リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第七十三話 いくぞ邪神様。ネタの貯蔵は十分か

 ライトピンクとライトブルーの革ジャンにタンクトップを身に着けた赤と桃の髪をした少女達が神社の境内の上でこれまたカラフルな銃から発光する丸い球を撃ちだしながらガンアクションを繰り広げていた。

 

 「キリエ、これ以上この時代の人達に迷惑かけないのっ」

 

 「アミタの分からず屋っ!私はここで砕け得ぬ闇の力を手に入れるんだから」

 

 ウエーブの掛かった桃色の髪を腰まで伸ばした16・7歳くらいの女性。キリエを諌める様に腰まで伸ばした赤髪を一つの三つ編みにした同じくらい女性のアミタ。

 衆人観衆が最も多くなる大晦日の晩にまるでアトラクションのように飛んだり跳ねたりしてその煌びやかな衣装と髪をきらめかせていた。

 その途中で、私が世界を救うなど、過去に干渉してはいけないだの、自分達の星は死に掛けているだの、それを救う為に砕け得ぬ闇が必要だの、何だか重要な案件に関するワードがぽろぽろ聞こえる。

 

 「団ちょ、ううんっ。裕君、あれなんだと思う」

 

 自分の告白を台無しにした出来事を引き起こしただろう二人を睨むように眺めるちーちゃんに裕はこう答えた。

 

 「うん、凄いアトラクションだよね。二人とも若いのにあんな風に境内の屋根を飛んだり跳ねたりしているんだから」

 

 「いや、そうじゃないでしょ」

 

 ふむ。ちーちゃんの目にはあれはアトラクションではないと言っている。まさか魔導師関連だろうか?いや、それにしてはリンディさんやプレシアさんから何の連絡もないし、来ない。そもそも魔法関連は極力人目を避けるように言っていたはず。つまり、あのアトラクションは魔法関連ではない。そしてちーちゃんの言う通りならアトラクションでもない。ということは、つまり。

 

 「つまりあの二人は、もの凄い身体能力にもかかわらず人目にはばからずド派手な衣装をして絶賛廚二廟ごっこしていて自宅に帰った後悶えることなく、数年度若気の至りを思い出して生活で悶え狂う人生をと。…しゅごいな、今の俺のM度じゃ全く歯が立たない」

 

 「いや、そうでもなくて」

 

 どうしてこうも見当はずれな事を言うのだろう。いや、見当はついているけど敢えて斜め上の事を言っているのだろうか。喉を鳴らしながらそういう邪神にやや呆れた表情を見せるちーちゃん。

 そんなやりとりをしていたら邪神の携帯電話が震える。

 

「いやんっ、バイブ(レーション)強すぎぃ。ほぎゃああああっ?!」

 

 「どうして何度もおふざけが過ぎるんですか」

 

 それは今、目つぶしされた女の子に告白されたからです。こういう時に邪神が装備している黄金の懐中時計(WCCで鎮静化の効果を持つ)が役に立つ。おかげで邪神のボケはいつでも絶好調だ。

 

 「おー、いてて。えーと、これはこれは」

 

 裕に送られたメールにはリンディからのメールで海鳴市。地球世界で何やら異常な時空振動が発生したとの事。遅れて榊原君からのメールでもうすぐGOD編が始まるから気をつけろと言う。

 え?何、邪神様だけじゃなくて破壊神であるビルス様も来るの。俺、破壊されちゃうの?まったく、海鳴はイベントの巣窟だぜぇ・・・。

 

 「…またか」

 

 盆と正月くらいゆっくり休ませてくれよ。もうそろそろ俺もネタ切れだよ。このお参りが終わったら父方の実家に行って親戚に顔を見せに行きながらお正月番組見てネタの貯蔵をしたいんだよ。

そう思いながら懐から出した邪神のネタ帳38と書かれたいろんな付箋が張られたメモを見ながら懐から鼻眼鏡やあんたが№1と書かれたたすきなどを出したり入れたり忙しい。その途中で青い髪をしたフェイトのネンドロイドのような物が飛び出して慌てて白い髪をしたはやてのネンドロイドのような物がそれを掴んで裕の服の中に戻っていった。

 

 「裕君、今なにか」

 

 「気のせいだろ」

 

 「いや確かに」

 

 「気のせいだ」

 

 「・・・」

 

 「気のせいだ」

 

 「そうですね、気のせいですよね」

 

 裕の着ている服の陰でなのはのネンドロイドのような物がもきゅもきゅと大判焼きの欠片を食べていたなんてのも気のせいだろう。

 

 「私は例え砕け得ぬ闇が手に入らなくても邪神の力を手に入れるからっ」

 

 「この駄々っ子!」

 

 ちーちゃんが目を擦っている間に境内の上でのガンアクションは佳境に入ったらしい。そして邪神という言葉が出た次の瞬間に裕は持っていたたすきをひっくり返して『I AM GOD』と記された部分が見えるように体に回して境内によじ登っていく。勿論これはちーちゃんが目を擦っている間に裕がカスタマイズ能力を使って作り出したものである。

 

 「裕君、何しようとしているの?」

 

 「綺麗なお姉さんが俺をよんでいる」

 

 「・・・もしかして逃げようとしている」

 

 びくっ。と思わず体を強張らせてよじ登っている柱からずり落ちそうになった裕。そんなことはないよと言いながら柱を上っていくのを見守るちーちゃんだった。

 

 

 

 赤髪の女性アミタは焦っていた。時間移動などという禁忌を犯した妹を追ってきたはいいがこんな人目が多い所に来るとは思わなかった。過去の文献を見て砕け得ぬ闇が手に入れれば確かに自分達の星エルトリアは救われるかもしれない。しかしそれはあくまで『かも』だ。そしてそれ以上に眉唾物である邪神の存在。ありとあらゆるものに干渉し変化させることが出来る黒の存在。その力を手に入れれば救うどころか作り変えることだって可能だろうだが、そんな物は存在しない。そんな物があればどこかにその存在を保持しようとするだろう。だがそんな経歴はない。ただそれがあったという記録があっただけだ。例えるならドラゴンボールがあると言っているような物だ。だから、そんな物は

 

 「違うな間違っているぞっ!神はいるっ、今ここにっ」

 

 キリエと争っているとそこに子どもの声が聞こえた。やけに自信に満ち溢れたその声がした場所を振り向けばそこには。

 

 「我という存在がなっ」

 

 その者の正体は王城。半人半神の英雄ギルガメッシュの力を特典としてもらった転生者がそこにいた。

 




 邪神様と榊原君「「出遅れたぁああああっ!」」
 邪神様は未だに境内の中をよじ登っている。
 榊原君はなのは達を守る為に白崎君をボコった後に王城をボコろうとしたが思った以上に手間取った。
 王城、久しぶりにヒロインとのイベントを起こせた。
 白崎、榊原君にボコられてノックダウン中。


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