「なんか、どのうちも裕ちゃんの様子がおかしいから一時的に預かるって言っていたわ」
複数の俺がなのはちゃん達の所にお泊りするという話を風呂上がりに聞かされた田神親子。
「俺の様子がおかしい・・・?」
「裕ちゃんの様子が・・・?」
「いつものこと」(邪神母)
「そうだった」(邪神本人)
「そうなのかっ?」(白はやて)
外に出るのはひたすら嫌がっているはやて(白)。もう王ちゃまでいいか。もう暗くなった夜道を出歩くのは危険だと母に言われたが、彼女本人が出向かなければ蒐集という廚二ごっこがおわらない。そこまで本腰を入れなくてもいいじゃない。だけど増殖した俺が何をしでかすが自分でも予測できないので早めに事態の収拾にあたることにした。テスタロッサ研究所までならシフトムーブでいけばすぐにつくが念には念を入れてあるものを引っ張り出す。それはバニングス提供の超高級段ボール(隠密効果大)。這寄る傭兵さんも愛用している物を完全再現させた物だ。使うのは俺と王ちゃまなので、あの人クラスの隠密効果は望めないだろうが、それでも目の前で段ボールを被った俺達をお母様は声をかけないと見つけられなかった。もう傭兵というよりもドラえもんの『石ころぼうし』ではなかろうか。これをつけて外は歩かないぞ。車を運転している人通りを歩いている人達にも認知されなくなるからな。
「じゃあ、いってきます」
「すぐにもどる」
「いってらっしゃい」
お母さま、俺は後ろや。この段ボールの隠密性マジですごいな。
さて、テスタロッサ研究所の玄関をすっ飛ばしていきなりロビーに転移した俺と王ちゃまが見た物は、まさに異様といった物だった。というか、あまりの光景に王ちゃまは固まっていたけど・・・。
恐らくそこから先は自宅エリアだろうと思われる扉の前に転がっている俺(黒焦げ)がユーノ君の魔法により拘束されると、アルフが運送して部屋の隅に積み上げてアリシアがその上に座る。アリシアのお尻の下にいる俺はなんだか幸せそうな顔をしている。くそう、ピンクのパジャマをつけていることから風呂上がりなのだろう暖かい幼女のお尻はそんなにも気持ちいいモノなのか。是非、替わって欲しい。
「いきなり貴方が現れたと思ったら、揃って風呂上がりのアリシアの前で大きく腕を広げて『Come on!』なんて言うから雷を落としちゃったけどアリシアのプリプリのお肌を好きにしていいのは私とフェイトだけよ」
「・・・くっ。俺はただアリシアではぁはぁしようとしただけなのに」
「…管理局での交渉の時のプレッシャーでおかしくなったのかしら?リアさんに連絡していてよかったわ。管理局の何かされてるかもしれないし・・・」
え?マジで?シャマルさんにチェックしてもらったけど一応問題無しだと言われたんだが?
「・・・あれ?WCCが使えるようになった」
「ん?どういうことだい、アリシア?」
「何かいきなりWCCのメニュー画面が開いた」
「僕がバインドした時は使えなかったのに、今は使えるってこと?それって・・・」
「まさか本当に第二、第三の邪神が・・・」
アルフさん正解です。まあ、アリシアという第二の邪神がいるし、というか俺の家にも4人はいたし、あと何人いるんだろうな。
「とにかく、これ以上変な事をしないように確保しておかないと。放っておいたらフェイトのお風呂を覗かれるかもしれないわ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほう?
同時に裕G(テスタロッサ研究所にいた俺)と邪神の目が光ったのはほぼ同時だった。
ここまで言われたらやるしかあるまい、俺。
「ならば、ここで倒れるわけにはいかない、よな」
バインドされていたのは簀巻き状態だったが何とか立ち上がる裕G。わきゃあと裕Gの背中に座っていたアリシアが転がされる。
「分かっているのかしら裕?それ以上はいくら貴方でも許される事ではないわ。私の雷が黙っていないわよ」
プレシアはゆっくりと立ち上がる裕Gに自身のデバイスの先を向ける。だが、それで止まる俺じゃないだろ!俺!
「間違っている。間違っているぞ。プレシア・テスタロッサ。俺が見たいのはフェイトの裸ではない」
「なに?」
「俺が見たいのはその先!そうっ、裸を見られて恥ずかしがっているフェイトの顔だぁあああああっ!」
やっぱりあいつは俺だ!俺はあいつなんだ!
ただのスケベ心じゃないっ、萌えも取ろうとしている欲張りな存在。邪神という力に呑みこまれず『田神裕』という人格を宿した一人の人間だ!
「そして、何よりもっ、フェイトの裸+恥じらう表情は雷に打たれるというリスクを負ってでも見る価値はある!」
「「くっ」」
「「納得しちゃうの?!」」
テスタロッサ母娘に驚きを隠せないアルフとユーノ。
俺の隣では王ちゃまもツッコミをしそうだったが口を塞ぐ。大きいとはいえ段ボールという空間に美少女な王ちゃまの口を塞ぐ。・・・うむ、これはこれでありかもしれん。
「いざゆかんっ、更なる高みへ!」
腕を拘束され立つのもやっとなのに彼は行く。己の道を。
邪神がフェイトを見る。フェイトも邪神を見る。フェイトは邪神を見られることで美しく(萌え)なる。
その思考に王ちゃまが尋ねる。
(邪神は?邪神はどうなるのだ?)
(邪神?邪神は・・・羽ばたくのさ)
まあ、プレシアさんのサンダーレイジ(非殺傷:弱め)で一撃ダウンだけどな。
と、そこへ顔を赤くしたフェイトがやってきた。湯上りだからではなくきっと裕Gとプレシアとのやりとりを聞いていたんだろう。
「もうお風呂あがったから恥ずかしくないもん!」
フェイトちゃんが「もん」を使うと萌え度が上がるじゃないか。そして、もう一人の俺!お前ならまだやれるだろ。頑張れ頑張れやれるやれる。そう、顔を赤くしながらもアリシアとおそろいのピンクのパジャマのフェイトを辱め改め、恥ずかしめろ!それではフェイトファンの皆様ご一緒にっ。
「可愛いっ。可愛いよフェイト!湯上りの肌もピンク色で超キュート!ちらちらと覗くおへそも可愛いっ。そして運動もばっちりしているから小学生のくせに腰のくびれが悩ましい!だがそれがいい!いつものツインテールから降ろしている金髪も大人っぽくてゴッドだ!ミステリアスの中にも保護欲をくすぐるその様子がたまらなくいい!は邪魔の裾から見える手首よりも奥の方もちらちらと腕の細さと機目の細やかさがあってなおいい!さすがフェイト!よく見れば手に塗っているのはハンドクリームの残りかすか何かなにかを髣髴させる。そして手に残っている豆の後か。ただ柔らかい手の平かと思ったらバルディッシュを振るって出来たという痕跡もまたいい。私頑張ってます。だけど隠してますと言う感じで保護欲をくすぐる!何が言いたいと言うと。可愛い!可愛いよ!全部が可愛いよフェイト!フェ・イ・ト!「フェ・イ・ト!」「「フェ・イ・ト!」」」
「・・・・・・・・・・」
「「いじめかっ」」
いつの間にか裕Gに混ざってプレシアとアリシアも混ざってフェイトコールをする。トウのフェイトは出てきた時よりも顔を赤くして俯いている。それは第三者から見ればいじめにも見えるだろう。フェイトコールからしばらくして、ダメージが大き過ぎたのかまるで空中に溶ける様に体全体が薄れていく。その様子にプレシア親子とアルフ。ユーノは驚いていたが裕Gの捨て台詞によって更に驚くことになる。
「・・・俺を倒してもきっと第二、第三の俺がお前達の前に現れるだろう」
「「「「邪神(アンタ)なら本当にありそうで怖いわ!」」」」
そして、完全に裕Gが消えると同時に俺は段ボールを脱ぎ去る。
いつでもガサゴソ。あなたの隣に這寄る邪神。
「待たせたな」
それは裕Aの頭上に紫の雷(非殺傷:強め)が落ちる2秒前の事でした。
「で、あなたは魔力を回収して回っていると?」
「あ、はい。そうです。でも、散っていった魔力は今消えたんで帰ろうかと」
プレシアの雷を見た瞬間に王ちゃまは戦意喪失。というか、間近で非殺傷とはいえ強烈な雷を見たのだ戦意を喪失させても仕方がない。
「まあ、消しちゃったのは私だし。私のでよければ多少は融通するわよ」
「あ、じゃあ私も」
「じゃあ、僕も」
「あんたも邪神に引っ掻き回されて大変だね」
「うう。ありがとう。・・・ありがとう」
テスタロッサ一家とユーノの優しさに涙を流す王ちゃま。でも、邪神自体は彼女の害になる様な事はしていない。事態をややこしくはしているが・・・。そんな王ちゃま達の隣で焼き加減はレア(生)とはいえ多少なりにダメージがある邪神の頬をつつく邪神もどきのアリシア。
「ねえ、裕ってフェイトを特別視しているみたいだけどフェイトの事が好きなの?」
「いや、俺はフェイトだけでなく可愛い女の子や美人は好きだけど」
「その割には私に構ってくれないよね」
さり気に自分は美少女だと言っているような物だがそれは置いておく。
「それじゃあ、今度の大晦日近所の神社に行くときに屋台の食べ物を奢るってのはどう?」
そしてさり気にアリシアをデートに誘う裕。邪神というのはさりげなくフラグを撒くのがお仕事のようだ。