時空管理局員であるクロノ・ハラオウンは映し出されている映像を見て唖然としていた。
管理外世界、地球に世界一つを滅ぼしかねないロストロギア。ジュエルシードを回収するために航行艦アースラを率いてきたのだが、そのモニターに映し出されたのは金色のドラゴン。しかも三つ首の怪獣と言ってもいい存在が映し出されていた。
この世界出身のギル・グレアム提督からもこの世界を簡単に説明してもらったがあんな怪獣がいるとは聞いていない。
その怪獣に挑んでいるのが赤や青。黄色にカラーリングされた体長2~3メートルほどの自立型のロボットの大群。
その視界の隅には魔導師と思われる白い少女と使い魔だろうフェレット。
フェレットの方が結界を張り、辺りに被害を出さないようにしていて、白い少女はそのフェレットを守るように怪獣から吐き出される光線を障壁で防いだり、フェレットを肩に乗せて回避したりしている。
時折、隙を見ては時空を管理すると名をうっている管理局でもあまり見ない高出力の収束魔法を放つ。
「…僕が行かないと駄目か?」
正直、あの場に行きたくなかった。
怪獣から吐き出される雷撃。
ロボットの大群から放たれる。ミサイルや斧、ドリルといった物理兵器。
その風貌からは考えられないほどの威力を持つビームを放つ少女。
まるでイルミネーションのように放たれている弾幕の嵐。
その中に飛び込めば即、撃沈になるだろう。
「い、一応。あの白い子のデバイスに連絡入れておくね…」
「…お願いね」
幼馴染でアースラのオペレーターでもあるエイミィが通常回線で白い魔導師の方に連絡を入れる。ロボットと少女は協力関係にあるのだろう、少女とロボットはお互いに攻撃は放ったりはしていない。
『王城君も!白崎君も!余計なことしてくれる、の!』
『ギシャアアアア!!』
魔力を集中して撃ちだされる彼女の砲撃は金色の怪獣をよろけさせるほどの威力を持っている。
ロボットたちの攻撃ではビクともしない怪獣の頑強さを褒めるべきか、それともロボットたちが繰り出す攻撃が弱いのか、迷うところだが一般人にあたれば即死。悪くても重症だ。並の魔導師でもその攻撃を喰らえば戦闘不能一歩手前まで持ってかれる数値を観測している。
『なんであの二人はジュエルシードで巨大化した鳥を高出力で攻撃するかな!あれじゃあ、暴走を助長するような物だよ!』
『しかもその暴走に巻き込まれてなんかすごく強そうな怪物になっているし!』
なるほど。彼女と使い魔の会話から察するに王城と白崎という魔導師があの怪物に取り込まれているのか。その所為で事態が悪化したのか。
ジュエルシードとは恐ろしいものだな。
『なのは、ユーノ。手伝いにって、なんじゃこりゃー!?』
緋色の髪に犬耳と尻尾を生やした女性が彼女達のすぐ傍に転移してきたと同時に目の間の状況に驚いていた。
そりゃ驚くだろう。何やら魔力の気配がしたと思って、そこを覗いたら怪獣とロボット群が争っているのだから。
僕等だって目を疑ったさ。こんな異世界大バトルを見せられた日には我を疑う。
『それはね、って、管理局から連絡?!こんなややこしいときに?!』
いや、本当にすまない。少しでも気を抜けば撃墜される場面で受け取ったんだ。僕だってイラつくよ。
とりあえず、クロノは彼女達に今からそちらを援護するからそのスペースを確保してくれと頼む。
現場に参上すると同時に撃墜されることを防ぐために。
管理局から援軍としてやってきたクロノと途中からやってきたフェイトと協力したなのは達は協力し合って一時間ほどかけてどうにか怪獣からジュエルシードを抜き取り、封印することが出来た。
ロボットが怪物へ攻撃。または怪物の攻撃をその身で挺してなのは達を庇って戦ってい事により彼女達は比較的に安全なポジションやタイミングを確保することに成功した。
しかもロボットたちは一部破損した所があるとお互いに分離してまだ使える部分を掛け合わせて再び戦場に戻るというリサイクルを行う。
ロボットなので怪獣の口に特攻をするなど物量によるごり押しで、怪獣の意識をなのは達に向けないでくれたのだろう。
しかも、戦闘が終了するやいなや残存していたロボットたちは全て赤いカラーリングの機体に変形して遠くの空に帰ってしまった。
フェイトやアルフにもついてきてほしかったが彼女達には彼女達の都合がある。正確にはプレシアの指示を受けてから管理局に赴くつもりだった。何より、プレシアに事故の責任を全て押し付けた管理局への疑いをぬぐいきれなかった事もある。
残骸となっていたロボットたちのパーツも自爆装置でもついていたのか管理局が回収する前にボンと音を立て、ただの鉄くずになった。
ロボットの事は裕とプレシアから口止めされているのでなのは達は時折ぽろっと口を滑らせようとしていたが、戦闘が終了したことで結界の外にいた忍と恭也と合流。WCCを扱う裕の事は秘匿のままで済んだ。
恭也と忍がなのは達にフォローを入れながら、クロノの元航行艦アースラへと赴いた。
そこで艦長のリンディ・ハラオウンにこれまでの事を説明すると、ユーノとなのはの無茶についてお叱りをした後にジュエルシード探索についての責任を全て管理局が受け持ち、その後の探索も自分達が行うと言い出してきたところで、きらりと光る忍の目。
「では、これだけの被害を被ったので保証してください」
「…ふぁ?」
忍はこれまでのジュエルシードで被害を受けてきた時に出た被害額を要求した。円の価値はわからないだろうがその桁数を見たクロノとリンディはその桁数を見て驚いた。
見せられた額にクロノが気の抜けた声を漏らす。そこに出された金額はあまりに多く、勿論、いきなりやってきた管理局がそれだけの円を持ち合わせているわけもなく一時的に月村の家が負担することになり、管理局は徐々に返していくという方向性になった。
管理世界の物で管理外世界の人や物が被害を受けた。それを拒否するというのは法の番人を称す管理局の一員として補償しない訳にはいかない。
実はこれ、プレシアと忍が前もって打ち合わせていた物である。
管理局の暗部を知るプレシアは恐らく高資質の魔導師であるなのはを勧誘してくるだろう。あくどい管理局員が来た場合はゲッター軍団がアースラに攻撃を仕掛けると脅すことも考えていたがリンディの場合はそうはならなかった。
「で、ではこちらから幾つか聞きたいのですが…。あのロボットについて何かご存知ですか?」
「我が月村のガードロボットです」
「何を馬鹿な!あれはこの世界。いや、下手したらこちらの技術力をもこえているものだぞ!」
「それはそうでしょう。なにせ、そちらの技術とこちらの技術のハイブリッドみたいなものですし。そちらの技術力プラスこちらの技術力ですしね」
あのロボットは何かと聞かれた時には、テスタロッサと名乗る通りすがりの魔導師と月村の手による合同ロボットであり、今回のジュエルシード事件に貢献した物である。
正確には邪神の御業で誕生したロボットであるが勿論その事は言わない。
だがこれにはデメリットもある。
それは管理局の暗部がゲッターを求めて月村に襲撃をしてくるかもしれないという事だ。
一応、ゲッターは月村邸の要所、要所にステルス状態で30機程待機させているがいざとなったらプレシアが拠点としている時の庭園に屋敷ごと転送することになっている。
ゲッターの技術は企業秘密として取り扱っているので教えることは出来ないとも話した。
これは裕からの提案でロボット技術が云々と言われた際には、その手柄を全てプレシアが手に入れるというものであり、窓口を月村の家が受け持つことになっている。そうする事でプレシアの知名度を上げて、過去にあった事件の洗い出しを行いプレシアに本当に非があったかの確認をする為。
裕自身はプレシアを信じてはいるが、どのような事件だったのか詳細を知りたかった。たとえ、ねつ造されている可能性があったとしても、だ。
忍はなのはとユーノ遠回しに手伝うように言ってきたリンディにちくりと言い返すと、リンディはお手上げと言った具合で真剣な目で協力を申し出てきた。
協力はするがこちらの情報。ロボットになのはという魔導師の存在の秘匿だ。
彼女ほどの魔導師は喉から手が出るほど欲しがるとプレシアは言っていた。
リンディはそこまで嫌悪する管理局の暗部に興味を持ち、忍たちの要求を呑む。
今回の事件が終わればお互いに不干渉という条件でレイジングハートから先程封印した物も合わせたジュエルシード16個(WCCで作った偽物込み)を渡して今日は解散することになった。
クロノに見送られ、海鳴の街に戻ったなのは達の傍で忍は管理局の人間も十分に自分達で対応できると考えをまとめながら、何もないように見える空間を軽く小突く。
そこにはステルスがかかった状態の赤いロボット、ゲッター1が立っていた。
なのは達が怪獣と戦い終わった後、一機だけステルス状態になり忍をガードしていたゲッター1はアースラに乗り込んだ後も忍の後ろにずっと張り付いていた。
リンディとの話し合いの最中もその会話している映像を録画していた。さすがにアースラにハッキングまでとはいかないがこの会話映像だけでも良しとしよう。
そして邪神の施したステルスは管理局の技術よりも上ということが判明した忍はこれから起こり得るだろう管理局との交渉に気を引き締めながら帰路についた。
今回の話のまとめ。
王城×白崎×ジュエルシード=キングギドラ。
キングギドラVSゲッターVS魔法少女
月村忍が管理局に損害賠償を請求。
それだけが書きたかった。
王城と白崎は普通にアースラの医務室で寝かされています。