デート・ア・グリムロック   作:三ッ木 鼠

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37話 ライズ・オブ・ダークスタースクリーム

 月の消滅は世界的な大ニュースで連日、テレビを賑わせていた。月が消えて最も困っていたのはディセプティコンで、月面にあった基地はもちろん、あらゆる機材や設備を一瞬にして失う結果となった。仕方なくディセプティコンの面々は、ネメシスにて活動をしていた。

 脅威であるユニクロンを倒し、メガトロンはオートボット等との戦いに専念出来るわけだが、何か大事な事を忘れている気がした。

「……スタースクリーム、そう言えば奴はどこへ行ったのだ?」

「見ていませんね。メガトロン様とサウンドウェーブがカラオケに行った時に彼は出掛けて来ると言って出て行きましたね」

 基地にいたショックウェーブもスタースクリームがどこに行ってしまったのかは知らない。コンバッティコンやプレダキングも同様にスタースクリームの所在は知らなかった。

 その時である。

 ネメシスのブリッジと通路を分けるドアが爆発した。散り散りになったドアを通って何者かがブリッジに入って来る。

「お前は……!」

 スタースクリームだった。

「ようメガトロン、勇気があるなら俺と戦え! 破壊大帝の椅子は俺様の物だ!」

 ショックウェーブやコンバッティコン達が火器をスタースクリームに向けるとメガトロンが手で制した。

「フッフッフ、どうやら本当に懲りていないようだなこの愚か者めが。お前なんかにディセプティコンを引き入れるものか」

「やかましい老いぼれ。お前の時代は終わりだ! 時代は新しいリーダーを必要としている!」

 スタースクリームの顔には自信に満ち溢れている。自分が勝てると確信を持っている顔だ。

「良く聞け愚か者、例え儂を倒してもまた次の者がお前を倒そうとするのだぞ」

「蹴散らしてみせるさ! くたばれィ!」

 ナルビームがメガトロンに向かって飛んだ。メガトロンはシールドを張り、ナルビームを防ぐと一直線に走り、殴りかかった。

「待ってたぜ!」

 スタースクリームは天を仰ぐと全身からダークエネルゴンのオーラが噴き出した。するとメガトロンもダークエネルゴンを活性化させて拳に力を蓄え、スタースクリームの拳とかち合い、両者は衝撃で跳ね返された。

「お前、そのオーラは……!」

「ハハハ! メガトロン! テメェの負けだ!」

 スタースクリームが胸を開いた瞬間、ブリッジにいた全てのディセプティコンが震撼した。胸の中で鈍く光を放っている物、それはダークスパークだ。

「ありえない、ダークスパークは確かに……」

 ショックウェーブは目を疑った。そしてメガトロンの方に視線を注ぐ。

「そのダークスパークをどこで手に入れたは知らないが、所詮は粗悪品だ! 儂の物がオリジナルだ!」

 メガトロンも胸を開くとそこにもダークスパークが設置されてある。ダークスパーク、この世にそれが二つもあるなど絶対にありえない筈だった。

「誰が粗悪品だ! お前のが粗悪品だぜ! 本物は一つ!」

 メガトロンとスタースクリームのダークスパークに膨大なエネルギーが圧縮され、同時にダークエネルゴンの光線を放った。二つのダークスパークの光線は空中でぶつかり合い、どちらも退かない。全くの互角でそれを有利に持ち込むには所有者の意志に左右される。

 光線を撃ちながら両者は一歩、一歩と前に進む。歯を食いしばり、ギアを軋ませる。

「うぉぉぉッ!」

「おらぁッ!」

 二人が吼え、力強い一歩を踏み込むとブリッジを包み込む程の大爆発が起きた。メガトロンは尻餅をついて倒れ込むとすぐにサウンドウェーブが手を貸した。煙が晴れるとスタースクリームも倒れている。

「儂と互角に張り合うとは生意気だな」

「へっ! 腰が悪いのかァ? 立てやしねーじゃないか」

 スタースクリームがもう一度ダークスパークのブラスターを放とうとしたが、エネルギーが切れたのかダークスパークが反応しない。オーラも消えてしまった。

「エネルギー切れか? ちょうど良い。ディセプティコン! 奴を捕まえろ!」

 メガトロンの命令を聞いてブロウルとスィンドルが真っ先に動いた。スタースクリームを捕まえた暁にはセイバートロンでの一件の恨みを込めて散々、痛めつけてやろうと考えていた。

「汚ねぇぞメガトロン!」

「力だけじゃリーダーは務まらんのだ。頭が良くて格好良くてずる賢くないとな」

 スタースクリームは華麗にトランスフォームしてブロウルとスィンドルから距離を離してネメシスの廊下を飛行した。

「ブレストオフ、ボルテックス! スタースクリームの奴を捕まえろ!」

 スタースクリームのすぐ後を二人が追いかけた。通路という狭い空間にブレストオフはミサイルを三発発射した。スタースクリームは瞬間的にロボットに戻り、勢いがついている間にナルビームライフルでミサイルを狙い、不安定な態勢から精密な狙撃でミサイルを撃ち落とした。

 背中が床につく寸前にスタースクリームはジェット機にトランスフォームした。爆煙を身代わりにスタースクリームはアフターバーナーを点火、ブレストオフとボルテックスに一気に差をつけて隔壁を破壊してネメシスの外へと逃げて行った。

 もはや追い付けないと悟った二人は着地してメガトロンに報告した。

「申し訳ありませんメガトロン様、逃げられました」

『仕方がない。だが所詮、奴一人では何も出来はせんわ』

 スタースクリームの始末はまたいつか付けてやるとメガトロンはそう決めた。

 

 

 

 

「兄様、真那は悲しいです」

 ソファーに座ってテーブルを挟んで向かい合い、真那は唐突にそんな事を言い出した。

「何がだよ」

「兄様はいつの間にかとんでもない女たらしになっていやがりました。十香さんや四糸乃ちゃんに狂三、耶倶矢さんに夕弦さん、美九さん、七罪ちゃん。これだけの女の子とチューの経験があって女たらし以外の何があるですか!」

「そう、とても不満。私だけしてもらっていない。とても不公平」

「折紙!?」

 兄妹での一対一の会話だと思っていると知らないうちに折紙が士道の隣に座っていたのだ。当然のように腕を絡めて。

「兄様それです! それが女たらしなんです!」

「違う! これは折紙が勝手にっ……!」

「士道は私と腕を組むのは嫌?」

「あ、う……そう言うわけじゃあないんだ」

「ならもっとこうしておく」

「折紙さん、あなたも兄様に引っ付き過ぎです!」

「私は彼の婚約者。現に私を家族と言った」

 言ったには言ったが、まさかここまで折紙の発想が爆走するとは思わなかった。いや、折紙を甘く見ていたと言うべきだろう。

「朝から真剣な話ってのはそれで良いのか真那?」

「まあ、そうですけど」

 士道が折紙の拘束を逃れてソファーから立ち上がった。

「どこへ行くのですか?」

「今日はジャズとハイキングでも行くかって話をしててさ」

 ジャズと聞いて真那はわかりやすいくらいに反応を示した。

「ジャズ様と二人きりででいやがりますか!?」

「うん、そうだぞ」

「あの、私も行っても良いですか?」

「良いよ、折紙も来――」

「行く」

 やや食い気味に返事をした。

「じゃあ、準備しておいで。ジャズには少し待ってもらうから」

 真那と折紙はすぐに準備に取りかかった。動きやすい服と履き慣れた靴、そして大きな登山用のリュックサックさえあればハイキングスタイルは完成だ。士道は家の前に停まっている一般の住宅街に不釣り合いな高級なスポーツカーに乗り込んだ。

「おはよう士道! 今日も良い天気だね!」

「いつも以上に元気だなジャズ」

「そうりゃそうさ、ハイキングだよハイキング! 地球の文化には一通り触れたつもりだったけど季節ごとの行事もあるなんて最高だよ!」

「喜んでくれるなら良いけどさ。あ、それと今日は真那と折紙も来るんだけど良いか?」

「もちろんOKさ」

 車の中でしばらく待っていると五河邸と特設マンションから真那と折紙が出て来た。どうしてか二人ともは自衛隊の迷彩服を着ている。動きやすい服だろうがハイキングというより今から訓練にでも行くような格好だ。

「えっと……ハイキングだよな?」

「士道はハイキングを甘く見ている。山は危険」

「低い山だからって油断していたら怪我しますよ兄様」

 確かに二人の意見は正しい。しかし今日行く山は標高も低く初心者向けのハイキングコースなのだ。ジャズはエンジンを動かして力強い騒音を響かせながら走り出した。

 

 

 

 七罪は基本的に部屋で遊ぶ事が多い。仲が良いのは四糸乃と美九だ。四糸乃からの繋がりでグリムロックともよく喋る。けれどもいかんせん超ネガティブ思考な為か、他の皆と比べて圧倒的に会話量が少なかった。最近入って来た狂三という少女に七罪は親近感が湧いていた。何故か、それは簡単、一番浮いているように見えるからだ。

 十香、八舞姉妹、折紙、この辺りは学校も一緒なだけあってとても仲が良い。四糸乃はダイノボットとよくいる。美九は一時期は荒れていたが元来、明るく誰にでも分け隔てなく接する子なのでオートボット達とも仲良くしていた。

 しかし、狂三は明らかに一人でいる事が多い。真那や士道、オートボットとは話しているのは見かけるが、他のメンツはほぼない。

「あの子ならまだ話せる筈……!」

 徐々に友達を増やすつもりの七罪はすぐに行動に移した。何やら警戒でもするように周囲をキョロキョロと見回しながら部屋を出ると、狂三の住む部屋の前まで来た。

 人差し指を突き立ててインターホンを押そうとするが、七罪は躊躇う。

「いきなり尋ねて大丈夫かな……。手土産の一つでもないと嫌われたり……! あたしなんかが来たらキモがられたり! いやいや、大丈夫! あたしなら出来る!」

 インターホンを押すか押すまいかと頭をかきむしりながら悩んでいる七罪に狂三が声をかけて来た。

「あらぁ、あなたは七罪さん?」

「ひっ!?」

 七罪は背筋をピンと伸ばして声を裏返させた。唐突に声をかけられてかなり驚いたようだ。七罪は狂三を足から見上げるように全身を確認した。相変わらず、フリルの多い黒いゴスロリ衣装を身に纏っている。自然と似合っているから良いもののもしも似合っていない人が着れば目も当てられない服装だ。

「珍しいですわね。わたくしにお客さんなんて」

 そう聞いて七罪はパァっと顔を明るくした。やはりボッチだ。そう確信出来たからだ。

「七罪さんから尋ねて下さるなんて嬉しいですわ。ささ、上がって下さいまし」

 鍵を取り出してドアを開けると中は至る所に猫のぬいぐるみが散乱している。部屋の全体的な印象は、暗いと思った。カラーリングは黒を基調にして、なんとなくだが七罪はこの部屋から耶倶矢と同じ匂いを感じていた。

「ね、猫好きなの?」

「ま、まあ嫌いではありませんわ」

「好きなのね」

 狂三に椅子を勧められて七罪はゆっくりと腰を下ろした。

「外出してたみたいだけど、何してたの?」

「少し、買い物をですわ」

 狂三の持っていたビニール袋に目を落とすと中にはニンジン、大根、キャベツと野菜がたくさん入っているのが確認出来た。夕飯の準備だろうと判断した。

「えっと……」

 七罪が呼びづらそうにもごもごとしていると狂三は優しく笑顔を作った。

「遠慮せずに狂三、と呼んで下さいまし」

「んじゃあ狂三」

「はい、七罪さん」

 何故だか狂三の笑顔に七罪はドキッとしてしまった。

「ご飯は狂三が作ってるの?」

「いいえ、だいたいは士道さんのをご馳走になっていますわ。でもたまには自分の手料理を士道さんに食べて欲しくて」

「手料理か……。狂三は料理出来るんだね」

 七罪は料理が全くと言って良いほど出来ない。

「そうですわ! せっかくですので七罪さんにわたくしの手料理の味見をして下さいませんこと?」

 手をパンと叩いて狂三は閃いたような顔をした。狂三の案に七罪は別段、悪い気はしなかったし、むしろ断っては友人作りに支障が出る。

「うん、食べたい!」

「では準備しますわ」

 狂三はふりふりの付いたエプロンを腰に巻いて鼻歌混じりに袋から今日使う材料を取り出した。テーブルに並んだ食材は、ジャガイモ、挽き肉、油、パン粉と今からでも何を作るのかなんとなく分かった。

「狂三、今日は何を作るの?」

「麻婆豆腐ですわ!」

「へ……?」

 豆腐なんてどこにもない。ついでに麻婆も無い。本当にどうやってここから麻婆豆腐を作るつもりなのか。包丁をうっとりとした眼差しで見つめる狂三に七罪は思わずたじろいだ。

 どうやってこの食材から麻婆豆腐を作るのか覗こうとすると――。

「ダァメですわ七罪さん。あなたは座ってて下さいまし」

 そう言って半ば無理矢理に椅子に座らされてしまった。料理の内容が不安で仕方がない七罪だった。

 狂三が料理をしている様を落ち着かない様子で見ていた。基本的に精霊達に料理が出来るというイメージがない。朝昼晩の料理全てを士道に一任しているからだ。トントン、とリズムの良い音がキッチンから聞こえて狂三は手際良く、麻婆豆腐を作っていた。少しだけ安心した矢先、キッチンからドリルの駆動音がした。

「――!?」

 更に火花が立ち、鋭く耳に響くような金属のぶつかり合う音も聞こえて七罪はゾッとした。料理だが工事だかわからないが、最後にボンッと小さな音がして終わったようだ。

「さぁ、出来ましたわよ七罪さん」

「あぁ~……あたしちょっと用事を思い出しちゃったかな? また、後で来るよ!」

 一刻も早く逃げようと席を立つが、肩を掴まれてそのまま椅子に座らされた。

「遠慮しないで下さいまし。はい、あ~んして」

 テーブルにあるのは何故かちゃんとした姿の麻婆豆腐だ。あの工程からどうやって産まれたのかは謎のままだ。

「う、うぅぅ……やだよぉ、やだよぉ……」

「き、きひひ、さあ七罪さん、あ~ん」

 その日の夜、食卓で七罪を見た者はいなかった。

 

 

 

 

 捕らわれたジェットファイアーの体をアーカビルが解析して、従来のCR-ユニットを改良に成功していた。トランスフォーマーの技術を着々と吸収して行っているが、アイザックはまだ満足に至ってはいなかった。社長室のソファーで足組みをしながら、開発された兵器を確認していた。

 崇宮真那もセンチネルというCR-ユニットを纏っているとエレンから聞いている。ラタトスク側も技術力を向上させている。ラタトスクがオートボットと手を組んでいる所為もあって、五河士道と夜刀神十香の捕獲は困難であった。

 エレンも士道と二人きりというチャンスを作ったのにまんまと一杯盛られて撃退された。

 コンコン、とドアをノックする音がした。アイザックの部屋を訪れるのはエレンかアーカビルしかいない。

「入りたまえ」

 許可を出した途端、社長室のドアごと破壊してスタースクリームが顔を出した。無駄に肝が座っているアイザックは、驚きもせずにスタースクリームを見上げた。

「久しぶりだねスタースクリーム。君の軍団はどうしたんだい?」

「ディセプティコンは止めたぜ。今日からはまたDEMだッ!」

「面白い冗談だ」

 こんな口先だけの男をアイザックが信用する筈が無い。

「アイク、何ですさっきの音は!? って……スタースクリーム!?」

 駆け付けたエレンの視界にまずスタースクリームの姿が入って来た。瞬間的にペンドラゴンを装着、問答無用でスタースクリームに斬りかかって来たのだ。

「おい、エレン!」

 ギリギリでエレンの斬撃を回避した。

「何するんだよ! パートナーだろ!?」

「誰がアナタのパートナーですか! ここで潰します!」

 勢い良く踏み込んだ所に運悪く、砕けた壁の破片が落ちていた。エレンは足を引っ掛けて前のめりに転んでしまった。

「……相変わらずドジだなテメェはよ」

「う、うるさいですね! だいたい何の用ですか!」

「またDEMに戻りたいそうだよ」

 と、アイザックが簡単に説明するとエレンの顔は見る見るうちに赤くなり怒りのメーターが上昇して行く。

「ふ……ふざけないで下さい裏切り者! やはりここで殺すべきです!」

「まあまあ、落ち着けって。何もただで戻ろうなんて思ってねぇよ?」

「何です? 手土産の一つや二つはあるんですか?」

「ディセプティコンの技術くらいは教えてやるぜ? 悪い話じゃあねーだろ? トランスフォーマーの技術をわざわざ俺様が教えてやるんだからな」

「悪いが、トランスフォーマーの技術なら間に合っているよ」

「なぬ!? どういう事だ!」

「君に話す必要は無い」

 ここでエレンをけしかけてスタースクリームを討ち取るのは容易いが、スタースクリームにはまだ利用価値があるかもしれない。アイザックはそう考えた。

 エレンは一度裏切ったような相手をまた迎え入れるなど大反対だ。とりあえず、仲間の振りだけして用済みになれば消そうという結論に至った。

「よしスタースクリーム、君を特別に大目に見て仲間に入れてやろう」

「やったぜ!」

「正気ですかアイク!?」

「正気だ。彼の能力は利用価値がある。君は以前の通り、スタースクリームとパートナーだ」

 エレンは心底嫌な顔をした。スタースクリームと一緒にいるとどうも調子が狂うからだ。それにロクな目に合わないからだ。膨れっ面を作り、エレンはスタースクリームを睨んだ。

「ところでスタースクリーム。どうしてまたDEMに戻って来たんだい?」

 

「今のディセプティコンをぶっ倒す! メガトロンの野郎~自分が有能で寛大な上司と勘違いしやがって~! 老いぼれを追い落として俺がニューリーダーになってやらぁ!」

「ニューリーダーね。スタースクリーム、ディセプティコンについて教えてくれるかい? それと君に合わせたい人がいる」

 スタースクリームは押し黙ってから直ぐにハッとした顔をした。

「よーしディセプティコンの事なら何でも話してやる。俺に合わせたい奴ってのは誰だ?」

「ついて来るんだ」

 エレン、スタースクリームを引き連れてアイザックは壊れた壁を通ってエレベーターに乗った。エレンがすかさず、目的の階のボタンを押した。エレベーターが下に下がり、どんどん地上が近付いて来る。

「そういやジェシカはどうしたんだ? 左遷でもされたかァ?」

「彼女は死んだよ。単眼のトランスフォーマーが天宮市を攻めに来た時にね」

「ショックウェーブのあれか。あれだけ用意周到にして負けるんだからな! 笑っちまうぜ! ハハハ!」

「どうせあなたは何もしてないでしょ?」

「バッキャロー! 俺様はフラクシナスを撃墜したんだぜ?」

「ほう、君があのラタトスクの空中艦を?」

「にわかには信じがたいですね」

「何を!? 俺様の有能さを妬んでやがるなァ?」

「はいはい、つきましたよ」

 エレベーターのドアが開くと地下の巨大な研究施設が広がっていた。スタースクリームも存分に飛べそうな施設だ。巨大な通路が部屋の中心を走り、そこを起点に左右にあらゆる部門のスペシャリストが機械をいじっている。そして、広大な研究施設の最奥部にはこれまた巨大な強化アクリル板の正方形の部屋が建っていた。

 中で捕らわれた住人、それはジェットファイアーだ。スタースクリームは彼を見ると驚きと懐かしさが同時に湧き上がって来た。

「以前、北極で捕獲したトランスフォーマーだ。エンブレムからしてオートボットだろう」

 アイザックはアクリル板を軽く蹴った。

「起きろジェットファイアー」

 椅子に腰掛けてうなだれていたジェットファイアーは顔を上げた。またあの悪に満ちた人間の顔が待っているのかと沈んだ気持ちでアイザックの、更に後ろにいる者を見た。

「君はスタースクリーム!」

「よおジェットファイアー」

 思わぬ所で再開を果たした。親友であり同僚であり怨敵だ。

「再開出来て良かったじゃないか」

「良いものか! この裏切り者! オートボットもディセプティコンも裏切って次はDEMか!」

「正確にゃあオートボット、ディセプティコン、DEM、ディセプティコン、DEMの順番だがな」

「順番なんてどうでも良い!」

 ジェットファイアーがアクリル板を強く叩き、怒りを露わにしている。想定ではこれくらいでアクリル板は割れないが、念の為にアイザックは高圧電流を流して黙らせた。

「ぐあぁっ!」

 短く呻いてジェットファイアーは片膝をついた。

「うひゃ~痛そ。ってかお前等はコイツから技術を盗んでんだな?」

「その通りだ。君達はダークエネルゴンの研究者だったそうじゃないか。ダークエネルゴンの研究は上手く進まなくてね。手を貸して欲しいんだ」

 アイザックが片手を上げると、さっきまで施設内のどこにもいなかったバンダースナッチ、魔術師(ウィザード)が次々と体を粒子に変えるという奇妙な変形をして現れたのだ。スタースクリームも初めて見る変形方法に戸惑いを隠せない。アイザックの“手を貸してくれ”とは明らかな脅しである。

「おい、待てよ。わかった、何でも教える! 教えてやるから撃たないでくれ!」

「君はとても狡猾だからね。前よりも自由を制限させてもらうよ」

「ぐぬぬ……!」

 言葉でも態度でも反抗出来ず、スタースクリームは仕方無くアイザックに従う事にした。トランスフォーマーの技術から改良された兵器はスタースクリームの体をバラバラにして見せるだろう。悔しく、俯いて絶対にいつかやり返してやると考えていると、一つ良い考えが閃いた。

「自由の制限くらいしてくれて構わないぜ。ダークエネルゴンについてはちゃ~んと教えてやるさ」

「スタースクリームッ! ダークエネルゴンは危険な物質なんだぞ! 我々でも扱いが難しい! ましてや人間に扱い切れる筈がないんだ!」

 ジェットファイアーの抗議を尻目にスタースクリームはアイザックの方を向いた。

「ジェットファイアーの野郎はどうする? 今のうちにバラバラにしちまうか?」

「いいや、まだだ。まずは君からいろいろと聞こうか」

 バンダースナッチと魔術師(ウィザード)達に銃を突きつけられてどこかへ連行されて行った。

 

 

 穏やかな山道を三人の人間と一人のトランスフォーマーが歩いていた。士道にべったりと張り付く折紙、ジャズと歩調を合わせて恋心を露わにする真那、どうしたものかと悩む士道、楽観的に真那との会話を楽しむジャズ。

 一見、穏やかなハイキングに見えたがこの後、四人に悲劇が待ち受けていたのだ。

「ジャズ様は趣味とかありやがりますですか!?」

「趣味かい? そうだな、カッコイイ車を見たり音楽を聴くのが趣味かな」

「音楽でいやがりますか! どんな音楽です?」

「地球の音楽なら大抵聴くよ、だって素晴らしい出来だからね」

 士道は後ろ話すジャズと真那の事が気になってしょうがない。トランスフォーマーと人間の恋。兄としてどういうアドバイスをしてやれば良いのか分からなかった。

「な、なあ折紙。一つ聞いても良いか?」

「構わない」

「人間とさ……他の種の恋愛ってありかな?」

「それは異種姦の事を意味しているの?」

 折紙の頭には触手で無惨に全身を犯される図が浮かんでいた。

「違う違う! だから……人間とトランスフォーマーの恋は成り立つのかなって」

「一定以上の知能があるなら私は成り立つと思う」

「成り立つか~」

 グリムロックと四糸乃は仲の良い友達と言った所か。仮に四糸乃の方から特別な感情を抱いてもグリムロックにはのれんに腕押しだろう。他の皆も仲良くやっているのは見るのだが、恋愛とはまた違う。

「士道、急にどうしてそんな質問をしたの?」

「気にしないでくれ」

「わかった、気にしない」

 コースを確認するべく地図を開くと今はだいたい折り返し地点にいた。

「ふんふん……今はこの辺りか。なあジャズ、お弁当は山頂で良いよな?」

 ジャズからの返事は無い。

「おいジャズ」

 振り返るとジャズと真那が忽然と姿を消していた。ポロッと士道は地図を落としてしまった。一本道のハイキングコースでまさか道に迷うなど考えられない。きっとトイレか何かだろうと士道は自分に言い聞かせた。

「士道、真那は案外方向音痴。気をつけて」

「そう言うのは早く言ってくれよォ! 探しに行くぞ!」

「待って、今は二人きりを楽しみたい」

 ギュッと折紙が背中から抱き締めて来た。華麗に折紙をかわしてインカムに通信が来ていたのでそれに応答した。

『よぉ士道! ハイキングは楽しいかオイ!』

 相手はワーパスだ。

「ワーパス、どうしたの?」

『いやぁ何でもよオプティマスとアイアンハイドが任務行くし、グリムロックは四糸乃と遊びに行くし、十香達はフラクシナスで身体検査、七罪は呼んでも出て来ないしで暇なんだよ』

「パーセプターは?」

『十香達の身体検査のお手伝い。珍しくオレがお留守番だ!』

「それで、オプティマスは何の任務に行ったんだ?」

『それがよォ! パーセプターがラタトスクの科学班と一緒に何か研究してたらしんだ。それが逃げ出して大騒ぎだ』

 実はかなりとんでもない大事では? と内心思っていたが口には出さなかった。

「パーセプターは何を作ったんだ?」

『何て言ってたかな……? トランスなんとか……そうそうトランスオーガニックとか言ってたな! ハイキングも楽しいだろうけど気ぃつけろよー!』

 ワーパスが通信を切ろうとすると、ふとまた言いたい事を思い出した。

『あ、ジャズと連絡が取れねーんだけど知らない?』

「ジャズは真那と一緒に迷子だよ」

『迷子かよ。どうすっかな。わかった、オレもそっちに行くぜ!』

 有無を言わさず通信を切られた。留守番はどうするのか知らないが、士道達のいない所で大変な事になっているらしい。

「士道どうかしたの?」

「何か実験動物が逃げ出したらしい」

「実験動物?」

 トランスオーガニックと言われたが名前だけではどのような外見か想像も出来ない。

「ジャズにもこの事を知らせるか。ってか繋がるかなぁ」

 インカムを使ってジャズと通信を試みたがワーパスも繋がらなかったように士道もジャズと交信が出来なかった。

 真那達の心配やトランスオーガニックの件が気になってきた。今までの士道の経験上、オートボットの問題は自分にも降りかかる災いと考えて行動すると決めていた。トランスオーガニックは決して他人事ではない。

「士道そろそろ」

 折紙が裾を引っ張って来、山の山頂を指差した。早く行こう、という意思の現れだ。

「ああ、ハイキングを続けよっか」

「うん」

 

 

 

 

 士道からはぐれたジャズと真那のコンビは深い森の中で適当な岩に座っていた。

「完全にはぐれたね」

「申し訳ねーです」

「いやいや、気にする必要はないよ。すぐに見つかるさ」

 ジャズも通信機が使えなくなっているのは知っている。はぐれてまず士道に連絡を取ろうとしたが、繋がらなかった。ここは山と言っても厳しい環境の山ではない。それに遭難者が出た事など一度もない。

「ま、何とかなるって。ハハッ」

「ですよね! 私達はここから山頂を目指しましょう!」

 山頂は見えているので最終的に山頂で落ち合えば良いだろう。ジャズもその考えに至り腰を上げると雑木林の方から何かが蠢く音がした。

 素早くジャズが真那の前に立って庇うと二連装サブマシンガンを構えて、銃口を突き付けた。張り詰めた空気が流れていると雑木林から一頭の熊が顔を出した。

「何だ熊じゃないか」

「熊でも危ねぇです! 死んだふりですよ死んだふり!」

「まあまあ、熊くらい平気だよ真那」

 スキンシップを図ろうと熊に近付くと雑木林から金属の触手が飛び出して来た。

「な、何!?」

 金属の触手は熊を串刺しにして血を吸い尽くし、カラカラに干からびさせた。邪魔な木々をなぎ倒して姿を見せた。

 ソレはおよそ見た事が無い生き物だった。どんな陸生生物より大きく、ジャズやオプティマスよりも巨大な体格を誇っていた。足らしい足は無い、四角い柱のような胴体にタコのような多くの触手を持ち、触手の先端はハサミのようだ。口は筒状で鋭利な牙が無数に並んでいた。全身を金属の細胞で構成されてトランスフォーマーと同じ体を備えていた。

 トランスオーガニックに知性は無い。ただただ暴力的な食欲に支配された恐るべき怪物だ。話など通じる筈はないし、動く物を全てを反射的に襲いかかる。ジャズもこれほどにおぞましく醜い生き物は初めて見る。

 オプティマスならなんと命令するだろうか? まずは人間を守れと言う筈だ。そして二言目はきっと――。

「よし、破壊する!」

 真那を抱えるとジャズはトランスオーガニックに銃撃を浴びせてやった。細かな弾丸を大量に受けたがトランスオーガニックの皮膚に損傷は愚か、傷一つ無い。その結果はある程度予想出来てはいた。

「真那、CR-ユニットはあるかい?」

「すいません、持って来てねえです」

「だよね。じゃあ逃げよう!」

 グラップルビームを射出、ジャズは木にアンカーを巻き付けて飛び上がり、EMPグレネードで目潰しをするとスポーツカーの姿を取り、森の中を走った。

「ジャズ様、ありゃ何でいやがるんです!」

「私にもさっぱりさ。あんな怪物は見たことがないな」

「ディセプティコンの兵器ですかね?」

「どうだろうね」

 悪路もなんなく突き進み、ジャズ達はやっとの事で見覚えのある道へ出て来た。

「ジャズ様これは私達のいた道に違いねーです! あっちへ行きましょう!」

 真那が指しているのは山頂とは真逆の道である。

「真那、そっちは反対だよ。おや?」

 真那を降ろして、ロボットの姿に戻るとジャズは地面についたキャタピラの痕をジッと見詰めた。

「キャタピラの痕ですね」

「……。先を急ごう」

 

 

 

 

 山頂付近を歩く二人の男女、折紙の方は士道と二人きりで願ってもないシチュエーションだ。

「あの……折紙? もう少し離れて歩いてくれないかな?」

「拒否する」

「はい……」

 地面の下から微かな揺れが二人に伝わった。地震かと思ったが、揺れはすぐに収まると同時に地中からトランスオーガニックが現れた。見たこともない化物の出現に士道は呆気に取られた。そして、士道はこれがパーセプターの作ったトランスオーガニックだと分かった。

 士道と折紙を視認すると金属の触手を振り下ろした所でトランスオーガニックの体が突然、爆発して倒れた。振り返り、来た道を見ると、一機の赤い戦車が砲口から硝煙を上げている。戦車はやがて鋼鉄の巨人の姿になり、親指を立てた。

「ナイス射撃だろ?」

「ワーパス! 助かったよ!」

「このオレの超完璧な腕前に嫉妬しな!」

「ワーパス、あれは何なのか説明して」

「オレもよくは知らねえんだがよ、パーセプターのインテリ野郎が作った兵器だとよ」

「やっぱりあれがトランスオーガニックか」

 仰向けになって倒れたトランスオーガニックは触手をバタバタと暴れさせながら再び動き出した。

「マジかよ! オレの砲弾が直撃したんだぜ!?」

 ワーパスはケースからチェーンガンを掴み取ると右腕と一体化させて迷わず引き金を引いた。大量の薬莢が勢いよく排出され、弾丸は絶え間なく、トランスオーガニックの体にぶつかり、弾かれていた。通常のガトリング砲よりも弾丸の量も回転数も高い特注のチェーンガンの掃射を受けてトランスオーガニックの触手が一本、千切れて地面に落ちた。

「おいおいおい! 何て固さなんだよ!」

 銃弾が殆ど効いていないというのにワーパスは退かず、チェーンガンを撃ち続けた。弾丸を浴びながらトランスオーガニックは近付いて来ると触手を伸ばし、ワーパスの手足に絡めて来た。

「離せこのバケモノ!」

 鋭利な牙を生やした筒状の不気味な口がワーパスの顔にゆっくりと近付いて来る。士道はスターセイバーを、折紙がメタトロンを顕現しようとした時、二人の後ろからクラクションを鳴らしながらスポーツカーが突っ込んで来た。ジャズはビークルのままトランスオーガニックへ体当たりした。そして、同時にロボットにトランスフォームして乗っていた真那を空高くへ放り投げた。

「ワーパスを離せ!」

 グラップルビームをトランスオーガニックの首に巻き付けて、背中から引き倒した。スナイパーライフルを展開、触手の装甲の薄い関節を狙撃して見事にワーパスを解放した。

 すかさず上を見て落ち着いて来る真那をキャッチしてスポーツカーの姿になった。

「ジャズ様! 今のはもう二度とやらないで下さいよ!? やるならやるで言って下さい!」

 突然、宙へ投げ出された事で頭は混乱状態、いつも以上に呼吸を荒くして言った。

「ハハッ、ごめんごめん。今度からは気をつけるよ。士道と同じ事を言うんだね。昔、十香は喜んでくれたんだけど」

 

「ジャズ! 助かったぜ! トランスオーガニックの事は何も聞いてないよな?」

「そうだね何も聞いてないね」

「どうもさっきから通信がまともに出来ねえんだよ」

 オプティマスやアイアンハイドと連絡が取れずにワーパスは困り果てていた。

「もしかしたら、あれが妨害電波を出しているのかもね。それでアイツは何者なんだい?」

「トランスオーガニック、パーセプターとラタトスクの科学班が作った兵器だ。それが今日、逃げ出したんだ」

「パーセプターは?」

「十香達の身体検査の手伝いだ」

「呑気だな。まずは妨害電波の範囲から出て、パーセプターと連絡だ」

「おう!」

 ワーパスは折紙を拾い上げると戦車にトランスフォームした。砲塔を回転させてトランスオーガニックに砲弾を叩き込んで怯ませるとその場から一目散に逃げ出した。ジャズも士道と真那を乗せてワーパスを追い越し、山を下って行く。

 ハイキングコースを抜けて一般道を走る戦車とスポーツカーという奇妙な二両。トランスオーガニックからずいぶんと距離を離したと思われたが、通信はまだ回復していない。

「あの野郎どんな妨害電波出してやがんだ!」

「パーセプターもとんでもない物を作ってくれたね。トランスオーガニックについて他に何も聞いていないのかい?」

「何でもかんでも食う奴って。特にエネルゴンが大好物らしい」

 エネルゴン、体にそれが流れているのはトランスフォーマーだ。トランスオーガニックの餌は十中八九、トランスフォーマーだろう。

「トランスオーガニックは多分、地中から俺達を追いかけるな」

「本当かい士道?」

「ああ」

 足下には車の揺れではない、地面の底から響くような揺れも感じる。

「市街地で暴れたらダメだ。どこか人のいない所に誘い込まないと」

「人のいない所なら知っていやがりますよ!」

「ナイスだ真那、それでどこなんだい?」

 真那はジャズの中にあるナビをいじり、天宮市の地図を見ながら、人がいなく、トランスオーガニックを仕留められる場所を指定した。真那が示した地点を見てジャズは無言で納得し、ワーパスに座標を送った。

「おぉ!? 真那! ここはベストポジションだぜ!」

 ワーパスはアスファルトをえぐり、急カーブで車体を傾けて進路を変更した。

「トランスオーガニックは破壊して良いよな、副官?」

「許可するよ」

「っしゃぁ!」

 

 

 

 

 ジャズ達が向かった先とは、それは洞窟だった。それもただの洞窟ではない。未精製のエネルゴンの結晶が大量に埋まっている洞窟だ。洞窟の前で停車すると士道達を降ろした。

「君達はここで待ってるんだ」

「危ねーからちゃんと隠れてろよ?」

「二人とも気をつけて」

「ジャズ様無事を祈りやがります!」

 折紙と真那から言葉を送られて洞窟の入り口で待機していると地盤を破砕して地中から醜い姿の生き物、トランスオーガニックが現れた。地中を進んでいたのは本当だとそこで分かった。

 土煙をあげて、触手をくねらせながらワーパスとジャズをロックした。士道達の事は目もくれずに二人のトランスフォーマーを執拗に狙った。

「今だ! 中へ入るぞ!」

 ジャズの合図と共にワーパスは洞窟の内部へ逃げて、トランスオーガニックは追って来る。洞窟の壁に埋まっているエネルゴンの結晶を拾い集めながら二人は洞窟の最奥部までトランスオーガニックを誘い込んだ。最奥部は広く、戦うにも最適な空間に仕上がっていた。

「触手に気をつけるんだよワーパス」

「わかってらぁ」

 ジャズ、ワーパスは左右に分かれて迂回してトランスオーガニックを挟み撃ちにした。背後からワーパスの強烈なパンチが体にめり込む。前へ転びそうになった所にジャズの蹴りが顔面に入った。トランスオーガニックは触手でジャズの足を捕らえると死角からチェーンガンを撃って触手を粉々にした。おぞましい悲鳴を上げながらトランスオーガニックは標的をワーパスに変更した。

 好機と睨み、ジャズはアンカーを上顎に引っ掛けて口が閉じないように固定した。

「ワーパスやれ!」

「おうよ!」

 入り口からずっと集めていたエネルゴンの塊を閉じられない口に押し込んだ。ジャズはトランスオーガニックの足下にエネルゴンの破片を散りばめるとグラップルビームを口から外して天井にくくりつけ、力任せに引っ張った。

 天井が崩れ、落石が発生した。

「撤退だ!」

 ジャズが叫び、ワーパスも落ちて来る岩を避けながら洞窟の外を目指して走る。振り返り様にワーパスは戦車に変形、砲口をトランスオーガニックに定めてミサイルを発射した。落石をかいくぐりながらミサイルは目標に向かって飛び、口に放り込まれたエネルゴンを大爆発させた。

 

 

 洞窟が揺れる音を聞いて士道は立ち上がって入り口を注視した。緊張感を漲らせて待っていると煙を切り裂きながらスポーツカーと戦車が脱出して来た。

「ふぅ、助かったぜ!」

「二人とも! 怪我はないか?」

「この通り元気さ」

「パーセプターの野郎が基地に帰って来たらとっちめてやる!」

「何だか、ひどい休日になっちゃったね。また来週にでもハイキングは仕切り直そうか」

「だな」

「はいです」

 トランスオーガニックはなんとか破壊出来た。パーセプターの変な研究がどうにかならないものかと士道は思った。

 


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