ぬらりひょんの孫~双子の妹に転生しました~   作:唯野歩風呂

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旧鼠編完結


第32話

 

 

 【旧鼠組屋敷内】

 【奴良リクオ】

 

 

 「若」

 「首無か」

 「二人は無事姫の元へお連れしました」

 「様子は」

 「特に怪我をしていた様子はありませんでしたが、あの陰陽師の服が破れていたらしく、その・・・・・・」

 「キレたか」

 「乗り込もうとしておりました。今、青田坊が全力で止めております」

 

 戦いが好きな青田坊だ。少しは仕置きになっただろう。

 ったく。危ねぇもんを桔梗にもたせやがって。

 命がいくつあっても足りねぇよ。

 桔梗のな。

 

 

 「おや、これは。化け猫組の当主。たしか、良太猫さん」

 「おいらが相手だ」

 

 良太猫の治療はすでに桔梗が終えている。

 傷は癒え、全快の状態である。

 だがそれでも、武闘派の旧鼠とは力の差がありすぎるな。

 

 「リクオさま、やらせるんですか」

 「お願いしますリクオさま!奴は、子分どもの仇。どうしても・・・・・・どうしてもここは、おいらがやらなきゃならないんです」

 

 力の差は良太猫もわかってるだろう。

 だがそれでも、子分の仇を取るため、一太刀入れようとしている。

 

 「これはまた古風なことで」

 

 笑っているがよ、旧鼠。

 甘く見てると、痛い目みるぜ。

 

 「はあああああっ!」

 「良太猫!」

 

 本来の妖怪の姿に戻った旧鼠が良太猫を叩き落そうとするが、首無がうまくとめたな。

 その隙に、良太猫の爪が旧鼠の目を切りつけた。

 

 「ぐ、ああぁっ!」

 

 『どんなに大きい奴でも、目で見て動いている生き物は、等しく目が弱点なのですよ。だから良太猫、狙うなら目にするといいです』

 

 ここに来る前、桔梗が良太猫に吹き込んでいたが、あながちはずれじゃなさそうだな。

 実際、旧鼠は目を押さえあとずさっている。

 あいつ、どこでそんな戦闘知識得たんだか。

 

 「もう一度だ!」

 「調子にのるなよ!」

 「ぐあっ!」

 

 戦力差がある相手に二度目はきつい。

 良太猫は吹っ飛ばされ、地面に強く叩きつけられた。

 

 「良太猫!大丈夫か!」

 「あ、当たり、前だ」

 「この、子猫どもが!私の顔に傷をつけるなど、許しませんよ!」

 

 『でも、怯んだ時にいっきにたたみ掛けないと逆上する恐れが高いですから、気をつけてくださいね』

 

 とも言っていたか。

 いいんだか悪いんだか。よくわからねぇアドバイスだな。

 

 そういえば俺にもアドバイスをくれたな。たしか・・・・・・。

 

 「たっぷり可愛がってあげよう・・・・・・と思いましたが、お前らみたいな雑魚じゃ、らちがあきませんね」

 「何!?」

 「お前をやれば、こいつらはバラバラだ!」

 

 『力の差がわかっていないけど少し頭のいい奴は、大抵集団の頭から狙ってきますから、そのときはーーーー』

 

 

 『 奥義 明鏡止水 桜 』

 

 

 「な、なんじゃこりゃ!」

 

 器の波紋が波打つと同時に、青い炎が旧鼠を囲む。

 

 「その波紋鳴り止むまで全てを燃やし尽くす」

 

 俺を狙ったりしなきゃ、お前にも勝機はあったんだぜ。

 俺は手を出す気はなかったからな。

 

 だが、頭を狙った。だからそのときはーーーー。

 

 『ーーーー完膚なきまでに叩きのめしてくださいね』

 

 

 「ったく。おめぇが一番恐ろしいぜ。俺は」

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 【奴良桔梗】

 

 

 なんだかあっさり決着がつきましたね。

 実力的にはやはり大したことのない集団だったようです。

 

 「今度おうた時は、必ずあんたを倒す」

 

 花開院さん、言っていることは勇ましいけど、声に勢いがないせいでなんだか・・・・・・そう。ツンデレみたいになってます。

 

 まぁ、冗談は置いておいて。

 本当のところ、今回のことは花開院さんの陰陽師のプライドを傷つけたでしょうし、ツンデレみたいになってしまうのは仕方がないでしょう。

 

 リクオは答えず、「また会おう」とだけいって踵をかえしました。

 

 「今朝は霧か。いい感じに濡れやがる。もう少しぶらついて帰るか・・・・・・と思ったが」

 

 ?なんでしょう。リクオが見ています。

 

 「そろそろか」

 「いったい何・・・・・・」

 

 あれ?霧が濃くなってきたのでしょうか。リクオの姿がよく見えなくなってーーーー。

 

 「おっと」

 

 身体から力が抜けていきます。

 リクオは予期していたようで、すぐに私を持ち上げ、横抱きにしました。

 

 「そろそろ限界かと思ったぜ」

 

 情けないです。

 たった一日夜更かししただけなのに、もう体力の限界なんて。

 

 「まだ慣れない治癒の力を使ったからでしょうか」

 「すみません、桔梗様。おいらの怪我を治したばっかりに・・・・・・」

 「いや、そいつはちげぇな」

 

 大きくなった胸板に預けていた頭を上げると、リクオが呆れたような目をしていました。

 

 「こいつ、戦いが終わった直後、怪我した奴らを密かに治療していたからな。能力使いすぎの自業自得だ」

 

 うっ、バレてましたか。

 

 「ったく。いつもいつも無茶しやがって」

 「これでも一晩はもつようになったでしょう」

 「ふん。そのあと倒れてちゃしまらねぇだろ」

 

 リクオは大きなため息をつきました。

 

 「ゆっくり休みな。屋敷まで運んでやるから」

 「ふふっ」

 「何笑ってんだ?」

 「いえ。なんでも」

 

 言うと調子に乗りますからね。絶対言いません。

 

 リクオに運ばれるのは、“お兄ちゃん”に甘えてるみたいで嬉しい、なんてね。

 

 

 

 

 旧鼠編 完

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 【おまけ】

 

 

 「ね、ねぇ青田坊」

 「なんだよ」

 「あのお二人って、兄弟で間違ってないわよね」

 「あん?当たり前だろ。何言ってんだ?」

 「そうよね!正真正銘の兄弟よね!」

 「確かに、兄弟ということを知らなければ、あの様子はまるでふうーーーー」

 「わぁーーっ!い、いわないでよ黒田坊!ふーーっ」

 

 カキン

 

 「な、なぜだ雪女・・・・・・」

 「黒田坊のバカーーーーっ!」

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 【おまけ二】

 【花開院ゆら】

 

 

 「くやしいくやしいくやしい!」

 

 確かに助けを求めた。求めてしまった。

 だけどそれは妖怪にやない。絶対ない!

 

 けど、結果的に妖怪に助けられる形になった。

 なんで妖怪が人間を助けたのかわからんけど、事実は変わらん。

 

 あの、布をかぶった女の妖怪。

 怪我を治せる妖怪なんて聞いたことない。

 けど、傷をなおしてもらった・・・・・・。

 

 肩にかけられた羽織の上から破られた服に触ると、服を破られた時のことを思い出してイラっとする。そして同時に心臓が痛いほど鼓動する。

 

 あの時は式神がなかったから倒せなかった。

 ・・・・・・でも、もし同じような状況に持ち込まれたら。

 もし、主が今日の家長さんのように人質に取られたら。

 

 自分はなんにもできずに、主を殺されてしまうーーーー

 

 「うがーーーーっ!!」

 

 許さへん!そんなの絶対許さへん!

 

 「主は絶対に守る!」

 

 花開院の名にかけて!!

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 【おまけ三】

 【奴良家屋敷】

 

 

 「おいカラス!リクオはどこだ!」

 「鴆さま?」

 「出入りがあったそうじゃねぇか。しかも桔梗もついていったと?あの二人の初出入りになんで俺を呼ばね・・・・・・ブフォァ!!」

 「ぎゃーっ!」

 「ちくしょーっ。俺は第一の兄弟分だってのに!約束したって・・・・・・ゴフォァ!!」

 「ちょ、落ち着いて!血を吹きかけないで!」

 「誰かお止めしろ!若が血まみれになるぞ!」

 「どけっ・・・・・・ドフォァ!!」

 「「ぎゃーっ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで旧鼠編終了です。
ほぼ原作通りに進みました。

そして、この小説でやりたかったことの一つが始まりました。
『ゆら強化計画』
すごい陰陽師なのにその強さがいまいち伝わらない。なんかもったいない。お兄ちゃんの方が強く見える。
ということで、精神力がものをいう陰陽術に守るものをつくり、精神力をUPさせました。
すごい陰陽師を目指します。


※どこで戦闘知識を
主に前世の弟から。漫画ってすごい。

※完膚なきまでに
結局最後は力技。

※ツンデレゆら
桔梗はゆらをツンデレ認定しました。

※いい感じに濡れやがる
風邪ひくぞ。とくに桔梗。

※お兄ちゃんみたい
リクオは弟みたいであり兄みたい。両得。

※おまけ
はたから見るとそう見えるよね。青田坊は気づいてないけど。

※おまけ二
ゆらの精神力がぐんぐん上がってきているぞ。

※おまけ三
兄弟分なのに行けないって、結構ショックだと思う。
レギュラーに抜擢されたのに試合へ向かうバスに置いて行かれた気分だと思う。


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