初めまして……でもないですか?
とにかく名乗るのは初めてなので、「初めまして」と言っておきます。
改めまして――――初めまして、奴良桔梗と申します。
そうです。生まれ変わったのは「ぬら孫」主人公の家で、主人公奴良リクオの双子の妹として生を受けました。
これは影から主人公たちを支えるのではなく、ガッツリ同じ立場で原作にかかわっていきそうですね。
それから、もう一つ分かったことがあります。それは、
「こほっ、こほっ、べー」
「きゃーーーっ!桔梗様が食べ物を吐いてしまわれましたわ!」
「あぁ!桔梗様またお熱が!」
「痙攣し始めたぞ!」
「桔梗様が死んじゃう!」
私、病弱のようです。
現在一歳になりますが、立つこともハイハイすることもままなりません。双子の兄リクオはすでに歩いています。というより、小妖怪相手に走りまわってます。
ものすごく腕白坊やになりそうですね。
医者の妖怪が話しているところを聞いたのですが、どうやら私の病弱には妖怪の血が関係しているようです。
祖父は妖怪ぬらりひょんで、父鯉伴は半妖、私とリクオはその半分で四分の一、つまりクウォーターです。
リクオはどうやら体に妖怪の血が適用しているようですが、どうやら私は妖怪の血がまだ体に馴染んでいないみたいです。
お医者様の話では、成長すれば自然に馴染んでくるそうですが、やはり体が弱いことには変わりないそうです。
それは困りました。私には“旅人”を倒さなければならないのです。こんな虚弱体質ではそれが怪しくなります。
役立たずの神様ですね。
……まぁ、私を無理やりここに送るので精一杯だったのでしょう。原作開始まで少しありますし、それまでに何か体を強くする作戦でも考えておきましょう。
ちなみに、原作知識ですが、正直あまり覚えていません。
確か、リクオ達は中学生だった気がします。
夜リクオを見て「中学生に見えないなぁ」とか思っていた覚えありますから。
それ以外の知識は今思い出すことはできません。
“旅人”の方も原作を覚えていないということなので五分五分ですが、これから少しずつ思い出していきましょう。
私はとりあえず体力づくりです!
とは言ったものの、ハイハイをしようとするのですが、私が倒れるのを危惧したお世話の妖怪が私を布団から出してくれません。
しかも何があってもいいように常に人がいるので、自由に動き回る事ができません。
歩かなくてもいいですから外にお散歩に行きたいです。
なので、双子の世話係である首無に訴えてみることにしました。
「ぽー」
「ん?どうしました桔梗様」
「ぽー」
『お散歩』と言いたいのですが、体は一歳で虚弱体質。なかなかうまく話せません。
「ぽー」
「ぽー?……おい、『ぽ』って何だ」
「さぁ。鳩?」
「ぽー、んぽー!」
「やっぱり鳩だ。おい、誰か鳩連れてこい」
「カラスならいるぞ?」
「ワシを呼んだか?」
「カラス天狗様」
「呼んでないし」
「んぽー!んぽー!!」
「ハハッ、お待ちください、桔梗様。今この首無めがとびっきりの鳩を連れてまいりますから」
……駄目だ。言葉の練習も追加しなければ。
「桔梗様、お望みの鳩でございますよ」
「ぽーっ!」
首無の紐にぐるぐる巻きにされた鳩を渡されてしまった。
あぁ、なんて可哀想に。
よほど怖い目にあったのだろう。紐を解いてもビクビクして大人しい。
私がうまくしゃべれないばかりに、この鳩に恐怖心を植え付けてしまったらしい。
ごめんなさい、という意味を込め、優しく真っ白な羽を撫でてあげた。
次は今日の12時です。