ぬらりひょんの孫~双子の妹に転生しました~   作:唯野歩風呂

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第12話

 

 

 

 「ふざけんな!!」

 

 思わず汚い言葉がでてしまいましたが、今はそれどころじゃありません。

 私は怒っているのです。

 前世のお母様にも、目の前の父親にも。

 

 「何が『生きていればいい』ですか。何が『幸せだ』ですか!そんなの、私には関係ない!」

 

 鯉伴が唖然としているのがわかります。しかし、私は止まりません。止められません。

 

 「これから幸せになる。そんなの当然でしょう!だけど、あなたがいればもっと幸せになれるに決まってるだろう!!勝手に人の先のことを考えて幸せに浸りやがって!こっちはその想像の中にあなたもいるんだ!」

 

 この世界に生まれて五年。前世の記憶は日々薄れてきています。

 最初は、年月が記憶を風化させているのだと思っていました。

 しかし、少し様子が違うのです。

 

 お父様やお母様が死んだとき、確かに『悲しい』『辛い』と感じていました。

 あくまでも〇〇〇〇が思った感情として。

 

 まるで他人事のように前世の記憶をそう思い出したとき、私はとても怖くなってこのことを考えないようにしました。

 大切な思い出も、全部物語の中のことだったと思えて……。

 

 しかしそんな考えも、今では違ったと断言できます。

 

 前世の両親が死ぬ直前に感じだ『痛み』『焦燥』『怒り』。それは今、鯉伴を前にして感じる思いと、まったく同じなのです。

 『怒り』にもいろいろありますし、まったく同じと言い切れることは、別の思考を持った他人である限り、絶対に、100%あり得ません。似ているだけで、どこか違うのです。

 だけど、まったく一緒なのです。

 

 ならば認めましょう。

 

 名前も身体も違えど、前世も今も『私』であることを。

 

 しかし、私が前世の私を別の人と思ってしまったのは、しかたのないことなのです。

 だって、昔の私と、今の私は違います。

 前世という経験があって、今の奴良桔梗があるのです。

 そのことを、世は“成長した”と言うのですから――――。

 

 

 手に宿した光が強くなります。

 それを見て、鯉伴は私の手をつかみました。

 

 「やめろ。これ以上力を使えば、本当に……」

 

 鯉伴の顔は苦しげに歪んでいました。

 それは、傷の痛みだけではないでしょう。

 私という娘を失うかもしれないという恐怖からも来るのでしょう。

 

 あぁ、こんな顔をさせたくはありません。

 愛しい娘や息子を見つめる時の、優しい笑顔でいてほしいのです。

 その顔が、前世のお父様とお母様の笑顔と重なります。

 心の奥でずれていた部分が、カチッとはまったように感じました。

 

 やっと、本当に、やっと“奴良桔梗”という私の人生を始められそうです。

 

 だからもう一度言いましょう。

 

 

 「ふざけんな」

 

 鯉伴とは……父様とは一緒に幸せになりたい。 

 

 

 だから――――

 

 

 「だから」

 

 

 お願い――――

 

 

 「死なないで……」

 

 

 私の意識はそこで途切れました――――――。

 

 

 

 




これにてストックが尽きました。

再び投稿するのはいつになることやら……。

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