幼少編?ガゴゼ編?終結!
リクオ。
リクオが助けに来てくれました。
みんながむこうに気を取られている間に、運転手さんのケガを治してしまいましょう。
……それにしても、ちょっと見ない間にへ……不思議な髪形になって。
いえ、あれが妖怪の姿なのでしょう。
お父様もあんな髪形でしたし、おじい様もあんな髪……頭?でしたし。
ぬらりひょんという妖怪の特徴なのでしょう。
私には、旅人を倒すという役目があり、妖怪のような力があればいいのでしょう。
ですが、少し……いえ、だいぶ思ってしまいます。
私、人間側でよかった。
若いころはいいのです。
格好よく見えますから。
しかし、年をとったら……ねぇ。
と思っている間に、だいぶガゴゼの部下が減りましたね。
私たちが生まれてから抗争など、戦うところは見たことありませんが、みなさんブランクなど感じさせないほどとても強いです。
「こんなバカな。わしの組が。誰よりも殺してきた最強軍団が」
ちまちま子供だけを殺してきたような器の小さな妖怪には、強敵と戦ってきた妖怪にかなうはずもないということでしょうか。
あぁ、私だいぶ怒っているみたいです。
普段なら妖怪の本分をとやかく言うことはないのですが、今回は相手が悪いです。
「きゃあああああああ!!」
「来るな!こいつらを殺すぞ!」
「それはこちらのセリフです」
「ぐっ、ぎやあああああっ!」
ガゴゼは右目をおさえ、のけぞりました。
右目には、バスの折れたギアハンドルが刺さっています。
「き、キーちゃん?」
そう、相手が悪いです。
リクオを狙った上に、学校の友達までも殺そうとした。
「私の大切な人たちには、指一本触れさせません」
「き、桔梗さん」
「か、かっこいい」
褒めてくれるのはありがたいですが、私ではこの程度の攻撃しかできません。
なので、あとは頼みましたよ。
「あぁ。よくやった」
私たちとガゴゼの間に、リクオが立ちふさがりました。
その手にはドスが握られています。
「なんで、貴様の、貴様らのようなガキに!わしのどこがダメなんだ。誰よりも恐れられているこのわしがぁ!」
「子をむさぼり食らう妖怪。そりゃぁ恐ろしいさ。けどな。弱いもん襲って悦に浸ってる、そんな妖怪を、闇の世界の主にするわけにはいかねぇんだ」
そう。それが、あなたが出した答えなのね。リクオ。
ならば―――
「俺がお前らの上に立つ」
私がリクオの隣に立つ。
「俺が三代目を継いでやらぁ!」
私が三代目を支えてやります。
「人に仇なすやつは、俺が絶対に許さねぇ」
リクオに仇なすやつは、私が絶対に許さない。
「世の妖怪どもに告げろ!俺が魑魅魍魎の主となる!」
リクオの刃がガゴゼを真っ二つにします。
ガゴゼの目が一瞬、私を見た気がします。
しかし、それを確認する前に、チリとなって消えてしまいました。
「すべての妖怪は俺の後ろで、百鬼夜行の群れとなれ」
リクオ。格好いいですよ。
その勇姿が見られてよかったです。
なにせ、私の体力、これで、限界、みたい、ですから……。
※※※※※※※※※※
「キーちゃん!?」
「桔梗さん!?」
「ど、どうしたの!?」
あいつらの声に振り向くと、桔梗がみんなに支えられて気を失っていた。
雪女たちが心配して近寄ろうとするが、俺は手を挙げて止めた。
むやみに近づくのはよくねぇ。
妖怪と桔梗が知り合いだと気づかれたら、面倒だからな。
だが、このままってわけにもいかねぇな。
俺はバスに近づき、桔梗を抱き上げた。
そのことに、今までぼーっと俺を見ていた奴らが慌てだした。
「あ、あの、彼女をどうするつもりですか?」
「心配いらねぇ。今にも死にそうなやつを、安全な家まで送り届けるだけだ。気になるなら、明日確認してみな。五体満足で家にいるさ」
ま、治癒能力を使って、尚且つガゴゼに傷を負わせた一撃。
そんな無茶したら、三日は寝込んでいるだろうけどな。
それにしても、死にそうなくせに、満足そうな顔しやがって。
とんでもねぇ女だぜ。
『私は、大切な人たちが笑っていてくれればそれでいい』
なぁ、桔梗。
お前の覚悟に、俺は追いついたか?
お前が何を背負ってるかわからねぇが、その背負ってるもんをわけちゃくれねぇか。
俺の隣に――――お前の隣に立つのは、双子の役目なんだからよ。
※※※※※※※※※※
桔梗様を抱えトンネルを出たところで、若の身体がぐらりと傾きました。
そして、桔梗様を抱えたまま倒れてしまわれました。
「若!どうされました!?」
慌てて近寄ると、なんと若のお姿が、もとに戻られていました。
「人間のお姿に戻られている」
「まさか、四分の一……血を継いでるからって、一日の四分の一しか妖怪でいられないとか……」
そこからは、さながら阿鼻叫喚でしたが、寄り添って眠るお二人の表情はとても穏やかでした。
※※※※※※※※※※
事件から一か月が経ちました。
なぜ一か月後の話かというと、私一週間意識が戻らなくてですね。目覚めてもまともに動けなくて、学校に行けるようになったのが一か月後だからなのです。
初めての戦闘(?)によって筋肉痛がとてつもないことになりました。
まさかあれだけで一か月も苦痛を強いられるとは思いもよりませんでした。
自分の貧弱さにこの先不安になります。
カナちゃんたちは、事件の翌日から私を心配して訪ねてきてくれたらしいのですが、何分一週間目が覚めなかったものですから、かなり不安にさせてしまいました。
目覚めた後にあったカナちゃんたちは、私を連れて行った妖怪が大丈夫といったのに大丈夫ではなかったことに怒りを感じていたらしいですが、私がただの筋肉痛だと知ると、ホッとしたのと同時に、怒りが私に向いてしまいました。
それだけ心配させてしまったということですが、少し理不尽だと思います。
動けない身で、延々と愚痴を聞かされるこっちの身にもなってください。
リクオは一週間目覚めるまで私の傍を片時も離れなかったようです。
本当に、いい双子の兄を持ちました。
夜リクオですが、みんなの話では事件以来姿をみていないそうです。
しかし私は時々、誰にも気づかれずにこっそりお見舞いに来てくれるのを感じていました。
おそらく感づいているのはおじい様くらいでしょう。
それからリクオは毎朝鍛錬を始めました。
といっても、早起きのおじい様と一緒に木刀の素振りをする程度ですが。
朝早い分授業中寝ているようで、このままならば少しお・は・な・し、しないといけませんね。
ふふふ。
「みんな、おはよー」
「おはようございます」
やっと通えるようになった学校へ向かうため、今日は少し早目に起きました。
クラスメイトにいろいろ質問されるでしょうから、その対策のためです。
「あれ、じいちゃんたちまだ話してるの?」
「どうやらそうみたいですね。臨時の寄合みたいで、夜遅くに始まったみたいですし」
私は奴良組の女集として手伝いたかったですが、さすがに病み上がり(?)で無茶させるわけにはいかないと雪女たちに断られてしまいました。
次に宴会等があれば、絶対に協力しますからね!(そのとき雪女たちは物凄い悪寒がしたという)
少し寂しい朝食を終え、私たちはバスが出る時間までのんびりすることにしました。
私はなんとなく、あの場所へ向かっていました。
今は誰も使っていない部屋。
あの夜から三年が経ちました。
大切なものを守るために強くなろうとして、私は強くなっているのでしょうか。
「お父様……」
「呼んだか?」
懐かしい声に、素早く振り向きます。
「よっ、桔梗。暫く見ない間に、まぁた綺麗になったなぁ」
「お父様!!」
私は駆け寄り、飛びつくことなくそっとお父様に抱き付きます。
お父様も右手でそっと抱きしめてくれました。
その左手には身体を支える杖が握られ、抱きしめてくれた右手は、わずかに震えていました。
没案
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「世の妖怪どもに告げろ!俺が魑魅魍魎の主となる!」
夜の妖怪たちに告げなくていい!海賊王に俺はなる!……はっ、どこからか電波が。
雰囲気ぶち壊しにつき、没。
※ガゴゼの恋っぽいもの
クリスマスマジック?
※リクオ強化計画。
守るものが増えたため、リクオ頑張ります。ちょっとだけ。
※例のあの人復活。
だがしかし、戦闘不能状態です。
鯉伴が死んだと思ってくれた人がいたら、驚いてくれたと思いますが、桔梗がしつこいくらい気にしてたので生存を考えていた方は多いのではないのでしょうか。……チッ
鯉伴の詳しい話は次回。
いきなり時間が飛ぶ……と思います。
ではまたいつか。