リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第三十九話 みんなで歌おう邪神様の歌

 私、リーゼロッテ・アリアこと、アリアは目の前の現象に目を疑っていた。

 聖王教会や無限書庫で調べたところによると守護騎士プログラムという物はその名の通り、『闇の書』の持ち主をサポートするために作り出される人造人間みたいなモノ。

 それが四人までは確認撮れており、その一人一人が戦いのエキスパート。

 一人一人が一騎当千の実力を持ち、四人そろえば不意でも突かない限り軍隊レベルで対応しなければ応戦のしようがない。

 そんな彼等にたった一人。いや、ひとつの存在だけで応戦できるのはよほどの馬鹿か、もしくは化物だろう。

 今回にあたっては後半にあたる。

 

 「シャマル―!あいつに何渡したぁああっ!」

 

 「ごめんなさい、ごめんなさいー!」

 

 「まさか、白紙状態の闇の書1ページを取り込んだだけであそこまで進化すとはな・・・」

 

 「あれはもう進化というか別のステージのものだろう!」

 

 回避、防御、迎撃などいった専守防衛を強いられている守護騎士達がいた。

 そんな彼等が相手をしているのは異形の怪物。

 全身は黒いのが特徴的な上半身が鬼で下半身は四足歩行の恐竜を思わせる風貌。

 その接合部分にあたる所からはうねうねと触手のような物が這いずりまわりながら、大地に突き刺さるとその接合面からじわじわと蛍光色にも似たショッキングピンク色に染め上げていく。

 遠目に見ているアリアでも目を覆いたくなるような光沢だった。

 その上、

 

 「ジャシンゴー、ジャシンゴーッ、ジャッシッンッガーズェット♪」

 

 (※某『鉄の城』調で読んでください)

 

 「大地をむーしばむ、じゃしーんの触手―、

 スーパーゴーッド~

 ジャシンガーズェットー

 邪神の力は自分の為にー

 悪戯心でレッツラーゴー

 揺らせ~乳房~、ビィッグボイン~

 今だ~、出すんだ~、『蠢く何か』~

 ジャシンゴー、ジャシンゴーッ、ジャッシッンッガァアアアっ、ズェット!」

 

 軽快な音楽が怪物の体から流れてきている上に時折、怪物の体の所々から『モザイク加工された何か』が飛び散っている。

 あんな野太い声で愉快な歌を歌っているのが、神を越えたスーパーゴッドとは思いたくもない。

 気のせいだろうか?

 ピンク色の髪をしている女騎士が震えているようにも見える。

 

 「な、なななあ、あれはやっちゃっていいよな。殺っちゃってもいいよな!」

 

 「おちつけシグナムッ。殺っちゃたら蒐集できないだろっ。シャマルが『旅の扉』蒐集するまで待てっ!」

 

 「わ、私だっていやよ!あんなぬちゃぬちゃした『蠢く何か』を撒き散らすようなリンカーコアを触りたくないもの!」

 

 「かといって、この向こうの中。触手の中をかいくぐってあいつを倒すのも難しいと思うが・・・」

 

 怪物から伸びる触手は大小さまざまあるが、地面に向かって伸びている触手は地面をピンク色に染め上げている。

 空に向かって伸びる触手は守護騎士達を警戒しているものと一定範囲内をビチビチと蠢き、守護騎士達が直接武器を叩き付けるのを妨害している。

 無暗に突撃すれば触手の餌食になるだろう。

 遠くから見ていたアリアがそう考えた時、今まで愉快?な歌を歌っていた怪物が歌を止めて、守護騎士達を笑った。

 

 「ぐは、ぐはははははっ。感謝するぞぉ、守護騎士とやらぁ。貴様等のおかげで我がにっくき同胞のアユウカスを倒す手段が取れたわぁ!」

 

 「蒐集しようとしたら逆にこっちの方が力を吸われるなんて・・・」

 

 会話から察するに守護騎士達はあの怪物から一度は蒐集しようとはしたものの逆に力を吸われて防戦状態に陥った。と、

 主である八神はやても『闇の書』の影響で体調も芳しくはないに見える。

 ・・・彼女のことを思うと良心が少し痛む。

 自分お主人である、ギル・グレアムの命令とはいえ、十歳にも満たない子どもに全てを擦り付けて『闇の書』を封印しようとしているのだから、尚更・・・

 

 「とにかく、絶対に私はあいつには近づかないぞ!」

 

 「・・・く、シグナムは退け。ここは俺が食い止める!」

 

 「付き合うぜ、ザフィーラ」

 

 「サポートは任せてっ」

 

 「な、なら、私も」

 

 「「「どーぞどーぞ」」」

 

 「貴様等―!」

 

 ・・・対象の八神はやてはお笑い番組が好きだとは聞いていたけど、守護騎士にもそれが伝播しているのだろうか?

 守護騎士達が一悶着している間に怪物から伸びた触手が彼等をまとめて、からめ捕り、まるで趣味の悪い毛玉のようになった。

 あのままでは吸収されると思った私は彼等を助け出そうと腰を上げた瞬間、頭に衝撃が走った。

 

 「・・・え?」

 

 アリアの意識が崩れ落ちていく意識の中で最後に見たのはハンマーを掲げた赤い守護騎士ヴィータの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「しかし、上手くいったな。地球から少ししか離れていない世界で魔力を全開にして大暴れしていれば異変を感じて私達の様子を見に管理局の猫がやってくる」

 

 ヴィータは手にしたハンマーを担ぎながら自分が倒した猫耳を生やした女性、アリアを見ながら言葉をこぼした。

 

 「裕君が作り出した怪物を見て呆気にとられている間に私が彼女の位置を把握。そこに裕君が転移させる。裕君のWCCは変わった波長をしているけど魔力ではないから感知されにくい」

 

 シャマルは彼女が逃げ出さないように拘束の魔法をかけながら周囲を警戒する。

 彼女達がいう通り、守護騎士と怪物。怪物を作り出した邪神。ユウは怪物の形を元の形。腕の伸び縮みがするゲッター・ロボに戻す。

 

 「いやー、姿を誤魔化して増やした腕を適当に動かすだけの簡単なお仕事でした」

 

 現に怪物だったゲッターは一歩も動いていない。

 裕はWCCを使って、怪物だったゲッターの操作をしながら変声機で声を偽り、愉快な歌を歌い続けただけ。

 アリアを発見したと、シャマルが「ごめんなさい」と連呼する合図を聞いた裕は予めグループアイテム化した大地の一部分に彼女達をシフトムーブさせた。

 それを気取られないように触手。もとい、増設したゲッターロボの腕をがんじがらめにしてWCCで発生する光を隠した。

 『蠢く何か』はアリアの注意を逸らせるための囮のような物。実害や機能。役割は殆ど無い。

 

 「・・・とりあえずは管理局のおびき出しは成功か。次は交渉だな。・・・シグナムは何処に行った?」

 

 ザフィーラの言葉に裕や他の守護騎士達も辺りを見渡す。

 すると、ここから少し離れたとこ。

 正確には守護騎士達が触手に捉えられた場所付近で気絶している女騎士が一人。

 

 「あれ?!俺、シフトムーブし損ねた?!」

 

 邪神の不手際により、一層『蠢く何か』に嫌悪感を抱くシグナムがそこにいた。

 


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