今回は一話目。
短いです。
今日の夜は親分集の寄合があります。そのため、学校が終わるとすぐに帰りました。
いつもはリクオやかなちゃんと一緒に帰るのですが、主に女集は料理を作らねばなりませんので、先に帰ってきました。
総大将の孫である私は働かなくてもいいといわれているのですが、体力づくりもかねてお手伝いをしています。
「お手伝いします」
「あ、桔梗様!?」
「お帰りなさいませ桔梗様!」
「ただいま戻りました。それで、雪女。私も今夜のために何か作りたいのだけど、あとは何を作ればいいの?」
「あとは煮物を――――」
「バカ、雪女!」
「え……あっ!」
「?」
なにやら毛倡妓と雪女がひそひそと話しているようですが、何でしょう?
『若菜さんから言われているでしょ!桔梗様を調理場に近づけちゃだめだって。それに忘れたの?桔梗様が厨房に立ったあの惨劇を』
『そういえばそうだった』
『包丁を握れば必ず誰か所に飛んでいき、火を使えば爆発。鍋をかき混ぜれば味噌を溶かすだけの味噌汁もダークマターよ!?』
『何度やってもそうなるから、ついに若菜さんが調理場立ち入り禁止にしたのよね』
「雪女?毛倡妓?」
「は、はい!!」
「煮物を作ればいいのね?任せて」
「い、いえいえいえいえいえ!そういえば煮物は今日の膳には出さないんでした!」
「そうなの?なら他の物を――――」
「ああああああっ!桔梗様、野菜!野菜を洗ってはくれませんか?」
「でもそれは小妖怪たちがやってくれているのでは」
「で、でも小妖怪たちだけでは心配です!基本彼らは悪戯好きですから、大事な野菜に何をしでかすか分からないのです!桔梗様と一緒にやれば、彼らもちゃんとやるでしょう!」
「そう?」
「「ええ、その通りです!だからお願いします!!」」
「わ、わかりました」
昔から家に住む小妖怪たちが大事な食事に悪さをするとは思えないけど、なんだか二人の剣幕におされてしまいました。
ま、野菜洗いも重要なお仕事ですし、頑張りますか!
『ちょっと、納豆小僧!桔梗様が野菜を爆破させないように見張ってなさいよ!』
『そんな!責任を全部こっちにおしつけんでください!』
『いいから頼むわよ!』
『うぅ、理不尽だ……』
「どうしたの?」
「「「いえいえ!なんでもありません!!!」」」
なにやら挙動が怪しいですが、早速始めなければ夜に間に合いません。リクオももうすぐ帰ってくるでしょうし。
……リクオ、何やら落ち込んでいました。今日の授業で何かあったのでしょうか。
そういえば、リクオのクラスは体験発表でしたね。清嗣君が妖怪について発表するといっていた気がしますので、もしかしたらそのことと関係があるのかもしれません。
人間の語る妖怪についての歴史は、真実がどうあれ人間を美化して描かれているので、妖怪に傾倒したリクオは、反発したのかもしれません。
「難しいですね……」
人間と妖怪というものは……。
☆おまけ
「あ、あの桔梗様?いつまで同じところを剥いているのですか?あぁ。中身がどんどん減っていく」
「桔梗様止まってください!って聞いてない!」
「うわっ!玉ねぎの皮が飛んできて……グスッ、涙で前が見えない」
「ギャーッ!飛んできたジャガイモが鍋に!」
「あちちち!あちちち!」
「おい!お前包丁を振り回すやつがあるか――――ギャッ!切れた!」
「バカ!熱したフライパンもってこっち来ないで(ジュゥ)あっつーーーー!!溶けるーー!!」
「あ、あたしの髪が燃えてるーーーー!?誰か!水!水持ってきて!」
こんな感じで、若菜が来て桔梗を追い出すまで騒ぎが続いたとさ。
料理中は、ぼーっとしちゃだめだぞ!