ぬらりひょんの孫~双子の妹に転生しました~   作:唯野歩風呂

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ゴールデンウィーク最後の投稿。




第22話

 

 

 

 

 「ただいまー」

 「ただいま帰りました」

 

 「「「「お帰りなさいませ。若、姫様」」」」

 

 

 夕方。奴良組の屋敷に帰ってきました。

 七時に学校に集合なので、夕食を食べ終わったら家をでるようですね。

 

 「ねぇ、桔梗。本当に行くの?」

 「しつこいですね。行くと言ったらいくのです。女に二言はありません」

 「うっ……。だったら、ぼくから絶対に離れないでよ!」

 「はいはい。わかりました」

 

 まだ納得のいっていない顔をしていますが、リクオは部屋へ着替えに戻りました。

 

 私も、洋服に着替えてから夕食をとることにしましょう。

 いつもは和服で食べるのですが、今回はすぐにでますからね。二回も着替えるのは少し手間です。

 

 

 と、その前に。

 

 「雪女」

 「あっ、お帰りなさいませ、桔梗様。何か御用ですか?」

 「えぇ。今日の夜、リクオたちと旧校舎に探検に行くのだけど、懐中電灯二つ、どこにあるか知っていますか?」

 「旧校舎に……あっ、はい!とってまいりますね!」

 「ありがとうございます。部屋までお願いしますね」

 

 これで準備は整いましたし、久々に洋服へ着替えるとしましょう。

 

 

 

 夕食です。

 

 手伝おうとしましたが、もう終わっているといわれてしまったので、今回も何もすることがありませんでした。

 片づけを手伝いたいところですが、夕餉のあとすぐにでなければ七時に間に合いませんね。

 

 残念ですが、また今度です。

 

 

 「ごちそうさま」

 「ごちそうさまでした」

 「じいちゃん、ぼくたち出かけてくるね」

 「まつのじゃリクオ」

 

 立ち上がったリクオに、おじい様が呼び止めました。

 いつになく真剣な表情です。

 

 そういえば、今日幹部の方々が集まって話をしていましたね。

 

 「どうじゃ、少しは三代目を継ぐ気になったか」

 「またその話?ぼくの考えは変わらないよ」

 「じゃが、お前の中にはこのわしの血が四分の一も流れておるのじゃぞ?」

 「そんなの、桔梗も同じじゃないか」

 「桔梗は妖怪の血より、人間の血が濃くでておる。しかしリクオ、お主はれっきとしたぬらりひょんとして――――」

 「ぼくは人間だ。人間のぼくでは組を継げないよ。じゃぁね!」

 

 そういうと、リクオは走って行ってしまいました。

 

 

 「……幹部の方。誰も承認していないようですね」

 「知っておったか」

 「何度も幹部を集めていれば、いやでもわかりますよ。リクオも、それに気づいていると思います」

 「うむ……」

 

 おじい様は箸をおき、目をつむりました。。

 

 「桔梗よ。リクオはどう思っているだろうか」

 「……それは、三代目になることでしょうか」

 

 おじい様は何も言いませんでしたが、私はそれを肯定と受け取りました。

 

 「……強くなりたいとは思っているでしょう。今も、毎朝おじい様の素振りに付き合っていますし」

 

 そう。リクオは四年前から毎朝欠かさず素振りをしてきました。

 

 強くなりたい。

 

 そう、思ってはいるのです。

 しかし、それが三代目になりたいと思っているかは、四年前から聞いたことがありません。

 

 けれど――――――。

 

 「心配しなくても、リクオは三代目になりますよ」

 

 おじい様は、目を丸くして私を見ました。

 

 「……以前、同じようなことを聞いたきがするな」

 「私の答えは変わっていませんから」

 

 私が笑うと、おじい様もやっと笑ってくれました。

 

 「お主は本当に、珱姫に似ておる」

 「光栄です」

 

 

 「桔梗!早く行くよ!」

 

 リクオの少し怒った声が聞こえ、私はおじい様に一礼をして、その場を去りました。

 

 

 さぁ、探検の始まりです。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 浮世絵中学校の横を走る東央自動車道の向こう側に、その旧校舎はあります。

 

 まわりは鬱蒼と木が茂り、懐中電灯の明かりがなければ真っ暗で何も見えないでしょう。

 

 「ぶきみっすねぇ」

 

 集まったメンバーは全員で五名。

 紗織さんと夏実さんは家の事情で抜け出せなかったみたいですね。

 

 「怖くなったらすぐにいってね」

 「うん」

 

 

 ……ほう?

 

 

 なんだかリクオとカナちゃん……。

 

 「本当に入るんですか、清継君」

 「ぬふふふふっ。妖怪がいそうじゃないか」

 

 ……清継君の笑い声の方が不気味だと思ってしまう私は、おかしいでしょうか?

 

 

 

 「いるいる。絶対いる!」

 

 旧校舎の中は、長い間誰も立ち入っていないため、歩くたびに埃が舞い上がりました。

 

 「どうしよう、ちょっと怖くなってきちゃった」

 「大丈夫。なんかあったら絶対ぼくが守るから!」

 

 

 ほうほう!

 

 

 「……桔梗。なにニヤニヤしてんの?」

 「いえいえ別に。なんでもありませんわ」

 「口調違くない?」

 「わたくしは以前から敬語で話していましてよ?」

 「それはそうだけど……」

 

 リクオは『敬語の種類が違う気がする』と、つぶやきながらも前に向き直って進みました。

 

 

 それにしても……。

 

 いますねぇ。奴良組でない妖怪たちがわんさかと。

 おかしいですねぇ。ここは奴良組のシマですのに。

 

 リクオが先に行って妖怪たちを蹴散らしていますが、このままではまずいですね。

 これ以上探検を続ければ、強い妖怪に会ってしまいます。

 

 幸いにも、妖怪に会えない清継君たちが退屈し始めましたし、ここが帰り時です。

 

 「皆さん。妖怪はいそうにありませんし、もう帰りませんか?そろそろ家に帰らなければご両親が心配しますし」

 「うーむ。桔梗さんの言う通りだな」

 「そうっすねぇ」

 

 私とリクオは顔を見合わせてほっと息をつきました。

 

 「ならば、この部屋で最後にしよう」

 

 !?

 いけません!

 

 部屋を開けた瞬間感じた血の匂い。

 それに、他とは比べ物にならないくらい危険な妖力を感じます。

 

 

 『ぐおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ』

 

 「「う、うわあああああっ!!!!」」

 「きゃあああああああ!!」

 

 「カナちゃん!」

 

 清継君と島君は真っ先に逃げていったので無事ですが、カナちゃんは転んでしまい、逃げ遅れてしまいました。

 

 「伝風!」

 『ぽーっ!』

 

 待機させていた伝風が飛び出し、妖怪の気を反らしてくれます。

 

 「今のうちに!」

 「うん!カナちゃん!」

 

 リクオはカナちゃんを立たせようとしましたが、カナちゃんは気絶していました。

 

 そこに、二体目の妖怪が迫ります。

 

 「リクオ!」

 

 持っていた懐中電灯を投げつけ、妖怪の気をこちらに向けさせます。

 狙い通り妖怪は怒り、こちらに向かっていました。

 伝風がひきつけてくれた妖怪も、伝風に飽きてこちらに迫ってきます。

 

 リクオがとても焦った表情をしています。

 

 大丈夫ですよ。ちゃんと、準備をしてきたのですからね。

 

 

 「お願いしますね」

 

 

 「「お任せください」」

 

 声が聞こえたのと同時に、窓を突き破って一匹の妖怪をふっとばしました。

 もう一匹は、いつの間にか氷漬けになっています。

 

 「リクオ様ご安心を。私たちがお守りいたします」

 「若と姫に手ぇだすんじゃねぇ。俺たちが相手だ」

 

 「雪女!青田坊!」

 

 

 妖怪たちは瞬殺でした。

 

 ……いえ、特に戦闘シーンを描写するほどもないほど、あっけない終わりだったのです。

 

 

 「お前たち、どうしてここに」

 「若。俺たちは四年前のあの日から、ずーっと若をお守りしてました」

 「いつも若と姫のおそばで」

 「いつも?」

 「はい!……桔梗様は、気づいていらしたみたいですか」

 「えっ!そうなの桔梗!?」

 「まぁ、ねぇ」

 「くるっぽー」

 

 伝風が肩にとまり、ふわふわの羽毛を擦り付けてきました。

 よしよし。よくやりました。

 いい働きをしましたね、伝風。

 あとでご褒美あげますからね。

 

 「話はあとです。一刻も早くこんなところでましょう」

 

 

 

 青田坊が、気絶したカナちゃんを抱え、私たちは旧校舎をあとにしました。

 学校の近くまで戻ってきて、いったんカナちゃんを起こすことにしました。

 

 その前に――――。

 

 

 「いつも、ってどういうこと?」

 

 リクオが問い詰めてきました。

 雪女たちは変化し、リクオに人間の姿を見せます。

 

 「一組の及川さんに倉田くん!?」

 「はい」

 「桔梗はこのこと、知ってたんだよね?」

 「私たちは、お二方に内緒で護衛をしていたはずなのですが……」

 

 「容姿はそっくり。少し変な言動をする。私たちの傍に常にいる。四年前から姿が変わらない。そんな人間いませんよ」

 「くるぽー」

 

 「さすが桔梗様。完璧な変装だと思ったんですがね」

 

 あんな小学生がいたらいやでもわかりますよ、倉田くん……。

 

 

 「若、やっぱり若には三代目を――――」

 

 「青田坊、雪女」

 

 それ以上いう必要はありません。

 リクオはおそらく、もう――――。

 

 私の無言の言葉に、雪女たちはそれ以上何も言いませんでした。

 さすが、長年私たちの世話係をやっているだけのことはあります。

 言いたいことをちゃんとわかってくれます。

 

 そう。リクオにはもう説得の必要はありません。

 あとはきっかけだけなんです。

 

 そしてそのきっかけはもうすぐ来る。

 そんな気がします。

 

 

 ね、伝風。

 

 

 「くるぽーっ!」

 

 

 

 





※ぬふふふふ
清継くんの方が妖怪っぽいという事実。

※最強の小学生倉田くん。
桔梗は一発で見破りました。

※伝風登場!
いい働きをしてくれました。
ふわふわな羽毛に憧れます。

※待機場所
お姉さまの懐です。
あったかいんだから~。



ゴールデンウィーク最後の投稿でした。
またいつになるかはわかりませんが、はやくお父様を登場させたいと思ってます。
そのためには牛鬼編まで頑張るぞー!!

ではまたいつか!

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