『ポニーでテールなプロローグ』
キミはポニーテールを知ってるかな?
って、そう訊くと大体の人が奇異な眼差しで俺を見てくるけど、あれはどうしてなんだろうね。
別に変なこと訊いてるわけでもないし、むしろ女の子なんかは髪型の話なんだから、少しは反応してくれてもいいと思うんだけどなあ。まあ、別の意味でなら反応してくれるんだけど。
それはともかく、俺はポニーテールが好きだ。
この世界が楽しく思えるのは、きっと――――いや、間違いなくポニーテールのおかげだと、俺は昔から考えてる。
それこそ世界はポニーテールで回っていると言っても過言なんかじゃないだろう。実際のところ、俺はそれが真実だと信じている。
眩しいのは空に浮かぶ太陽なんかじゃなく、同じ地を歩いている女の子の髪型なんだ。
とにかく俺はポニーテールが好きでしょうがない。それは愛していると言ってもいいくらいだ。いや、愛してると言わせてほしい。
もういっその事ポニーテールと結婚したいくらい――――というのはあまりにも誇大表現だけど、お嫁さんになる人はやっぱりポニーテールの似合う人がいい。
そもそもポニーテールっていうのは、頭の後ろに束ねる髪型のこと。
ある程度の長さがあれば大体対応できる、実に素晴らしい髪型だ。
バリエーションも豊かで、左右のどっちかに束ねるサイドテールっていうのも、中々に魅力的だと俺は思う。
世の中の半数以上の人は名前を知ってるだろうね。その位メジャーな髪型なんだし。
しかし、名前が浸透してるというだけであって、実際ポニーテールにしてる人は中々見かけない。
いやいやそんなことねーだろ、意外と見るぜポニーテール。
と思う人もいるだろうからここで一つ補足説明しとくけど、俺がここで言っているポニーテールは皆の言うソレとは違うんだよね。
例えば、仕事中に邪魔だからとか、今日はポニーテールにしてみようかなとか、そういうポニーテールを求めてるんじゃない。
俺が求めてるのは、ポニーテールを愛し、誇りと情熱をもってポニーテールと一体化できる女の子のポニーテールなんだ。
で、話を元に戻すと、結果的に俺が理想とするポニーテールにはそう滅多に出会えない。
それでも俺はこの心を、ポニーテールへの情熱を捨てるつもりはないさ。
好きなものを無理やり別のモノに偽るのは、きっと間違ってると俺は思う。
だってそうじゃないかな?
好きなものを好きと言えないなんて、それはとても悲しいことだよ。
人は時間と共に変わっていく。でも、変わらないモノだって一つくらいある。
だから俺は、このポニーテールへの情熱を絶対に偽らない。
そう胸に誓いながら過ごしていたある日。
―――――――俺は彼女と出会ったんだ。