ぬらりひょんの孫~双子の妹に転生しました~   作:唯野歩風呂

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第20話

 

 

 

 お久しぶりです。

 といいますのも、あれから四年が経ちまして、私、十二歳になりました。

 えぇ。そうです。

 戦いが始まる年です。

 とうとうこの年が来てしまいました。

 

 私自身、いろいろと鍛えようとはしていたのですが、そう簡単に虚弱体質は治らず……。

 ですが!普通の女子中学生より弱いかな、ぐらいまでに強くはなったのですよ?

 校庭も三周はできるようになりましたし、小妖怪になら腕相撲で勝てるんです!

 

 

 「桔梗?そろそろ学校いかないと遅刻するわよ」

 「あ、はい!」

 

 姿見で最終チェックは欠かせません。

 

 それにしても私の髪、かなり伸びました。太ももあたりまであるのです。

 正直邪魔で仕方ありません。

 平安時代ならまだしも、現代でこの長さはうっとおしすぎます。

 切りたいというと、おじい様が泣いて「やめて!」と懇願するので渋々切るのを諦めましたが、手入れなどかなり時間がかかるのですよ?

 毛倡妓に手入れの仕方や長い髪のさばき方など教わり、なんとか普通に暮らせているのですから。

 教わる前は大変でした。座るときに髪を巻き込んでしまうなどしょっちゅうでしたし、風の強い日は地獄のようでした。

 毛倡妓様様です。

 

 

 

 「あれ、リクオ?」

 

 玄関に向かっていると、リクオがみんなを集めて何かを話していました。

 

 「あ、桔梗!ちょっと待って。……いいね、みんな。絶対だよ!――――さ、行こう」

 「あ、ちょっ」

 

 リクオは私の手を掴み、唖然とする妖怪たちを残して進みました。

 

 「リクオ、何の話をしていたのです?」

 「うん、ちょっとね。それより桔梗、今日の体育は――――」

 「今日はバレーボールですから、大丈夫ですよ」

 「全然大丈夫じゃないよ。強いボールは絶対に受けちゃだめだよ」

 「大げさですよ。女子中学生のバレーでそこまで心配する必要はありません」

 「よく言うよ。この前、バスケットボールを頭にくらって倒れたのはどこの誰?」

 「あれは……誰だってバスケットボールを頭にあたれば気絶をします」

 「言い訳にならない。絶対倒れるようなことしちゃダメだよ」

 「……」

 「返事は?」

 「……はい」

 

 まったく、かなり過保護になってしまったものです。

 私だって、しょっちゅう倒れているわけでも…………ないですし。

 昔よりは頑丈になったんです。

 私は倒れるたびに強くなるんですからね。

 ドラ○ン○ール方式なんですからね!

 

 

 

 「お待ちください若!危のうございます。せめて護身用に刀でも」

 「いいって。学校いくのに刀なんて持っていけないでしょ」

 

 鴉天狗は四年前のこともあり、心配してくれているのでしょうが、私も刀を学校に持っていくのはむしろそっちの方が危険だと思います。

 鴉天狗のいう刀とはあの長ドスのことでしょうし、そんなものを中学生がもっていたら、完全に、お巡りさんに没収されてしまいます。

 

 「鴉天狗。昼間なら、あまり妖怪のことを気にする必要はないと思いますよ」

 「し、しかし姫様」

 「大丈夫。それに、あなたたちがついているでしょ」

 「ひ、姫様、もしかして気づいて……」

 「さぁ、なんのこと?では、行ってまいります」

 

 いつもの挨拶を告げ、私は先に走っていったリクオを追いました。

 

 すると、リクオは立ち止まって牛鬼と話しています。

 

 「牛鬼、久しぶりですね」

 「これは姫様。姫様もご機嫌麗しゅうございますか」

 「えぇ。昔よりは元気よ。御山のみなさんも元気ですか?」

 「はい。姫様に気にしていただき、皆も喜びますでしょう」

 「ふふっ、大げさよ。今日は牛鬼、幹部での集まりかしら?」

 「はい。総大将からの、召集でございます」

 「そう。ゆっくりしていってくださいね」

 

 「き、桔梗!早くいかないと遅刻しちゃうよ!」

 

 リクオがどこか焦った様子で手招きしています。

 相変わらず、牛鬼のことが苦手なのですね。

 私としては、いい声のオジサマぐらいにしか思えないのですが。

 

 

 「あぁそれから牛鬼、帰る際には言ってくださいね。御山の皆さんに、手作り料理のお土産を作りたいですから」

 「っ……そ、それは姫様の手料理で?」

 「?もちろんそうですよ」

 「いえいえ、我ら家臣に姫様の手料理など、恐れ多い。心だけ、いただいておきますゆえ」

 「そんな大したものではないわ。必ず声かけてくださいね。約束ですよ?」

 

 よし。約束は取り付けました。

 私、昔よりだいぶ料理が上達したのですよ。

 腕を振るう機会をうかがっているのですが、宴会の料理の手伝いをしようとしても大丈夫だといわれてしまうので、なかなか機会がないのです。

 ですが、約束をしましたし、牛鬼は滅多なことでは約束を違えることはありませんから、絶対に持って帰ってもらいます。

 ああ、楽しみです!

 

 それにしても、リクオ。

 牛鬼のこと苦手だと思っていたんですが、先ほどから牛鬼のことを憐れみの目で見ているなんて、意外と平気なのでしょうか。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 「お久しぶりです。総大将」

 「……きたか、牛鬼」

 

 牛鬼はぬらりひょんの後ろに立ったまま、枝垂桜を見上げた。

 

 「姿かたちはもとより、考え方も人間ですな。リクオ様は。妖の世でいえば、桔梗様の方が、順応しているように思えます」

 「うむ。桔梗は頭のいい子じゃからな。それに、かわいい」

 「…………いつの世も、我ら妖怪は人間に畏敬の念さえも抱かせる。真の『畏』を纏うものでありたいもの。しのぎが辛いご時世だけに、代紋に立てた誓い、今一度確認すべきときかと」

 

 ぬらりひょんはそれに答えず、お茶をすすった。

 

 「……ところで牛鬼よ。お主、顔色が悪いの」

 「…………先ほど桔梗さまに、手料理を持ち帰るようにと約束されまして……」

 「…………そうか。……ま、なんじゃ…………ガンバ」

 「………………」

 

 

 

 




桔梗、料理が全く上達していません。

桔梗は牛鬼に対して苦手意識を持っていません。
というのも、実は牛鬼、ぬらりひょんと一緒に桔梗を甘やかしていたからです。
なので、桔梗にとって牛鬼は親戚のおじさんみたいな存在なのです。

リクオに対しては時期総大将として厳しくしてしまう牛鬼なので、リクオからは少し怖がられています。


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