ユニクロンの体内へと先に侵入した精霊達一向は共通して懐かしい気持ちに捕らわれていた。初めて来た筈なのに、何故か一度は来たと感じられる。全体的に薄暗く、深い紫色の空間で巨大な橋が無数に至る所に見えた。
自らの父であるユニクロン。ここにいる皆が破壊神の子であるのは間違いない。自分のルーツがこんな強大な化物など信じたくはないが、十香達もかつては化物のような力を奮っていた。
六人がここへ来たのはもちろん、観光旅行などではない。ユニクロンを止める為だ。父なる存在だが、自分達の平和を脅かす存在は捨て置くわけにはいかないからだ。それに、どうして産み出したのかも聞かなくてはいけない。
ユニクロンの体内は驚く程に静かで逆に不気味に感じていた。橋の中心にまでやって来ると同時に微かにだが何か音が聞こえた。最初に気付いたのは四糸乃だ。
小動物のような繊細さが敵の襲来を察知したのだ。何かが羽ばたくような音は徐々に大きな騒音になって耳に届いた。
「敵だ!
体内に残っている微かな霊力を使って十香が剣を抜き、横一文字に振り払うと切っ先の直線上に三日月状の光波が放たれた。コウモリを彷彿とさせる翼を持った機械の生き物は、たったの一撃で数十匹が吹き飛んだ。
「ユニクロンの免疫機能ですわね。わたくし達も敵と判断してますわ」
狂三は説明しながら歩兵銃を手に、飛び回る機械のコウモリを撃墜していく。狂三が言う前に他の者もあの大群が免疫機能と言うのは無意識のウチに理解していた。それに全員、どこへ向かえば良いのかここへ入ると同時になんとなく分かっていた。まるで導かれているような、そんな感覚だった。
「
七罪が箒を向けると大群は一斉に可愛らしくデフォルメされたコウモリのぬいぐるみに変化して底の見えない橋の下へと落ちて行った。
「ふぅ~! また来る前に早く行くよ!」
いつになく張り切っている七罪は箒に跨って先を急ぐ。全員、全力で走っていると七罪の言う通り、また膨大な数のコウモリが近付いて来たのだ。
「
四糸乃が床を叩くと大群が向かって来る方向に重厚長大な氷の壁を形成し、大群をせき止めてその間になんとか通路へと入り込む事に成功した。皆が通路に入り込むと入り口は固く閉ざされた。
通路の内側は機械の壁と生物の臓腑のような柔らかい肉質の触手が生えていた。
「進む道はみんなわかっているのだな?」
「うむ、わかっておるぞ。破壊神の悪しき魂までの道は我には手に取るように分かる」
「それにしてもさ、ユニクロンの攻撃って意外と緩くない?」
「指摘。それは恐らくはオプティマス達が別の所で戦っているからと思われます」
「あたし等の優先度は低いって訳ね、ハイハイ」
七罪は急ぐように先々進もうとすると十香は呼び止めた。
「七罪、急ぎ過ぎると危ないぞ」
「もしもオプティマス達が到着出来なかったらあたし等が止めるしかないのよ!」
「オプティマスさん達は……きっと……到着します」
喋りながらも歩いているとさっきまで無害だった触手は突如、先端を十香等に向けて襲いかかって来た。狂三が片腕を絡め取られると瞬時に十香が触手を切り裂いた。
「助かりましたわ」
「お互い様だぞ!」
触手もまた免疫機能である為、十香達を敵と見なして攻撃をして来るのだ。並み居る触手を四糸乃は凍らし、耶倶矢と夕弦は風の刃を周囲へ飛ばして砕いて見せた。
一掃したかに見えたが、触手は次から次へと生えて来る。
「きりがないぞ!」
「
七罪の天使が触手をただのヒモに変えたが、無力化された触手はすぐに切り捨ててまた新たに生えた。
「手洗いが、これでどうだ!」
刀身に霊力を溜めて十香は壁へ渾身の一撃を放ち、重厚なユニクロンの壁を破って別の通路へ飛び込んだ。だが、飛び込んだその先もさっきと同様の通路だった。更に数を増やして触手は少女達に襲いかかって来る。最初に四糸乃の体に絡みつき、助けようとした十香も対処仕切れぬ方向からの触手に拘束された。
「くっ……! 気持ち悪いっ!」
悔しげな顔で十香は剣を振り回すが、逃げる事は出来ない。遂には全員が、ユニクロンの触手によって捕まってしまった。
危うし、精霊。
オートボット基地で待機と防衛の任務を任されたパーセプターとダイノボットは、どんどん容態が悪くなる士道を見守っていた。原因が分かっているのに治せない。パーセプターにとってこれ以上ない屈辱だった。なるべく進行は抑えているものの、タイムリミットまで時間はなかった。
「士道……」
グリムロックは心配するようにベッドの上で眠る士道を見詰めた。
「パーセプター、俺達もユニクロンの体内に送ってくれ!」
「そうだよう! 士道をこんなにしたユニクロンの野郎をぶちのめさないと気が済まねえ!」
「オレも指をくわえて見てるのはごめんだな」
「ユニクロンを破壊したい」
スラッグ、スワープ、スナール、スラージと口々にパーセプターに抗議したが、パーセプターは首を立てに振らなかった。
「君達にはここを守る任務がある筈だ。オプティマスの命令だよ」
グリムロックも何か言いたかった。いや、むしろひと暴れしたかった。このどうしようもない怒りに任せてユニクロンを破壊してやりたかった。せっかくの切り札であるダイノボットを防衛に回したのもそれだけ士道が重要な存在だからであろう。
「あ、あのぉ~……だーりんは治せるんですよね?」
置いてけぼりをくらってしまった美九は最初はスネていたが、士道専属のナースになれると前向きに考えた。どこで買ったかは内緒のナース服を着ている。置いてけぼりと言えば、真那や折紙も美九と一緒に座っていた。
「もちろんさ、ただ極めて困難な治療だからね? 分かるだろう?」
「は、はい……」
今、十香達は士道から霊力を逆流させられない。体内に残った本来の五パーセントにも満たない霊力を活用するしかない。まだ士道が健在ならば最悪、以前の十香や八舞姉妹のように封印を解放して全開状態で戦えなくもない。しかし、今はどうやっても霊力の逆流が発生しない。
「しかし困りましたね。フラクシナスが落とされては支援が出来ませんね」
神無月は俯いて何か十香等やオプティマスの為に出来る事はないかと思案した。
「フラクシナスがあってもどうせ何も出来ないわ。今回はそれだけの相手よ」
琴里にしては弱気な発言、と感じるだろうがそれは揺るぎない事実だ。
「私達は周辺に気を配って敵の襲来に備えるのよ」
「司令、敵って誰です?」
「わからないわ。でも警戒はしときなさいって事」
「はい!」
パーセプターの代わりにテレトラン1の操作をフラクシナスのクルーが行っている。
「あの、何か見つけたら報告は誰にすればよろしいのですか?」
椎崎の質問にパーセプターと琴里は顔を見合わせた。確かに今、この基地を預かっているのはパーセプターだ。だがクルーの上官は琴里だ。
「指揮は琴里に任せてもいいですかな? 私は科学者だからね」
「引き受けたわ。何か発見したら私に知らせなさい!」
「じゃあ、あの、私達のいる基地から半径四〇〇メートル以内に未確認の反応があります」
「ダイノボット、出動よ!」
「俺、グリムロック。戦えるぞぉ!」
琴里の指示に従いダイノボット部隊はグリムロックを先頭に基地から出て行くと散会した。先のネメシスグリムロックの発生させた空間震警報のおかげで町の住民はシェルターに逃げてくれてある。
「スワープ、偵察しろ!」
「アイアイサー!」
大空を飛行してスワープは敵がいないかを確認していた。一見すると何も起きていないように見えたが違った。地中から何か生まれている。
「グリムロック、琴里! 地中から何か出て来てる!」
「スワープ、破壊しろ!」
『スワープ、様子を見なさい』
食い違う指示を受けて混乱したが、ここの総司令官は琴里だと思い出してスワープは琴里の命令を聞いた。土から生まれるトランスフォーマーと同サイズの人形の上を旋回するスワープ。その様子はスワープを通して映像が送られていた。
土の巨人は頭に角が二本生えて、瞳はダークエネルゴンの色をしているし、全身から禍々しい障気を放っている。ただの土と岩石は驚く程怪しげな物に作り替えられていた。手らしい手は無く、右腕は太いランスと一体化してその対照の左腕は手首から綺麗に反った刃になっている。
一体ならただの雑魚だが、それが地中から数え切れないくらいに湧いて出て来るのだ。
『スワープ、攻撃を許可するわ!』
ユニクロンの姿だけを真似た土の巨人はオートボットの基地がある方を見ると一斉に動き出した。スワープの絨毯爆撃が土の巨人の軍勢を焼き払った。無人だが家屋も跡形もなく炭に変えた。それでも巨人は絶え間なく生み出され続けて爆撃を浴びながら進軍をする。
連中の狙いは十中八九士道、もとい士道に宿るプライマスだろう。士道の肉体を破壊し、プライマスの意識を消滅させれば忌々しいユニクロンの宿敵を倒せる。士道を守らんと抵抗を試みるダイノボットなどユニクロンにしたら大した障害ではない。さっさと押しつぶしてやりたいが、グリムロックが猛威を振るった。パンチ一発で巨人は土に返る。ランスや刃で攻撃しても逆にダメージを受けてしまう。元々の素材が軟弱な為、戦闘力は極めて低いがそれをカバー出来るだけの圧倒的な物量が存在する。人はいないのでダイノボット達は、周辺の家を持ち上げては投げつけて、五河邸とオートボット基地を囲うようにして防衛戦を敷いた。スワープの航空支援もあって数では明らかな劣勢でも優勢に戦いを進められていた。
「インセクティコンの大群の方がまだ骨があるな、グリムロック?」
「黙って、倒せ、スラッグ!」
『グリムロック、今からそっちに折紙が行くわ。スナールには真那が行くから』
「俺、グリムロック。了解した」
「オッケーだ」
琴里の懸念は防衛が上手く行っているという事だ。琴里は積み上げられていく土塊を見ながら、無駄に味方を死なせるのが攻撃ではないと呟いた。攻撃は固められた防衛ラインに波のように押し寄せては退却し、防衛の薄い個所を探るのだ。人類やトランスフォーマーの戦争では惜しみなく兵士を向かわせて死なせるなどという戦術は有効ではない。しかし、相手はただの土の巨人だ。何度もぶつかり、破壊され、攻撃は緩やかな波のように続き、防衛ラインの穴を探す。
仕掛けるなら、出来るだけ防衛の穴に意表を突いた形が崩しやすい。琴里達はユニクロンの予想の上を行く防衛をしなくてはいけない。折紙や真那も出して、何が来ても良いように万全の態勢にして挑む必要がある。
琴里にはもう一つ、懸念があった。ユニクロンの雑兵の波状攻撃は止まらないのでは? という事だ。オプティマスがユニクロンを止めない限りはこの攻撃はずっと続くと考えた方が良さそうだ。
「よろしくグリムロック。士道を一緒に守る」
「うん、守る」
グリムロックは折紙に良い印象がなかったのは折紙がASTにいた時に戦ったり、四糸乃を狩ろうとしたからだろう。今は他のみんなとも仲良くやっているし、そもそも目的は一致しているので気にしていない。
メタトロンを起動、肩のスピア型ミサイルは巨人達を粉々に粉砕した。折紙と真那が加勢してから少しすると、ユニクロンの雑兵は立ち止まり、次々と自壊して行く。オプティマスが任務を達成したのかと期待したが、その期待はすぐに打ち砕かれる事になった。
地面を埋め尽くしていた大群が消え去ると地中から巨大な腕が出現した。その腕はグリムロックの目から見ても巨大で、全身が現れた時、折紙や真那は口をポカンと開けて間抜けな顔を作った。
「デカくなりやがりました……!」
一〇〇〇メートル級、こんな巨人はメトロフレックスくらいしか見たことがない。グリムロック等はビーストにトランスフォームした。
「驚くな、体は、土だ!」
グリムロックは皆が萎縮しないように言い放ち、大股に足を開いて発射姿勢を整えると空気中のエネルギーとレーザーファイアーを体内で混ぜ合わせ口から照射し、超大型の土の巨人を粉砕して見せた。だが破壊してもまた別の巨人が数体出現した。こちらも一〇〇〇メートル級の怪物だ。
突然、グリムロック達の背後、基地と五河邸の方から爆発のような轟音が聞こえ、全員がそちらを振り向いた。ユニクロンを模した巨人はオートボット基地をすくい上げている。その中には当然、パーセプターや琴里、美九、令音にクルー、そして士道がいる筈だ。
「士道ォ!」
基地を持ち上げた腕にスワープのミサイルやロケットが撃ち込まれ、片腕は簡単に砕けた。バランスを崩しながら巨人は基地を片手に握るとミシミシと音を立て、握り潰そうとしている。
「スワープ! もう片方、破壊しろ!」
「分かってる!」
旋回しスワープはもう一方の腕をロックオン、翼や口から出た百発近くのロケットが巨人の最後の腕を砕いた。基地は真っ逆様に落ちて来る。
「スワープ! キャッチしろ!」
「無茶言うなよう!」
無茶でもやるしかない。地面に目掛けて落ちて行く基地を足で掴み、スワープはブースターが焼ききれんばかりに噴射し、翼を必死になって羽ばたかせた。
「ふんがぁぁぁぁ!」
どれだけ気張っても、ダイノボットのパワーがあっても流石に基地を持って飛ぶのは不可能に近い。スワープの抵抗も虚しく、基地は地面に落ちてしまった。
落下地点に集まってグリムロックは壁を引き剥がして中に入ると、案の定基地はメチャクチャだ。
「いてて……みんな怪我は無いかしら?」
琴里が頭を押さえながら倒れた機材の下から顔を出すとグリムロックはホッとした。
「琴里、みんな、どこだ?」
「私はここだよー! 士道くんも無事だ」
パーセプターがコンクリートに埋もれていたが、自ら這い出して来た。手の中には士道と美九、令音の姿があった。
「司令、私達も無事です!」
神無月もどこからか姿を見せ、その背後にはクルーの姿があった。
「ひとまず安全な所へ避難するんだ」
「安全な所? そんな所なんてあるのかしら?」
パーセプターを見上げて琴里が問うとパーセプターには一つ心当たりがあるらしい。
「ロックダウンから回収した船がある。あれに乗るんだ」
パーセプターはまだしも、他の面々に直接的な戦闘は期待出来ない。琴里も美九も霊力はほぼ無いので出来る事も知れている。
「俺、グリムロック。みんな、船に乗るまで、援護する」
「お願いするわ」
崩れた基地を出て、パーセプターに連れられて引っこ抜かれた基地の跡に急いだ。外では皆が奮闘し、ユニクロンの化身と戦っている。
さっきは景気付けにグリムロックが一発で敵を消滅させたが、他はそう上手くはいかないものだ。
「士道達が、船に乗るまで、踏ん張れ!」
背面のハッチを開き、スラスターを展開するとグリムロックはロケットのように一直線に突き進み、巨人の顔面を貫いた。巨人は悶絶もせず、簡単に崩れ落ちて行く。どうやら頭部を破壊さえすれば簡単に倒せるようだ。グリムロックがそれに気付くと大声でそれを伝えた。
「みんな、頭狙え! そこが弱点!」
「頭って……高すぎるだろ」
真那や折紙は飛行が可能なので早くも頭部に集中砲火を浴びせている。
「どうやって攻撃するんだ?」
「ん~、俺達も飛べたらな~」
スラージの一言にスラッグとスナールはふと思い出した。
「俺達も飛べたじゃないか!」
「あ、忘れてた」
三人はロボットの姿になり足からスラスターを噴射して巨大の頭辺りまで高度を上げてからビーストにトランスフォーム。スラッグは角で顔を貫き、スナールは体を丸めて回転しながらの体当たりで頭を割った。スラージは体重に身を任せて、ぶつかり砕いて見せた。
一〇〇〇メートル級の巨人でも仕留められないと見て、再び自壊して落ち着いた。なんとかパーセプター達はロックダウンの船に乗り込めたようだ。
地面が揺れ、シンと静まり返った所に響き渡るような重い音がした。
「次が来る。気を引き締めて」
「はいです」
大地に亀裂が入った。そこから大量のダークエネルゴンが溢れ出したかと思うと地表に無数のダークエネルゴンの結晶が形成されると、結晶を砕いて中からはインセクティコンの大群とバンダースナッチ、既に死に絶えたDEMの魔導師《ウィザード》も現れたのだ。
ダークエネルゴンは死体に与えればゾンビのように蘇生出来る。かつてのショックウェーブが仕掛けた天宮市の制圧作戦でおびただしい数のインセクティコンとバンダースナッチや魔導師《ウィザード》が倒れた。
インセクティコンの死体は溶けてなくなりはしたが、蘇生するのは難しくはない。
「前にも似たような光景を見たような……」
呟きながら、真那は剣を握り直した。
足音と土埃を上げながらインセクティコンは走って来る。地面を縫うようにしてオプティマスが倒したメガピートも蘇生されて牙を剥く。
「インセクティコン……。グルル……!」
インセクティコンは見ているだけでグリムロックの怒りを刺激してくれる。生き返ったならまたあの世に送り返してやろうと一歩前へ出た時、空から炎の塊が降り注ぎ、バンダースナッチと魔導師《ウィザード》を灰に変えた。自然と空中に目が行くと、そこにいたのはプレダキングだ。ドラゴンからロボットへ移行しながら着地すると、グリムロックの方へゆっくりと歩いて来る。グリムロックもロボット携帯になって迎えた。
十分に攻撃が出来る範囲まで近付くとプレダキングはチラッと折紙を一瞥してからグリムロックの睨んだ。
「何だ、プレダキング!」
「手を貸しに来た。不満だがな」
「お前の手、いらない」
「なら好きにしろ。けれども私はメガトロンに仰せつかった事を実行するだけだ」
グリムロックとすれ違い、プレダキングは歩きながらインセクティコンを踏み砕きつつロックダウンの船の方に行く。
「命令ってなんだよ?」
「五河士道を守り抜く事。任務が完了すれば私はお前達をバラバラにしてあの子供を連れ帰るだけだ」
メガトロンが士道を守るような命令を下すなどとても思えないが、メガトロンも士道の価値について分かっている。
「本当ならお前達ダイノボットと共同戦線などごめんだが、メガトロン様の命令だ」
任務は私怨よりも優先される事項だ。プレダキングはドラゴンになって船の前に立ちはだかる。厄介な敵が味方になってくれた。グリムロックはプレダキングが変な気を起こさないか疑いながら戦闘を開始した。
ユニクロンの体内を行くオプティマス達は案の定、免疫機能による攻撃を受けていた。
「何だよこの世にも邪悪な免疫機能はよ!」
「うっぷ……吐きそうだ」
周辺は薄いダークエネルゴンだらけの空間だ。アイアンハイドは気分を悪くしながらも撃ち落としていた。
メガトロンの背後から迫って来たコウモリ型ロボットをオプティマスが撃ち落とし、身をかがめるとメガトロンがカノン砲でオプティマスに迫るコウモリを一掃した。
背中合わせに戦い、お互いを絶妙なコンビネーションでカバーし合い、コウモリを追い払っていた。
「メガトロン!」
オプティマスが叫ぶと瞬時に何をするのかを察知してメガトロンは手を組んで待ち構えると、オプティマスが組んだ手に足を乗せると同時に空中へ投げ飛ばし、近くの橋に渡らせた。
「お先!」
ジャズはアンカーで自由に飛んで行き、メガトロンの手を借りてアイアンハイドとワーパスも飛び移った。メガトロンはジャズのアンカーで回収した。
「オプティマス、通路が壁で塞がってますよ!」
「破壊する!」
助走をつけてオプティマスは壁を蹴り破って通路に力技で入り込んだ。コウモリ型の襲撃を何度も退け、かなり体内を移動している筈だ。
「十香達はどこにいるんですかね?」
「レーダーはダークエネルゴン反応だらけで使い物にならん! とりあえず、耳をそばだてながら行こう」
「あまり余裕が無いのは分かっているだろうなオプティマス?」
「分かっているとも。だが、あの子達を見捨てられない」
「世話の焼けることだわい」
「メガトロン、お前のディセプティコンは何をしている? 一緒に来させなかったのか?」
「ディセプティコンはお前達を叩き潰す準備だ」
「宇宙の運命がかかっているのにお気楽だな」
メガトロンが壁をへこませ、配管が切れてパチッと火花を散らした。
「こんな屑鉄、すぐに終わらせる。お前と手を組んだのもオートボットを殲滅する下準備に過ぎん」
「戦いたいならいつでも引き受けよう。だがまた人間達を巻き込む気なら容赦はしないぞ」
言い争いが始まりそうな雰囲気だったが、ジャズが会話に割って入った。
「ストップ! 十香達の声です!」
それを聞いて一度立ち止まり、耳を澄ますとかすかにだが確実に少女らしき声がした。
「こっちだ!」
オプティマスは壁にタックルでぶち抜き、何枚か壁を破って突き進むと遂に発見した。壁から生えた触手に絡まれる少女達は顔を赤らめて、必死に抵抗をしている。
「何だこの触手は!?」
「お……オプティマス……た、助けてくれなのだ……」
「よーし、すぐに助けてやる!」
「やれやれ情けない事だわい」
メガトロンは首を横に振って呆れたような態度を取った。
「懇願。この気持ち悪い触手をなんとかして下さい」
「コイツ等服の中を這い回ってくんのよ!」
「そんな哀れっぽい声を出すな、聞き苦しい」
オートボットが触手を引きちぎっているのを尻目にメガトロンは手にダークエネルゴンを圧縮してから地面を殴りつける。殴った先から無数の亀裂が入り、ダークエネルゴンの鋭い結晶が地面から突き上がり、触手を一気に切り裂いて見せた。
触手がたわんで拘束力が無くなるとみんな体の触手を取り払った。
「ふう、助かったであるぞ。誉めて遣わすメガトロン!」
「あ……?」
「……さん」
「まあ、良いだろう。先を急ぐ。そこの小娘のお守りをしながら進めるかどうか怪しい物だがな」
メガトロンは先を急いだ。オプティマスは少女達の方を向いて怪我はないかどうかを確かめた。
「ところで、どうして無断でやって来たんだ? ここは危ないからすぐに帰るんだ」
「お断りですわ。わたくし達を産み出したユニクロンに聞きたい事がありますの」
「少しでも……皆さんの……役に立ちたいんです……」
問答無用で送り返してやりたかったが、今は通信機でパーセプターと連絡が取れない。グランドブリッジが開けないなら送り返す事は出来ない。
「ワーパス、アイアンハイド、この子達をしっかり見てやってくれ」
「うす!」
「わかりました。とりあえず、みんな私かワーパスの肩に乗るんだ。歩幅が違い過ぎる」
少女達を肩に乗せてしばらく移動をしているとどこか緊張感が抜けている十香や耶倶矢を見てメガトロンは小馬鹿にするような口調で言った。
「お気楽だな。これは子供をピクニックに連れて行くのとはわけが違うのだぞ?」
「わかっているさ。置いてもいけないだろう、メガトロン」
「好きにするが良い。それと……ここがユニクロンの中枢部だぞ」
ユニクロンの中枢部、基本的に金属質な空間に生物的な細胞が張り巡らせ、部屋の中央には巨大な卵のような塊が安置されてある。
「丸裸だ早く破壊したらどうだオプティマス?」
「それは出来ない。破壊してユニクロンが死ねば地球は終わりだ」
「ここまでたどり着いたのは、不思議ではない。しかし余をまだどうにか出来ると思っているのは実に心外だ」
卵の中、そこからネメシスプライムがゆっくりと現れた。姿は紫色のカラーのオプティマスだ。
「ネメシスプライム。いや、ユニクロン。もう一度眠ってくれ、この星の生き物達の生活の為に」
ネメシスプライムはユニクロンの脳細胞だ。オプティマスは無駄だと分かっていたが、一応交渉をしてみた。
「答えはNOに決まっているだろう。憎きプライム」
片足で力強く床を踏みつけた途端、部屋の四方八方から触手が放たれてメガトロンやオートボット、精霊達も瞬く間に絡め取られた。
「余はマトリクスに触れれないが、他人に破壊をさせられる」
ネメシスプライムがメガトロンの方を見た。
「儂をまた操る気か!?」
「そうだな――」
「ユニクロン! どうして私達を産み出したのだ!」
十香の声が飛んで来た。ネメシスプライムはメガトロンから視線をズラしてアイアンハイドの肩で吠える十香を凝視した。
「確かお前は最初にほだされた精霊だったな。お前達を産み出した理由か? それは簡単だ。余の復活の為だ。人間と精霊、この二つは憎み合い、戦い合い、多くの憎みを生産してくれた」
勝ち誇ったように悠々と歩き、ネメシスプライムは続けた。
「
「ゴチャゴチャと……オプティマス! ネメシスプライムを倒すぞ!」
「わかっているが……この拘束を解かなくては始まらない」
「メガトロン。貴様は宇宙の支配者になるなど世迷い言を抜かしていたな? 破壊大帝などと笑わせる……。見せてやろう本当の破壊を」
ユニクロンの中枢部にまで歩き、卵の中へと消えて行った。
ロックダウンの宇宙船を発進させた琴里は、サイズの合わない艦長席に座って指示を出していた。防衛兵装で船体を守りながら搭載された火器で地上を援護していると、突如空間震警報が鳴り響いた。
ディスプレイとにらめっこしていた椎崎は顔を青くさせながら報告した。
「司令、空間震です!」
「空間震? 発生源は!?」
「その……広範囲過ぎて特定出来ません!」
「ならもっと探査範囲を広げなさい!」
「は、はい!」
椎崎は急いでキーを叩いて空間震の発生元を探った。探査範囲を広げるうちに椎崎の顔から見る見るうちに血の気が引いて行く。
「どうした椎崎?」
あまりの様子の激変に幹本が尋ねると椎崎は震えた声でなんとか言葉を吐き出した。
「空間震の発生源はこの……地球全域です」
そこにいた全員が耳を疑った。かつて起きたユーラシア大空災はユーラシア大陸を大きく削る未曾有の大被害だった。そして今、地球全域から空間震が発生しようとしている。規模が違い過ぎて琴里の頭の中が一瞬、空っぽになった所で空間震警報は鳴り止んだ。
いつまでも経っても空間震は起こらない。不発かと思い、全員の顔色が元に戻ったその矢先、空にうっすらと見えていた月が瞬いて消えた。惑星が消える瞬間を目撃した琴里は目をこすりながら箕輪に指示をした。
「箕輪、月の位置情報を出してくれない?」
「月の位置情報ですか? わかりました」
不思議に思いながらも箕輪は月を調べていた。
「あれ? おかしいですね」
「どうしたの?」
「月のデータが出てきません。故障かな?」
やはり間違いではない。さっきの空間震は月を消滅させたのだ。常識外れ過ぎて逆に何も感じない。惑星を消すなどフィクションの中だけと思っていたからだ。
士道を安静にさせたパーセプターは椎崎が使っているコンピューターを使って空間震の探査範囲を更に広げた。
「この空間震は地球全域なんて規模じゃないね。範囲が広すぎてどこが発信源か分からないくらいだよ」
破壊神の名に恥じぬ攻撃だ。再び空間震警報がけたたましく鳴ると椎崎の代わりにパーセプターが報告した。
「今度は普通規模の空間震が世界の至る所で同時に発生している!」
「これが宇宙船なら宇宙まで退避するわ。グリムロック達を呼び戻して!」
「琴里、残念だがその案は推進しかねる。私達はユニクロンの体の近くにいるから安全なだけで下手に離れると、あの月のようになってしまうよ。空間震を回避しながら士道くんを守る。私達に出来るのはこれだけだ」
空間震の連続的発生で世界各地で地面が抉られ、多くの大都市から町に被害が出ていた。
「やめろユニクロン!」
「そうだ、怒れ、怒りや憎しみが余の糧となるのだ」
触手に自由を奪われ、アイアンハイド、ワーパス、ジャズは目から光が消えて行く。メガトロンも引きちぎろうと抗ったが、徐々に力を失って行く。
「みんな……!」
ネメシスプライムはメガトロンからダークスパークを奪って自分の胸にハメた。
「奴等は余に対する怒りや憎悪を抱いて余の糧となる」
卵の中からネメシスプライムが出て来ると動けぬオプティマスに迫った。
「オプティマス、腹立たしい事にお前はプライム以前にトランスフォーマーとして大きく成長し過ぎた」
腕をダークエネルゴンの鎌でコーティングし、オプティマスの首に刃を当てた。「ユニクロン、まだ終わりではないぞ!」
「ほう……まだ動けるのか? お前達に何が出来る? 余はお前達の父だ。子が親を超えるなど出来はしないのだ」
「私を産み出したのがただ憎しみを振り撒くだけなど絶対に違う! 私は私の意志で動いていたのだ! お前の手で躍らされていたわけではなぁい!」
「それで? お前一人で余に何を出来るのだ?」
腕を組み、ネメシスプライムは十香を見下ろした。十香ははぁ、はぁ、と息を吸っては吐いてを繰り返す。精霊の源であるダークエネルゴンは無数にある。十香は体内からではなく体外から霊力を供給して行く。どす黒い空気が十香の周辺を取り巻き、ピリピリと空間が張り詰めていく。
「なるほど、反転か。しかしその力は余の復活を早めるだけだ」
十香が反転する瞬間、捕らわれていた四糸乃、狂三、耶倶矢、夕弦、七罪にも反転と同じ現象が起こっている。
「わたくし達にユニクロンはいらない」
「あんたが父ちゃんなんてごめんよ!」
「愚かな……しかしもう遅い。余の復活の時は来た!」
ネメシスプライムがまたも卵の中へ入り込むとユニクロンの中枢であるコアを繋いでいたケーブルが切れる。コアが自由になると、衝撃波を周辺に撒き散らして十香達を追い払った。コアが自律するとさっきまで拘束していた触手が千切れ意識を失っていた連中の目に光が灯る。
「ユニクロン! 貴様ァ!」
起き上がりにフュージョンカノン砲を見舞ったがコアを覆う膜はメガトロンの砲撃すらも軽々と弾いた。
「余は新たな肉体を得る。こんな古びた肉体ではなくな」
コアは天井を貫いて空の彼方、宇宙空間へと飛び去って行った。
ユニクロンが地球を離れ、地上で暴れまわっていた空間震やゾンビの群れは突然、機能を停止して不気味な程にあっさりと力尽きた。
「ん? 何だコイツ等」
グリムロックは口に加えていたインセクティコンが急に大人しくなって不思議に思った。プレダキングは口にくわえたメガピートの頭を吐き出してロボットに変形した。さっきまで病的に活発だったインセクティコンが地面に伏して溶けて行く。
「不自然だな……」
「みんな、あれを見やがって下さい!」
真那が指差したのは地中から飛び出す謎の光の塊だ。驚くべき速度で飛んで行く。
『ゾンビの群れが急に倒れたわね。空間震も止んだ事だし。オプティマスが勝ったのかしら?』
「俺、グリムロック。わからない」
宇宙船の中では急な反応の消失に不安と歓喜が入り混じった複雑な気持ちになっていた。
『パーセプター、聞こえるか!』
通信機からオプティマスの声がした。
「やった! 司令官だ! 司令官、遂にユニクロンの封印に成功したんですね!」
パーセプターが嬉々とした声を上げるがオプティマスの声色はそこまで明るい物ではなかった。
『詳しい事は帰ってから話す。グランドブリッジを開いてくれ』
ロックダウンの艦にもグランドブリッジは搭載されてある。一度宇宙船を地上に着陸させてグランドブリッジを開く。淡い緑色の道からはオプティマス等とメガトロンが出て来た。
艦から降りて、パーセプターや琴里は真っ先にユニクロンの結末について問う。さっきの妙な光源も気になるしで何もかも気になる事だらけだ。
「オプティマス、ユニクロンはどうなったの!?」
「結論から言って倒せていない。というよりユニクロンの復活を許してしまった」
「でも司令官、ユニクロンは地球そのものでしたよね? 復活すれば地球はもうただの土塊ですよ?」
「ユニクロンの力を見くびっていた。ユニクロンはコアに十分な力を貯めて自身のボディーを捨てたんだ」
「じゃあさっきの光は!?」
「ユニクロンのコアだ」
愕然とした。ユニクロンの復活を阻止出来なかっただけではない。ユニクロンは新しいボディーを形成しようとしているのだ。
「私達の力不足なのだ……」
十香が済まなそうな顔を作った。
「どうした十香、泣きそうな顔してさ」
不意に聞き慣れた声が耳に入って来た。十香はハッとして顔を上げるとナース服を来た美九の肩を借りて士道が宇宙船から降りて来た。
「シドー……体は……体は平気なのか!」
「ユニクロンが地球を出て行ってくれたおかげでなんとか。美九、もう肩は大丈夫だぞ」
「私はだーりんの専属ナースですぅ! 片時も離れませーん」
「弱ったなぁ」
「これから、何をするか考えているのかオプティマス?」
「もちろんだ。ユニクロンを叩く!」
「単純明快だな。しかし儂もそれには同意見だ」
メガトロンの頭上にさっきまでどこにいたのか、あの巨大空中艦ネメシスが浮かんでいた。
『メガトロン様、お迎えにあがりました』
ショックウェーブの声がスピーカーからするとダイノボットはいきり立った。士道もショックウェーブが折紙にした事を思い出して嫌な顔をした。帰還用ダクトをメガトロンとプレダキングに下ろして回収した。
「私達も出動だ。十香――いや、来るなと言ってもついて来るだろう」
同行は止めず、その場にいた全員が艦へと乗り込んだ。艦長席にオプティマスが座り、琴里は座る所がないのでとりあえずオプティマスの膝の上に座っておいた。
ネメシスとロックダウンの宇宙船デスヘッドは並行してユニクロンに向かっていた―ユニクロンは既に新しいボディーが完成している。コアを中心に驚異的な速度で生成したのだろう。ボディーは完成しているが、意識はまだはっきりしていない。
人間で言う所の目覚まし時計が鳴って頭は冴えているのに気持ちがまだ寝ているような感じだ。
「あまり近付き過ぎるな。何をしてくるか分からないからな」
デスヘッドとネメシスが停止すると遠距離からレーザーやプラズマ砲でユニクロンの外装を攻撃したが、ダメージは一切通っていない。
「小型船で近付くのはどうかしら?」
「小型船か……難しいな」
「俺、グリムロック。ダイノボットに任せろ!」
「任せろって……おい、待てグリムロック!」
オプティマスが呼び止めたがそんなの聞いていない。デスヘッドの降下用のハッチを開けるとダイノボット達は勢い良く宇宙空間へ飛び出して行った。
『すぐに戻れダイノボット! これは命令だぞ! おい!』
通信機からオプティマスが怒っている声がしているがそんな事、気にもしていない。ダイノボットがユニクロンの肩へ着地するとグリムロックのバーテックスファングがユニクロンの首の外装を噛み砕いた。
「よーし! スラッグ様の突進だ!」
バーテックスファングで砕いた所にスラッグの突進で首が大きくへこんだ。
「どけどけ! 爆撃するぞぉ!」
「オレのテイルアタックでも食らえ! この、この!」
「極めつけはオレだァ!」
爆撃とテイルアタックそしてスラージのタックルでユニクロンのほぼ無敵に近い装甲に穴が空いた。
「乗り込むぞ!」
オートボット切っての不良部隊もとい切り札達は命令も聞かずにさっさとユニクロンの内部に突入した。
ダイノボットが通過した所に降下船でプレダキングとコンバッティコン、メガトロンとサウンドウェーブが降り立った。
まずはブルーティカスに変形して穴をより大きく広げてから中へ入って行った。 その直後、オートボットと精霊等がユニクロンの内部へ突入した。
オプティマス、メガトロン、士道の三人はユニクロンのコアへ急いだ。トラックとスペースタンクになった二人。トラックに士道が乗り込んでエンジン全開で突っ走った。新生ユニクロンの体内で侵入者を阻む存在はいくらでもある。グリムロックの背中に十香と四糸乃が乗り、各々自由にダイノボットの背に乗って暴れながらコアを目指す。
ダイノボット等の行く手にはずんぐりむっくりな不細工なロボ、シャークトロンの群れが待ち受けていた。十香はグリムロックの背から飛び降り様に
「良いぞグリムロック、踏み潰せ!」
火を吐き、焼き払いながら敵の中を減速もせずに突き進んだ。順調に進撃が続いていると、ユニクロンの体の中が揺れ出した。これはユニクロンの意識も覚めて完全復活を果たしたという事だ。
張り手一つで周辺の惑星を消滅させ、ユニクロンは体の中の防備に力を注いだ。その間に手近な惑星を破壊して行くつもりだった。
ユニクロンに侵入したプレダキングは頭部のエリアにいた。地球がどうなろうと知った事ではないが、ユニクロンの戦闘力を大きく削ぐ為に視覚を潰すべくやって来たのだ。ユニクロンは辺りの惑星を消滅させながらどこかに向かっている。プレダキングはショックウェーブを守れるなら他はなんだって構わない。ユニクロンの目の内側にまでやって来るとプレダキングはビーストモードになって腕にエネルギーをチャージした。
まずは右目だ。
エイペックスクローはユニクロンの眼球と網膜を貫き、プレダキング自身も外へ飛び出してしまった。破壊神でも目を潰されれば黙ってはいられない。狂った獣のように手を振り回し、胸を開き、巨大なビームを水平に照射してのた打ちまわった。ユニクロンから出たプレダキングはもう一度、中に入った。今度は左目からの突入だ。
視界を奪われ、ユニクロンの動きが止まった。
「任務完了」
オプティマスとメガトロンのタッグはネメシスプライム一人と互角の戦いをしていた。かつて真那や狂三に撤退を余儀無くされた時とは比較にならない戦闘力だ。士道のスターセイバーの光波を片手で握りつぶし、オプティマスの不意打ちを見ずにブロックすると、メガトロンの足を払って転かした。
ネメシスプライムは常に二人を視界に入るように的確な足捌きと軽捷な身のこなしで立ち回っていた。拳と蹴り、弾丸が飛び交い、流れ弾があちこちを粉々にした。オプティマスが突進した。ネメシスプライムと絡み合い、壁に激突するとオプティマスは軽々と投げられてしまった。立ち上がろうとネメシスプライムが膝に力を入れた所にメガトロンが襲いかかる。
顔面に拳がめり込み、ネメシスプライムはさっきよりも深く壁に打ちつけられた。そこまでしてもネメシスプライムは瞬時に再起して二人を翻弄した。
「士道、コアを破壊するんだ!」
「え……? それはマトリクスじゃ出来ない筈じゃあ」
オプティマスは続けて叫んだ。
「君のスターセイバーなら出来る!」
その言葉を受けて士道は頷くとスターセイバーに力を蓄えた。
――士道、全力で打って下さい。ユニクロンを倒すのです。
プライマスの言葉に士道は頷く。ネメシスプライムは標的を士道に切り替えて走って来た。
「させるかぁ!」
ネメシスプライムの足にメガトロンが滑り込んで転かすと頭を乱暴に掴んで振り回す。そのままオプティマスのいる方へ突き飛ばすと首にオプティマスのラリアットが決まった。
強力なラリアットによろめくネメシスプライムの腰にメガトロンが手を回してバックドロップで後頭部を強打した。
ネメシスプライムが士道へ手を伸ばしたが、手をオプティマスが踏み、ネメシスプライムはゆっくりと見上げると手にはエナジーアックスが握られている。
「私の手で、地に堕ちろォ!」
ネメシスプライムの頭部が真っ二つに割られた。
急いでコアの方を向くと士道はありったけのエネルギーを貯めて光波を放った。プライマスの加護がある光波はコアの周辺の膜と本体を斬りつけた。そこへオプティマスのマトリクスの光が浴びせられ、ユニクロンのコアは機能が停止した。
機能停止後まもなく、肉体の崩壊が始まった。
「逃げるぞ!」
オプティマスは士道を抱えてトラックに変形した。
「メガトロン、何をしてるんだ! 逃げるぞ!」
「わかっておるわ。ディセプティコン、ユニクロンは破壊した。全員、ここから退避しろ!」
「オートボット、こちらも退避だ!」
肉体のあちこちから光や炎、爆発が漏れている。身が滅ぶ苦しみに悶えながらユニクロンという強大な存在は宇宙の塵となって消えた。
無事に艦へ帰投した両軍。オプティマスとメガトロンの休戦協定はここで終わりだ。甲板に立って二人は睨み合う。
「まさか今から戦い、何てことないよな?」
心配そうに士道がジャズに聞いた。
「多分な」
「オプティマス、今回ばかりは戦いは無しだ。だが、また明日からは敵同士だぞ!」
「望むところだメガトロン」
トランスフォーマー最大の脅威であるユニクロンは滅び去った。それでもオートボットの脅威であるメガトロンは生きている。
戦いはまだまだ続くだろう。
「…………おい! 月面基地はどこに行きやがったんだ! そもそも月はどこだ!?」
しばらく不在だったスタースクリームは空間震で消えた月の跡地を見て呆然としていた。
「俺様のディセプティコンはどこだどこ行っちまったんだぁぁぁぁ!」
スタースクリーム、長らく不在で以前は赤いカラーリングだったが、今はどういうわけか深い紫色のカラーリングに変化していた。
ロストエイジでロックダウン戦でケイドがロックダウンの攻撃をかわす時にレンガの壁に隠れるんですね。その時にケイドの右側に人影らしき物があるのですが、あれは撮影ミスか、はたまた作画ミスか。
執筆 学校 バイト 就活 ゲームこれらをバランス良く回したいね。