「固法よ。レベル3の透視能力です。よろしくね」
「白井黒子ですの。レベル4の空間移動ですわ」
眼鏡さん、ツインテール、フシギダネと自己紹介していく。隣にいた茶髪の奴が「わ、私達も…?」みたいな雰囲気を出す。それを察した黄泉川先生が頷いた。
「えっと…御坂美琴です。レベル5の電撃使いです」
…ふーん、こいつが超電磁砲、か。
「ホントはもう一人いるんだけどね。呼び出されて行っちゃった」
「あ、私は風紀委員じゃないからね」
なんて軽く自己紹介してもらった。俺はどうすればいいの?あ、自己紹介ね。
「えっと、比企谷八幡です…レベル0っす」
「こいつは根性がかなり捻くれてるじゃん。その矯正を頼む」
え、これって…。
「黄泉川先生、矯正とは?」
「とりあえず労働の尊さとかその辺を教えてやればいいじゃん。じゃ、私は学校に戻る」
え、ちょっと待って下さいよ…。なんで置いてくんですか…。で、取り残された俺。さっきまで忙しかったのか、女子組はなんか真面目な顔でなんか考えてる。ツインテールの白井が声をかけて来た。
「あなた、レベルアッパーってご存知ですの?」
え、なにデヴィルアッパー?
「いや、知らない、ですけど」
「そうですか…」
そこで、電話が掛かって来る。それを白井が応答。そして、しばらくしてから白井は俺と御坂の手を握る。
「お姉様、問題が発生しましたの」
「え?」
え?だからってなんで俺の手を握るわけ?俺のこと好きなの?と、思ったら目の前は病院だった。そのまま走り出す白井、追い掛ける俺と御坂。
「意識不明!?あの爆弾魔が?」
「そうですの」
「や、まず爆弾魔ってなに?あとなんで連れて来られたの俺」
「一応、あなたも今日から風紀委員でしょう?ならさっそく働いてもらいますの。それと爆弾魔については後で」
で、病院の先生に話を聞く。話によれば、今週に入ってから外傷の見られない意識不明患者が増えてるということだ。ウィルスの検出もないようだ。
「情けない話ですが、当院のスタッフの手に余る事案ですので、外部から大脳生理学の専門チームから招きました。間も無く到着される予定です」
そう医者が言った時だ。俺達の後ろから声がした。
「お待たせしました。木山春生です」
この人が、か。
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数時間後、ようやく診察が終わったようで木山先生が診察室から出てきた。
「またせたね。一通りのデータ収集は完了した」
「それで、昏睡状態の学生達は…」
「私は医者ではないから治すことは出来ない。この原因を究明するのが仕事だからね。それにしても…暑いなここは」
ホントに暑い。だってクーラー入れてないんだもん。このクソ暑い中でクーラー入れないとかどんだけ涼しい性格してんだここの病院。
「まぁいい…全員揃ったところで自己紹介しておこう」
そういうと木山先生は淡々とした口調で言う。
「私は木山春生、大脳生理学を研究している」
「風紀委員の白井黒子です」
「御坂美琴です」
「……あ、俺か。比企谷八幡です」
で、なんやかんや話してると、いきなり脱ぎ始める木山先生。なにしてんのこの人。
「ふう…暑い……」
いや暑いじゃなくて…。俺は思わず凝視してしまう。その俺の後頭部を御坂がひっぱたく。
「なにあんたは凝視してんのよ!」
「いやちがうんだよ…まるで吸い込まれるように俺の黒目が…」
「意味わかんないこと言わなくていい!」
結局、近くの喫茶店で話をすることになった。
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喫茶店、白井が木山先生とレベルアッパーに関して話してる最中に俺は御坂にレベルアッパーについて聞く。
「ようするに、使うだけでレベルが上がるなにかしらってことか?」
「そうよ。それが出た時期に倒れる人も多いから私と黒子はレベルアッパーが今の昏睡者に関係あるんじゃない?って推測してるの」
なるほどな…。
「ところでさっきから気になってるんだけど」
俺が言うとなぜか白井と木山先生までこっちを見る。いや大したこと言わないから。
「その窓の外にいるのはお前らの友達か?」
そう、さっきからめちゃくちゃこっち見てる。しかもど笑顔。しかも、片方は頭から花が生えてる。で、なんやかんやでそいつらは俺達と同席する。うわあ、女の子いっぱい。
「へー脳の学者さんと、私達の支部に新人さんですか!」
言われて俺と木山先生は軽く会釈する。
「なぜそのような方とお茶を、白井さんの脳になにか問題が?」
さらっと、怖いこと言いましたよこの子ー。
「レベルアッパーの件で相談してましたの」
「それならわたし…」
と、言って花じゃない方が音楽プレーヤーを取り出す。
「レベルアッパーの所有者を捜索して保護することになると思われますの」
その一言が出た瞬間ピタッと止まる。それを俺は見逃さなかった。そして、なんか色々あって木山先生と別れる。
「なんつーか、ちょっと変わった感じの人よね」
いやいや、ちょっとどころじゃねぇぞ。人前で露出する奴なんてろくなもんじゃない。
「そういえば佐天さん、見せたいものって?」
初春が聞くと、佐天さんはぎくっとして帰ってしまう。さて、あれをほっとくわけにはいかないな。俺は佐天さんを追い掛け、後ろから声を掛ける。
「佐天さん」
「あなた、さっきの…」
「レベルアッパーを持ってるなら回収させてもらうぞ」
俺の台詞にビクッとする佐天さん。
「や、やだなーそんな物私が持ってるわけないじゃないですかー」
「大方、保護するっていうのにビビったんだろ。別に保護ったってどっかの施設に監禁するわけじゃないし、使ってないならレベルアッパーだけ回収することになるかもな」
「も、持ってないですって」
「それに、それを使ったと思われる奴がすでに何人もぶっ倒れてる。今のうちに渡しておいた方が…」
「持ってないって言ってるでしょ!?」
急に怒鳴られ、佐天さんは走ってどっかに行ってしまう。正直、持っているなら提供してもらいたかった。そうすることによって風紀委員としては貴重なサンプルが手に入るから。
それに、初春と佐天さんは結構仲がいいみたいだし、万が一佐天さんが使ってぶっ倒れたら悲しむのはうちの支部の奴だ。それは少しおもしろくない。
「帰るか…」
まぁ、これ以上深追いすれば下手したら風紀委員呼ばれるかもしれない。風紀委員が風紀委員のお世話になるのはごめんである。
俺が泊まってる男子寮、階段を上がろうとすると、ルーンが貼ってあった。
「ステイルか…」
こんなところであいつに暴れられたら俺の住むところがなくなる。俺は綺麗さっぱりルーンを剥がして自分の部屋に入った。