廃ビル。中に入って、俺は言った。
「風紀委員だ。お前らを拘束する」
中には麦野、フレンダ、滝壺が立っている。
「はぁ?なんであんたがくるわけ?」
「き、絹旗はどこってわけよ!?」
麦野、フレンダと聞いてくる。
「絹旗ならここにはいない」
「で、私達を拘束しに来たって?あんた一人で私達を倒せるわけ?」
「倒すなんて言ってない。俺はあんたらを更生させられればそれでいい」
「ふーん、流石風紀委員様ね。でも、私は更生するつもりなんてないけど?」
「……」
「まぁいいわ。あんたウザいし殺すわ」
その瞬間、放たれるビームが五発、一発掠ったものの、全部かわして壁を走りながら接近した。
「なっ…お前ホントに人間か!?」
そして、麦野の目の前に降りて拳を構えた。
「言っとくけど、今日の俺は殴るぞ」
「……!」
ボディブローをぶち込むが、麦野をフレンダがガード。
「私の麦野になにするのってわけよ!」
そのまま回し蹴りが飛んで来るが、それを拳で相殺させる。
「っ!」
「フレンダぁ、良くやった」
その後ろから緑の閃光が見える。こいつ、フレンダごと焼く気か!なんとかフレンダを突き飛ばして、俺もかわそうとしたが、脇腹を掠った。
「ーっ!」
「あんた…!」
「ははっ!なに敵を庇ってんだぁ!?」
この野郎……!いつの間にか距離を取られてるし。そこからビーム、ビーム、ビーム。全部かわしてまた近付く。
「……化け物かこいつ!」
「っらぁっ!」
今度はフレンダシールドはなかった。俺の拳が真っ赤に燃える!じゃなくて俺の拳が麦野の腹に減り込む。
「てめぇ……」
「悪いな」
そのまま、俺はフルボッコに殴る。
「フレンダぁっ!こいつなんとかしろっ!」
麦野に言われたが、フレンダは動こうとしない。そりゃそうだ、さっきフレンダを殺そうとした癖に自分がピンチになった時だけ助けろなんて虫がよすぎる。
「こ、の……役立たずが…!」
「てめぇは能力だけで人徳がねぇんだよ」
「…んだと?」
「人を道具みてぇに扱ってるから、こうなんだよっ!」
そして、トドメに顔面を殴ろうとした時だ。麦野の身体中からビームが出る。それに気付いてかわそうとしたが、俺の足と肩を貫通する。
「ぐあっ!?」
「レベル5舐めてんじゃねぇぞ!」
なんだよこいつ、サイコガンダムMk-Ⅱかよ。俺は後ろに吹き飛ばされたように転がる。
「比企谷!」
なんか聞き覚えのある声がした。見上げると絹旗が立っている。
「おま…なんで来て…」
「よぉ、きぃぬはたぁ…」
ホラー映画みたいなイントネーションで麦野が言う。その声にビクッとする絹旗。どんだけ怖ぇんだよあのババァ。
「随分とその風紀委員さんと仲良くなったみたいね」
「む、麦野…」
くっそ…状況は最悪だ。責めてこいつが来なけりゃなんとかなったかもしんねぇのに……。
「まぁいい。絹旗、ラストチャンスだ、ここでそいつ殺せ」
「え?」
「そうすればお前もフレンダも助けてやる」
「………」
……嘘だな。あのババァの性格上、一度裏切った奴は殺すだろう。それに仮に残したとしても、今回の件で内部関係はかなり崩れたハズだ。それを元に戻すのは無理がある。
だが、それでも、
「やれ、絹旗」
「ひ、比企谷!?」
「1%でもお前が生き残る道があるならそうするべきだ。デメリットとメリットを比較しろ。俺が死んだ所で大した支障は出ない」
「超なにいってるんですか!?そんなこと…」
「早くしろ絹旗ぁ」
麦野が急かす。そして、しばらくして絹旗が立ち上がった。
「ダメです麦野。私は殺してもいいので比企谷、フレンダを逃がしてください」
「は、はぁっ!?」
「……本気で言ってんの絹旗」
「超本気です」
「ふーん、まぁいいや。死ね」
その瞬間、ビームが飛んで来る。俺はボロボロの体を引きずって絹旗を突き飛ばそうとしたが、ビームは絹旗の胸を貫いた。
「絹……っ!」
「なに、まだ動けたの」
そのまま俺にビームが飛んで来るが、俺はギリギリかわして絹旗を見る。
「ひき…がや……」
大丈夫、息があるなら問題ない。ポケットからルーンを取り出すと、神裂に習った治癒魔法を発動。よし、なんとかなったか。
「なに、あんた能力者だったの?」
「………」
俺は麦野を睨む。魔術を使った副作用で俺の腹から血が出るが、そんなもの関係ない。
「麦野、お前さ、人をなんだと思ってるわけ?」
「あ?決まってるじゃん。恐怖で支配して使い捨てる道具じゃないの?」
「………」
やっベーよ。久々にキレちまったよ。最後にキレたのがいつだか知らないけど。まぁここから先は少しあれだわ。うん。
「絹旗、フレンダ、滝壺。悪いな、お前らのリーダー殺すかもしれん」
「え……?」
俺は床にルーンを貼る。
「なにやってんのあんた?あれ?魔法とか言い出しちゃう人?」
麦野に言われるが無視。もうこいつはダメだ。ルーンを貼ると、俺は言った。
「来い、影の支配者ーヴァンパイアロードー」
今回は夜だ。だから、出てくるヴァンパイアもデカイ。おそらく数十メートルくらいのなにかが俺の影から出てくる。
「な、なによこれっ!こんな能力……!」
見たことないだろうな、こいつは能力じゃない。魔術だ。
「こんなものっ!」
麦野はビームを撃つがヴァンパイアには聞かない。
「そんな…」
愕然とする麦野。
「暗部だからって、無差別に人を殺していいなんてことはねぇよ。絹旗だって、フレンダだって、ミミズだってオケラだってアメンボだって、みんな生きてんだぞ」
「う、うるせぇ!私はこの学園都市に七人しかいないレベル5だぞ!」
「レベル5ならなにしてもいいってわけじゃねぇんだよ。天竜人かお前は」
「………っ!」
俺の身体からさらに出血する。そろそろ決めないとヤバイな。
「ま、待って!私が悪かった!だから……」
「俺にじゃなくて、こいつらに謝るんだな」
そのまま俺はヴァンパイアロードの剣を振り下ろした。それが麦野に向かって行く。恐怖で動けなくなった麦野。そのまま、バッタリと気絶した。
ちなみに、ヴァンパイアの剣は麦野の真横に振り下ろされている。
つまり、斬ってない。
「あ、あああんた。一体何者なわけよ!?」
明らかにビビってるフレンダ。さっきから喋ってない滝壺も俺をジッと見てる。
「あーお前ら、これについては誰にも言うなよ。じゃないと俺が、消され……」
そこまで言って俺は吐血する。やっべ…魔術にビームだもんな…そりゃそうなるわな…。俺はそのままぶっ倒れて気絶した。
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目が覚めた、病院の天井。ふと横を見ると、
「なんでいんのお前…」
上条が寝ていた。
「あぁ、隣は比企谷だったのか。俺は学園都市第一位にボコされた」
「俺は四位にボコされた」
「…………」
「おい、そのドヤ顔腹立つ」
「別にドヤってねぇし。ま、お互いレベル5と戦ってたのな。比企谷は勝てたのか?」
「一応な。魔術まで使っちまったけどな」
「それはお疲れ」
「お前はどうだったんだよ」
「どうだろうな。一応、御坂や御坂妹の力も借りたけど倒した」
「え、あいつ妹いんの?」
「…なんでもない」
「てか、お互いお見舞い来ないのな」
「ほんとにそれな」
「まぁ俺はボッチだからな。絶対来ない」
「じゃあ次、どっちのお見舞いか賭けようぜ」
「話聞いてた?俺は絶対来ないんだよ?」
その瞬間、ガララッとドアの開いた音がした。
「「きたっ!」」
俺と上条は視線だけバッ!と音がしそうなほどの速度でドアを見る。そこにいたのは、絹旗達アイテムの皆様。てか、なんで麦野までいんの?殺しに来たの?助けてー。
「やったじゃん比企谷、お前のお見舞いだろ?」
「お見舞いどころかお見送りされそうなんですが…」
そのまま四人は俺のベッドの横に行く。
「待ってごめん殺さないで調子に乗ってすいませんでした」
「いや、超違いますから…」
絹旗が呆れたように言うと、麦野が前に出た。
「ごめんなさい!本当に殺さないで!」
「あんた私をなんだと思ってるのよ…事後報告よ」
麦野が頭を掻いて言った。
「あんたの目論見通り、とまでは行かないけどアイテムは暗部は暗部でも護衛するだけ、殺しはなくなったわ。新学期から学校にも通うようになったしね」
「ごめんなさい殺さないで」
「殺されたいわけ?」
「滅相もない」
しかし、麦野が学校にねぇ…。なんか浮きそう。
「で、どこの学校?」
「私と滝壺はとある高校よ」
「上条、遺書書いといた方がいいぞ」
「あんたほんとに殺すわよ?」
「大丈夫だよひきがや、むぎのはもう誰も殺さない」
あぁ…なんだなんだで滝壺は和むなぁ…。すると麦野がもじもじしながら言う。
「まぁ、あれよ。その…わ、悪かったわね。あと、ありがと」
「は?な、なにが…」
「わぁー!麦野が照れてるってわけよ!」
「フゥレンダァ?お仕置きかにゃーん?」
「やばっ!」
なんて戯れてる二人を捨て置いて滝壺が前に出る。そして、俺の頬に唇を……な、なにしてんの?
「なっ…!?た、滝壺さん!?」
「ありがとね、ひきがや」
「ひ、比企谷!滝壺さんに手を出すなんて最低です!」
「出したっつーか出されたんだけど…」
なんて、ギャーギャー言いながら四人は退却。
「…なんつーか、すごいな比企谷の知り合いは」
「だろ?あれと関わるとロクなことがねぇんだ。現にこの様だし。でもこれで賭けは俺の勝ちな」
「ま、まだ次があるだろ!」
すると、ガララッと音。
「「きたっ!」」
「な、なによ…」
御坂と御坂だった?あれ?
「お前、ナルトだったの?」
「なにをわけの分からないことを言ってるんですか?と、ミサカは名前も知らないあなたを小馬鹿にしたように見下します」
すげぇよこの分身、解説機能付きだよ。で、そのあとグダグダと上条と二人がグダグダと話す。で、帰って行った。
「…これでプラマイ0だからな!」
「わーったよ」
ガララッ。
「「来たっ!」」
「と〜ま〜!」
「ひぃきぃがぁやぁ〜!」
来て欲しくなかった…。二人が不機嫌そうにズカズカ入り込んで来る中、俺は上条に言った。
「…引き分けだな……」
「あぁ……」