想像力が豊かな人ほど楽しめるお話です。
「俺のターン!俺は『ツンデレ金髪お嬢様』に『体操服』『夕暮れ時』のコンボだ!」
「ぐはぁ!見えるっ、見えるで!強がりながらも必死に努力して涙目で潤んでいるお嬢様の姿が!」
海鳴市が経営する図書館の一角で邪神と車いすの少女が数枚の写真と手作りのカードを片手に悶絶している姿があった。
邪神が少女と出会った時、彼女の手には『ツンデレ少女のしつけ方』『ドジっ子娘のご飯の食べ方』『ムキッ、笑いで作る割れた腹筋』『気になる彼女の谷間』という本が抱えられていた。
一見するとR18の本かと思いきや、どうやら育児に料理。肉体改造にバストアップの本らしい。
だが、そのタイトルにティンときた邪神様は『いいツンデレ少女の写真があるんですけど・・・』と、近寄った。
車椅子の少女の方はというと、最初は怪しんでいたが邪神の少年が持っていた本『目指せツッコミマスター!』『ウホッ、漫才、ヤラナイカ』などお笑い(?)系の本を持っていた。
少女はそれを見てとりあえず「うちには赤毛のツンデレがいますから~」と言って、やんわり断りを入れようとしたが「金髪の天然ボケ少女もいますよ~」と、ちらちらと携帯画面に金髪の美少女が映っている待機画面を見せる。
「うちにも天然な金髪美人がいますから~」
「言い値で買おう」
「一枚、諭吉一人前」
「ダースで買おう」
などといつの間にやら意気投合。
図書館のコピー機を借りて印刷した写真に各々がいろいろと書いた紙を添えて何やら妄想の中でたがいに悶えているらしい。
「くっ、私の『ムチムチ美女コンボ』を受けてまだ正気でいられるとは大したHENTAIやないか・・・」
「そっちこそ『二人はユリキュア!コンボ』を受けて平然としていられるなんて・・・。貴様、やりこんでいるな!」
「ふふふ、周りに美女・美少女をはべらせていれば当然よ」
「まさか、こんなところに同志がいるなんてな・・・」
ぐへへへ。と、笑う少年少女の姿は遠目に見ていた榊原の目から見てもHENTAIだった。
だが、そんなだらしない顔をしていた少女の顔つきがきりっとした顔になる。
「だが、最後に笑うのは私や!ファイナルターン!ドロー!」
二人の間におかれていた写真の山から勢いよく写真を抜き取る。
にやりと笑みを浮かべる。
彼女が手に取ったのは『天然ボケ・妹』の写真。
「私は『天然ボケ・妹』の写真に『猫耳メイド服』のコンボや!」
たしかにその組み合わせは大きなお友達が大歓喜するコンボだが、妄想バトルはすでに終盤。いまさらそんな妄想では邪神を悶えさせることは出来ない。
「血迷ったか!今更、そのような組み合わせで萌える俺ではないぞ!」
「・・・何を言うてるんや。まだ、私のターンは終わってないで!」
「なん、だと・・・」
「私はイベントカード『家族遭遇』のカードや!」
イメージしろ!メイド服を始めて着せられ、恥ずかしがっている所に自分の家族がやってきて、更に顔を赤らめる場面を!
自分でも似合っているかな、と、まんざらではない所に家族に更に可愛いと褒めちぎられて更に照れてもじもじする『天然ボケ・妹』の姿を!
「あ、あああ…」
「可愛い、可愛いよっ!『天然ボケ・妹』!照れながらもはにかんで、嬉しいけど恥ずかしいともじもじしているその姿を!」
「うわあああああっ!!」
「そして、『天然ボケ・妹』はこう言うんや!上目づかいで・・・」
・・・本当?私、可愛い?と、
「も、萌えええええええええっ!!」
勝負決した。
敗因は『天然ボケ・妹』を知っているが故の邪神の妄想力だという事に。
「図書館ではお静かに」
「「すいません」」
図書館のカウンターにいた係員に怒られる邪神と少女なのであった。
結局、最近のお笑いについて口だけではなく体を張って笑いを取る芸人について熱く語る少女と邪神が互いの名前を知るのは閉館時間ぎりぎりまで少女の迎えが来る時まで知る由も無かったという。
「・・・俺、はやての事を助けたくてここに来たんだよな?」
榊原は原作知識で車いすの少女。近い未来、襲い来る困難に立ち会うことになる八神はやてを邪神の力を持つ裕に救ってほしかったのだが、そんな事を忘れたのか。頼りの邪神様はお笑い談義に満足して、榊原君と一緒に帰路についたのだった。