俺、ツインテールになります。 The Another Red Hero   作:IMBEL

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ロボットアニメのアイキャッチってなんであんなにカッコいいんでしょうかね? たった数秒の映像なのに、胸が熱くなってくるんですよねぇ。
ちなみに私のお気に入りは「熱血最強ゴウザウラー」の後期Bパートのアイキャッチです。オーケストラと共に出てくるロボットがカッコいいのなんの!!
…つくづく平成生まれのチョイスじゃねえな、これ。


第41話 約束とツインテール

次の日の昼休み、俺はクラスメイトの男子たちと集まり、謎の集会に参加していた。…というか無理矢理引っ張られたのだが。

購買にパンを買いに行って、教室に戻ったその時、いきなり男子たちに『俺たちは兄弟の意見も聞きたいのだ』と教室の隅っこで繰り広げられている謎の集会に参加する羽目になってしまった。

「では本日の議題を始める」

リーダー格であろうと思われる男子が起立して、指揮を始める。パチパチと何人かの拍手が起こり、そのまま着席した。

「さて、皆も今朝のニュースは見ただろうが…今日の議題はこれだ」

そう言って差し出されたタブレットには、とある人物の画像が映っていた。光太郎もそっとタブレットを見て、即座に理解に至る。というかここにいる誰よりもこの人物には詳しかった。

「今日は新たに現れ、我々に多大な衝撃を与えたツインテイルズ…テイルイエローについて語りたい」

タブレットには脱衣をすませ、優越そうな表情を浮かべるテイルイエローの全身像が映し出されていた。

ゴクリ、と誰かの生唾が呑み込まれる音が聞こえる。俺の正面に座っている小太りの男子の額には玉のような汗が浮かんでいた。この反応だけで、世間が抱くテイルイエロー像がなんとなくだけど察することが出来てしまう。

「まずはこの動画を見て貰いたい…」

タブレットには今朝のとあるニュース番組の一部分を切り取った動画だった。

『えー、現地時刻の午前9時ごろ、ハワイのビーチでアルティメギルとツインテイルズの戦いがありました』

パッと映像が切り替わると、テイルイエローが胸のアーマーをパージした瞬間の映像が流れ始めた。そして砲撃を繰り返しながら次々と脱衣をしていくイエローの光景で映像がアナウンサーへと戻る。

『テイルイエローの不可解な行動に、世間や国会は大いに戸惑っている模様です』

次の映像に切り替わり、そこに出てきたのはなんとこの国の総理大臣だった。どこかで記者会見を開いているのか、多数のマイクが向けられており、悪い意味で注目されていた。

『総理! 既に世界中から彼女について非難を受けていますがいかがなさるつもりですか!?』

『テイルブルーは味方だと野党の反対を押し切って放置した結果が、あの凶悪なツインテイルズですよ!?』

『そもそもあれをツインテイルズと呼んでもいいのでしょうか!? もう何か別のカテゴリーに分類されているような気がすると国民は意見していますが!?』

『遺憾であるでは済まされませんよこれは!』

国会を巻き込んでの話題がこれだ。政治云々よりもツインテイルズか…もうやだな、この国。

「これが今朝やっていたニュースだが…これに続きがあったんだ」

「「「何だって!?」」」

俺以外の男子は大変良いリアクションをしてくれたが、残念ながら俺はそれをする気力が湧かない。というか、イエローの行った行為のほとんどをリアルタイムで見てしまっている俺としては、こういった動画はあまりお目にかかりたくないのだ。

『あはははははははは何かいい感じですわ―――!!』

なんでよりによってそのシーンをチョイスした。

パピヨンギルディを倒し、砂浜で脱衣を行いながら高笑いをするイエロー。それを見ながら絶望顔で落ち込むレッドとファイヤー。

俺はそうしたつもりはないのだが、落ち込んでいるシーンは大変か弱く見えており、余計に哀愁が漂っていた。レッドとファイヤー共に落ち込む光景は大変ショッキングに映し出されていた。

「…以上が動画の全てだ。諸君らの意見が聞きたい」

瞬間、皆の様々な意見がクラス中を駆け巡った。

「レッドたんとファイヤーさんを悲しませるとは…おのれテイルイエロー!」

「それもこれも、テイルイエローって奴の仕業なんだ!」

「なんだって、それは本当かい!?」

「変質者なのかなイエローは? でも直接の被害は加えていないからブルーよりはましなんじゃ…」

「ブルーはほら、怒らせるとマウントポジションで殴り殺すし…」

「辞めろよな、あれトラウマなんだぜ」

皆の意見をまとめると、脱ぐとはいえ比較的まっとうに敵と戦っているからか世間の評価はまだブルーよりかはマシらしい。…限りなく人気がゼロに等しいブルーと比べるのがおかしいと思ってはいけない。

(ああ…本当に彼女の脱ぎ癖、直せるのかなぁ?)

レイチェルと誓った昨日の決意が早くも霞みかけている。何だかもう、イエローが脱がなくなる光景を想像できないでいるのだ。仮に脱がなくなったとしてもイエローの世間に対するイメージを回復させるのにどれ程の時間を要するのか…考えただけでも頭が沸騰しそうだ。

すると突然、教室のドアが開け放たれた。皆、何事だと振り向き…唖然とした。

「失礼しますわ」

「「「せ、生徒会長!?」」」

男子だけでなく、クラスにいる全員が驚いた。勿論、俺もだ。

教室のドアには陽月学園高等部の生徒会長にして皆のアイドル、神堂慧理那会長その人が立っていたのだから。

会長は周囲を見渡したかと思うと、俺と目が合った。そして真っ直ぐにこちらを目指して歩きだし、俺が座っている席の前まで来た。

「お久しぶりですね、丹羽君」

「あ、はぁ…久しぶり、ですね。会長…」

会長と喋ろうとするたびにつっかえてしまう。皆が驚いている中で、普通に親しげに話している自分が何だかこの場にいづらいのだ。だって会長と面と向かって喋るのは随分と久しぶりだし、俺自身も呆気にとられている。

そんなことに気付いていないのか、会長は屈託のない顔で俺へと喋りかけてくる。

「今、お時間はありますでしょうか?」

「…え? あ、その、俺は…いつでも暇ですけれど…」

「では、その…少しばかりそのお時間を貰えないでしょうか?」

会長のこの発言は、クラス中に爆撃を起こした。全員の視線が俺へと向けられ、俺は堪らない気持ちになる。

俺に用があるのなら、放送でもなんでも方法があっただろうに。普通に放送での呼び出しならば、ここまで甚大な被害は出ない。なにせ仕事の一言で済むし、いくらでも言い訳の仕様がつく。

だがしかし、ここに何処か緊張した面持ちで告げてくるというオプションが付属したらどうなる? しかも緊張からか声が若干震えていて、その相手が皆のアイドル扱いを受けている生徒会長だとしたら? 皆の前で話すという場数を踏んでいる会長が緊張する理由とは? そもそもどうしてクラスの中でも地味なポジションの光太郎が生徒会長と顔見知りなんだ?

…考えれば考えるだけ、妄想が捗るだろう。何人かの男子は恨めしそうな顔で俺を睨むが、勘弁してくれ。俺だって何の意図があって、会長に話しかけられているのかが理解できないのだから。

「お、俺…なんですよね? 総二ではないんですよね?」

「はい、丹羽君、あなたに用があるのです」

間違いかと思ったけれど、そうではないらしい。そういえば、何週間か前にもこれと似ている感じのことがあったようなないような…。

「で、では…丹羽君! 今すぐ生徒会室にまで来てくれませんか!?」

「は、はぁ…では、行きましょうか」

会長は焦ったような声をだすと、俺は逃げるように立ち上がり、会長について行くように教室を出ていく。俺がドアを閉めた途端、教室の中は再生ボタンを押したかのように野郎共の悲痛な叫びが聞こえてきた。

「はぁああああああああああああああ!?」

「な、何であいつが…!?」

「おい、情報網を張れ! 何か接点はないか足を洗うんだ!!」

「畜生、リア充は全員死ね!!」

…事が片付いて、再び教室へと戻るのが少し怖くなってきた。

 

 

 

 

 

 

「いい加減に校内での暴力は控えて下さい愛香さん! すっかり有名人になって、私が壁にめり込むたびに修繕に来るDIY研究会の方々の身にもなってください!! 争いは何も生まないんですよ!!」

「あたしだって学校でくらい大人しくしていたいわよ! そもそもあんたが変態的な行為をしなければいいだけの話でしょ!?」

「メスがオスに発情して何が悪いんですか!?」

「開き直んなこの痴女――!!」

昼休み、ツインテール部の部室では愛香とトゥアールはいつも通りの言い争いをしていた。

もう愛香とトゥアールの争いは皆の知る所になってしまったらしく、その影響で壁や床が壊れる被害が出るとすぐさまDIY研究会へと連絡が行くという謎のネットワークが完成されてしまっている。もう校内には彼らの手によって修繕された箇所が何か所もあるが…その内校舎すら壊してしまいそうで恐ろしい。

だが総二はそのいつも通りの争いにツッコむ気力も湧かずに、仏像のように椅子に座ったまま、思考の海に溺れていた。悩みの種は勿論、アルティメギルのことだ。

(昨日のエレメリアン…性格がああだったから良かったものの、敵は確実に戦力を増やしていっている。それに、ダークグラスパーもいるし…どうすればいいんだろう?)

光太郎が言っていた悩む時間はいつ終わりを告げるか分からない。果たしてその時が来るまで自分が本当に納得できる答えは出るのだろうか。

「…はぁ」

面子は揃いも揃ってダークグラスパー討伐にノリノリだし、答えが明白でないのは今の所ファイヤーとそのパートナーのレイチェルだけだし。その最後の希望にすがるしかない今の状況がとても嫌に思えてくる。

総二は頭を抱えながら悩んでいると、不意にトゥアールの声が聞こえてきた。

「あっ、総二様、ズボンのチャック空いてますよ?」

「…うぇ!?」

トゥアールが指を指している方向にしたがって、総二の顔が下を向くと、すぐに焦った。

一体いつの間に空いていたのか、総二のズボンはチャック全開になっていたのだ。

「悪い、今あげるから…」

考えに耽るのもほどほどにしなきゃな、とすぐさまチャックに手をかけるが、何故かトゥアールの手が総二の手に重ねられた。

「あの…チャックくらい自分で上げられるから」

「ん大丈夫ですよぉ! 私がこー、唇でチャックを啄んで…」

何故、手ではなく顔面がチャックへと近づいていくのだろうか。そもそも、他人にチャックを上げるという特殊すぎるシチュエーション、総二自体未体験過ぎた。

だがトゥアールがチャックにたどり着くよりも前に、愛香がトゥアールの頭をボールのように鷲掴みにした。

「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

「あんた今、何したのよ!? あたしはっきり見たんだからね、総二のチャックが独りでに降りたのを!!」

「ひ、っひひひ…ばれては仕方ありませんね!」

するとトゥアールはスッと指と指の間に挟んだ黒い石を見せつけた。

「総二様のチャックには、私が持つこの特殊な石にのみ反応する磁石塗料をたっぷり塗りつけているんですよ!!」

「やめて」

総二が無気力な顔でそうツッコむがトゥアールは聞く耳を持たない。

自分の知らぬ間に近辺にありとあらゆる細工が施されている現状に慣れ始めていることが総二自身恐ろしくなってくる。

「くくく…これで私はいつでも総二様のチャックを下げ放題! あとは転んだふりをして、私の顔を総二様の股間へとタッチダウンさせればぶぉふ!?」

愛香はトゥアールの顔面を持ち上げて軽々と投げ飛ばすと、部室片隅にあるゴミ箱へと頭から落ちて見事なタッチダウンを決めた。…いや、これはファンブルしてしまったとでも言うべきだろうか? もしかしたらトゥアールが次起きたら、頭を強く打ったショックで今以上に陽気な性格へと変わってしまうかもしれない。

「むぐぐ…ですが、愛香さん。あなたは一つミスを犯しましたね? 私の仕掛けたトリックにすぐ気付いたってことは、愛香さんは総二様の股間を常日頃から見張っているという何よりの証拠になります!! エッチ、スケベ、変態!」

「あんたにだけは言われたくないわ!! あたしが常日頃から見張っているのは、あんたの変態的行為よ! あんたはいつもいつもおかしな発明や行動ばかりして…少しはレイチェルちゃんみたいにまともになりなさいよ!!」

「科学者はまともではやっていけないんです!!」

「あんたその言葉を免罪符に全ての犯罪から逃げるつもり!?」

部室全体に見えないゴングが鳴り響き、第2ラウンドの幕は開いた。開始早々、愛香がマウントポジションを取り、トゥアールのお腹をねじ切ろうとするが、残念ながらここでレフェリーストップが割り込む。

「おおう、中々楽しげそうではないか、そこから関節技でも仕掛けるつもりか?」

「せ、先生!?」

その言葉と共にノック無しで部室に入り込んで来たのは、慧理那のお付けメイドにして学園の臨時教員の桜川尊であった。一応、教師というカテゴリーに分類される人物の乱入により、一旦戦いは中断される。

「あ、相変わらずメイド服なんですね」

「うむ、これは私の戦闘服だからな。君たちのテイルギアみたいなものさ」

平然とメイド服姿で職場にいるのはどこかおかしいはずなのだが、そんなこと尊の常識の中ではどうでもいいことらしい。

ちなみに午前中にあった体育の時間でも、尊はメイド姿で教鞭を奮っていた。今日の授業は野球だったのだが、頭にカチューシャを載せてその上からヘルメットを被り、バッターボックスに立ってフルスイングをかますという光景を見せつけてくれた。…ちなみに、そんなおかしな光景をツッコんだのは総二と光太郎の2人だけであった。

「今日はな、お前たちのクラス担任に許可を貰って来たのだ、感謝しろ」

「許可? 何のですか」

「この部活の顧問についてさ。喜べ観束、私がこのツインテール部の顧問になってやったぞ!」

「「「…ええっ!?」」」

珍しく3人でハモり、一斉に尊を見る。顧問が出来るのは嬉しいのだが、まさか色々と問題がある教師の尊が顧問になるとは思わなかったのだ。

「い、いいんですか!? 先生は会長の護衛でしょう!? 顧問なんてやったら会長の側にいる時間が…!」

総二のまともな指摘がクリティカルヒットしたのか、尊は膝から崩れ落ちて諦めの言葉を発した。

「……頼む、私を仲間に入れてくれ。私の本来の役目はお嬢様の護衛のはずなのに、お嬢様がツインテイルズになってしまった今、私は護衛としての役割を果たせていないんだ…今まで以上に自分の居場所がなくなってしまうんだ…」

「そ、そんなことないですよ!?」

「しかしなぁ、しかしなぁ…戦闘員一人倒せない私に価値があるとは思えないんだ…」

本来、尊の教師としての仕事は慧理那の護衛の延長線だったのに、その慧理那が護衛よりも強くなってしまった。一番の仕事が護衛のはずなのに、自分が護衛される側へと回ってしまったこの現状に尊は全力で落ち込んでいたのだ。

更に婚活が上手くいっていないという現状が更に尊を追いつめている。もうすぐ夏が始まり、自分の誕生日の9月がすぐ側に近づいている。30という大台まであと一年と数か月…そんな現実が尊を責め立てていた。

「と、とにかく…落ち着いて下さいよ。確かにアルティメギルの戦闘では劣るかもしれませんけども、会長だって四六時中変身している訳ないじゃないですか。普段の会長はか弱い女の子なんですから、そういう時に先生が頑張らなくてどうするんですか!!」

「お…おお…」

「環境が変わり過ぎて落ち込むのも分かりますが…先生が必要じゃなくなるなんてありえないでしょう? もっとしっかりと自信を持って、頑張りましょうよ!!」

総二のその説得は尊の五臓六腑に染みわたったらしく、尊は何とか落ち着きを取り戻したらしい。

が、ここで総二がうっかり尊へと手を差し伸べたのがまずかった。

「…優しいな、観束君は。私は嬉しふおおおおおおおおおおおおおおう!!」

「!?」

突然、尊が獣の雄叫びのような声を発したかと思うと、差し伸べられた手を掴み、隠し持っていた朱肉に総二の親指を押し付けた。

「げえっ!?」

そしてそのまま流れるように、メイド服のエプロンに仕込んでいた婚姻届に無理矢理拇印を押させようと手を捻ってくる。

「そんなことだろうと思っていたわよ!!」

しかし幸いなことに総二の指が婚姻届に到達する寸前で、愛香がエプロンを蹴り上げ、蹴りの風圧で婚姻届を破り捨てた。

「何!? 津辺君…まさか読んでいたのか!?」

「そーじ!! ダークグラスパーのことで悩むのもいいけど、こういう日常に潜む危険にも意識を向けて! あんたお人よしで騙されやすいんだから!!」

「くそっ、観束が私の求婚を断るのは強気な大人の女ということを前面に押し出し過ぎたのが原因だと思って、弱気な大人へとアプローチを変えてみたのだが…駄目だったか!!」

残念ながら、どう考えてみてもこの一連の流れは求婚とはいわない。世間一般では犯罪というのだ。

そんなロマンティックなカテゴリーに入れていいのかと、総二は赤インクまみれの右腕を眺めながら、乾いた笑みを浮かべていた。

「黙っていれば求婚求婚と…! いい加減にしてください! 部室出禁にしますよ!?」

「いいではないか、これくらい許してくれ! お前たちは若さという武器があるではないか! 若さは後ろを振り向かなくてもいい10代にだけ与えられた最強のアドバンテージ! 20代の私には振り向きたい物事がいっぱいで胸が張り裂けそうなんだ!! 10代の女は20代の女に優しくする義務があるんだ!!」

遂に開き直った尊の反論に、何故かフリーズしてしまったトゥアール。

「? どうしたんだトゥアール君? 随分顔色が悪いようだが」

固まってしまったトゥアールの顔を覗き込むように近づいて来た尊に、トゥアールは尻餅をつくレベルで後ずさる。

「! び、美白なだけです! 最強の10代、染みひとつないすべすべの肌です! ここに何かしらの白い液体がつくと凄く映えると思いませんか総二様!!」

「そ、そうかな…?」

よく分からないことを口走ったトゥアールを残念そうな目で見る総二。もう今に始まったことではないが、発言が女子高生のそれじゃない。

「まあとりあえず、顧問になったのは本当なんだ。よろしく頼むよ」

さっきの行為なんて気にするな、とでも言っているようにカラッとした笑みを浮かべる尊。

総二もさっきの一連の流れさえなければ素直に喜べるのになぁと思いながら、赤インクで滲む右手をティッシュで拭きとった。

 

 

 

 

 

 

尊がツインテール部の顧問になったということは、ツインテイルズにとっても歓迎すべきことだったので皆、喜んで肯定した。

というのも、ツインテール部の活動内容はツインテイルズの活動内容となる為、おいそれと一般人に公表できないでいたのだ。その為、事情を知っている尊が顧問に収まってくれたことは大変喜ばしい事だった。

尊は椅子に座ると、部室に備え付けられているテレビをつけた。丁度、お昼のワイドショーが放送されており、テイルイエローの話題が映ったテレビを見て、途端に渋い顔をする。

「早速顧問として、指摘したいのだが…お嬢様の戦い方はどうにかならんのか。今朝、ニュースを見て、お嬢様はだいぶ落ち込んでいたのだぞ」

「…そんなこと言われましても、私たちはあの戦い方を強制している訳ではありませんし。本人の潜在意識に起因していることですので、もうどうしようもありませんよ。慧理那さん本人が脱ぎたくて勝手に脱いでいるだけなんですから」

トゥアールにオブラートに包むという考えはないらしい。ドストレートな説明だけを言うとパソコンへと視線を落とし、尊もまた肩を落とした。

「…反動、なのかもな。今まで厳しく自分を律してこられたから、のびのびと出来る場が出来たことでそれが戦い方へ影響を与えているのかもしれない」

その結果、目覚めてしまったのが脱衣とドMとは、誰が予測できたであろうか。

『レッドとファイヤーですが、やはり現地の人たちにも絶大な人気が…』

と、ここでテレビの映像が切り替わり、大勢の外人に囲まれる2人の映像になる。

『のー! ノーセンキュー!!』

必死に訴えかけるレッドだったが、矢継ぎ早に大勢の人々に囲まれている。そして金髪のお姉さんに囲まれながら、自慢のツインテールをペタペタと触られていた。レッドも何故か、お姉さんのツインテールを触っていた。

『駄目です駄目です!!』

泣きそうな顔のレッドを何とか助けようと、ファイヤーが必死で人ごみをかき分けて近づくも、結局2人揃ってもみくちゃにされるだけであった。

「あんた何、パツキンのツインテール触ってんの!? やらしいわね!」

くわっと目を見開いて、テレビを指さす愛香。不当な言いがかりっぽく聞こえる発言ではあったが、さっきの一件があった為か、きつめの口調で叫んでいた。

「…だって、触って欲しいって、お願いされたから…わざわざ日本語で」

「はあ!? あんた、女が()れって言ったら誰でも()るの!?」

「…ルビ、おかしくないか?」

今や海外でもツインテールは流行っており、ツインテールにする外人が増えているらしい。

どうやらツインテイルズのツインテールに触れば、願い事が叶うというよく分からない噂が広まっており、レッドのツインテールが触られるという行動はこれが関係しているらしい。

「そもそもそーじも簡単に知らない人のツインテール触っちゃ駄目よ! 海外なんてコンビニでコーラ買う感覚で簡単に裁判吹っかけるんだから!!」

また愛香の心配性が…と総二は幼馴染を見る。

「…あのさ、テイルレッドの時、俺は女なんだぜ? しかも年端もいかない幼女だし…いくらなんでも詐欺目的なんてありえないじゃないか」

「…」

すると愛香は自分のツインテールの毛先を摘んで、そっぽを向いてしまった。そういうことを言いたいんじゃないって顔をする。

「べ、別に…知らない人の触るのより、あ…あたしので充分でしょ…」

「へ?」

「な、な、何でもないわよ!!…テレビ、消すわよっ!!」

ぼそぼそっと愛香が何かを言った気がしたが、残念ながら総二には聞こえなかったらしい。

愛香は顔を真っ赤にしながらテレビの前まで歩いていくと、何を思ったのか手刀を画面に突き刺した。

「何してんだお前はああああああああああああああああ!?」

「あ…!」

愛香もハッと気づいて手を引き抜いたが、時すでに遅し。備品のテレビは早くもご臨終となってしまった。

どうやらテレビのスイッチを切ろうとしたらしいいが、愛香が止めたのはテレビの息の根らしい。照れ隠しで行った行為はとんでもないことになってしまった。不幸中の幸いは突き刺したテレビが薄型だったことで愛香の手に損傷を与えなかったことだろうか。

「その…頑張って直すってファイヤーやそのパートナーも言っていましたし、俺たちも出来るだけお手伝いしますから…」

何とか総二は慧理那の脱衣行為を直して見せると宣言すると、尊は感謝の表情へとなる。

「済まない」

尊はスッと手を指し伸ばして握手を交わそうとするが、尊の空いている手にはしっかりと朱肉が握られているのを総二は見てしまった為、全力で断った。

「…で、今日はそのお嬢様のことで君たちに相談があってな」

「相談?」

「ああ」

尊はそっと体勢を正し、憂鬱そうなため息をついた。

「実はここのところ、神堂家ではお嬢様の生活態度が問題になっていてな。奥様がお怒りになっているのだ」

「奥様って…確か会長のお母さんってこの学校の理事長でしたっけ?」

いつの間にか椅子に座っていた愛香は尊に尋ねると、「その通りだ」と首を縦に振った。

…聞けばこういう事らしいのだ。

慧理那がツインテイルズの活動を始めるようになってから、無断外出などが増えていることを慧理那の母はあまり良く思っていないらしいのだ。事情を説明すれば分かってもらえるかもしれないが、ツインテイルズの活動を公に出来る訳もなく、空白の時間が増えてしまっている。

それに敵はいつやってくるか分からない為、遅くまで無理して起きるようになってしまっているらしい。朝は頑張って自力で起きているが、無理して夜更かしをするようになってからは睡眠時間もまともに取れてなく、生徒会の仕事に身が入っていなくなってしまっているのだとか。

「そういえばこの間のパピヨンギルディの時も、眠そうにしていたしな…」

「うむ、慧理那様も頑張ってはいるのだが…やはり頭の中はツインテイルズのことでいっぱいになっている」

つまりはツインテイルズのせいで生活サイクルに乱れが生じ始めているのだ。

だが、それに反論したのは意外にも愛香だった。

「あの…先生? 確かに最初は辛いかもしれませんけど、あたしだって最近は慣れてきているんですよ? 会長もまだ日が浅いから慣れていないだけだと…」

「ところが、そうも言っていられないのだよ」

申し訳そうに愛香の言葉を遮る尊。何故か声のトーンが暗くなっている。

「ここからが本題なんだ。この先は神堂家の個人的な問題なのでな、他言無用で頼むぞ。…そうだ観束、念のためにこの機密保持の誓約書にサインを頼む」

スッと総二に差し出された誓約書には、『婚姻届』というひどく見慣れてしまった3文字がぽつんと見えた。…勿論、総二は自分への信頼を担保に丁重なお断りをした。最近、日常にありとあらゆるトラップが仕掛けられ過ぎで、神経が過敏になっている気がする。特にあの3文字には。

「…実はな、神堂家の女子は18歳で必ず結婚するというしきたりがあるんだ」

「「「ええええええええええええええええええええええ!?」」」

尊の口から出た言葉に、全員が驚いた。男の総二は当然だったが、トゥアールと愛香も結婚というワードへの反応は段違いだった。

「ちょ、ちょっと待って…そんな漫画みたいな掟がこの21世紀の世の中に存在していただなんて…」

「信じられないかもしれないが事実なんだ。神堂家の長女は16歳で結婚相手を探し、17歳までにそれを見つけ、18歳の結婚が訪れるまで共に過ごすというのが慣例になっている」

奥様もこの掟に従って結婚したのだ、と説明を加えたが全員、にわかには信じられない。愛香はともかく、あのトゥアールですら半信半疑のまなざしで尊を見ていた。

「…あなたまさか、適当な事を言って総二様の童貞を奪おうとか考えているんじゃ」

「!!」

その瞬間、尊はエプロンの中から何かを取り出し、トゥアール目がけて飛ばした。幸いにも飛ばした何かはトゥアールの真横へと飛んで行ったが直後、スパッという何かを引き裂いたような音が聞こえる。

皆、恐る恐る後ろを見てみると、後ろにあった窓ガラスが鋭利な刃物で切断されたような跡が見えた。ついさっきまで傷一つなかった窓ガラスが、見事に一刀両断されていたのだ。

「私の婚姻届に誓って、それはないぞトゥアール君… 私は話を膨らますことはしても、嘘は決して言いはしないのだ!!」

「はいいいいいいいいいいいいい!!」

トゥアールは尊に見事な敬礼をして見せた。目を血走らせながら第2射をいつでも放てるように婚姻届を構えている尊の姿を見て、ようやく身の危険を感じたらしい。

そう、尊はエプロンから婚姻届を取り出して、それを投げ、ガラスを切断して見せたのだ。コンクリートに突き刺さるほどの威力を秘めた一撃だ、窓ガラスなど屁でもないだろう。

…もう尊は、婚姻届を武器にしてアルティメギルと戦えばいいのではと総二は思ったが、その考えは心の中だけに留めておく。不用意な発言で、こっちに矛先が向けられるのは何としても避けたかった。

「実は慧理那様は、学業や生徒会長を頑張るという条件付きでこの掟を先延ばしにしてもらっているのだ。奥様も自分の経験を踏まえて、無理に掟に縛る必要もないのではと考えられていてな…」

「はぁ…」

「だがここ最近の慧理那様の姿に、奥様はたるんでると感じているらしい…次々に見合いの話を取りつけていてな、私は少し危機感を感じているのだ」

「あー…」

「私が結婚するよりも前に仕える主人に先を越されてしまいそうなのだよ…!!」

尊以外3人は、どうして尊が暗いトーンで話していたのかが分かった気がしたが、それでも信じられない気分だった。

「なんか怪物と戦っているよりも、非日常な感じがするわ…」

「俺もだ」

『事実は小説よりも奇』という言葉の意味がようやく分かったような気がした。僅かながら浮世離れした現実の方が、振り切った非日常よりも実感が薄いせいだろうか。

「まあ、その見合い話も一つくらい私に回してくれればいいのだが…まあ、君たちにはどうでもいい話だったな…!」

全然どうでもよくなさそうな顔でそう呟くと、尊は総括に入った。

「まぁ、そういう訳なんだ。私はメイドという立場だが、慧理那お嬢様の悲しむ顔は見たくない。無理矢理された結婚ほど、虚しいものはないからな。だから君たちにも、慧理那様が早くこの生活に慣れるように協力して欲しいのだよ。奥様が手を引いてくれるその時までな」

あなたがそれを言うのか? と思ってしまったが、一同は何も言わずに尊を見つめる。

「分かりました」

「同じツインテイルズだし、出来る範囲でなら協力くらいするわよ」

そして尊の視線がトゥアールへとロックオンされた。

「…お嬢様には手を出さないでくれよ? 結婚は『男子と』というのが決まりなのだからな」

尊の警告にトゥアールは無言の笑顔を返すだけだった。…どうして頷かないのだろうか。

「…ほう?」

「あっ、勿論分かっていますよ!!」

尊が追加分だと云わんばかりに婚姻届を懐から数十枚取りだそうとしたその瞬間、トゥアールはようやく頷いてくれた。

 

 

 

 

 

 

会長と俺は生徒会室へとたどり着いた。

「どうぞですわ」

「はぁ…お邪魔します…」

誰もいない生徒会室の中に進み、勧められるままに適当に空いている席へと座る。会長も近くの席へと座り、椅子だけ方向をずらして互いに向き合った。

「「……………………」」

俺たちの間には一切の会話が無く、ただただ無言のまま、時が過ぎていく。他の教室やら廊下の声が遠く聞こえるせいか、異様な空間が形成されている気がしてならない。

一体、何故会長は俺を呼び寄せたのだろう。放送とかではなく、面と向かって。それが不思議でならなかった。

そもそも会長に間近で会ったのは2回だけなのに、声をかけられるほど接点はないはずなのに。

1回目は夕方の廊下で2人っきりで。ベルトを見られたというハプニングはあったものの、何とか誤魔化した。

2回目は総二と一緒に廊下での遭遇。何か俺に用事があったらしいが、それが何なのか分からないままで終わってしまった。

こうして見ると、光太郎と慧理那の接点は驚くほどない。まだ総二の方があっているだろう。

すると、会長は決心したような顔で俺の目を見てきた。

「その……ですね。突然だと思うのですが…一つ聞きたいことがあるのです」

「俺にですか?」

「ええ、あなたにです…」

そして会長は息を吸い込むと、逃がさまいと制服の袖を掴んできた。

「!?」

「丹羽くん…あなたはテイルファイヤーのベルトを持っていましたよね?」

「え、ええ…」

光太郎はギクリとした。まさかあの話を今更掘り返されるとは思っていなかったのだ。

「まるで本物みたいでしたわね…」

「…!」

会長の真剣な目に、俺の鼓動が早まる。

「教えて…くれませんか?」

まさか…会長は気づいているのかだろうか? テイルファイヤーの正体が…俺だということを。

表情を悟られないように顔を強張らせて、手に汗が滲む。背中から汗が噴き出る感覚を感じつつ、汗まみれの手を強く握りこんで見られないのようにしたが、なんと次に会長が発した言葉は俺の予想を超えるものだった。

「あのベルトを何処で手に入れたのか私に教えてくれませんか!?」

「…へ?」

「いえ、分かってはいます! あれは丹羽君が苦労して手に入れた大切な物…それをくれとは言いません! ですが、せめて…せめてあれが何処で手に入れたのかだけは私に教えてくれませんか!?」

「????」

そう力弁する会長だが、俺は話が一向に見えてこない。

「私、町中のおもちゃ屋を探したのですが一向に見つからなくて…終いには本当にあるのかと聞かれてしまったのです! ネットで見ても似たような商品の情報は出ても、あのベルトにはどうしてもたどり着くことが出来ずにいるのです!!」

「……………えーと、つまり…あのベルトの入手経路を知りたいってことなんですか?」

「! そうです、そういうことなんです!! 生徒会長なるものがこんなくだらないことを聞くのに放送で呼び出すのはあまりにもマズイと思いまして…こうしてここに来てもらったのです!!」

「ああ、そういうことだったんですか…」

ようやく話が見えてくると、光太郎はドッと疲労感を感じた。つまり会長は俺のベルトの入手先を知りたいってことなのか。確かにあの時、カバンから転がった本物のベルトを『限定品の玩具ベルト』として誤魔化したが、まさかあれを覚えていたのか。

だからわざわざ生徒会室に俺を呼んだのか。確かに生徒会長が玩具の入手先を堂々と聞くのは恥ずかしいだろうし、ここならば誰にも聞かれる危険もないだろうし。

(けど…これはどうすればいいんだろう!?)

だが、本当に困ったことになった。確かにあのベルトは会長の言う通り、本物そっくり…というか本物なのだが、まさか『そうです、俺がテイルファイヤーなんです! あのベルトも本物なんです!!』と言う訳にもいかない。そんなことしたら、俺はもう生きていけない。

それに何処で手に入れた、と聞かれてもあれはレイチェルが作ったものだし、お金を出して買えるものではない。

ここで言わないという手段も取れるが、それに会長が怪しみ、万が一自分の身辺を調査されることになって正体が露見するようなことになれば…。

「……………………………………………」

「ど、どうしたのですか!? 確かに、言いづらいことではあると思うのですが…!!」

渋い顔をする俺は、会長はどんな印象を抱いているのだろうか。

(ここは…! 言わないより…!)

そして俺は一世一代の大勝負に打って出ることにした。普段はあまり信じない神様に本気でお願いをした。本気でどうにかしてくださいとお願いした。嘘は苦手であったが、自分の身辺の為にはやるしかなかった。

「その…まず、俺は会長に謝らなければなりません…」

「えっ?」

「嘘を、ついていたことをです…」

光太郎は渋い顔を崩さずにそう語るが、会長はそんなことよりも肝心なことを話せと、促していた。

「あのベルトは、本当は売ってなんかいないんです…俺の地元の友達が俺に作ってくれた物なんです…」

「丹羽君の…お友達がですか…」

「はい。そいつはそういった物を作るのが凄く上手くて…俺がテイルファイヤーのことが大好きで、そいつに作れるかって聞いたんです…」

俺は手を握り絞める力を強くしながら言った。

「そいつ、気難しい奴で。俺が何度も頼んで、ようやく腰を上げたほどの頑固者で…。作って渡された時も、売っているって言えっていう程で…」

「…だから、あの時…」

「はい…俺は嘘をついたんです…」

俺は、会長の目を正視できなくなって、視線を逸らした。

「あれは、テイルファイヤーのベルトは…! どこにでも売っていないんです…! 期待させるような事を思わせてしまって、申し訳ありません…!!」

俺は嘘をついた罪悪感を隠す為に、会長に頭を下げた。

「! そ、そんなこと…ありませんわ! 頭を上げて下さい!!」

会長の反応を見て、ますます強い罪悪感を感じるが、今となっては嘘を突き通すしかなかった。

「…そうですわよね、友人から貰った大切な物…そんなものが市販な訳がありませんわよね…」

「…」

俺は怒られるかもしれないと思った。嘘をついたことや会長に変な期待を持たせてしまったことでだ。でもこれで嘘は完了した。まさか会長も地元の友達にまで調査を仕掛けたりはしないだろう。多少の罪悪感はあったが、俺の身辺の為だ。致し方が無い。

(…と、とりあえずは…上手くいった…か?)

だが、会長の次の言葉はまたもや俺の予想を超えた。

「で、では丹羽君!? そのお友達にもう一つ、ベルトを作ってくれるかお願いできますか!?」

「!?!?」

「材料費や機材などはこちらでいくらでも用意いたしますわ!!」

俺が起こした嘘は、更なる嵐を巻き起こした。下から覗き込んでくる会長の顔は本気の顔であり、俺の嘘を完全に信じ込んでいる目をしていた。

「あ、あ、あ…」

「…駄目、ですか?」

くいっと会長は小首を傾げながら、俺を見てきた。その瞬間、会長のツインテールがふわぁっと揺れた。

(!!!)

その途端、俺の身体が急激に熱くなってきた。あんなすばらしいツインテールをしている会長に俺はお願いされている、上目でお願いされている…!

その状況に俺の心のブレーキは正常に働かず、何を思ったのか反射的に首を縦に振ってしまった。

「! 本当ですか!?」

「!?」

そして自分がやった行動に、あっ!? と背筋が冷たくなったがもう遅い。会長はすっかり、俺が友人にベルトの制作を頼んでくれると信じてしまっている。

(あいつ…本当にやってくれるかなぁ?)

今夜、レイチェルに駄目元で頼んでみるつもりだが、果たして取り合ってくれるかどうか。頼んでくれるかもはっきりしていないのに、何故俺は軽々と引き受けてしまったんだ…。

「あ、あの~」

「はい?」

「…もしかしたら断られてしまうかもしれませんけれど…そこは覚悟していてくださいね?」

「ええ、分かっていますわ」

ああ駄目だ。会長の満面の笑みの前では、あれは嘘でしたとはとても言えない。俺は、最低限の保険をかけることで精一杯だった。

「ではこちらが私の連絡先ですわ!」

そう言って渡されたのは会長のメールアドレスと電話番号が記載されていたメモ用紙だった。本当ならば泣いて喜ぶべきなのだろうけれども、今の俺にとっては呪いのアイテムか何かのようにしか感じなかった。

「あ、ありがとう…ございます…」

そう言うのが、俺の精一杯の行動だった。




Q.「愛、愛ってなんだ…」
A.尊「ためらわない事さ!(婚活における犯罪すれすれの行為に対して)」
総二&光太郎「やめて」


さて、久々に出てきた飢婚者さん、また出番が無いかもしれないのでここで大暴れさせてみました!! …この人が教鞭振るっている光景がまるで想像できないのはどうしてなのだろうか。
では次回もお楽しみに!!

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