃうのかよ。

 

「それよりほら!案内してよ学園都市!小町、科学とか初めてだから楽しみにしてたんだよ!?」

 

「あー分かったから引っ張るな引っ張るな」

 

俺の右腕にしがみ付いて引っ張る小町。なにこの子本当に可愛い。とにかく、どこか案内しなけりゃならないらしい。

 

「なにを、イチャ付いてンですかコラァァっ!」

 

どっかで聞いた声。と、思ったら俺と小町の間に拳が降って来る。お互いにかわす。

 

「絹旗!?」

 

「……誰?」

 

小町がキョトンとするがそりゃそうだろう。

 

「おい絹旗落ち着け。これ俺の妹だから…」

 

「うるさいです人のこと放ったらかしにして心配かけさせて他の女とイチャイチャするなんて超許せません殺します」

 

「待って待って!ホントに妹だっつーの!おーい!聞いてる!?」

 

なんか、世界を救うより俺を救って欲しいです。

 

 


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