八幡の学年変えましたが、まぁ受け入れてください。
能力開発レポート
1年F組比企谷八幡
能力開発とは悪である。
高位能力者は、常に自分より低い者を欺き、見下す。例え歳上の人間であってもレベルが低ければ自分より低カーストの人間と処理するのだ。そのような行動や思考が武装無能力集団のような連中を生み出すのだ。
だが、本来人間とは見下す生き物であり、自分より上の人物を見つけたとしても、決して「自分もあぁなりたい」より、「あいつに比べたら私はまだマシだ」と、捉えるのだ。つまり、武装無能力集団の存在は仕方ないと黙認せざるを得ない。
なら、なにが悪いのか。それは能力開発というこの学園都市のシステムその物である。
そのようなシステムによって劣等感や敗北感を生み、能力者は能力の使えない者達を見下し、バカにするのだ。
結論を言おう。高位能力者の愚か者共、砕け散れ。
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俺の作文を担任であり尚且つ、化学教師の月詠小萌は読み上げた。おいやめろよ…なんでそんな大きな声で読んじゃうんですか…ちょっと恥ずかしいじゃないですか。
月詠先生は俺の作文をパサッと机の上に置く。
「比企谷ちゃん。なんなのですかこの舐め腐った作文は」
「は、はぁ…俺なりに能力開発についてまとめたレポートですが…」
「だから!能力開発のどこをどうまとめたらこうなるのですかって聞いてるのです〜!」
プンスカ☆って擬音がしそうなほどに腕を振り回す。それを実に面倒臭そうに俺は流す。
「分かりましたから落ち着いてください。これじゃ行動も小学生ですよ」
「せ、先生は大人なのです!」
「アッハイ」
「なんですかその生返事は!怒られてる人の態度じゃないです!」
完全に膨れっ面だよこの人。
「もう怒りました!比企谷ちゃん、こっちに来てください!」
「は、はぁ…」
なんか刑罰でも受けるのかね。黙ってちっこい先生の後ろを歩く。ちっこい先生が別の先生の机の前に行った。あれ?この先生って確か…。
「黄泉川先生!特別指導生一人お願いします」
あぁ、そうだ。体育の先生だ。うちの担任とは違ってちゃんとした大人だったよな。その黄泉川先生はクルッとこっちを振り向いて大人な笑顔を向けた。
「ん、了解じゃん。今回はどうしたじゃんよ?」
「先生に怒られてるのに態度が悪いし、性格も腐ってるのです。そこを矯正してやって下さい!」
「はいよ」
あーこれ他人に丸投げしただけじゃねぇか。まさか月詠先生がそんな人だと思わなかった。ま、今の人間関係なんてそんなもんだ。誰かに面倒ごとをなすり付けて自分は楽することしか頭にない。
特に、俺みたいな特待生は。
で、黄泉川先生は俺に「ついて来な」と、男前な台詞を言って職員室を出た。それを、俺は追い掛ける。なんか力仕事でもやらされんのかね…そう最初は思ってたが、段々雲行きが怪しくなって行く。
「荷物を持ってくるじゃんよ」
「は、はぁ…」
「持って来たら校門の前に集合じゃん」
学校から出るんすか…。俺は言われた通り荷物を持って校舎を出た。校門に向かうと、すでに黄泉川先生は校門で待っていた。
「遅いじゃんよ。レディを待たせるとは何事じゃん」
「いやレディって年でもないでしょ」
風が吹いた。ノーモーションで繰り出されるグー。流石警備員と言わざるを得ないほどの正拳突だった。
「次はないじゃん」
「すいませんでした…」
で、そのまま無言で連行される。そして、俺が辿り着いた先は、
「これから風紀委員一七七支部で働くことになった比企谷八幡じゃん。ま、面倒見て欲しいじゃん」
どうしてこうなった…。