ぬらりひょんの孫~双子の妹に転生しました~   作:唯野歩風呂

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26日00時にも投稿しております。お気を付けください。


第17話

 

 

 翌日。

 

 

 今日も無事授業を乗り切りましたよ!

 昨日は親分集の寄合でいつもより就寝が遅れていましたし、覚悟を決めてきたのですが、今日は体育があったので、その分休めたのが幸いでした……。

 

 それにしても、リクオが朝から元気ありません。

 おそらく昨日の寄合で妖怪がいいものたちだけではないことを知ったことが原因でしょうが――――いえ、むしろ大好きなおじい様が悪い妖怪の総大将ということにショックを受けたのかもしれません。

 リクオは、人間も妖怪も大好きですから。

 

 

 下校時間になり、私はトボトボと歩くリクオを見つけました。

 

 「リク――――」

 

 「どうした妖怪君」

 

 

 ん?

 

 

 「一緒に乗られたら妖怪に襲われるかも!」

 「それもそうだな!」

 「「あはははははは!」」

 

 

 はははははは。

 

 

 「リクオ」

 「っ!?き、桔梗?」

 

 おや、リクオどうしたのでしょう。

 怯えたように私を見て。

 失礼ですね。

 こんなに笑顔なのに。

 

 「リクオ、乗らないのですか?あのバスを逃すと三十分後ですよ?」

 「……うん。ぼくには乗る資格ないから」

 

 これは、そうとう悩んでいますね。

 

 「情けないんだ。妖怪って、もっとカッコいいと思ってた。こそこそと悪さばっかりして、全然ヒーローなんかじゃなくて……。ぼくも、そんなやつの上にいるじいちゃんのマネばっかりして……」

 

 ランドセルをぎゅっと握って俯く小さな背中。

 大好きな妖怪たちが、大好きな人間に悪いことをしている。

 知らなかった自分が恥ずかしくて、でもやっぱりみんなが大好きで。

 どちらをとればいいのか、どうなればいいのか、わからないでいる。

 

 

 でも、そんなの――――

 

 

 「悩んで当り前よ」

 

 私は、リクオの固く握りしめていた両手をほどいて握り、額を合わせました。

 内緒話をするとき。不安なとき。

 時々私たちは心を合わせるかのように、こうしてきました。

 いつからとか、どうしてだとかは全く覚えていません。

 気づくと、こうしていました。

 こうすると、安心します。

 双子だからでしょうか。

 足りないものが埋まったように感じます。

 

 「リクオはまだ八年しか生きていないの。良し悪しを決めるには、まだまだ知らないことが多すぎるわ」

 「知らないこと……」

 「そう。リクオは知らなかった。悪い妖怪がいるということを」

 「妖怪は悪いもの?」

 「いい妖怪もいるわ」

 「人間は味方……」

 「平気で人を殺す人間もいるわ」

 「……桔梗は知ってたの?」

 「私だって最初から知っていたわけではないわ。でも、今は知っている」

 

 そもそも、妖怪の存在自体、知らなかったわけですからね。

 

 「……桔梗は、どっちの味方なの?」

 「……」

 

 どうなのでしょう。

 私が対するのは、妖怪に取り入る人間ですし、戦うのは妖怪ですし。

 守りたい人は、前世の弟でありカナちゃんたち人間と屋敷の妖怪たちですし……。

 結局のところ――――

 

 

 「私は、大切な人たちが笑っていてくれればそれでいい」

 

 私はリクオの目をじっと見つめました。

 顔つきはあまり似ていないけれど、同じ髪色に同じ瞳を持つ、たった一人の双子の兄。

 

 「大切な人が幸せに笑っていられるなら、人間でいるし、人間だってやめられる」

 「人間をやめる……」

 

 あぁ。リクオが暗い顔をしてしまいました。

 それに、もっと悩ませてしまったように感じます。

 

 「う~ん、つまりね、リクオ」

 「うん」

 「やりたいことは全部やってみなさい、ってこと」

 「うん?」

 「情けないのが嫌ならば、これから情けなくなくなればいい。妖怪が悪さするのが嫌だったら、止めればいい。人間として遊びたいのなら、遊べばいい」

 

 知っていた?私たちはとても贅沢者なんですよ?

 

 「なんでもできるのよ。だって私たちは――――人間であり、妖怪でもあるんだから」

 

 

 さて、言いたいことは言えましたし、あとはリクオが成長していくうえで決めることです。私は見守ることにしましょう。

 なので、次に私がしなければならないことは――――。

 

 

 「清継くーん、島くーん!」

 

 

 

 ちょっとお話しましょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 「まったく。帰りが遅いので心配して来てみれば、屋敷まで歩いて帰ろうとしていたとは」

 

 桔梗と話した後、ぼくはバスに乗らなかった。

 まだ考えたいことがあったし、それに気まずいことには変わりなかったし……。

 カナちゃんはバスに乗りなよと言っていたが、桔梗はぼくを止めなかった。

 ぼくが一人で悩みたいこと、わかってくれたみたい。

 

 「ねぇ。鴉天狗。……ぼくは、人間?」

 「え?え、えぇ。そうですね。お母様も、おばあ様も人間ですから。……しかし、総大将の血も、四分の一入っておられます」

 「四分の一……」

 

 『なんでもできるのよ。だって私たちは――――人間であり、妖怪でもあるんだから』

 

 桔梗の言葉が、頭の中をぐるぐる回ってる。

 

 『なんでもなれる』

 ならぼくは、何になりたいんだろう。

 どうすればいいんだろう。

 

 

 

 

 

 「あぁ!帰ってこられた!」

 「若!ご無事で!」

 

 考えてたら、屋敷についた。

 どうしたんだろう。みんな、すごく慌ててる。

 

 「どうしたのじゃ、皆の衆」

 「だって、だって!」

 

 雪女が差した方には、テレビがあった。

 そして、そこから聞こえてくるのは――――。

 

 

 

 『浮世絵町にあるトンネル付近で起こった崩落事故で、路線バスが生き埋めになりました。中には浮世絵小学校の児童が乗っていると思われ――――』

 

 

 

 え?

 

 

 

 『リクオ』

 

 

 

 「桔梗?」

 

 

 

 




カナちゃんのお株を奪いました。



たくさんの感想ありがとうございます。なかなか返せなくて申し訳ありません。

呆れず、感想や誤字脱字報告でもいいのでくださるととても励みになります。

今年の投稿はこれが最後になるかもしれませんが、今後とも、わたくし共々桔梗たちをよろしくお願いいたします。

よいお年を!

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