神というのは変な奴だ。
盾の守護獣を自負している、俺ことザフィーラの意見はこうだ。
管理局から恩人であるユウ・タガミの救助の要請があったのだが捕らわれた彼の容態を見ると変だったのだ。捕らわれた身の上辱められたのか全身を紅潮させ息を荒くしていた光景を目にした瞬間に思った事だ。
思い返してみれば邪神である少年ユウの動向はとにかく動揺を誘うような事ばかりだ。
初めは主はやてが闇の書により心身を害していると知った時は自我のあるうちでは一番驚いたが、二番目に驚いたのはそれを『直す』ことができるかもしれないと知らされた時だ。もちろんその一番目はとにかく、二番目に関して部外者であるユウが関与していたので信用できなかった。何せ彼の初見はあまりにも『あぶのーまる』という物だったからだ。
だがその初見から考えられないような、いや、元から考えきれない状況だったのだがその動向に騙されたシグナムが完封された。それ以来シグナムは邪神に対して苦手意識を持っている。いつかレヴァンティンの錆にしてやると言っていたがその錆から『何か』がにじみ出たとしてもおかしくないと俺は考える。
主はやてとヴィータは日本のサブカルチャー繋がりで邪神の少年の事は好意的に見ている。シャマルの方はやんちゃ弟か妹の様に感じ取っているらしい。邪神というフレーズに怯えすぎていたかもしれないがその中身は好印象の相手にはひたすら甘い人格者だというのが自分達の意見だ。だが一度敵対、もしくは警戒を見せた輩には割と容赦ないといった性格も垣間見せたのがついこの間だ。主から新しい名を貰ったリインフォースも実はあの容赦ないのが本当の彼なのではないかと疑っている。そもそも彼女もシグナム同様邪神に良いイメージを持っていない。というか持てないらしい。
まあ、だからか。彼の周りで天変地異といった事象や事件があっても『まあ、邪神の事だし』と思える俺はおかしくなっているのだろうか?
誘拐事件が解決した後に彼を自宅に連れて行く際に彼の持つ金の懐中時計に事件の首謀者と思われる『シュテルん』のミニチュアサイズ(半透明)が俺の目に映ったのだが誰も注意しないのは邪神の事だから仕方ないのか?・・・よし、俺は何も見なかった。邪神に対しての接し方はさわらぬ神に祟りなし。だ。あのシュテルんも俺の視線に気づいたのか口元に人差し指を立てていたからその事には触れないようにすればいいだろうし・・・。
これが後にとある事件に繋がるとザフィーラは思い知る事になる。
さて事件解決だと主はやての家の門をくぐった時には既に太陽が昇るかどうかといった時間帯だった。そして、昼過ぎまで休んだ我等というより主はやてに知らされたのは一本の電話。それは邪神もどきことアリシア嬢が邪神との逢い引き(デート)に出ると言った内容だった。それを知った主はやては「抜け駆けやーっ!」と騒いでいたが、主はやてがユウに恋慕の想いがあると知った我等は大なり小なり驚いた。勿論小の方は俺とシャマル、ヴィータ。大の方はシグナムとリインフォースだ。特に後者の二人が騒がしかった。
日常面でもあれだけ騒動を起こしている彼が主はやてと常に共にいるというヴィジョンを思い描いただけで卒倒しかけたくらいだ。というか主はやてのノリが軽いのとユウの悪戯癖がミラクルフュージョンをしたら、それはそれは大変な事になるだろう。間違いない。
そんな止めにかかる二人の胸部をまさぐりまくると言ったセクハラで制した主はやてはアリシア嬢とユウが逢い引きの待ち合わせ場所にしている神社の前で二人を待つことにした。正直に言うと主はやてやユウを中心に何があってもおかしくない。何があっても驚かないぞ、と思っていた矢先に俺は早速驚くことになる。
邪神は逢い引きの時間に遅刻した。
やはり神というのはへんなやつだ。
裕が遅刻した理由。
その日の前日に管理局との交渉から始まり、誘拐事件といった一日二十時時間フルマラソンによる疲労。