海鳴でなのは達がラゼンガンと戦う少し前。
裕とプレシア。そして、幽体のアリシアは最後の打ち合わせをしていた。
体中に取り付けられた機械操作で電気ショックを与えて心臓や脳などを人為的に動かす。
地面に展開されている魔方陣は身体能力を強化する魔方陣に召喚の魔法陣。
その他もろもろの魔法に生命維持の装置の数々に身体能力の向上や生命維持効果のあるアクセサリーをつけたアリシアの体はまるでどこかの高位な司祭を思わせる格好だった。
仮死ならぬ仮に生き返る仮生状態にしてジュエルシードでアリシアの肉体にアリシアの魂を封じ込めて定着させる。
それがアリシアの蘇生方法だった。
ただ、裕は一つだけ懸念していた事があった。
「…アリシア。お前、もしかしたらもう一人の邪神になって、不死になっちまう可能性も有るんだぞ」
ワールド・カスタマイズ・クリエーターという作品に出てきた主人公とは違う邪神。
アユウカスという見た目は少女の邪神だが、彼女の能力は近くにいる神技を使う事。そして、不老不死。
三千年以上一人で生きた邪神。
人間の寿命は八十年。魔法世界での人の寿命がどれだけ生きられるか分からないが百年は生きられないだろう。
ずっと一人で生きていくかもしれない。
それを二人に伝えるとプレシアは苦虫を噛んでいるような表情を見せたが、アリシアの方はにっこり笑ってWCCのメニュー欄にメッセージ書いて見せる。
『女の子の裸を見たんだから責任とってよね』
その笑顔に裕はため息をつきながら了承した。
WCCの力でどうにかできるなんて考えていないし、完全に未来に投げっぱなしになる。
本来ならジュエルシードの万能薬&若返り。更に死者蘇生に近い。というか、死者蘇生そのもの。
ジュエルシードという厄介な物を安全に扱えるようにするWCCの力を持つ俺自身を管理局は黙っていないだろう。
でも、だからと言ってここで投げ出せたとして、自分は笑って過ごせるか?
絶対にNOである。
そして、アリシア蘇生の作業が始まる。
生命維持装置の光が点灯し、プレシアの魔方陣がアリシアの体を優しく包むように出現する
その上からジュエルシードの放つ白い光が辺りを優しく包み込む。
その光は、その光が照らしだしていた影を二つから三つに増やす。
一番小さい影がふらつきながらも立ち上がる。
一番大きな影がそれに近寄る。小さな影もよろめきながらもそちらに近付いていく。
二つの影が重なり合う
寸前に小さい影がドロップキックの体勢をとる。
そして、重なる影。
勢いよく突き出されたその蹴りを受けて、
プレシアさん、ぶっとんだーーーー!!
超・エキサイティング!!
いやいやいやいや。何やってくれてんの?!
蘇生するなりドロップキックをかましたアリシアを羽交い絞めにして理由を聞くとフェイトにしてきたことへのお叱りだとのこと。
あんなに良い子なのに。とか、
あんなに可愛いのに。とか、
変な方向の趣味に目覚めたらどうしてくれるの。とか、
虐待を受けているフェイトが妙にエロかった。とか、
最後のは聞かなかった事にする。
なかなかにハードなプレイ。もとい、虐待をしてきたプレシアへの制裁らしい。
WCCで身体能力を強化した所為か、かなりいい具合のドロップキックがはいったプレシアはバリアジャケットを着こんでいるとはいえ、それだけでは殺しきれなかった衝撃で痛めたお腹をさすりながら立ち上がって来た。
そこからは裕が間に入ってプレシアとアリシアの話し合いを始めた。
時折、涙をこぼすようなシーンもあったが、話は一段落つき、アリシアとフェイトをどう合わせるかと打ち合わせをしていると海鳴の街で待機していたゲッターから緊急事態を知らせる信号だった。
異常事態を知らされた裕とプレシアはアリシアと時の庭園にあったロボットの殆どを連れて月村邸に転移。
裕がブラックゲッターを調整している間にプレシアはフェイトの援護に向かい、アリシアには月村邸で待ってもらうことにした。
「スティンガーシュート!」
「フォトンランサー!」
青と黄色の弾幕がラゼンガンに撃ちつけられている間に、なのはがまるでDBの元気玉のようにチャージしている光景を遠くで見ていた裕は思った。
・・・俺いらなくね?と、
管理局執務官のクロノとフェイトの攻撃で足が止まったラゼンガンは彼等を撃墜しようと全身から飛び出るトゲを伸ばして弾幕を相殺して彼等を貫こうとしたが、そこにプレシアの援護が入る。
「サンダーレイジ!」
ズドオオオオオン!!とおちる稲妻を見た裕はプレシアだけは怒らせないようにと心に決めた。
どう見てもフェイトの落す雷の数倍以上の威力を誇る攻撃に裕だけでなく、突然現れたプレシアに言葉一つ欠ける事が出来ないクロノだった。
まあ、味方してくれるならいいか。と、考えているかもしれない。
「…チャージ完了っ。みんな離れて!」
なのはが今まで空に向かって掲げていたレイジングハートの先をラゼンガンに向けると、それに追随する魔力の塊の光の玉。
「スターライトブレイカァアアアアアッ!!」
それはディバインバスターの数倍も太く、それでいて十倍近くの威力を持つレーザーが放たれる。
それを見たラゼンガンは王城が放ったエヌマ・エリシュの時同様に下半身をドリルにして、なのはの放った砲撃をやり過ごそうとした。だが、
「…サンダーレイジ。オールレンジ」
ラゼンガンの上下左右からプレシアの極悪な雷が当たる。
その威力がラゼンガンの姿勢を崩すことになり、なのはの攻撃をもろに浴びることになる。
一言でいえば、「ひでぇ」である。
相手に攻撃をさせることも無く弾幕で牽制。
相手に有効打のある攻撃をしようとしたらプレシアの高威力の攻撃でキャンセル。
そして、相手の必殺技であろう攻撃を防御しようとしたら姿勢を崩されてもろに喰らう。
うん。ひでぇ。
現にラゼンガンはなのはの攻撃を受けてボロボロな状態で空中に漂っていたものの力尽きたように墜落していく。
その途中でラゼンガンの中からメダルトリオの銀髪。榊原が落ちていくのが見えたのでプレシアがそれを優しく受け止める。
正直、受け止めたくないのだがなのはとユーノからの好感度は最悪。
フェイトとアルフにはそんな人物に触れて欲しくない。
裕はいざという時の為に取っておく必要がある。
榊原を受け止めたプレシアの周りには五個のジュエルシードが浮遊していた。
それらをそれぞれ封印したプレシアは怪しく微笑む。
「…さあ、いつまでも見ていないでお話しましょう。時空管理局の皆さん」
あ、俺じゃないのね。
…さて、プレシアの手腕を拝見させてもらうとしよう。
プレシア達のはるか上空で胡坐を組んだ状態のブラックゲッターはステルス状態だった数十機のロボット達を合体させて威嚇用のロボットを準備するのだった。