【奴良リクオ】
あわわわっ。
花開院さんが「やっぱりこの家おかしい。妖怪の気配がする」と言って勝手に探索し始めちゃった!
け、花開院さんて一体何者!?
「水場、ですね」
まずやってきたのは風呂場。
姿を表すなって言っておいたし、この時間に風呂に入っているやつはいないと思うけど・・・・・・頼むよ!
「失礼!」
いや、ほんとに失礼だよ花開院さん!
もし誰か入っていたらどうするつもりだったんだろう。
男でも女の子がいきなり入ってきたら慌てるんだからね!
「いない・・・・・・次」
ま、まだやるの!?
「よし、僕もやるぞ!」
って、清継くんもやる気出しちゃった!
あ、そこの部屋は・・・・・・。
スパン!
ギロリ
鴆くんの部屋・・・・・・。
あぁ、『奴良組の三代目とあろうお方が、人間と連むなんざ情けねぇ』って顔してるよ。
あ、先頭で睨まれていた清継くんがそっと障子を閉めた。
見なかったことにしたいんだね・・・・・・。
「この部屋、今までで一番怪しい」
そ、そこはじいちゃんの趣味で集めた仏像部屋。
いつも小妖怪が遊び場にしているけど・・・・・・。
花開院さんは躊躇いもなく部屋に入っていった。
大きくて古い仏像たちを前に、清継くんたちは感心しているが、僕はそれどころじゃない!
花開院さんが目をつけたのはおそらく中に妖怪がぎっしり詰まって隠れているであろう仏像。っていうか隠しきれてない!ちょっとはみ出してる!
も、もうダメだ。バレる。絶対バレる!
桔梗〜助けて〜っ!
「おう、リクオ。友達かい」
妖怪の総大将キターーーーっ!
ばれないよね、いやバレるよねその頭!明らかに人間の頭じゃないもの!
でもあれ?清継くんたちにはバレてない。花開院さんは・・・・・・。
「いつも孫がお世話になっています」
「!・・・・・・はぁ」
気づかれてない・・・・・・気づかれてない!さすがぬらりひょん!
「・・・・・・やっぱり怪しい。高位の妖怪は人間に化けることができるというし。なんか見られているようなーーーー」
花開院さんが、不審げにあたりを見回した。
そして、一箇所に目を止めた時。
「きゃーっ!ネズミ!!」
ネズミに驚いてカナちゃんが悲鳴をあげた。
「カナちゃん!?って、花開院さん!?」
花開院さんはネズミを追いかけてしまった。
っていうか何あのネズミ。妖怪っぽいけど、うちでは見たことない。
「妖怪の類やな」
中庭に追い詰めて花開院さんが言った。
すると、ネズミの妖気が膨れ上がり、同時に体も変化し始めた。
その途中、人型の紙がネズミに張り付き、途端ネズミが苦しみ始めた。
「陰陽師花開院家の名において、妖よ。あなたをこの世から滅します」
・・・・・・・・・・・・。
お、陰陽師〜〜〜〜っ!!!!????
陰陽師ってあの、妖怪を退治する仕事の陰陽師!?
や、やばい。やばいよ!
「『滅』!」
って言う間にネズミが爆散した!
怖い!やばい!
「け、花開院くん。陰陽師・・・・・・陰陽師と言ったのかね!?」
「えぇ」
「やはりいたんだ!陰陽師も妖怪も!」
「スッゲーっ!!」
あわわわわっ。なんか大変なことになってきちゃった。
一体どうすれば・・・・・・。
「何の騒ぎですか?」
この声は桔梗!やっと救いが・・・・・・って!
「うわぁっ!キーちゃん綺麗!」
「ふわーっ」
「おぉ!桔梗さん、なかなか風情があるね!」
な、何で今和装なの!しかも桔梗のは母さんのとは違ってに小袖に打掛っていう、コスプレ感半端ない格好なのに!
これじゃぁ、花開院さんも変だと思ってーーーー。
「美しい」
「へ?」
花開院さんは素早い動きで桔梗の足元に片膝をついた。
その姿はまるで、主人のもとに膝まづく武士のようでーーーー。
「主様」
「!?」
「私は京都で妖怪退治を生業とする花開院家の末裔。この街には妖怪の主が棲むとされ、より多くの妖怪を滅し、花開院家の当主になるため、修行で参りました」
な、なんか始まったぞ?
「この街に、こんな綺麗な姫様がいるなんて思いもしませんでした。美し人は古来より妖怪に狙われやすいと文献にもあります。そこでこの私、修行中ながらも陰陽師の端くれ。主様を誠心誠意お守り致します。どうか、私を家来にしていただけないでしょうか!」
・・・・・・もう勝手にして。
※※※※※※※※※※
【奴良桔梗】
なんだかすごいことになってますね。
目の前には、跪く花開院さん。
目を輝かせる清継くんたちに、虚ろな目をしているリクオ。
私も、洋装で出ようと思ったのですが、あいにく洗濯中。
えぇ。各季節に1着ずつしか持っていませんけど、それが何か?
毎日洋装で登校していた小学校時代ならまだしも今は制服ですし、正直必要ありません。
女として終わっている?
仕方ないでしょう。1日外を歩き回るなんて翌日が休みでなければできません。
倒れます。
週一回分あれば十分です。
それに、和装に慣れてしまって、今では和装でなければ落ち着きません。
若干、おじい様に洗脳された気もしないでもないですが・・・・・・。
それより今は目の前の花開院さんです。
どうしましょう、これ。
家来って・・・・・・。私は◯ャイアンですか?
というより、花開院さん。やはり陰陽師でしたか。
花開院という名もどこかで聞いたことがあると思いましたが、妖怪の宿敵陰陽師。
なんとも大変な方が転校してきたものです。
しかも次期当主。
まだ中学生の身で次期当主となると、彼女、こう見えてかなり力のある陰陽師かもしれませんね。
・・・・・・とりあえず、この場をなんとかしますか。
影で見ていた雪女たちが震えていますし、今日のところはお帰りいただきましょう。
「花開院さん、頭をあげてください」
花開院さんが頭を上げてみてきます。その目は期待に輝いていました。
う〜む、どうしましょう。
まぁ、とりあえず。
「おまんじゅう食べますか?」
お茶菓子として用意していたおまんじゅうを差し出しました。
すると、花開院さんは目をこぼさんばかりに見開き、慎重な手つきでおまんじゅうを受け取り、大事そうに胸に抱えました。
「食べ物を分け与えてくれるなんて、何て優しき主!必ず、必ずや私が主様をお守りいたします!!」
「えっと、花開院さん」
「ゆらとお呼びください!」
あれ、逆効果?
キキョウハオンミョウジヲテニイレタ。
リクオパニック!!
とどめの桔梗でした。