俺、ツインテールになります。 The Another Red Hero   作:IMBEL

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あれ? レッドのヒロイン力がどんどん上がっていっている?


第5話 赤と焔のツインテール

「……何、あれ?」

津辺愛香の呟きはまさにこの場にいる全員の思いを代弁したものだったのだろう。

幼馴染である観束総二が幼女になってしまったことにも驚いたが、更にそこへ乱入してきた少女には流石の彼女でも絶句するしかなかった。

愛香は総二にテイルギアを託した科学者にして、唯一この状況を把握できそうなトゥアールを伺うと、彼女も何が何だか分からないような渋い顔をしていた。

「あ、あれぇ? こんな展開私の脚本には…追加戦士の登場はせめて1クールが終わってからが私の理想なんですがまさか初戦からの乱入は」

「とぼけんじゃないわよぉ!!」

愛香はドゴォ! と全力の拳をトゥアールの顔面にぶち込んだ。本日、幾度となく繰り返されてきたこのやり取りだったが、流石に顔面へのグーはまずかったらしく、殴られたトゥアールは数メートルを綺麗にきりもみ回転しながら舞い、そのまま落ちた。

「ほ、本当なんですよ。信じてくださいよ愛香さん。私あんなのがいるだなんて聞いていませんよ」

「いいや、もうあんたの言葉は信じないわ! あんなもの作れるのあんた以外にいてたまるか!」

ゴキブリのように地を這いながら弁明するトゥアールをまるでゴミを見るような目で愛香は見下す。そしてビシッと総二の前に佇んでいる少女を指さした。

「あれ、どー見ても総二の恰好と同じじゃない! あんたでしょ、絶対あんたが何か企んでたんでしょ!!」

そう、謎の少女の恰好は、幼女と化した総二が纏っているのと同じようなアーマーを着ていた。総二のアーマーには見られない炎のようなマーク、ファイヤーシンボルのペイントが随所に見られているなど細かな違いはあるものの、その殆どが総二と同じ。さらにその子の見た目も幼女化した総二と瓜二つなのが決め手だった。こいつ、幼女だけじゃ欲求不満で、数年後の成長したパターンも作って、見知らぬ誰かに渡しやがった!

こんなことができ、更に実行まで移すのはもうこいつ(トゥアール)くらいしかいないじゃないか。まだ会って数時間しか経っていないが、僅か数時間の間に繰り広げられたトゥアールの変態行動の数々に、確信を得た愛香はグイッと倒れているトゥアールを持ち上げ、十八番の技を繰り出す体制へと入った。上半身を倒し、トゥアールの背中に胸を密着、左手を地面とトゥアールの首の隙間に潜り込ませ、手前に引く。首にぴったりと左手がぴったりと絡まったのを確認すると、右手で左手首を掴み、手前に引き絞るようにロックした。

通称『裸絞め』。この技は祖父が武術家で幼いころから稽古をつけられて育ったこともあり、格闘技や関節技の基礎は一通り学んだ愛香の得意技でもあった。

首を絞められてひいひい言っているトゥアールの耳元で愛香が唸る。

「さあ! とっとと白状したらどうなの!? あの子にも変なこと吹き込んで無理矢理変身させたんでしょ!?」

「だから、し、知らないって言って…!」

「いつまでとぼけてんのよあんたはぁ――!!」

愛香の怒りの叫びが駐車場に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

光太郎にとっての誤算は変身したこの姿の能力をしっかりと把握しないまま飛び出してしまったことだろう。全速力で走ろうと地面を踏み入れた瞬間、いきなり足が地面を踏み抜いた。

えっと驚いていると、一瞬で数十メートルの距離を詰め、怪人の目の前へと迫っていた。光太郎は訳も分からず、あたふたと拳を突き出した。それがたまたま怪人の顔面へとクリーンヒットした。

怪人との体格差は倍以上、格闘経験なしの光太郎の細腕一本から繰り出されたパンチなど効くわけがない。けれど、光太郎が纏っている鎧、『空想装甲(テイルギア)』の性能を持ってすれば、現実世界の常識など通用しなかった。その一撃は怪人を後方へ大きく吹っ飛ばし、彼が数分前にブン投げた車と同じように地面に叩きつけられた。

呆然としていた。そこら辺の小学生が放つような弱弱しいパンチ一発で、なんで怪人はあそこまで吹っ飛んだんだ? 分からない、俺の体は何が起こっているんだ。改造人間にでもなってしまったのか?

あー、色々気になることはあるけど、今は時間がない! 早くこの子を安全な所にまで避難させないと! このことは後でまとめてレイチェルに聞けばいい。あいつの人体に影響は無いって言葉を今は信じるしかない。

「あ、ええと、その、君! 大丈夫!?」

少々テンパったが、俺はそのセリフと共に襲われそうになった女の子の顔を心配そうに覗き込み、そして衝撃を受けた。

(なんて幼い…)

何かに怯えているその女の子は幼いの一言に尽きた。身長は120センチか30ほど、髪は赤毛、年齢は小学生ほどか。こんな小さな女の子まで襲われていたのか…嫌でもツインテールの危機が迫っているのだと実感が湧いた。

(それにしても…)

ああ、なんて可愛いんだこの子は! 顔もそうだけど、何よりもこの赤毛色のツインテールが可愛いのなんの! 先っぽの色が朱色になっているのもポイントが高い。もしかしたら今日見た津辺さんや生徒会長を上回るツインテールかもしれないぞ。纏っている服がどこか変だが、それがなんていうのか、健全な女子小学生の色気というものを…。

(あああああー!!)

俺は何か踏み入れてはいけない世界に行こうとしているのを心の叫びで必死に踏みとどまった。…こほん、とにかくだ、これほど凄いツインテールをあいつらがみすみす逃すわけがないだろう。一刻も早く安全な場所に避難させなくては。

「大丈夫?」

…ん? そう言ったはずの自分の発した声にどこか違和感を覚える。何ていうのか…俺ってこんなに声が高かったっけ? 声変わりはとっくの昔に済んでいるはずなのだが。

「う、うん」

疑問はあったが、頷きと共に発した少女の声に安心した俺は、まあいいかと思う。

正体を隠すために声を変えるなんて最近のヒーロー物じゃ良くある話だし、きっとレイチェルが気を効かせてそんな機能でもくれたのだろう。

良かったと俺は笑い、女の子の手をそっと握った。

「じゃあね、君はここから早く逃げるんだ。お家に帰って、鍵を閉めて、お母さんと一緒にいるんだ、いいね?」

「え…」

女の子の顔が曇った。…そりゃあ、そうだよな。この状況で一人ぼっちは怖いに決まっている。でも、これも君の為なんだ。

「大丈夫、ここはなんとかする。だから君は…」

逃げて、そう言おうとした時、頭の中で警告を示すような鋭い反応が起きた。これは単純に何かがまずいとかそういった警告じゃない、もっとこう…何と言えばいいのだろうか。光太郎には自分の外の状況が全て見え、それを一度に見えるような錯覚、そんな状態に陥った。空気の流れが彼に警告を与え、そして後ろから自分めがけて突き出されている拳がはっきりと見えた。

光太郎はそのパンチをかわしながら、右手で女の子の腰を抱きかかえ、さっと振り向いた。

刹那、そこには先ほど吹っ飛ばした怪人が怒りの形相で地面に拳をめり込ませていた。

「ぬうう…貴様、先ほどの不意打ちは効いたぞ!」

まずい、完全に敵意むき出しだ。この子がまだいるのに!

「来い、アルティロイド!」

「「モケ―!!」」

怪人の合図でアルティロイドと呼ばれる戦闘員がぞろぞろと俺の前に現れる。くそ、間違いなく戦闘は避けられない。この子を抱えて戦いなんてできるのか?

「やれえ! そいつのツインテールもろとも、奪ってしまえ!」

この子のツインテールは…渡さない! 渡してたまるか!

襲い掛かってくる戦闘員。前方にいる奴らが素早くパンチを繰り出してきた。普段だったら目で追えないようなその動きも今の光太郎にはひどく遅く見える。

右、左、上! どれも常人が当ればノックアウトは免れないほど鋭いパンチのラッシュ。流石は侵略者、戦闘員の身体能力も並みの人間を超えている。でも、光太郎はパンチがどこにくるのか分かっているように軽々と避ける。

「モケ!?」

戦闘員は焦ったのか、戸惑いの声を漏らす。はは、モケしか喋れないお前らでも焦る感情はあるらしいな。

すると、戦闘員の何人か後ろから飛びつこうとしてきた。攻撃を仕掛けようとしているのかはたまたはがいじめにして動きを封じようとしているのか。

しかしその手には乗らなかった。後ろからの動きを簡単に察知して、さっと腰を落とす。そして体を起こすや空中で体を泳がせている間抜けな戦闘員数人をトンと突き、地面へと転がした。

と、ここで抱えていた女の子が腕の中でじたばたと暴れ出した。

「ちょ、ちょっと…暴れないで」

「離せ! 俺だって戦えるんだ!!」

俺!? この子、この齢にして俺っ子なのか!? くそっ、この子どれだけの属性を持っているんだ!? 幼女で俺っ子にツインテール!? どんだけ欲張りなんだよぉ!!

女の子はどこから取り出したのか、赤色の剣を持っていた。うわ、そんな危ないもの闇雲に振り回しちゃ…!

振り回される剣に驚き、力が緩んだ瞬間を狙って、女の子は腕の中から抜け出し、後方で指示を飛ばしている怪人目がけて走り出した。

「あっ! ちょっと!!」

慌てて追いかけようとするが、それを戦闘員が全力で防ぎに入る。ああもう、どうしてこういう展開になるんだ!

「そこを…どけぇ!!」

光太郎は地面を勢いよく踏み、束になって壁を作る戦闘員目がけて飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

総二は謎の少女に抱えられながらずっと思っていた。俺は何をしているのだと。

俺はツインテールを守るために飛び出したのに、あいつらにビビッて足がすくんでしまった。俺のツインテールに興奮しているその姿に怯えた。

もしかしたらその怪人は、俺自身を映した鏡のような存在なのかもしれない。何も知らない人から見れば、俺はこう見えているのか? 他人から見れば、俺も怪人と同じ存在なのかー?

「大丈夫?」

そう言ってくれた少女は見事な焔色のツインテールをしていた。今の俺の姿を更に成長させて、より美しくしたような彼女は「何も心配するな」と言わんばかりに優しく手を握りしめてくれた。

自分もツインテールの姿をしていることは敵に狙われることになる。それを承知の上で彼女は俺の前に姿を現してくれたのだろう。戦闘員の攻撃も完璧に見切ったような動きで全て避けていた…いや、それは違う。彼女は避けることしかできないんだ、俺を抱えているから。

幼馴染の愛香の祖父が開いている道場で、幾度となく鍛錬に付き合ってきた総二には理解できる。片手を使えない状態で戦うのがどれほど過酷で厳しいものかを。

悔しくなった、俺は何をしているのかと。このまま何もしないで、ただ抱えられているだけだなんて。 愛香の静止も振り切って飛び出してきたのに、このままじゃただのお荷物じゃないか! ここで何もできなかったら、それこそあいつらと同類じゃないか!

だから…俺に力を貸せ! 俺のツインテール!! 俺はあの子の足手まといになる為に変身したんじゃない!!!

その瞬間、自分の脳裏に腕に装着しているテイルギアの情報が脳裏に刻まれていく感覚がした。僅か数秒の間に俺が使える武器やその取り出し方、必殺技のモーションまでを理解する。

そしてツインテールを束ねているリボンを叩き、そこから勢いよく噴出された炎が一振りの剣を生み出した。『ブレイザーブレイド』、総二の手には灼熱の炎を司る両刃の剣が握られていた。

よし、武器は持った。後は俺も戦線に加われば、あの子も反撃できる!

「ちょ、ちょっと…暴れないで」

じたばたと暴れる総二に困ったような声を出す少女。分かっている、ここにいれば、安全だってことも彼女がそれを望んでいることも。でも、そんなこと俺は許せないんだ。俺はツインテールを愛し、彼女もまたツインテールを守るために戦っている。だからこそ、黙って見ているなんて、できない!

「離せ! 俺だって戦えるんだ!!」

そして力が緩んだ一瞬の隙をついて腕の中から抜け、小柄な体を活かし、戦闘員の隙間を縫って走り出した。

そして後ろでふんぞり返っている親玉めがけて、俺はブレイザーブレイドを振り下ろした。

「む!?」

しかし、もう少しのところで斬撃はかわされた。だが剣から迸る炎は怪人の皮膚に斬撃型の火傷を負わせ、怪人は苦悶の表情を浮かべる。

「…おのれ!」

怪人は突き出した掌からビームを放つが、それを軽々と片手で受け止め、ビームを四散させる。そして確信する。

(やっぱりだ…この膜みたいのが俺の体を覆っているんだ!)

フォトンアブソーバー…総二たちが纏うテイルギアには、精神エネルギーの防護膜が覆われている。これがあることで、受けた衝撃を分子レベルまで分解し、極限まで殺しきる。これが全身を覆われている限り、テイルギアには攻撃は効かない。総二は先ほど読み取った情報から、これが体全体に覆われていることに気付いたのだ。

「ふ…」

ビームが消し去られたことに怪人は少しばかりのショックを受けたようだったが、すぐに切り返した。そして怪人は、笑う。

「ふははは、恐るべき奴らだ! 我の顔面に拳を叩きこんだ女に、剣で火傷を負わせた幼女! こんな強者に2人も出会えるとはなんたる幸運の日か!」

それは怪人の心からの叫びだった。今の一撃は直撃を避けただけでもこの威力だった。もし、これが当っていたら? そう思うと武人の血が騒ぐ! そのような表情をしていた。

「我の名はアルティメギルの切り込み隊長、リザドギルディ! 少女がぬいぐるみを抱く姿こそが、もっともときめく瞬間だという信念のもとで戦う戦士! 改めて聞く、貴様の名は何だ!」

「―テイルレッドだ!」

総二は自然と名乗っていた。吹っ切れた表情で、そう言っていた。

「…しかと聞いたぞ、貴様の名を! ここからは顔とツインテールは傷つけぬように配慮するが、多少の怪我は覚悟せい!!」

そして戦いは再開される。怪人は背中のヒレを分離させ、まるでミサイルのように総二めがけて放った。

…だが、その攻撃は駆けだした総二を、テイルレッドを止めるには至らなかった。彼が持つブレイザーブレイドによって、瞬く間にヒレは切り刻まれ、灰になる。そしてその一撃がついにリザドギルディの強固な皮膚を刻んだ。

「ぐうっ!!」

一閃、自分の鱗に綺麗に斬撃が入り、リザドギルティは膝をついた。体を見れば自慢の鱗が熱によって溶け出している。それほどの高温が自分を襲っていたのだ、ぞっとした。そしてあの女の顔面に叩き込まれた一撃。あの一撃が今になって効いてきたのだ。

「とどめだ!」

レッドの声と共にブレイザーブレイドの力が完全開放され、刀身に炎が弾ける。それが見る見るうちにボール状へとなり、リザドギルティへと射出される。

その炎はリザドギルディの前で爆発し、螺旋状に取り付き、円柱に変化していく。それによってリザドギルディは拘束され、身動きが一切できなくなる。

「うおおおおお!!」

そしてテイルレッドは、背中のアーマーから火を噴きだして、リザドギルディィに向けて突撃する。剣もそれに応えるかのように、変形し、炎を最大限に纏っていく。そして、リザドギルディを捉えている円柱を剣が切り裂いた。

これこそがテイルレッドの奥義『グランドブレイザー』…極大の炎で相手を切り裂く必殺技である。

「ぐおおおおお!!」

切り裂かれた傷口からは炎が溢れ、全身は放電し、断末魔を上げる怪物。

「ふ、ふははは…素晴らしい……ツインテールに優しく頬を撫でられ果てる……何の悔いがあろうか! 男子本懐の極みだ!!」

「待て、おい!」

そして拘束している円柱が3倍以上に膨れ上がる。

「さらばだ―――!!!」

そしてリザドギルディは爆発し、散った。その妙な断末魔を総二の耳に残して。

 

 

 

 

 

 

一方、光太郎と戦闘員の戦いも終わりを迎えようとしていた。

「はあっ!」

光太郎は群がる戦闘員を掌を使って、軽く押した。軽く押しただけなのだが、戦闘員はピンボールのようにまとめて吹き飛んで、そのまま光となって消えていった。どうやらある程度ダメージを与えると、勝手に消えてしまうようになっているらしい。

辺りを見渡すと、もうあらかた片付いてしまったのか、戦闘員の姿が見当たらなかった。逃げたのか、それとも全部倒してしまったのか、それは分からない。ただ、喧嘩経験ほぼゼロの俺でもここまで戦えてしまうのだから、レイチェルが作ったこのベルトはとんでもない代物だということは分かってきた。

そしてあの怪人が何もしてこないのが少し気がかりだった。あれほど自分に怒りを向けていたのだから、襲われる覚悟はあったのだが…手下と一緒に逃げてしまったのか?それが一番いい展開なんだけどな。

(とりあえず、あの子を探さないと…)

と、ここでレイチェルから『光太郎!』と通信がかかってきた。動かそうとしていた足を止めた。

『あのリングを破壊して! あれに奪われたツインテールが収められているわ!』

あのリングとは駐車場にオブジェのように佇んでいる金属のリングのことだろう。しかし、光太郎は戦闘の最中に逃げ出した女の子の方がずっと気がかりだった。

「え、でも…俺、あの子が心配で…」

『あいつなら、大丈夫よ! だからリングを破壊して! やり方は怪人の時と同じよ、思いっきりぶん殴って!』

「…おう」

レイチェルの言葉に戸惑いはしたものの、とりあえず信じた。あの子が無事ならば、とりあえずはツインテールの安全を確保しなきゃなるまい。

俺は拳を振りかぶり、リングめがけて思いっきりぶん殴った。

「おりゃあ!」

バキッという金属特有の嫌な音がした後、リングは跡形もなく砕け散った。そのリングは光の粒子状となり、捕えられた少女達に降り注ぎ…彼女たちの髪型は元通りツインテールに戻っていった。奪われたツインテールを取り戻すことができたのだ。

良かった、とりあえずあいつらの作戦は阻止できたってことか。無我夢中だったけれど、俺はなんとか戦えていたらしい。

「…あの!」

と、俺は後ろから声をかけられた。「ん?」と振り返ると、あの赤毛色のツインテールの子が剣を抱えながら走ってきた。どうやら目立った外傷はないみたいだ。あの怪人、どうやら諦めて撤退したらしいな。あー、良かった良かった。

「あ、君…」

俺は大丈夫だったのか、と言おうとしたが言葉を女の子に奪われる。

「あの、ありがとうございます!」

その子はぺこりと、俺に頭を下げてきた。俺は言葉を失った。

「その…俺、あ、いや私、あなたのおかげで立ち上がることができたんです。だから…」

女の子はありがとうと何度も言いながら頭を下げていた。その度にぷらぷらとツインテールが揺れる。うむ、良い光景だ。

(…ありがとうって言うのはこっちのセリフだよ)

俺だって君が襲われていなかったら飛び出していなかったのに、お礼を言われるのはお門違いというのかなんというのか。けれども、その「ありがとう」の一言は光太郎の心にじわじわと染みわたっていくのをはっきり感じていた。…そう、次の言葉が出るまでは。

「ありがとうございます、お姉さん!」

…? お姉、さん? その言葉に違和感を感じ、目を泳がせて…そして光太郎は見てしまった。自分の正面にある車のサイドミラーに映った自分の姿を。

(え…!?)

それが自分自身の姿だと認識できたとき―光太郎は絶句した。

何故ならそこには、元の光太郎とは似ても似つかない、可愛らしいツインテールな女の子が立っていたからだ。

そう、極度の緊張感に支配された光太郎は、緊張が解ける今の今になるまで、自分がツインテールの女の子になっていることに全く気付けなかったのだ。

(…な、何だこりゃああああああ!!!)

そして、それにようやく気づいた瞬間…心の中で絶叫した。

 




ああ、早くギャグ展開に持っていきたい!
感想、お待ちしています!

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