テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
今回も原作の流れに沿ったものです。
もうぶっちゃけこれがやりたかっただけだろと言われても仕方ないですが、少しでも楽しんで頂けたらと思います。
では、どうぞ。
「んんっ~!! やっぱり思いきって出て来て正解だったわ!!!」
「・・・・・・楽しそうですね、アイリスフィール」
そんな会話をするのは、アイリとセイバーの二人だ。
二人は今、切嗣から離れて行動をしている所だ。
「切嗣から貰った玩具の中でも、これは一番のお気に入りなの。でも、お城だと走れるところが少ないじゃない? だからこんな風に出来ることがとても嬉しいわ」
セイバーの言葉に、聖女の様な慈愛の笑みを浮かべて答えるアイリ。
セイバーもまた、アイリの事情を知っているが故に悲し気なものを交えつつも笑みを浮かべた。
アイリスフィール・フォン・アインツベルン。
アインツベルンにより産みだされたホムンクルス。
彼女には、生まれた時より二つの使命があった。
一つめは聖杯の外側としての機能。
第3次聖杯戦争において聖杯の完成前に器が破壊されてしまったことを教訓に、アインツベルンが聖杯そのものに防衛機能を持たせるためのものだ。
そして二つめが、究極のホムンクルスの母体。
文字通り、イリヤスフィールを産み出す事を目的としている。
これらだけが彼女に求められたモノであり、生み出された理由であった。
しかし、それだけでは無くなった転機があった。
それは衛宮切嗣との邂逅。
出会った時は稼働してそれほど経っておらず、自身の存在理由に疑問も何もなく、ただ人形の様であった。
だがそれはいつしか、切嗣に触れ、アイリに触れたことで変わった切嗣を見て、彼女もまた少しずつ変わっていった。
確かに彼女が産みだされた理由に変わりはない。
変わりなく、彼女は聖杯の器だ。
イリヤスフィールを産んだ後も、ソレが変わることは無かった。
しかしそんな彼女に、何時しか感情が芽生え、目的が生まれた。
聖杯戦争の為の“彼女”である以上、その時まで城を出ることは許されなかったが、切嗣の持ち込む物で少しずつ世界を知っていくことが出来た。
そして、そんな素晴らしい世界を救おうとする切嗣を手伝いたいと思った。
そうして彼女は今ここに居る。
勿論、セイバーはその全てを知っている訳ではなかった。
だが、アイリスフィールが聖杯戦争の為に生み出され、その所為でアインツベルンの城から出ることも叶わなかったことを知っていた。
それ自体を知ったのはつい先日の事だ。
偶然にもアイリの口から出た言葉から、それまでに知っていた事実とを繋ぎ合わせて知っただけ。
自身と頑なに話そうとしない魔術師らしい魔術師である衛宮切嗣は当然ながら、アイリからも生い立ちなどは態々聞いてはいない。
アイリとは聖杯戦争における目的は勿論、世間話程度はする。
だが、そこから更に踏み込んではいなかった。
しかし冬木に来て“外の世界”に触れ、子どもの様に燥ぐアイリスフィールを見て、そんな彼女にふと質問したことから知った彼女の背景に憐憫を浮かべずにはいられなかった。
それはある意味傲慢な感情ではあるだろう。
そして、知っていながら見ようとしなかった自身に何が言えるというのだろうか。
そう、セイバーは自嘲しつつも、アイリスフィールの事を憐れに思いながらも今から触れる世界に期待を膨らませる彼女を羨ましく思った。
ただ、問題は幾らなんでも外に来たからといって燥ぎ過ぎではないだろうかということだ。
現在二人は本来のマスターである切嗣抜きで行動している。
切嗣は陰で他勢力を削るべく行動しているため、囮も兼ねてセイバーとアイリスフィールは共に居る。
そのついでとばかりにアイリスフィールが引っ張りだして来たのが、今彼女たちが乗っているメルセデス・ベンツ300SLクーペだ。
ガルウィングドアと世界初のガソリン直噴エンジンを特徴とする1955年に発売された二人乗りのスポーツカーである。
オイル交換が頻繁に必要であったり、事故が多発した結果ウィドウメーカー(未亡人製造機)などとも呼ばれた車だが、当時では最速を誇り、高価ながらも根強い人気を得た。
何故切嗣がアイリスフィールにこれをプレゼントしたのかは分からないが、渡されたアイリスフィールは現在進行形で楽しんでいるのだが、正直に言って隣に乗っているセイバーは先程から冷や汗が止まらなかった。
今走っているのは、峠道だ。
深夜故か幸いにも対向車は無く、霧も無いし月も出ている為見晴らしは夜にしては良い方である。
この場所のコンディションとしては最高であろう。
ただ、運転しているアイリスフィールに少しばかり問題があった。
まず、今回が公道デビューである。
しかも、当然と言えば当然だが無免許だったりする。
運転自体は切嗣から教えられていたが、何処をどうやれば車を動かすことが出来るかどうか、その程度しか教えられていなかった。
ぶっちゃけて言えば、国によってどちら側を走るかが違うかを知っているとかいうレベルではなく、そもそも道路交通法なるものが存在すること自体を知らないレベルである。
道路の真ん中に白い線とか黄色物があって縞々だったりとカラフルでオシャレといったものだ。
アイリスフィールが公道に出ると聞いて切嗣が車に人払いや認識阻害の魔術を仕掛けたのにも納得できるというものである。
そんなセイバーにも気づくことなく、峠走りをアクセル全開で楽しみまくっていた人妻(満9歳)は、ふと耳に入ってきた音に気付いた。
「あら、何かしらこれ?」
「ア、アイリスフィール、対向車かもしれませんので、速度を落とされては?」
「それは大丈夫よ。切嗣が人避けの魔術とかを付けてくれているもの」
聞こえてくる音はブレーキ音と甲高いエンジン音だ。
自分たちが乗る車種の様に、スポーツタイプの物に聞こえる。
それが徐々に直づいているように聞こえるのだが、一般人は魔術により近づくことが出来ない様になっている筈なのだ。
勿論乗っている車を起点にそれほど広範囲に広がるものではない為、離れた場所に居る可能性はある。
それもあってアイリスフィールは速度を落とす必要は無いと言ったのだが、その間にもセイバーは助手席で右へ左へ身体を慣性に引っ張られていた。
サーヴァントである為酔いはしないし、騎乗スキルAであるセイバーからすればこの程度のスピードでは何と言うことも無いのだが、自分が運転するのと他者が運転するのとでは感覚が大いに違う。
“直感”的に横にいる貴婦人の運転は色々危なっかしいと分かるのだが、楽しんでいる人間に野暮なことは言い辛いセイバーであった。先の事情もあって余計にだ。
「ですが・・・・・・、いえ、ではこの音は?」
それでもこの危なっかしい運転をどうにか出来ないかと速度を落とさせる理由を考えるセイバーだが、その途中である事に気付いた。
先程から聞こえてくる音が、確実にこちらへと近づいてきているのだ。
しかも、アクセルをガン踏みに近い状態のクーペにだ。
そして、そうこうする内に、バックミラーに追いついてきている車のヘッドライトが映り始めた。
「うーん、速度を出し過ぎると人払いが効かないのかしら?」
「いやいやいやアイリスフィールそんなわけはないでしょう」
鋭くカーブを曲がりながらもそんな事を言うアイリスフィールに思わず
当然、アイリスフィールが言うように人払いや認識阻害に速度など関係は無い。
それでも近づいてくると言うならばそれは―――、
「アイリスフィール。敵の可能性があります」
「ええ、誰にも私の前は走らせないわ」
そう言いながら、ギアを上げるアイリスフィール。
何か違う気がすると思いつつも、敵魔術師の可能性がある存在から離れるのは良い事だと思い直すセイバー。
しかしそれでも、引き離すことが出来ないでいた。
それどころか、
「アレはまさかイリヤスフィール・・・・・・いえ、キャスターですか!?」
「嘘、あの子なの!?」
そう、後ろから近づく
アイリスフィールたちが乗るものと同じツーシーターであり、前側のボディが少し高い形状ではあるが全体的に限界まで軽量化を図ったようなフォルム。
そんな車に乗りながら、イリヤはアイリスフィールへとバックミラー越しに手を振った。
「未来のあの子も車に乗るのが趣味なのかしら? でも、変わった形の車に乗っているのね」
「アイリスフィール、敵と認識したくはありませんが、陣営としては未だ不透明なのですから気を抜かないでください」
速度を落とさずミラー越しにイリヤの乗る車を観察していたアイリスフィール。
のんびりとそんなことを言う彼女にセイバーも毒気を抜かれそうなるが、今はあくまでも聖杯戦争中なのだ。
先日の邂逅では直接的な敵意を見せていなかったとはいえ、同じ聖杯を狙うものという意味では、現時点では確実に敵だ。
そんなイリヤが、偶この場所に同じように車に乗った状態で現れたというのが偶然の筈がない。
気付けばイリヤの乗る車は既にすぐそこまで迫っていた。
そしてそこに来て、セイバーは気づく。
「・・・・・・あれはまさか!? アイリスフィール、彼女は一人ではない!! バーサーカーも一緒です!!」
「え・・・・・・? でも横には誰も・・・・・・」
「
「っ!? 私にも見えたわ!! あの黒い獣がそうなのね!? でも、あの形だとすぐに横転してしまいそうなのに・・・・・・」
「恐らく、後ろに乗るバーサーカーがバランサーとして動いているのでしょう」
そう、イリヤの乗る車には、後ろ側に続くボディを無くし、代わりに荷台が付いていた。
そしてそこに、獣の姿をしたコウジュが乗っているのだった。
「車種は・・・・・・アレかしら? たんぼるぎーに?」
「私にもそう書いているように見えますが、そこは問題ではありませんアイリスフィール。知るべきは彼女たちの目的です」
アイリスフィールはイリヤの乗る車の車体に書かれた文字を読むが、当然ながらそれは本来の名前ではない。
これは、前の世界で悪ふざけの一環として作られたコウジュ専用車partⅡなのだ。
高速走行を目指した結果、何がどうなったのかこの車種になったのだが、それを今活用しているのだ。
限界まで軽量化が図られたボディ、魔改造されたエンジン等、異世界の魔法も混ざっていて安全性も抜群、更に今はコウジュが後ろに乗ることでどうしても逃がしきれない慣性制御までもを行っている。
更に言えば車体には魔力が流し込まれていて、各部操作を魔力により行うなどという芸当も出来てしまう。
タンボルギーニ、それは何時しかとある界隈で言われるようになったその車種に対する渾名だ。
乾いた排気音から農道のポルシェ等と呼ばれる物もあり、日本でも数多くの人気を博している。
しかし、それ以上に通っている愛称がその車種には存在する。
それは―――、
―――――KEITORAだ。
「嘘、あの高さがありながら付いてこれるなんて!?」
「アイリスフィール! 速度を落とさずに走ってください!!」
「いいえセイバー、落としてはいない。むしろこれ以上速くは出来ないわ!! これ以上速度を出すと崖から落ちてしまうもの!!」
「くっ、しかしこのままでは追いつかれてしまいます! こちらに対してあちらはバーサーカーの援助もあってカーブをそのまま曲がってきています。幸い最高速度はこちらが上の様ですが、カーブではどうしても追いつかれてしまう!」
セイバーが言うように、直線ではアイリスフィール達が引き離すことが出来ている。
しかし、イリヤが乗る車はカーブでも速度を落とすことなく、コウジュが上手く体重移動した上に、黒い何かを地面に叩き付けることでそのまま曲がってきていた。
その結果、直線で開いた距離はすぐに埋められてしまっていた。
後ろを確認するセイバーには、不敵に笑みを浮かべるイリヤの姿が目に入った。
「・・・・・・セイバー」
そんなセイバーに、アイリスフィールが静かに声を掛けた。
セイバーは何かを決意したようなアイリスフィールの方へと顔を向け、静かに言葉を待った。
「直線で勝ってカーブで負けるのなら、カーブでどうにか勝つしかないと思うの」
「それはっ、・・・・・・そうですが」
それは確かに、負けている部分を埋めることが出来たのなら勝利は確実の物となるのは自明の理だ。
しかし、車そのものの性能だけではどうあっても現状引き離せそうには無かった。
アイリスフィール達の車にはどうやっても慣性というものが付いて回る。
コウジュ達の様に無理矢理どうにかするのでもなければ、机上の空論でしかない。
しかし、前を見続けるアイリスフィールの瞳には、諦めは浮かんでいなかった。
「大丈夫よ、私に良い考えがあるの。もうすぐすると連続したカーブがあるのを地図で見たわ。そこでミラーから消して見せる」
そう決意を込めて言うアイリスフィールに、セイバーは思わず微笑みを浮かべていた。
出会った時から感情の豊かな印象ではあったが、ここまでの発露は今までには無かった。
先程憐れに感じた自分を恥じるほどだ。
「分かりました。ハンドルを握るのはあなたですアイリスフィール。お任せします」
気づけば、そんな言葉がセイバーから出ていた。
セイバーの優しさと期待が込められた言葉に、アイリスフィールはすぐさま頷いた。
「ええ!! 任せてちょうだい!! 母は
そう言い、最後の直線で速度を最大まで引き上げたアイリスフィール。
今から彼女が行うのは一種の賭けだ。
切嗣が持って来た多くの資料の中に何の因果か紛れ込んでいたある本に書かれていた特殊な走法。
それを練習したことは当然ない。
城の中を走る事しか許されなかったアイリスフィールには、
車の運転自体は猛特訓をした。
なら、後は実際に行うだけだ。
目指すは、溝。
「ところで、つよしとは一体誰でしょうか・・・・・・?」
そして暫くして、セイバーは任せてしまった自分に後悔するのであった。
◆◆◆
「準備完了だ、そちらは?」
『異常なしです。いつでもどうぞ』
携帯電話越しに舞弥から標的に動きが無い事を聞いた切嗣は、一度通話を切り、精神を落ち着かせるために煙草に火をつけ紫煙を口から出した。
そして一呼吸置いた後、再び携帯電話を手にして、そこにとある番号を打ち込む。
それは、標的が滞在している冬木市の中でも最高級と言えるホテルに設置された携帯電話へと繋がる番号だ。
勿論それは誰かへと掛けるための物では無い。
綿密に計算した上でホテルだけを破壊できるように設置した爆弾の起爆を行う為のものだ。
だが―――、
「・・・・・・起動しない?」
予定では、起動と同時にビルの各フロアが潰れ、最上階に魔術工房を作り防備を固めているケイネス・エルメロイ・アーチボルトの陣営は地上150mからの自由落下を体験するはずであった。
それなのに、幾ら待とうとも、動きが無い。
予備で設定した番号にも繋げるが、そちらも反応はない。
「馬鹿な。設置した爆薬に気付いたというのか? しかし動きは無かった筈」
努めて冷静に振る舞うも、なぜ失敗したのかを脳内で何度もシミュレートし、理由を探る。
設置はケイネスが来る前から行っていたものであるし、バレた形跡も、それに気づく知識もケイネスには無いはずであった。
生粋の魔術師であるケイネスは重火器等を毛嫌いしており、気付く要素は無かった。
ならば第3者による介入か?
なら一体誰が・・・…。
そこまで考えて、ふと自分がいつの間にか煙草を咥えていることに気付いた。
煙草を吸うのは切嗣にとって一つの儀式と言っても良い。
自分を落ち着かせるための、単なるルーティーンだ。
しかし、口にしているのに後から気付くとは予想以上に追い込まれていると、改めて思考を落ち着かせるために、咥えただけになっていた煙草へと火をつけるためにライターを手に持つ。
だが予想外の事態にかなり動揺しているのか、火は上手く付かず、ジッジッとジッポーライターの擦る音が響く。
「火、どうぞ」
そんな未だに火が付かずにいる切嗣の煙草に、明るく照らす火が近づけられた。
あまりにも自然に近づいてきたそれは、静かに煙草へと火を灯らせた。
切嗣は、そこまで近づかれたことに気付けずに居たことに驚き、それと同時に地を蹴り距離を開けた。
そしてすぐに懐へと手を入れ、すぐに取り出せるようにしながら相手を見る。
相手は、そんな切嗣にも驚くことなく、出していた手を引っ込める。
それに合わせて、火が顔元へと近づき相手の正体が目に入ることになった。
「・・・・・・バーサーカー」
「こんばんは、衛宮切嗣さん。ご機嫌いかがかな?」
持っていたライターの火を消し、一瞬薄暗くなるも幽かに届く電灯の光で照らされた姿は、紛れもなくバーサーカーの物であった。
いかがだったでしょうか?
ネタが多すぎてタグ付けに困る動画とかをリスペクトする私としては、いつの間にかカニファン時空に飛ぶことも厭いません(え
いや、Zeroの数少ないネタ要素だし、そこには絶対絡まなければならないと思うんです(使命感
ともかく、今回は短かったですが、やりたいことやってスッキリしました。
車には詳しくないので、wikiやらを見ながらだったのですが、この短い間にも変なことを言っていたら修正していただけると嬉しいです。
あと、後半にちょっとだけ出た魔術工房()についてですが、何とかFate/Teroを阻止できて私は大満足です。
そして次回にはその辺りを触っていくことになると思います。
ちなみにFate/Teroは某動画サイト等で作られた造語の様なのですが、世の中にはホントにうまい事いう方が多いなといつも感心しまくっています。
私もそういった語彙力を付けて行きたいものです。
さて、それではまた次回ですね。
今年も残るところあと少し、次回の更新は1月1日ですかね。
折角なので、1日の間に投稿したいところですw
それでは皆様良いお年を!!
P.S.
魔神柱さんェ・・・。
殺したいけど死んでほしくなかったとかいうFGOプレーヤーのバーサーカー具合に戦々恐々としました。
まぁ私も解体作業楽しんでた側ではあるんですが・・・。
それにしても、最終章がああなるとは・・・。
アレはネタバレしない方が良いと思うので詳しくは書きませんが、流石型月さん、やってくれました!
FGOやっててよかったと、本当に思いました。
ところで運営さん、うちのカルデアマーリン実装されてないんですが?