リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第二十一話 ウホッ、いい邪神様

 アリサの膝を受けてのたうちまわっている邪神を無視してアリサはフェイトとプレシアから話を聞く。

 話をまとめるとプレシアはずっと眠り続けているもう一人の娘を目覚めさせるために無茶苦茶な苦労をしていたらしく、心と体を壊してしまった。

 フェイトはそんな母親の力になりたいがために危険な目に会ってまでジュエルシードの封印・獲得に力を注いでいた。

 事情は知らなかったにしろ、突然の母の体の状態の告知に驚いていたフェイトとアルフだったが、裕から渡されたジュエルシードで完治したことを聞いてほっと溜息をこぼした。

 その上で、もう一度ジュエルシードと裕のWCCを用いて万能薬もどきを作るという話になると恭也が待ったをかける。

 そもそもジュエルシードはユーノの物であり、管理局に持って行くことが最初から決まっていた。それを勝手に使うのはどうかという案だ。

 それに対してのプレシアの意見は、その目覚めさせたい人間。アリシアの事だが、その事は裕を除けば誰も知らない。

 誰に使うかも明かさない。その上、警察の役割も担っている管理局に敵対するような態度を取っているプレシアの事は信用できないというアリサと恭也だが、それに対して裕がプレシアを擁護する。

 プレシアも以前は管理局に務めていた事があり、そこで酷い目に会ったという事を伝えると二人は何も言えなくなる。さらに裕が「まだあったことが無い管理局より目の前にいる人を信じたい」という言葉に二人は何も言えなくなりかけた。

 

 「…裕君。君はそれでいいのかい?」

 

 「俺はそれでいいと思っています」

 

 「そうじゃない。君は自分の事を過小評価。いや、過大評価している」

 

 ここ最近、裕はWCCの事をいろんな人に暴露しすぎている。

 人の口に戸は建てられない。

 JSと裕のWCC出来ない事は殆ど無い。

 死に掛けた人間も、病気で苦しむ人も救う事が出来る。

 それが世の世界に出てしまった時、裕はどこか人の手の届かない所へと逃げなければならない。

 

 「プレシアさんが言う事を全部信じたわけではない。だが、その通りの話だとしたらいずれは君も何かを被ることになるんだぞ」

 

 「…う、それは嫌ですね。でも、まあ、ここまで来たら最後までやりきった方がいいんじゃないですかね?」

 

 なにせ、幽霊?とはいえ邪神はもう一人いるのだ。

 ある程度WCCの事も含めて彼女達とは付き合って行かないと色々とマズイ。

 アリシアの事は未だにプレシアが言えていないから喋らない裕だが、それをどう受け取ったのか恭也は不意打ちに近い勢いで裕に拳を繰り出す。

 恭也は当てるつもりで放った拳だが、それを裕は両腕で顔を隠すようにガードする。

 突然の行動にアリサとバニングス氏は驚き、フェイトとアルフは警戒してデバイスや手甲を恭也に向ける。

 

 「あらあら、恭也君。乱暴事は駄目よ?」

 

 「…若いわね」

 

 裕の母親のシアは少しだけ困った顔をしてその行動を見守り、プレシアは恭也の考えが読めたのか、少し呆れたような溜息をこぼす。

 

 「…そこまで言うなら示してみろ。俺ぐらい倒せないようではどうにもならんぞ」

 

 恭也の瞳は鋭く冷たい目をしていたが、その奥にあるのは裕を気遣っての思いがあるというのは拳を受け止めた裕にも分かっていた。

 

 

 

 フェイト視点。

 

 急な展開に何とか追いついている私は今、猫のジュエルシードを手に入れた林。正確には屋敷内にある林らしいが、そこで恭也とユウが戦うらしい。

 勝てたらユウは母さんに協力するが、負けたら協力することを止めるという内容だった。

 正直、私は勝ってほしいのか、負けて欲しいのかどうかわからない。

 彼とは協力関係であり、彼の手によって変化を遂げるジュエルシードが知らなかった母さんの容態を回復させ、目覚めさせたい誰かを助けることが出来る。

 既に白いジュエルシードの作成は済んで入るものの下準備やら加工したジュエルシードの使用後の言い訳など、万全を期して取りかかりたいらしく、まずはジュエルシードの持ち主であるユーノに連絡しなければならない。それも管理局に見つからないように。見つかっても言い訳ができるように。

 

 「裕君。私が言うのもあれだけど知らない人にそんなほいほいついっていったら「ノンケでもくっちまうんだぜ」何言っているの?裕君、なのはの話をちゃんと聞いて」

 

 「…裕君。変なこと言っちゃ駄目だよ」

 

 私とジュエルシードを取り合って魔法戦を繰り広げた白い女の子と何故か顔を赤くしている紫色の髪をした女の子に責められていた。

 え?お母さん、ユウを食べちゃうの?美味しいの?

 

 「おい、モブ!いつまでなのは達と話していやがる!とっとと」

 

 「…まだ、私達の話が終わっていないの」

 

 「…引っ込んでいてくれないかな」

 

 銀髪の男の子まで何故かついてくる始末。

 なんでも「俺がなのはとフェイト達を守ってやるぜ!」とか言っていたけど、…誰?

 バルディッシュからこの前街中で見つけたジュエルシードの暴走で生じた余波に飛ばされた右手にドリルをつけた少年だという。…いたんだ。

 急遽行われることになった恭也VSユウVSツラヌキ(榊原 貫)が繰り広げられることになった。

 

 恭也は両手に木刀を握っている。

 裕はバニングス氏から貰った黒袴に金の懐中時計。手には指輪を幾つかつけている。

 ツラヌキは右手にドリルと人が怒りながら笑っているような凶悪な顔の形をした赤い鎧をつけている。あれはバリアジャケット?

 

 一応、WCCで防御力を上げたという服をつけている恭也とユウだが、バリアジャケットがあると無いではその戦力差は天地ほどある。

 ユウには悪いがこの勝負、ツラヌキの勝ちだろう。私はそう思っていた。

 

 

 

 ツラヌキ(銀髪)視点。

 

 モブがシスコンと何やら話していたが、関係ない。

 俺の貰った特典は魔力を『螺旋力』のように使えるという事。デバイスは小さなドリルの形をしたコアドリルという『天元突破グレンラガン』と同じデザインの物だ。

 以前はその力を満足に扱う事が出来なかったが、恥ずかしがるなのは達から預からせてもらったジュエルシードの力を螺旋力で少しずつ慣らしていくことにより、完全に扱うことが出来た。

 勝負が開始された瞬間に、シスコンとモブがこちらに向かってくる。

 二人共、普通の人間にしてはなかなかの速さ。ここはあえて二人の攻撃を受け止めて俺の実力というものを見せつけてやるか。

 二人の攻撃をそれぞれ片手で受け止めると、バランスが悪かったのか後ろに倒れかかる。だが、二人の攻撃は全く俺に通じていない。と、押し倒されるのを何とかこらえる。

 シスコンが残った方の木刀で攻撃してくるが、グレンラガンを象ったバリアジャケットを貫くことなんて出来はしな「実行~」

 

 ドズッ。

 

 「うげぇっ?!」

 

 モブの声が聞こえた瞬間にバリアジャケット消えて、シスコンの木刀が俺の鳩尾に突き刺さっていた。

 鳩尾を抑えながらその場をふらついていると、いつの間にか後ろに回り込んだモブが両手を合わせて人差し指と中指を揃えた、いわばカンチョーの構えをしていた。

 

 「おいおい、今度は俺の番だろ?」

 

 ゾクッと背筋に走ったが、シスコンから受けたダメージが大きいのか身動き取れない俺は、勢いよく突き出されたそれを…。

 

 

 

 

 

 「アッーーーーーーーーーーー」

 

 

 

 

 

 「…ふ、また、つまらぬ物を突いてしまった」

 

 と、呟いた邪神を最後に榊原はあまりの痛みに気絶してしまった。

 

 


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