俺、ツインテールになります。 The Another Red Hero 作:IMBEL
同時に駆けだしたブルーとファイヤーを見ながら、リヴァイアギルディは心の底から楽しんでいるような笑みを浮かべた。これこそ自分が待ち望んでいたような戦いだった。
決して折れず、何度も立ち向かってくるツインテールの女子。それと戦えることこそ戦士としての誇り。そしてその相手は最強クラスの人間ときたものだ。アルティメギルの戦士として、これほど心が躍る展開はそうそうない。しかも共闘する相手が巨乳と貧乳。対立するはずの両者が一時的に手を取り合って戦うとは…。
「だから人間は…面白い!!」
リヴァイアギルディは尻尾を後ろに引き、ファイヤーの胸に振り出した。だが、ファイヤーは自分の胸に当たる寸前でそれを掴み、なんとか地面を踏ん張り、尻尾を抑える。そして共闘相手に向かって叫んだ。
「今だ!」
「言われなくても!」
ブルーはぶっきらぼうにそう返すと、腰を捻って、リヴァイアギルディの首が千切れんばかりの右ストレートをお見舞いした。
「ぐぬぅ!?」
その一撃にリヴァイアギルディは数歩よろめいたが、何とか踏ん張り、喘ぐように息を吸い込む。
「まだだぁああああああああ!」
「!」
その咆哮と共に強烈な振動波が巻き起こり、接近していたブルーを吹き飛ばす。ブルーは天井へと転がりながら飛んでいき、腐った屋根を突きぬけて屋外へと姿を消した。リヴァイアギルディはブルーを追撃しようとするが、ここで尻尾に猛烈な痛みが走った。振り向くと、ファイヤーが尻尾を踏みつけて、地面へとめり込ませている光景が目に入った。
「貴様!?」
「俺を、忘れちゃ困るな、リヴァイアギルディ!!」
尻尾を踏まれたことの痛みで一瞬動きが鈍ったリヴァイアギルディを見逃さずに接近し、拳を振りかぶる。
「その手はくわんぞぉぉぉぉぉぉ!!」
リヴァイアギルディもまた、ファイヤーが先制攻撃を仕掛けてくると理解し、拳を握りしめる。
「おおおおおおおおおお!!」
「おおおおおおおおおお!!」
うねりを上げるファイヤーの拳と属性力を纏ったリヴァイアギルディの拳が空中で交差する。互いの拳は火花を散らしながらすれ違い、全く同じタイミングでそれぞれの顔面へとめり込んだ。
「「!?」」
そして強烈な属性力同士のぶつかり合いで衝撃が走り、両者共に地面へと叩きつけられるが、すぐさまファイヤーが立ち上がる。相手のダメージが消える前に立ち上がり、追加攻撃を浴びせる。これも立派なカウンターの一種だ。
「このっぁっ…!?」
…だが、その途中で悲鳴と共にファイヤーの片膝が折れた。リヴァイアギルディの奥義と猛攻、そして先ほどのクロスカウンターの衝撃で遂にその体力が底をつこうとしているのだ。…いや、むしろ、ここまでよく持ったほうと言えるだろう。
そして、その隙を逃すほどリヴァイアギルディも甘くはない。
「ふ…遂に貴様のツインテールもタネ切れか!?」
リヴァイアギルディは不敵に笑い、尻尾が鞭のようにしなってファイヤーの胸を打った。
ファイヤーは「ごふっ」という声を漏らして、吹き飛んだのと同時に、ブルーが工場の窓を突き破って戻り、まっすぐ両足でリヴァイアギルディの胸の真ん中を蹴った。
「!?」
今度はリヴァイアギルディが吹き飛ぶ番だった。大量の水が入ったタンクへと突っ込み、何百リットルものの汚水がリヴァイアギルディに襲い掛かる。
ブルーは横たわっているファイヤーに駆け寄ると、苦しそうに歪めるその顔を覗き込んでくる。
「ゲホッゲホッ…!!」
「あんた…その顔…」
咳き込むファイヤーの左頬に、誰かに殴られたような跡が見えた。そしてブルーはすぐさま、ファイヤーが何か無茶をしたのだと察した。そしてまたファイヤーも自分の頬にブルーの視線がいっていることに気がついた。
「あ、はは…少し無茶しちゃいまして…」
「~あんたね! わざわざ顔でパンチなんか受けるんじゃないわよ!!」
笑ってごまかそうとするファイヤーに苛立ったブルーがぺちんと頭を叩いた。流石のブルーも目の前にいる同年代の女子が顔面パンチを受けたことにはいい気分をしなかったらしい。ブルーはファイヤーのことを嫌ってはいるものの、自ら傷つきやすい戦い方をするファイヤーを見逃すほど薄情ではなかった。
「あのね…あんた、もう少し…!」
だがブルーが最後まで言い終わることなく、勝負は再開される。尾の先端から射出されたビームが立ち止まった二人を襲う。防御手段がないファイヤーは逃げながらも攻撃の隙を伺うが、ブルーは
「属性玉、
すると、ブルーはとぷんと地面へと潜り、地上から姿を消した。その突然の光景に戸惑うファイヤーであったが、リヴァイアギルディにはその光景は見覚えのある物であった。
「その技は…!」
それはドラグギルディの部隊にいて、ブルーが倒したタイガギルディの得意技であった。
「だが…貴様のやろうとすることはすべてお見通しだ!!」
リヴァイアギルディは右拳を高らかと掲げながら、地面に向かって狙いを定める。
「まさか…地面を崩落させてブルーを生き埋めにする気か!?」
「気付いたところで…遅い!」
リヴァイアギルディの強靭な拳が振り下ろされ、ビリビリと振動波が襲い掛かる。
「
その攻略法は振動波と共に繰り出される強力な一撃は、床下へ逃げたはずのブルーを床ごと生き埋めにしようという大胆なものだった。だが…。
「甘い!」
その声と共に、ボロボロになりながら地面から出てきたブルーは、その勢いを殺さずにハイキックを先ほどと同じように蹴りをぶち込んだ箇所へと叩き込んだ。
「ぬがぁ!?」
属性力の反動と再度蹴り込まれた箇所の痛みで顔を歪ませるリヴァイアギルディであったが、ブルーの攻撃は止まらない。
槍を取り出し、再度、ヒットアンドアウェイ攻撃を仕掛ける。槍を振り回し、突きや払いで翻弄し、隙あらば勢いよく足を振りかぶり、足技を放つ。パワーではリヴァイアギルディが圧倒的に有利であるが、ブルーはスピードや距離、間合いを優位に取り、ペースを自分側へと持っていっていた。槍を掴まれそうになるとすぐさま素手での戦闘へと切り替え、リヴァイアギルディを翻弄していく。
だが、リヴァイアギルディもやられっぱなしではない。なんとか接近してブルーの身体を掴むが、ブルーもまたそれを待っていたとばかりに技を構える。
「さっき言ったでしょ、
ブルーはそう言いながら、リヴァイアギルディが向かってきた勢いを利用して、逆に背負い投げを決めた。リヴァイアギルディは宙高く放り投げられ、無防備となる。
「おりゃああああっ!」
「がぁおおあ!?」
そしてファイヤーもまた、勢いよくアッパーをリヴァイアギルディへと叩き込み、追加のダメージを与えていく。
ふうっ、と息を吐きながら、ブルーの下へと戻るとブルーはあっけにとられたような顔をしていた。
「満身創痍の人間が放てるパンチじゃないわね…あんたゾンビかなんか?」
「あはは、俺にはこれしかないもんですから。それに、あいつを倒して、ツインテールも守らなきゃいけませんからね」
「…あんた、やっぱり似ているわ」
「え、誰とですか?」
「…あー、何でもないわ」
妖怪でも見るような視線で俺を見るブルーであったが、まだ俺は動ける。倒れる訳にはいかない。まだ負けられないし、頑張らなければならない。
あいつが倒れるその時まで、戦わなければならない。
「さあ…もうひと頑張り、行くわよ!」
「はい!」
そう言葉を交わし、奮い立たせると、再度俺たちは走り出した。結構…いいコンビなのかも。この戦いを通しながら、そう感じ始めている俺であった。
※
そしてこの戦闘を見ているレイチェルもまた、驚いていた。
「2人の息が、合ってきている…?」
画面の中ではブルーとファイヤーが同時にリヴァイアギルディへと蹴りを放つシーンが映っていた。二人の息は最初の戦闘時と比べて、格段に上がっており、蹴りを入れるタイミングが綺麗に一致していた。そして、2人のギアもまた、その出力を上げ、その動きを更に洗練したものへと変えていく。
「どういうこと…?」
しかめっ面をしながら、ブルーとファイヤーのギアのデータを見比べる。敵に拳をぶつけるたびに、蹴りを放つたびに2人の出力は上がっている。まるで、一歩一歩進んでいくかの如く、リヴァイアギルディを追いこんでいくたびに、2人のギアはうねりを上げる。そしてその度に、軽い閃光が辺りを駆け抜ける。
「まさか…
工場内で巻き起こっている現象に、信じられないような口調でそう呟いた。
ブルーが付けているギアに試験的に内蔵され、また自分が開発したテイルドライバーにも組み込まれているそのプログラム。奇しくも今あの場には、トゥアールがかつて使っていたギアと、そのパートナーが開発したギアが並んでいる。しかもギアに内蔵されている属性力は互いにツインテール属性。これらの要素が2人に何らかの影響を与えているのか?
「…はは」
レイチェルはたまらず、乾いた笑いをした。目の前で起こっていることが信じられないのと、認めたいと思う心がぶつかり合って訳が分からない状態にいるからだ。
(何が、どーなっているのかしら…)
もしこれがトゥアールならば、すぐに理解できるのだろう。仮にもかつて戦士だった彼女ならば、理屈ではなく感覚で目の前の現象に簡単に納得できるのかもしれない。でもレイチェルには、どうしても納得が出来なかった。
共闘する相手がレッドやイエローならこの現象は理解できる。あいつらならばファイヤーと仲が良いから。でも何故、仲が悪かったブルーとこのような現象を引き起こせるのだ?
「まさか…2人のツインテールが…そう、させているの?」
2人の意志と思いが、目の前にいる敵を砕かんと思うたびに共鳴し、力を上げている。あり得ない話かもしれないが、それは最強の属性力であるツインテールだからこそ、成し得る現象なのかもしれない。
『『はああああああああああああああ!!』』
2人の声が重なり合い、互いの拳が交差して、リヴァイアギルディを吹き飛ばす。その2人の動きはまさにドンピシャであり、2人は気づいていないようだが、その拳の動きもまた、綺麗にツインテールの形を描いていた。
「あたし…ほんとに…とんでもないシステム、作っちゃったかも…」
あはは…と笑いながら、レイチェルは急いで敵のデータと自分たちのデータの見比べを始めるのだった。
※
「おおおおおおお!」
「だああああああ!」
ファイヤーが蹴り上げ、リヴァイアギルディを吹き飛ばす。そして飛んできたリヴァイアギルディをブルーが殴り、空中へと浮かす。
「「はあっ!!」」
そして2人同時に蹴りを繰り出し、リヴァイアギルディを工場内の器具へと叩きつける。
「ぬお、うっ…!?」
すぐさま立ち上がろうとするが…遂にその膝を完全に地面へと付けた。
「はぁ…はぁ…」
「ぜぇ…ぜぇ…」
だが、ブルーもファイヤーも同じように限界であった。いや…この場にいる全員がボロボロであり、満身創痍だった。もう勝負も長くは続かないであろう。
「何故、だ…」
「?」
「何故…貴様らは…それほどまで…共に、戦えるのだ…!?」
ぜいぜいと肩で息をしながら、リヴァイアギルディはファイヤーたちへと問いを投げかけた。それはこの戦いが再開してから、ずっと疑問に思っていたことだった。
(何故、こいつらが共に戦う?)
そう、目の前にいる2人は戦う目的も意思も違う。…それこそ決して道が交えることが無かったリヴァイアギルディとクラーケギルディのように。
ブルーは愛する男と憎む巨乳の為に。ファイヤーはツインテールの為に。互いに掲げる信念も違えば、思想も、ましてや性別も違う。本来ならば、全く息が合わない2人であるはずなのに、何故、これほどまでに肩を並べて戦うことが出来るのか?
「悪いけど仲は良くないわ。けど…」
「確かに相性は良くないかも知れない。でも…」
バラバラのことを同時にリヴァイアギルディに話すブルーとファイヤー。だが…。
「「あんたを倒す、それだけは変わらない」」
二人の声は最後の部分だけは綺麗に重なり合った。それが、2人が共に戦う理由でもあった。
テイルブルーとテイルファイヤー。闘う理由は違うが、その目的だけは何も違わなかった。
『目の前にいる敵を倒す』。それだけは何も変わらなかった。ブルーとファイヤーが完全に重なり合う数少ない部分でもあり、そしてそれは互いに共通する意志でもあった。
そしてそれはギアを通して、何となくであったが伝わってきた。そして、この場は互いの息を合わせなければ決してあいつには勝てないということも、それでしか互いの目的を果たすことが出来ないことも分かっていた。そして、それは戦いを通すたびにますます確信を強めていく。互いの考えが、まるで自分の考えのように理解できる。つい最近、総二が言っていた『千の言葉なんかより、一のツインテール』という言葉がブルーの頭をよぎる。
…まさかそれと似たようなことをこの身を持って経験する羽目になるとは。
「…ふ、そうか…貴様らは…」
そしてリヴァイアギルディは自虐気味に笑った。巨乳のファイヤーと貧乳のブルー。
奴らは別の存在であるのにも関わらず、協力し、部隊の長であるリヴァイアギルディを追いつめようとしている。そしてその選択をしなかった自分が、こうやって追い込まれている…。
皮肉なものだ、とリヴァイアギルディは感じる。弱いからこそ、小さいからこそ人間は協力し合える。あんなにも仲が悪かった2人が手を取り合って共闘している。だが…なまじ強い存在である我々は強いからこそ、分かり合うことがこんなにも難しい。
(胸の大きさ…か)
ただこれだけであるのにも関わらず、幾度となく対立し、最終的には和解という道すらも取れなかった。その結果がこの状況だ。我々らしいといえばそうかもしれないが、改めて人間を目にすると自分たちが憐れな存在に見えてくる。
「だが…それでも、俺は…俺自身の為にも、部下の為にも負けるわけにはいかない…!!」
リヴァイアギルディは己を奮い立たせると共に無理矢理立ち上がり、既に限界であろう身体に鞭を打ち、胸の前に両腕を構える。そしてゆらり…と残り少ない属性力が昇るのがはっきりと見えた。
「リヴァイアギルディ…正気か!?」
奴は、リヴァイアギルディは満身創痍なのにも関わらず、あの奥義を放とうとしている。だが、そんなことをすれば奴は…。
「…悪いが、俺は負けられないのだ! どの道、ここで全力を出さなければ…貴様らを倒すことなど出来ん!」
「そういうことよ…最後はあたしが決めるわ…!」
「えっ…!?」
「…まさか、あんたまだ戦うつもりなの!?」
「…駄目なんですか?」
「あんたね、そんな身体でもう戦える訳ないでしょ!? とどめはあたしがやるから、あんたは下がっていなさい!」
ブルーはグイッと無理矢理俺を下がらせると、青色に輝く槍、ウェイブランスを取り出し、先端部分を展開させる。そこへ膨大な属性力が集まるのを感じる。
「さあ…行くわよ、巨乳怪人!」
「ああ…逃げも隠れもせん。正面から貴様の技を潰してやる、貧乳女! そして、次はテイルファイヤー! 貴様の番だ!!」
「…悪いけど、それはありえないわ。あたしが…あんたを倒すんだからね…!!」
空気で分かる。…これが、最後の一撃になる。技と技のぶつかり合い。それが間もなく、行われようとしている。
ブルーとリヴァイアギルディは共に構え、技の体勢に入った。ブルーの槍の先端から、青色の光がほとばらせた。リヴァイアギルディもまた、同じように全身から青色の光をほとばしらせ、属性力がうねりを上げる。
「「…!!」」
そして遂に、互いの最強の技が解き放たれた。
「エグゼキュート!! ウェェェェェェイブ!!!」
「
瞬間、青色に昇ったエネルギーの刃と青色の衝撃波が激しくぶつかり合った。激しくぶつかり合う両者はどちらも全力がこもった一撃であり、工場内は強力な閃光がほとばしる。
「!!」
ともすると失いそうになる意識を必死につなぎとめながら、ファイヤーは2人の戦いを見ていた。
拮抗していた両者の一撃に動きがあったのは、リヴァイアギルディのほうであった。
大量の振動波と超音波がエネルギーの刃ごと打ち砕かんと、徐々に押し始める。
「ぐ…あんたなんかにねぇ…あんたなんかにねぇぇぇぇぇ…!!」
踏ん張るブルーが思い出すのは、ネットでの中傷やテレビでの自分への扱い。そして巨乳という存在。揺れる乳、出る谷間、ブラジャー…! それがフラッシュバックのようにブルーの脳裏でチカチカと点滅する。
奴は、リヴァイアギルディは、その胸の思いを戦うエレメリアン。ならばそれを許せない。乳を力に変えて戦う全ての存在を許すわけにはいかない。それこそが、ブルーの真の敵なのだから。
「負けらんないのよ…アンタなんかにぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「!!」
次の瞬間、ブルーのギアが輝きを増し、エネルギーの刃の出力が勢いを上げた。刃は見る見るうちに大きくなり、そのまま衝撃波を押し返した。そして、そのエネルギーの刃がリヴァイアギルディまで届き、貫く。ブルーもファイヤーもレイチェルもそう思っていた。これで終わると。誰もがそう思っていた。だが…。
「な…!?」
「あ…!?」
それよりも前に、槍の方に限界が訪れた。度重なるぶつかり合いで、既にダメージが蓄積していたブルーの武器、ウェイブランスは遂にブルー自身の属性力にも耐えられずにバラバラに砕け散ってしまったのだ。
「そんな…」
狼狽したブルーが一歩下がった。
リヴァイアギルディはその瞬間を見逃さなかった。だが、それはファイヤーも同じだった。
「! ブレイクシュート!!」
リヴァイアギルディの攻撃が再開したのと同時に、すぐさま右腕を射出する。
もう右拳を相手にぶつけることはできない。ヒビはもう限界まで広がっており、このまま右手を酷使すれば右装甲すら、砕け散ってしまう。だが、物を拾うくらいなら出来る。
(たとえ、殴ることは出来なくても!!)
飛んでいった右腕を回収し、先ほど砕け散った槍の刃先を握り絞める。そして、そのままリヴァイアギルディの衝撃波に飛び込み、刃先を前へと突き出した
「何ぃ!?」
この期に及んで動くファイヤーの姿にリヴァイアギルディの顔が驚愕のものへとなる。振動波のせいで、多少のダメージを受けるものの、まるでお構いなしとばかりに突き進む。
「…この刃に込められた、ブルーの属性力は消えない!!」
その刃には先ほどまでブルーの魂の籠った意志が宿っている。そして、ファイヤーの属性力も上乗せしたその刃先は膨大な属性力の固まりとなり、あっという間に衝撃波を突き破り…遂にリヴァイアギルディの胸へと突き刺さった。
「歩みを止めない限り…前へ前へと進む…」
リヴァイアギルディの胸で、刃先が淡い光を発した。それと同時に、腰にあるテイルドライバーがうねりを上げる。
「倒れたって、何度だって…前へ突き進む…!」
ファイヤーは、一気に刃先に込められた属性力を解放した。
「それが…ツインテールだあああああああああああああっ!!!」
どん!―――と、空気を震わせる音と共に、リヴァイアギルディの体内で爆発が起こった。
※
「っがぁ!!」
ファイヤーは爆風で吹っ飛び、そのまま地面へと突っ伏した。もう動くことすら不可能なほど、全てをあの一撃へと込めた。もし、これでリヴァイアギルディが生きていたら、今度こそ万事休すとなる。
「お前…!」
「ふ…そうか…そういうことか…」
爆発の際に生じた煙が晴れると、そこにはぽっかりと胸に巨大な穴が開いたリヴァイアギルディが立っていた。そこには血も肉も何も見えず、エレメリアンが精神エネルギーで構成された生命体であることをまじまじと見せられる。
「俺は…負けたのだな…」
だが、リヴァイアギルディは穏やかそうにそう言って、笑った。
「だが、最後に、貴様に貫かれて…俺は誇りに思う…」
「ああ…そうかい…」
相変わらずだ、とどめを指されて嬉しいとか…俺には良く分からない価値観でこいつらは動いている。
だが、確実に分かることが1つある。それはこの戦いは決して1人では勝つことが出来なかったということだ。ブルーがいたからこそ、最後の活路が開け、奴に決定的な一撃を与えることが出来た。彼女がいなければ、俺は勝つことが出来なかっただろう。また、奴の隣に、クラーケギルディがいたならば、また勝負は分からなかっただろう。
勝負を分けた決定的な差、それは巨乳や貧乳とかいった『胸のサイズ』ではなく、『共闘する者の有無』が勝負を分けたのではないだろうか、と俺は思う。あの時、共闘を申し込んだのは、決して間違ってなどいなかったのだ。
「スタイルのいいお姉さんに胸を貫かれて倒される…これはこれで、胸を愛する戦士の最後としてふさわしいな!」
ガハハと豪快に笑うリヴァイアギルディであったが、俺はどうリアクションすればいいか分からなかった。それは敵である奴に少しだけ、憎めない部分を感じたからだ。…いや、それは奴ら全員に言えることか…。
「では…さらばだ、強き戦士たち、ツイン、テイルズよ…」
別れを告げるように後ろ向きに倒れた瞬間、リヴァイアギルディは大爆発を巻き起こし、散った。
「あっ、くっ」
そしてブルーもまた、俺と同じように倒れて、横たわった。
「えっと…とりあえず…お疲れ様です」
「…お疲れ様」
げっそりとした顔で、ブルーはそう答える。
「その…」
「ああと…喋りかけないで。色々言いたいけど、何だか、疲れちゃった…」
「あはは…俺も、ですよ…でも…」
「あたしたちの、勝ちね」
「…ええ」
そう言いながら、2人はニヤリと笑った。
―――テイルファイヤー&テイルブルーVSリヴァイアギルディ
勝者・テイルファイヤー&テイルブルー
はい、リヴァイアギルディ戦、遂に決着です!
原作ではブルーに撲殺されるという哀れな最後でしたが、ここでは頑張ってもらいました!
次回はイエローサイドでお送りいたします! …さて、どう覚醒させようかなぁ…!
次回もお楽しみに!!