テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
今回はFate編以上に不定期になるかもしれませんが、よろしくお願いします。
あと、以前コウジュの姿をイメージし辛いとの感想を頂いたので自分なりに描いてみました。
拙作ではありますが、イメージの参考になればと思います。
『stage0:おかえりなさい(行ってらっしゃい)』
落ちる、落ちる、落ちていく。
そんな感覚もどれほど続いただろうか。
しかし、このいつまで続くかわからないフリーフォールが妙に懐かしく感じる。
というのも、俺がFate世界に召喚された際もこんな感じだったのだ。
だがその感覚も、唐突に終わりを告げる。
「痛ぇっ!?」
終わりを告げた瞬間地面に叩き付けられる。
あまりにも突然目の前に地面が現れたものだから受け身を取る暇すらなかった。
「なんだよこの悪意しか感じないテンプレは…」
とはいえ無駄にハイスペックなこの身体だとそんなダメージもすぐに消えてくれる。
身体に残る痺れにも似た衝撃によるダメージに目を瞑りながら立ち上がり、服をはたく。
しかしそれも意味のない行動だろう。
今更ながら周りを見れば一番最初に見た宇宙の様な空間。ここに埃なんてものがあるようには思えない。
「おかえりなさいコウジュさん」
「…っ?!」
唐突に背後から掛けられた声に驚く。
でもよく考えれば俺を送り出した存在がここには居たのだ。
それを思い出し、エミリア(神)の方へ向くために振り替える。
「……誰?」
「あ、忘れてました。ま、まぁ置いておきましょう!」
何をだよ。そうツッコミたかったがとりあえず置いておこう。
まずはこの人?が誰かだ。
腰元よりも長く艶やかな黒髪。黒曜石の様な瞳。顔立ちは日系ではあるが、テレビでも中々見かけないような整った顔立ち。紅く、ともすれば派手だと言われそうな色合いの着物を着ているのだがそれに負けないくらいの存在感を秘めた女性。勿論というべきか出るとこは出てひっ込むところは引っ込んでいる理想的な体型だろう。
そんな女性が目の前に居る。
正直に言えば見惚れてしまった。
ただまぁ幸いにも目の前の女性がポンコツを初見から披露してくれたので何とか現実に戻ってこれた。
「いやぁ、そこまで褒めて頂けるとこそばゆいですね」
照れながらそんなことを言う目の前の女性。とりあえずナチュラルに心を読むのやめてくれませんかねぇ?
「そうは言われましても、情報として入ってくる以上諦めていただくしかありません。あ、考えるのを止めてもらえれば大丈夫ですよ?」
無茶苦茶言いやがる。
「ってそうじゃない。あなたはどちら様ですか?」
これ以上相手のペースに流されないように話をぶった切って直球で聞いてみる。
そうすると、目の前の女性は意味深に笑みを浮かべた。
「ふふ、以前にもお会いしたことがありますよ。その時はこの姿ではありませんでしたが」
そう言われ、半ば予想できていた答えにたどり着く。
そもそもがここで出会った存在はただ一人だからだ。一人と数えるのが正しいのかはさておき。
「つまり中間管理職の神様か」
「そっちで覚えないでっ!」
先程までの慈母のような優しい笑みは何処へ行ったのやら涙目で訴えてくる女神様、もといエミリアに化けていた神様。
「まったく、久しぶりに会ったと思えばひどい言い様ですね」
なんだろう、殺伐とした世界に居たからすっごい和むわこの女神様。
「ともかく! Fate世界での使命が終わった以上、次の世界に行ってもらう必要があるのでその手続きをしますよ」
もう!? 休みくれないの!?
何だこのブラックな仕事。
どんなにブラックだって月1回位は休みがあるだろうに、10年ぶりに帰ってきた瞬間また出張ですか!?
有給ください…。
あ、いや、有給使わせてください…。
「入社から30年は経たないと無理ですねー」
ド畜生! いやさ社畜生!
自分でも何を言っているのかよくわからないが叫びだが、言わずにはいられない。
しかし文句ばかり言っていても行くことには変わらなさそうだ。
こうしている今もニコニコとしながら拒否は許さないと顔に書いてある。
「それに、聖杯戦争後10年待つだけで限界だったのです。これ以上待つと机の上に貯まった書類が机の外に溢れるように取り返しのつかないことに……」
言いながら女神さんが指をパチンと鳴らせばすぐ横に社長が座っていそうな机が一つ。
さらにパチリと鳴らせばドサドサッと上から書類が降ってくる。
また一つパチリと鳴らせばさらにドサドサドサドサっと書類が降ってきて山が出来る。
そしてバチリと、今度は力みながら強めに指を鳴らせば雪崩のように上から落ちてくる書類の山。机すら埋もれるほどだ。
「あ、これはその10年を勝ち取るための代償で渡された書類です。1日分の」
先程から表情は笑みを取っている。取ってはいるが、眼が死んでいた。
「えっと…」
「いえいえ良いんですよ。一日数百時間働いたとしても部下の失敗の所為で一回死んだとしても労災が落ちないところですが、それが私の仕事ですから。ええ喜んでしますとも」
そこまで言って、女神さんはコホンと咳を一つして表情を穏やかな笑みに戻した。
「ところで、有給…欲しいですか?」
「っ!!」
全力で首を横に振る。
今の話をされた上で首を縦に振ることが出来るだろうか。まぁ無理だ。
というかどれだけ過酷なのだろうか神様業。
……あれ、そう言えば俺ってそれになるために転生させられたような。
「さて! それではまず帰還祝いに良いことを教えてあげましょう」
手を合わせるようにパチンと鳴らしながら大きな声でそう言う女神さん。おかげで驚いて思考がずれる。
しかし良いこととはなんだろうか。
良いことを教えると言われて教えられたことが本人にとっていいことではないパターンはよくあると思うのは、俺が2次元の世界に馴染み過ぎたゆえだろうかね。
そんな風に半分楽しみにしながらも半分戦々恐々としていると女神さんは懐から何かを取り出す。
出てきたのはPSPだ。
というかあんたの胸元は四次元ポケットか。
「あなたの世界で新作が出たので取り寄せてみました。その名もPSPo2i(ファンタシースターポータブル2インフィニティー)です」
「……新作?」
女神さんがPSPを俺へと渡してくれる。
受け取った俺は迷わずソフトを確認するために開き、中から取り出す。
手のひらにすっぽり収まるサイズの、どこか懐かしいその形。それを懐かしみながら見ると、ソフトに描かれた絵と共に書かれた“∞”の文字。
なにこれ……?
「続編というか、拡張版ですね。大体あなたの死後1年ちょっとで発売されました。あ、それはあなたの為に買ってきたものなので差し上げますよ。ちょっとしたボーナスです」
「あなたが神か…」
「いや、そうですけどね」
差し上げるという言葉に思わず漏らした言葉に苦笑される。
いやでもマジでこれくれるの? まじで? これだけで全てを許せる気がする!!
「って、待って。買ってきた?」
「ええ買ってきました。不思議パワーでパパッとやっちゃうのもよかったんですが、そこはやっぱり様式美として発売日に買ってきました。ちなみに私も持ってます」
ふふんと得意げに言いながら再びPSPを取り出す女神さん。めっちゃデコられてるその本体からディスクを出して俺に見せてくれる。
違う、俺が聞きたいのはそこじゃない。
でも自分で言っているように、この女神さん自分で並びに行ったんだな。
「…どうしたんですか?」
俺が微妙な目線を送っていることに気付いたのか女神さんが首を傾げる。
美人さんなだけにすごく絵になるのだが、手に持っているものがアレなので残念である。
「む、神にだって遊び心は必要なんですよ。というか清涼剤が無いとやってられません。心を得た弊害ってやつですね」
目を細めてジト目でそんなことを言われてしまい、俺は目を反らす。
だからナチュラルに心読まないでくださいってば。
ってか、色々と内心に隠してしまう日本人にとってこの心を読まれるって地味に弱点じゃなかろうか。
まぁ今は日本人か怪しい容姿だけども。
「さておき、このPSPo2i発売に合わせてあなたの武器等を追加しておきましょう」
「ま、マジですか!?」
「しかしそれ以外は基本的にあなた自身の力を育ててください。武器はあくまでも武器。どこまで行っても使い手次第でしかないので」
そう真剣な面持ちで言われ、はしゃいでいた自分を恥じる。
Fate世界において、俺はまともに闘って勝てたことが実は一度もない。
奇襲、奇策、チートパワーによる脳筋突撃、ほとんどがそれなのだ。
前世で見た二次SSなんかではチートを得た転生者たちが華々しく戦闘に勝利していくのに対して俺は貰った力に反してそれほどの成果を上げられていない。
いや、普通に闘ってギルガメさんにどうやって勝つのさ。あの人慢心しなけりゃ普通に強かったからね?
「そう落ち込まないでください。戦闘力がなければならない訳でも無いですし、そこそこに闘えたら良いんですよ。本質はそこには無いですから」
優しく微笑みながらそう言う女神さん。
その姿はまさしく女神と言われるにふさわしいものだった。
現金なもので、そんな顔を目の前で美人さんにされてしまえば中身が男な俺はへこんでいた精神を回復させてしまう。マジちょろいは俺。
そんな自分を誤魔化すために、けふんと咳を失敗しながらも一つする。
それがばれたのかくすくすと笑われ頬が赤く染まっていくのが分かる。
「ふふ、元気が出たようで何よりです。それにあの世界であなたは良い物を手に入れましたからあなた次第では色々できるようになってますよ?」
良い物とは何だろうか?
まだ少し頬が熱くなっているのが分かるが、それよりも良い物というのが気になった。
「あの世界において私たちがあなたにしてほしかったことは願いを叶えるものに触れて欲しいというもの。しかしあなたは予想以上の成果を上げてくれました」
あ、無作為に送られたわけでは無くて理由があったのか。ということは次の世界でもあるということかな。
けど予想以上の成果?
「あなたは性質が変わったものとはいえ、願望器の中身に触れ、あまつさえ願いを叶えるということ自体を体験しました。その経験はとても重要です」
確かに俺はその両方を成した。
成り行きというか、そうしたかったからしただけだし今思えば無茶苦茶やったなぁと思うのだが、まぁやっぱりしたかったからそうしたのだ。
「そして特に重要なのがあの泥に直接触れたこと。加えて言えば浄化した状態で体内に取り込んだことです。神頼みという言葉がありますが、願われたことを叶える神と願いを叶える願望器、どこか似ていると思いませんか? 本質は全然違うものですが
だから、今のあなたは願望器に似た性質を持つに至っています。これで見習いという言葉を外してもいいかもしれませんね」
……へ?
寝耳に水なことを言われて頭が処理しきれない。
俺が願望器に近い? 願いを叶える? 自分の考えたことすら条件付きで具現化するのがやっとなのに?
「それに関しても良い物を同時にあなたは覚えました。聖杯の泥、使えますよ?」
ファッ!?
いやがちでそんな声が出そうになった。多分大分変な顔もしてると思う。
いやだってあのはた迷惑代表みたいな聖杯の泥を使えるって言われたんですよ?
そんなものまでラーニングしたってのか!?
「大丈夫ですよ、流石にあの悪性までそのままではありませんから。第一あなたは浄化した状態で体内に取り入れたじゃないですか」
「あ、そうか…」
「正確には可能性の塊みたいなものになっているみたいですね。こう、元が泥なので創世の土的な何か?」
首を傾げられても困るんですが…。
「ともかくそれを使って色々してみてください。あなたの力との相性が良いと思いますよ」
そう笑顔で言うと、女神さんはパシンと柏手を一つ打つ。
すると彼女の横に、上空から紐のようなものが垂れてくる。
あ、これって例の紐じゃね? こう、ドリフ的な…。
そんな確信にも似た予感が俺の中に産まれる。
そしてその紐を握る女神さん。
「それでは次の世界であなたに似た存在や神とは何かを考えてきてください」
下ろされる腕、当然それに合わせて下に引かれる紐。
「あ…」
「またお会いしましょう、コウジュさん」
カコンと、間抜けにも思える軽い音ともに足元の感触が無くなる。同時に身に襲い掛かる浮遊感。
あっさりと、それはもうあっさりと俺の身体はつい先ほどの様に下へと落ちて行く。
あ、なんだろう、少しずつこの流れになれてきた自分が嫌だ…。
ってあれ、次の世界のこと聞いて無くない?
いかがだったでしょうか?(定型文
今回はテンプレな次世界への繋ぎ。一体どこへ送られるのやら。
さておき、前書きにて書きましたコウジュのイラストです。
【挿絵表示】
初めてイラスト機能を使ったのですが、大丈夫ですかね…?
一応はゲーム内の服に似た物を描かせていただいておりますが、全く同じではありません。持っているルゥカ擬きも多少変えています。
二次SS書いてる時点であれですが、そのままのイラストを乗せても良いものかわからなかったのである程度変更したりしています。
御目汚しかとは思いますが、それでもイメージの足しになればと思い描いてみました。
ちなみに右にちょろちょろっと落書きしてあるのは暴走時の腕と頭ですね。黒い狐(関係ないですが私は紅い狐派です)っぽくなる暴走時は、実際はアクセラさんの背中からたまに出てくる吹き出す翼っぽいものもあったりしますが全身を描けるだけの能力が無いので落書きとなりました。
あ、それから拡大とか絶対してはいけません。
ただでさえアレなのに拡大してしまうと余計にに粗が目立ってしまうので断じて駄目です。
こう薄眼でぼんやり見る程度でなんとかいけると思うのそれでお許しください。