テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
結局日曜になってしまいました。お待ちいただいていた皆様には申し訳ないです。
「伊丹二尉この子って何を食べるんですか?」
『先輩この人から助けて! めっちゃモフってくる! あ、そこは駄目だってば!!!』
「んんっと、何でも食べるんじゃないかなぁ…?」
俺の言葉に、『鬼! 悪魔!』などと可愛らしい言葉が脳内へと響くが、銀色という変わった色をしている以外は普通の子狐ということになっている後輩に反応する訳にもいかず、部下の一人である黒川二等陸曹に撫でられるままになって貰っている必要がある。
だから許せ後輩。
そう心の中で思いながら時折聞こえる艶やかな声を無視しつつ、横で運転している倉田三等陸曹へと話を振ることにした。
「捕まえた捕虜からの情報では、そろそろ村が見えるはずだったよな」
「ですね、確かコダ村だったっす」
「まったく、あの日ゆりかもめに乗り損ねた結果、異世界の村に来ることになるとはなぁ」
「良いじゃないですか、ケモ耳っ娘とか妖艶な魔女とかロリBBAとか居るかもしれないっすよ?」
「俺は魔法少女で良いよ。ケモ耳は間に合ってる」
「あはは、あの子狐ちゃんですか? 確かに懐かれてますもんね伊丹二尉。はぁ、あの狐ちゃんが人型に変身とかしてくれたらなぁ…!」
残念、ケモミミ娘が狐に変身してるんだ。
そう言いたいがただでさえ後部座席でもみくちゃにされている後輩に追い打ちをかける訳にもいかず、知らぬフリをしながらそうだなと軽く答える。先程から聞こえる恨みがましい唸り声も知らぬフリだ。
さて、いつものごとく何故こんな状況になったのだろうか。既にテンプレートと化しつつある自問を脳内で繰り広げていく。
事の発端は、上司に呼び出され与えられた任務の内容だ。
曰く、特地における生態系や生活環境、政治形態、宗教に至るまでを調べて今後の方針を決定するとのこと。そしてその為に俺に下された命令が1部隊を率いよ、だ。
与えられた隊の名は“第三偵察隊”。総勢12名の、俺が言えることではないが中々に濃いメンツが揃った部隊だ。
その12人で数台の
そういえば、どうして黒川二等陸曹はこちらの車に乗ってきたのだろうか。
本来であれば栗林二等陸曹と同乗するはずだったのだが、コダ村までという限定でこちらに乗り込んできた。
乗って以降ずっと後輩を抱きしめているのだが、ひょっとして可愛い物好きとか?
大和撫子然とした容姿も相まって似合ってはいるが、そろそろ後輩を放してあげないと顔が蕩けて危ないことになり始めている。
『先輩、俺もうお婿さんに行けない……』
ぐすん、と涙ながらに念話が繋がるが、そもそもお前はお婿さんには行けないだろう。少なくともその容姿では。
そんな後輩の姿をバックミラー越しに見るのを止め、今度は前を見る。
気付けば、先程までと違い周囲の木々が増えてきた。
先程まで走っていた荒野に比べると随分と情緒あふれる光景だ。
現代日本では数少なくなってきている自然の強かさ。それを見せつけるかのように悠然と聳え立つ幾つもの樹。
その合間を抜けるようにしてある馬車道をHMVが颯爽と走っていく。
そしてしばらくの後、コダ村らしき集落へと辿り着いた。
◆◆◆
コダ村? とかいう集落で先輩達が情報収集した後、次の集落へと行くための道を走っている俺達。走っていると言っても実際に走っているのはHMVだけど、その中から見る景色は何とも長閑なものだ。
そんなHMVの中で俺は今、先輩の頭(鉄帽とかいうメット)の上で寛いでいる。黒川とかいう人にかなりモフられたが何とか生還したのだ。
いやーでも、ほんと危なかった。黒川さんのモフり技術が凄くてつい声に出そうになったよ。
テンプレな変身が解けるなんてのだけは無いのがほんと救いだわ。
もしも意識して変身し続けるタイプのものだったら確実に俺は元の姿に戻っていただろう。
何故かというと、泥を使った変身は正確には存在置換とでも言えばいい代物だから、今の俺は“狐であったならば”の俺なのだ。
だから、気を抜こうが寝ようが一回死のうが今の狐の姿に戻る。
とはいえもう一度あのてんg…地獄のような目に遭うのは勘弁だけどな。人間としての大事な何かが崩れ去ってしまう。
「どうした?」
『何でも無い……』
大事な何かを失って撫でられるままになっている自分を想像し身震いしてしまったのだが、今は先輩の上に居るから頭ごと振わせてしまったようだ。
とりあえず、心配してくれた先輩にそのまま口で話すわけにもいかないので念話で答え、軽く首を振っておく。
「うわ、隊長その子ってこっちの言葉解ってるんすか!? 可愛い!!!」
「前見ろ前!!」
「痛っ」
俺が首を振るのを見た運転手の人が先輩に小突かれて若干ハンドル操作を誤る。
それによって大きい石でも踏んだのかゴトンと車体が縦に揺れた。
その揺れに、俺は先輩の鉄帽から転げ落ちる。
「おっと」
『サンクス先輩』
転げるままに落ちると先輩が優しく受け止めてくれた。
それに礼を言うと、再び頭に乗せてくれる。
「……すんませんっす」
先輩の頭の上で再びのんびりしようと身体を先輩の鉄帽に雪崩掛からせると、運転手の人がそう謝った。
怒られてすぐの為か前方から目線を反らさず言う辺り律儀だ。
そんな彼の様子に笑みを浮かべた先輩は、俺を指さす。
「言うならこいつに言うんだな」
「なのでその子に言ったっす」
「……あっそ」
しかしどうやら先程の言葉はそもそも俺に言ったものだったらしく、先輩は途端に拗ねるようにして外の景色へと顔を背けてしまった。
それにしても良い人だな運転手さん。
かわいいって言われるのは癪だが、褒めてくれたこと自体は嬉しいし、今のもぐっじょぶ。
なので俺は先輩の頭の上から飛び降り、そのままタタッと運転手の人の頭上へと飛び乗る。
「うわっと!」
飛び乗った俺をチラリと横目で先輩が見る。
「許してやるってさ」
「マジっすか? ありがとな狐ちゃん!」
気にすんなという意味を込めて俺は運転手さんのメットをペシペシと軽くたたく。
しかし運転手さんは突然黙ってしまった。
そしてしばらくした後、再び口を開いた。
「隊長、この子めちゃくちゃ可愛いっす」
その言葉につい照れてしまう。
いや俺が目指しているのはカッコいい“漢”なのだが、それでもこうまでストレートに褒められると照れてしまうものだ。
なので、よせやいと言わんばかりに俺はペシペシと運転手さんのメットを連続して叩いてしまった。
しかしそれを先輩が見て一言。
「結構生意気だぞ?」
俺は先輩に躍り掛かった。
・
・
・
「燃えてるな」
「燃えてるっすね」
『燃えー……』
コダ村より川沿いに先へと進み森林地帯手前まで来たのだが、先輩曰く鬼軍曹のおっちゃんの提案で森に入る前に一度野営をすることになった。
森の中に集落があるそうだが、周囲は既に日が沈み始め暗くなり出している。
そんな中で何が居るかわからない森に突入するのは危険であるし、夜に集落へと訪れることで相手に警戒されてはいけないと一応隊長である先輩が賛成したことで野営の流れとなったのだ。先輩曰く国民に愛される自衛隊がそれはマズいとか。
しかし、いざ森への入り口が見えたという所で異常に気付いた。
森が燃えているのだ。それも結構な広範囲で。
そこで第三偵察隊は森近くの高台までHMVを走らせ、そこから森の様子をうかがうことにした。
「大自然の脅威ってやつか?」
先輩がどうしたものかと暗くなった辺りを明るく照らすほどの火災を前に零す。
俺も、獣の姿をしているからか先程から身体が何というかぞわぞわする。それに何やら気分が悪くなる臭いが辺りを充満している。
出来るだけ臭いを吸わないように、そして目の前で起こる火の脅威から目を反らすように、目を瞑りながら先輩のメットに只管しがみつく。
だがそこで、違和感に気付く。
何か聞こえる。それも地響きのような、それでいて妙に生物めいた何か……。
俺は閉じていた眼を開き、眩いほどの火の向こう側を見るように注視する。
鷹の目なんてスキルは持っていないが、それでもこの獣の身体だと生前よりも遠くが見える。その眼を行使し、その違和感の正体を知るために目を凝らす。
……あれか、聞こえた物の正体は。
「まるで怪獣映画ですね」
俺が見つけたものを、隣に居た鬼軍曹さんも見つけたようだ。
それなりに距離があるが、手に持つ双眼鏡で捉えたのだろう。
『先輩、レウスが居る』
「まじか……」
俺か、軍曹さんか、どちらに反応したのかは分からないが、受け取った双眼鏡を慌てて覗き見る先輩。
そして見るや否や顔を引き攣らせる。
かくいう俺も内心驚きに満ちていた。
軍曹さんが言った怪獣、そして俺が聞いたものの正体、それは赤いドラゴンだった。
それも、かなり大きい。人程度なら軽く一飲みに出来そうだ。
そんなドラゴンの鳴声、いや唸り声だろうか。それがこの距離でも俺の耳が拾ったらしい。
俺の耳が良くなっているからか、あのドラゴンの発声器官の賜物か、何とも耳に来る。
「隊長、これからどうしますか?」
そう言いながら駆け寄るのは栗林ちゃんと先輩に呼ばれている女性だ。確か階級は二等陸曹と先輩に教えてもらったっけ。
そんな彼女の方へと振り向いた先輩に合わせ、俺もその栗林さんの方へと目線が行くわけだが、彼女の頭の位置は俺の位置からしても割りと下なので少し見辛い。
もう一人の女性隊員である黒川さんが先輩より背が高い為余計に小さく見える。
しかしこれでいて結構な武闘派なのだとか。
時折先輩を不審な目で見ているため、先輩が大丈夫か心配になる。
そんな風に思い出していると、先輩は改めて森の方へと向き直り双眼鏡を覗きなおす。
「栗林ちゃん良い所に来た、ちょっと一人じゃ怖いからさ、一緒に着いてきてくれるー?」
妙なシナを作りながらそう言う先輩に、ちょっと先程とは違った意味で気持ち悪くなったのでメットをパシンと叩く。
痛いと小さく零す先輩、いい気味だ。
「嫌です」
「あぁそぅ」
追い打ちと言わんばかりに当の栗林さんもきっぱりと断った。
振られてやんの。
それが面白くてついククと鳴くように声を漏らしてしまう。おかげで少し気分が楽になったよ先輩。
しかしそれに気づいた先輩に鼻先をピンと弾かれてしまう。
痛い……。
「GURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」
ドラゴンが咆哮を上げる。俺でなくても聞こえるほどだ。
それに合わせて、隊員の皆は反射的に持っている銃を構えつつドラゴンの方へと向く。
「飛び去っていく…?」
しかし、どうやらドラゴンは誰かが零したその言葉通りにどこかへと飛び去っていく。
『せ、先輩ペイントボール!!』
飛び去るドラゴンを見てついそう念話越しに言ってしまう。臭いから来る気分の悪さにも少し慣れてきたため、余裕が出てきたのだろう。
だからか、今度はいかにもファンタジーらしい生物を見かけたことでテンションが上がり始めた。
いやだって紅玉が中々集まらなくてですね……。
誰に言ってるのだかそんな風に思いながら先輩のメットをたたく。
「あー、もうわかったから大人しくしてろ!」
しかし、ちょっとテンションが上がった所為で先輩のメットを叩きすぎたからか、先輩は俺をメットから摘み上げ、そのまま黒川さんの方へと向き、投げ――――ようとしたところで先輩は何かに気付いたのか燃える森の方へと向き直る。
危なかった。もう少しでヘブンさせられるところだった。
未遂ではあるが、先輩に恨みがましい目を送る。しかし、先輩は厳しい目を森へと向け続けている。
その目は俺があまり見たくない、先輩が何かを覚悟する時の目だ。
「あのドラゴンってさ、何も無いただの森を燃やすような習性とかってあるのかな……」
その言葉は誰に向けた物か、そう言った先輩は俺を静かに地に降ろし、再び双眼鏡を覗いた。
「ドラゴンの習性に興味が御有りでしたら、隊長ご自身で追いかけてみてはいかがですか?」
先輩の言葉に先程と同じ
「そうじゃなくてね、さっきのコダ村では森の中に集落があるって話だったろ?」
そこまで言われてはじめて俺は気づいた。
ああどうして気付かなかったんだ。この吐き気を催す臭い。これはタンパク質が燃えた時の臭い、前の世界で経験した、ヒトが燃えた時の臭いに近いものじゃないか。
俺は慌てて駆けだす。
「おい!」
先輩が背後で叫ぶ声がするが今はそれどころじゃない。
どこかにまだ生存者が居るかもしれない。
いや、居て欲しい。
それだけを願い、俺は燃える森へと駆けだした。
◆◆◆
「あの馬鹿、どこ行きやがった……」
「大丈夫でしょうか、心配です」
俺が零した独り言に、返してくれたのは黒川ちゃんだ。
やけに後輩(子狐)を可愛がっていたし、結構な動物好きのようだ。
しかし言葉を交わすが警戒を続けたまま俺達は前へと進み、探索を続ける。
俺達は既に森の中にあると言われていた集落に到着していた。
火力の所為か木々は既に燃え尽き、辺りの火は引き始めている。
そして燃えた後に残るのは―――、
「隊長、あれって……」
「言うなよ。絶対に言うなよ。とりあえず現状把握だ。仁科一曹は勝本、戸津と共に東側を残りは俺と西側だ」
廃墟のごとく燃え尽きた建物の残骸、その瓦礫から生えるように出ている炭化した何か。
それを見て倉田が引きつった顔でその正体に関して言おうとするが遮る。
命を奪うために引き金を引いたこともある。だがそれが何だ。
何度見ようとも、失われた命に慣れることは無い。
俺達に出来ることはまず生存者を探すことだ。その後に、丁重に葬ってやろう。
その為にもまずは現状の把握を最優先だ。
そうして、俺達は2班に分かれ村を捜索していく。
しかし見た限り人の気配は無かった。
無事な建物も一つとして無く、逃げようとしてそのまま燃えたような遺骸がいくつも発見されるばかりだ。
「生存者は?」
「この辺りには居ませんね……」
近くを探索していた富田二等陸曹が戻ってきたので聞いてみるも、頸を横に振り柄返ってきたのはそんな言葉だ。
やはり全滅、だろうか……。
『先輩!!』
「っ!?」
「どうしました?」
「ああ、栗林ちゃんか。いやなんでも無いよ」
突然頭に響いた声に思わず肩が跳ねた。
それを見て周囲の探索から丁度戻ってきていた栗林ちゃんに不審な目を向けられる。
あの馬鹿後輩。戻ったら文句を言ってやる。
そう心に決めながらも無事なようで安堵している自分に苦笑する。
『先輩、村の真ん中辺りの井戸に来てくれ!』
続けてそう話す後輩はどこか焦っている様子なのに気づく。
とりあえず、俺は周囲の探索も終えた所だったので不審にならない程度に他メンバーを誘導することにした。
ここで変に一人焦って走り出してはここまで後輩を匿ってきた意味がなくなるからな。
「ここらには何もないようだし、一先ず村の中央で合流しようか」
そう声を掛け、そのまま歩き出す。
全員が付いてきているのを横目で確認し、後輩の言う村の中央らしき場所へと向かう。
しばらく歩くと、村の中央らしき場所に出た。
そして目的の井戸もある。
「この辺りも調べようか」
「「「了解」」」
敬礼とと共に了承を告げた皆がそれぞれ周囲の探索へと向かう。
俺はそんな彼らを見送り、一人井戸へと向かう。
集落の全員で使っていたのか、遠目で見てもそれなりの大きさだ。そしてそれは積み上げた石で造られており、周りに燃えるものも無かったからかポツンと平場の中央にある。
近づいた俺は、中を覗き見る。
「ここか?」
そして覗き見た俺は、何かと目が合う。
ネギを咥えた子狐(後輩)とエルフだった。
いかがだったでしょうか?
ついに原作ヒロインが登場しました。話しすらしていませんが(笑)
次回こそヒロインとの会話を書きたいものです!!
それにしても、ゲートSSもっと増えるかと思ったのですがそれほどでもなくて残念…。
参考人招致まで行けばもっと増えますかね?
それでは、また次回!
P.S.
そういえばなのですが、森の外から伊丹パイセンたちがドラゴンを見るシーンで、ちゃんと目に矢が刺さっててなんだか感動しましたw
P.S.2
黒川さんですが、原作では可愛い物好きという設定は無かったと思います。ここ独自のものなのでご注意ください。