キリエとアミタはこの時代の人間ではない。未来から超技術でなのは達のいる世界に来た。しかし、その技術をもってしても成すことが出来なかった。
だが、キリエはなのは達がいたころにあったと言われた『闇の書』に隠されたとあるシステム。そしてそれをも超える邪神の存在。そのどちらかを手に入れれば世界を変える力を手に入れることが出来る神の力を求めてきた。
それに対してアミタは反論した。そんな都合のいいモノなんてない。そもそも過去に干渉するのはいけない事だと言い放つ。
しかし、それに反論する王城。神というのは自分の事であり自分こそがルールだと言い放ち、これ以上の議論はあるまいと自称する。
そして、そこに思っていた以上に神社の建物の内部をよじ登るのに手間取った邪神の力を有した少年。裕が肩で息をしながらようやく屋根の部分まで上ることが出来た彼は彼女達に待ったをかける。何故かバックライトが彼を照らし出し足元からこぼれ出るドライアイスの霧で彼の姿は人影にしか見えない。
この時点で宙に浮いている王城は魔法の秘匿を完全無視しているが、そこに現れた海鳴のトリックスター、裕という少年のおかげで参拝に来ていた人達はこれもショーの一部かと思われることになる。リンディさん、他管理局員はひそかに裕に感謝し王城に憤慨した。
「それは違うよ!議論とはお互いに成そうとしている目的を成そうと共に案を出し合う事だ!でも皆がやっていることはなそうとしている目的が違っているその時点で議論ではなくなっている。自分の意見を通して相手の意見を押しつぶす。人、それを討論と言う!」
「なっ、だ、誰ですか?!」
「お前達に名乗る名前はない!」
「じゃあなんで出たのよ・・・」
「無論、そちら方の意見を論破するためだ!そして桃色のお姉さん、あなたの探している神はこっちだ」
霧が晴れ、光が力を失っていく。闇夜に浮かぶ光と露店の光で裕の姿が映し出される。
そこには『I AM GOD』と書かれたたすきをかけ、鼻髭メガネをつけたあまりにも説得力が無い少年の姿がそこにあった。説得力の欠片も無い少年の姿がそこにはあった。神の威厳も減ったくれもない姿があった。
「・・・私は神の力を手に入れる!」
キリエは何もなかったかのようにアミタに言い放つ。
「お姉さん、ここ!あなたの大事な神様はこーこっ!大切なモノはいつだってすぐ傍にあるものっぉおおおっ!」
「ぎゃあああっ、どこに引っ付いているのエロガキッ!」
視界から外されたことにショックを受けた裕はキリエの背中側、腰回りの辺りにしがみついて陳情を訴える。
「我を差し置いて神を語るとは貴様、いい度胸だな、雑種!」
「ふっ、良いのか英雄王。今の俺がその気になれば…。俺の股間がおしょんしょんしてしまうぜ!」
「ぎゃあああっ!本当に離れろぉおおっ!」
「…甘酒飲み過ぎた」
「もう、子どもがこんな夜中に水分を取りすぎるからですよっ」
「この我が時間を割いての会話だというのに、ここまで茶々を入れるとは相当死にたいようだな雑種!」
「だがしかしこのお姉さんのウエストから離れる事はしない。そう、何故ならば、…既にのっぴきならない状況だからさ」
「ぎゃあああっ、もうっ本当にいやああああっ!腰にしがみついて微妙に震えているのが嫌ぁああああっ!」
しがみつかれたキリエには裕の姿を見なくても直接地肌に触れている分、彼の状況がよくわかる。キリエが言うように裕が微妙に震えているのがよくわかるのだ。
アミタの方を警戒。ついでに王城の方にも警戒しているが少しでも彼女達から意識を逸らせば捕まってしまう。かといって裕を引きはがそうにも思った以上に力強くしがみつかれている上に自分達がいるのは神社の屋代の上であり、子どもである裕をここから落としたらただじゃ済まないと考え、無理矢理引きはがすという事も出来ない。そう考えたキリエが考え付いたのは裕を抱えてこの場から全力で撤退することだった。
「すぐにトイレの近くに降ろすからしっかり捕まってなさいよ!」
キリエは腰につけていた未来じみた拳銃を握り、そこに充電されていたエネルギーの一部を解放して辺り一帯を強烈な光で埋め尽くした。いわゆるフラッシュグレネードである。
「・・・」
「何か悟ったような、諦めたような顔をしないでぇえええっ!」
光が晴れると同時にそんなキリエの悲鳴じみた声を残して彼女と裕の姿は消えていた。
「…あの子、トイレに間に合うでしょうか?」
「いや心配すべきところはそこでない。…あの珍獣めっ、今度会ったら我が宝具の錆にしてくれる」
憤りの無い怒りで拳を振るわせていた王城だったが、そんな彼の後ろから物凄い勢いで突貫してくる大人一人分の巨大なドリルが襲い掛かって来た。
「海鳴神社第二幕、黒と金の対決だこらぁっ!」
「貴様、榊原かぁあっ!」
魔法の秘匿をガン無視する白崎を先程のしたばかりの榊原が王城に向かって右腕にドリルを纏って突撃し、王城がそれの迎撃に入る。
「王じょおおおうッ!」
「榊原ぁあああああっ!」
二人がまたもや空中でぶつかり合いを広げるが榊原が第二幕と称したお蔭でか、またもや何かの出し物かと思った参拝客の方々。いいぞー、もっとやれとヤジが飛ぶくらいににぎわっていた。その合間に榊原がアミタに向かって手の甲の部分をひらひらと動かしたのを見てアミタも遅れながらもキリエの後を追うのであった。
一方その頃、アースラ組は謎の女性の行方と榊原と王城の戦闘での流れ弾で被害が出ないように結界を張るように奔走するのであった。
そして何とか逃げだせる事が出来たキリエは腰に引っ付いていた裕を神社から離れた海辺に降ろして尋問を始めた。
「で、あんた一体何者なの」
「神様です。ただし悪戯が結構好きな邪神の方ですけど」
「ふーんまだそう言う事言うのね。トイレの事はも冗談だったみたいね」
「いや、半分は本当。まだ我慢は出来るよ」
「そっちはマジだったのね。あんたが神だっていうなら何が出来るっていうのよ」
「何がって言われても…。地形変化とか?」
そう言って辺りに人がいない事を確認して砂浜をにWCCをかけて即席ゴーレムを作ったり自分達の周りに精巧なお城のミニチュアのような兵が作り上げられていく。
「・・・は?」
一瞬で出来上がったゴーレムや砂の塀を見て目を点にするキリエ。さらに
「あと、そこの桃色は『闇の書の欠片』とも言っておったな」
裕の胸元からミニサイズの王様が出てくるとそこから飛び出しながら光る。そして彼女が着地するとそこには裕と同じくらいの身長をした白はやてこと王ちゃまが現れた。
「聞かせてもらうぞ桃色。我等にどのような用件があってこちらに来たのかをな」
「・・・もしかして私二つGETしちゃった」
もしキリエがおみくじを引くことが出来たのならそれは大吉を引けていただろう。最も邪神の方は難有なのだろうが。
兎にも角にもキリエは好スタートダッシュをすることに成功するのであった。
キリエさん、アンラッキーかと思いきや超ラッキーでした。